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各自治体の放置自転車対策

2004/10/07

 神奈川・開成町では10月から、県と2市5町(小田原市、南足柄市、中井町、大井町、松田町、山北町、開成町)の行政と住民で組織されている「酒匂川流域の交流ネットワーク会議」が放置自転車を無料で貸し出し、通勤・通学者に共同利用してもらう社会実験を始めた。小田急線開成駅を中心に通勤・通学している人が対象。駅近くの町営駐輪場を共通の置き場とし、自宅から同駅までの利用者(順利用者)が止めた自転車を、同駅から職場への利用者(逆利用者)が利用するシステム。夕方や夜間はそれぞれ逆経路の利用となる。12月までの3ヵ月間で、自転車50台を用意した。

 東京・大田区は9月28日、区内駅前の放置自転車を秋田・六郷町で再利用すると発表した。区が保管している放置自転車50台を秋田に運び、六郷町が整備した後で貸し出す。貸し出す際に1台100円程度の一時金を預かって、温泉など指定した場所に自転車を返した時に返金する仕組み。

 東京・江戸川区は9月の1ヵ月間、JR平井駅前で放置自転車一掃キャンペーンを実施。朝の通勤・通学時間帯に、有料で自転車を預かって駐輪場へ運ぶ「輪輪らくらくサービス」を試行した。南口に設置する預かり場所から北口の駐輪場まで自転車を運ぶ。預かる際には、利用者に駐輪場の見取り図と収納場所を示した紙を手渡す。1回の利用料金は、駐輪場定期券を持っている人が100円、一時利用者が200円(駐輪場代含む)。
 また、同区は3月に、営団地下鉄東西線葛西駅の駅前広場に9400台収容の日本最大の地下駐輪場を整備すると発表した。2004年度着工、2007年度の完成を目指す。円筒形の機械式保管庫を埋設する。保管庫1基当たり180台収容でき、計39基設置する予定。総事業費は60億円。

 以下、ほかの自治体で最近、実施している放置自転車対策を紹介する。

 札幌市は3月、路上や公園など「公共の場」を占拠している放置自転車を撤去するため「自転車等の放置の防止に関する条例」を改正。駅周辺の放置禁止区域(9ヵ所)以外でも、路上や公園などに3日以上放置された自転車を撤去できるようになった。保管期間も1ヵ月間短縮されたため、2ヵ月以内に引き取らなければリサイクルや廃棄処分になる。

 川崎市は3月、大型商業施設などが新規出店する際に駐輪場の設置を義務づける「付帯義務条例」の導入を検討する考えを示した。2004年度予算案に重点事業総合的放置自転車対策事業として300万円を計上しているが、その柱として同年度中に関係団体との協議会を設置、市民意見も取り入れて条例導入に向けた準備を進める。付帯義務条例のほかに、駅から遠いために利用率が低い駐輪場の料金を低めに設定したり、撤去自転車の保管所の管理運営に民間業者を充てることなどについても協議を進めるとのこと。

 神戸市では5月から2005年3月まで、「サイクルシェアリング実験」を実施。JR新長田駅周辺の企業や住民らが協力、自宅から駅まで乗って来た自転車を、別の通勤者に貸し出し、駅から会社へと利用してもらう仕組み。市が自転車を無料で貸し出し、原則的に2人1組で1台を利用する。時間に制約はなく、利用希望が重なれば、予備の自転車を使用する。

 愛知・安城市では7月、県の「あいち新世紀自動車環境戦略」のモデル事業として、無料レンタサイクル(貸し自転車)事業が実施された。市が放置自転車を再生し、JR安城駅前と農業公園デンパークに配備して無料で市民や観光客に利用してもらうというもの。前かごに付けたプレートには、3年間の維持費として1口1万5000円を提供したスポンサー名が書き込まれている。市が管理・受け付けを担当。利用は駅前が午前9時〜午後7時まで、デンパークが午後5時まで。利用時間内に貸し出し場所に返す。

 神戸・洲本市と市防犯協会は8月、回収した放置自転車を通勤・通学以外の用途なら自由に乗れる「ベンチャリ」として再利用する実験を始めた。中学生以上が利用できる。青色と黄色で目立つように塗装し、集客施設や公共施設に配備した。利用の申し込みは不要だが、必ず置き場所に返すのがルール。実験期間は1年間。

 岡山市は7月から、JR岡山駅前の市営駐輪場4ヵ所(4085台)を2時間無料化した。一方で、2005年からは放置禁止区域内の即時撤去に乗り出す。

 福岡市は7月から、天神・警固公園地下の天神駐輪場(1502台収容)で3時間以内の駐輪を無料とした。

 総務省は9月、豊島区の法定外目的税「放置自転車対策推進税」の新設に同意した。区内に駅を持つJR東日本など鉄道5社に乗客1000人当たり740円を課税するというもの。税収は年間2億円の見込み。自転車撤去や駐輪場整備などの対策費用に充てる方針。課税される鉄道会社側が「課税の公平性の観点から違法」と反発しているため、総務省は「納税者からの指摘や批判を受け止め、協議・調整を十分に行って理解を得るようさらに格段の努力を行う」とする異例の意見書を添えた。(田中潤)