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市町村合併:合併しない場合は消防事業拒否も

2004/10/26

 前橋市は10月18日、富士見村が同市に事務委託する場合の消防事業費は年間4億6330万円となる試算を明らかにした。前橋市は12月に、大胡町、宮城村、粕川村と合併するが、富士見村は9月村議会で、前橋市との合併合併関連議案を否決。広域圏事業はこれまで5市町村で行ってきたが、富士見村は合併に加わらないため、消防事業が課題となっていた。2004年度の富士見村の負担金は2億3289万円で、事務委託すると経費が2倍に増えることとなる。富士見村は19日に、前橋市に消防事務を委託する議案を可決したが、28日には再度、合併関連議案を提出する予定。

 事務組合方式で広域化されてきた自治体消防に合併が影響を与えるケースが出てきている。合併による感情のもつれで災害対応力が低下しないよう、消防庁は2003年10月、「管轄人口が10万人未満の小規模な消防本部が生じることは適当でない」と自治体に通知している。以下、合併と消防に関する事例を紹介する。

 埼玉・加須市は6月、大利根町、北川辺町、騎西町でつくる「加須地区消防組合」について、栗橋町を加えた3町で合併協議を進めている大利根町と北川辺町に対して、「合併後は3町でやってみてはどうか」と示唆した。ただし、加須市と騎西町による法定協は加須市で実施された8月の住民投票の結果を受けて10月で解散する予定。また、大利根町は9月の住民意向調査の結果を受けて北川辺町と栗橋町との法定協から離脱を表明している。

 島根・出雲地区法定協(出雲市、平田市、佐田町、多伎町、湖陵町、大社町)は6月、2003年12月に住民投票の結果を受けて単独町制を選んだ斐川町に対して、一部事務組合で広域運営している消防について、3年間の期限付きで委託を受けると伝えた。協議が詰めの段階に差し掛かった時点で法定協から離脱した斐川町に対して、当初は2市4町から「虫がいい」などの声もあがっていた。

 群馬・桐生市外六か町村広域市町村圏振興整備組合(桐生市、藪塚本町、大間々町、笠懸町、新里村、東村、黒保根村)は8月、桐生市が負担割合の見直しを求めていた2004年度の広域消防当初予算(20億円)で、市負担(14億円)のうち4億2000万円分を6町村で分担する議案を可決した。分担割合は人口や人口密度などを基準に計算(笠懸町:1億3000万円、大間々町:1億円、藪塚本町:1億円、新里村:8000万円、黒保根村:400万円、勢多村:400万円、東村:400万円)。組合の枠組みを超えて7市町村が3分裂することも考えられるため、市が過大な負担を軽減するよう求めていた。

 長崎県は9月、長崎市に対して、2002年に同市との任意協から離脱した長与町、時津町、琴海町の合併後の消防救急業務の受託契約を続けるよう要請したが、市は従来通り受託継続しない方針を示した。長崎市は消防本部設置の基準を「管轄人口10万人」とする消防庁通知を挙げて、人口10万人の見通しを立てている3町が消防本部を設置するよう主張している。また、管轄人口が5万人規模の消防本部が全国の36.5%を占める(2001年4月1日現在)とする資料も示した。時津町長は6月に、消防救急問題のために、3町での合併について慎重な姿勢も示している。
 一方で、西彼北部地域法定協(西彼町、西海町、大島町、崎戸町、大瀬戸町)は9月、2005年4月の新市発足時から半年間、現在の大瀬戸町の消防救急業務を長崎市が継続することで合意。大瀬戸町をのぞく4町は消防救急業務を佐世保市に委託している。長崎市は「態勢が整い次第、消防救急業務を引き継ぐ」との文書を佐世保市が提出するとの条件で了承した。(田中潤)