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教員による体罰防止 各自治体の取り組み

2004/10/22

 岩手県は10月18日、体罰をした教諭を減給2ヵ月(10分の1)とする懲戒処分を行った。授業中に居眠りをしていた生徒に出席簿とこぶしで計20回ほど叩いたとのこと。後日病院で脳振とうと頚椎ねんざと診断された。

 兵庫県は10月14日、4月から9月に体罰などで4人の教職員を懲戒処分にしたと発表した。「合唱コンクールの指導中、整列の指示に従わなかった男子生徒のほおを平手でたたいた」など。県は2002年度から、すべての懲戒処分を年2回、発表している。

 以下、体罰防止について自治体の取り組みを紹介する。

 東京都は5月、教職員の不祥事増加に対応して見直した懲戒処分の基準を都HPで公開。新基準は、体罰について処分の上限を停職から免職に引き上げた。体罰への懲戒処分は明文上は停職が最も厳しく、目に余るケースでは自主退職を促してきたが、生徒をトイレに連れ込んで殴るなど、従来の体罰の概念を超えた暴力行為が起きており、退職金が出ない懲戒免職を適用する必要があると判断した。また、最近の不祥事を「事例集」にまとめ、研修用として都内の公立小中学校と都立高などに配った。

 札幌市は6月、「札幌市立学校体罰事故調査委員会」を新設。これまでは学校内部で聞き取りをしていたが、第3者が加わることで調査に公平性、透明性をもたせる。設置するのは、市内10区ごとに、小学校、中学校をそれぞれ担当する委員会と、高校・養護学校・幼稚園を全市一括で担当するものの合わせて21の委員会。校長が児童・生徒や保護者らと連絡を取りながら調査委員会を開催し、委員会は状況に応じて児童らからの聞き取りもしながら調査を進め、市に報告する仕組み。

 大阪府は6月から、教職員による生徒らへの体罰やセクハラなどを民間の「子ども情報研究センター(子ども家庭相談室)」などと連携して解決する「被害者救済システム」を府内全公立学校で実施。学校単独で解決が困難な事象については、弁護士や臨床心理士などの専門家が「個別事象対応チーム」を組織し、学校を支援する。また、大学教授などによる「評価委員会」が取り組みや救済方法への評価や提言を年に3回、府に対して行う。

 横浜市は7月、「体罰事実の報告についての要綱」を改正した。校長が体罰を確認した場合、校長は速やかに市に報告し、「必ず体罰報告書を作成、提出する」ことと明記。その上で、報告書は保護者に必ず確認を求める従来の規定はそのまま残し、保護者が確認を拒否した場合は「体罰の事実が確認できれば被害児童生徒や保護者の個人情報を除き、客観的事実だけを記載して報告することできる」とする例外規定を追加した。体罰を容認する保護者がいることを受けて、保護者の同意がなくても、洩れなく提出することを義務付けた。
 また同市は、教員が不祥事を起こした際の処分の程度を例示した一覧表を作成。特に厳しくしたのは猥褻な行為。一般職員の場合、盗撮や覗きをした場合には戒告から免職まで4段階から処分が選択されるが、教員については停職か免職とした。またいずれも児童生徒が対象となった場合には、原則免職と定めた。体罰については、同じ教師が繰り返し行うケースがあることから、過去の処分歴の有無で処分の軽重が異なるようにした。

 島根県は8月、「不祥事防止のための校内研修用事例集」を作成。公立小中高校などへ配布した。教職員が不祥事を共通の課題として認識し、防止に向けて取り組むための基礎資料・教材とする。具体的な事例として、「飲酒運転」「わいせつ行為」「体罰」「公金などの不正処理」「情報の漏えい」を想定。体罰は「冷静さを欠いた行為」であり、体罰を受けた児童や受けなかった児童にも「大きな精神的影響を及ぼす」とし、「教職員1人ひとりの人権意識の高揚が図られているか」など防止のためのチェックポイントを挙げた。巻末には懲戒処分の基準などを掲載。「体罰を加えたことにより、児童生徒を死亡させ、又は児童生徒に重大な後遺症が残る負傷を与える行為」は「免職」、「児童生徒に治療期間が概ね30日以上の負傷又は後遺症が残る負傷を与える行為」は「免職又は停職」などとした。

 埼玉県は2004年度中に、体罰、わいせつ行為、公金の取り扱い、事務関係の違反などの懲戒処分に関する「基準」を作成する方針。
 また同県は、公立学校の教員向けに、生徒や児童と接する際のひとつの目安として、しかり方やほめ方の基準を作成することも検討中。

 なお川崎市は6月、いじめに適切に対応しなかった教職員は戒告とし、内容次第で処分の度合いを重くするよう、教職員の懲戒処分基準と教育委員会職員の懲戒処分の公表基準を一部改正した。さらに、これまでは明らかにしていなかった対象教職員が所属する学校名を公表するよう改めた。(田中潤)