本堂入口向拝には「龍」の彫刻があり、銘文座(裏面)には
    大正五年一月二十二日  本縣安房郡賤町
       彫刻師  三代目 後藤義光
 の刻印がある。さらに、
 向拝木鼻には獅子頭が左右1対。手挟に籠彫の菊花が左右に
 1対。虹梁持送に水に亀の籠彫が左右に1対配されている。

     
     <房総地方の彫刻>

 
幕末(1700年代後半)以降、安房地方に3名の彫刻師がい
 ました。
  ☆長狭郡の武志伊八郎信由(欄間・向拝・須弥壇など)
  ☆朝夷郡の後藤利兵衛橘義光(向拝・神輿・屋台など)
  ☆平郡の武田石翁(石工像)
 武志家と後藤家はともに、寺社の欄間や向拝の彫刻師で、
 武志家初代は「波の伊八」と呼ばれた人物です。有名を馳
 せた「波」の欄間彫刻は、千葉県夷隅郡萩原・行元寺にあ
 ります。「波」以外に「龍」の欄間彫刻も残しています。
 両家の作風にはいくつかの相違点があります。
 まず、龍の顔の向きです。武志流は概ね右向き(正面から
 見て)に対し、後藤流は左向きの構造になっています。
 また、向拝木鼻の獅子頭は両流派とも阿吽の形態ですが、
 後藤流は口に何か咥えています。
 さらには木鼻です。武志流は獅子頭と象鼻がペアです。後
 藤流は獅子頭だけのようです。これらは今後の検討課題に
 します。

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銘文座

向拝彫刻

向拝・龍

向拝木鼻
(右:獅子頭)

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虹梁持送
(水に亀1対)

手挟
(菊花1対)

向拝木鼻
(左:獅子頭)