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行革時評

道路族の次は新幹線族か

事務局長 並河 信乃
2004/06/03

 選挙前というのは、「なりふりかまわず、なんでもあり」が許されるのであろうか。6月2日に道路公団民営化関連法案が参院で可決成立したその日に、自民党が新たに整備新幹線3区間を来年度同時着工することに決めたと、日本経済新聞の夕刊が1面で報じている。小泉首相が自慢する道路公団民営化が実は大失敗に終わったことを、これほど見事にあらわしているものはない。

 新たに着工を内定したのは、北海道新幹線の新青森・新函館間、北陸新幹線の富山・松任間、長崎新幹線の武雄温泉・諫早間であり、さらに福井駅舎の先行整備も行う。工事費は合計で1兆1600億円に上るという。驚くべきことに、そのための財源は将来の財源の「先食い」で賄うつもりだという。つまり、現在着工している工事は、2017年度に完成の予定が早まり2012年に完成するので、その5年分の財源を前倒しして来年度からの新規着工にまわすという。

 整備新幹線の工事費は、国が約35%、自治体が国の半分、残りはJRが負担することになっている。JRの負担は新幹線開業後のリース代金で支払うことになっており、その間は建設を受け持っている「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」に国が無利子で貸付を行っている。一方、国の負担は、JR各社に対する東海道、山陽、東北、上越新幹線の割賦譲渡代金収入(1991年から8.1兆円を22.5年、1.1兆円を60年払い。金利は6.35%と6.55%の固定金利)の一部に公共工事費を加えたものであり、自治体の負担は国の半分で、それには交付税措置が行われている。今回のもくろみは、このJRから将来受け取る割賦代金の5年分(約3300億円)を担保に借金して、来年度から着工するというものであるが、当然、この借金のために多額の利払いが余計にかかることになる。こんな無茶苦茶な計画が許されていいものだろうか。

 道路公団民営化の議論が始まったとき、これで高速道路の建設に新しいルール、仕組みができることになるのではないかという期待があった。たとえば、民営会社が採算上建設を引き受けられない路線については、その建設を求める自治体がPFI方式などを採用して建設する会社を公募することがあってもいいし、また、自治体や国はそれに対して一定の補助をすることがあってもいい。あるいは、国道や県道の整備をすることを代替案とすることもあってもいい。いずれにしても、民営化された会社や自治体の合理的判断が働くことによって、遮二無二建設に突き進む風潮に多少の変化が生まれることを期待した。

 しかしながら、こうした期待は完全に覆され、高速道路は今までと変わらず建設が継続されることになった。道路族の完勝である。当然、こうした状況を新幹線族は注目していたに違いない。なんだ、小泉首相は党の言うことをちゃんと聞くではないか。そうなれば、一時ちょっと静かであった新幹線族が色めき立つのは当然である。選挙前という最大のチャンスを利用しない手はない。

 選挙のたびに繰り返される、こうしたさもしい、あからさまな利益誘導政治。これを小泉氏は「ぶっ壊す」ために登場したのではなかったのか。