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市町村合併:9月住民投票は賛否拮抗

2004/09/30

 茨城・八千代町は9月19日、町長の解職(リコール)の是非を問う住民投票を実施(投票率71.91%)。町長解職に「反対」8587票、「賛成」4983票となり、賛成票が有効投票の過半数に達せず、町長の失職は避けられた。町長は老朽化した現庁舎の建て替えを公約し、4階建て20億円で2004年度の着工を目指したが、「合併後の新市の庁舎は別の場所に建設されるため、新庁舎は無用」としてリコール運動が起きていた。この結果を受けて、町長は新庁舎の入札を行い、12月町議会の議決を得て着工させたい意向。また、リコールのため休止となっていた下妻市、千代川村、石下町との法定協にも復帰する。

 兵庫・上郡町は9月5日、町議会の解散の是非を問う住民投票を実施(同66.70%)。「賛成」5963票、「反対」3742票となり、町議会の解散が成立した。14人の議員(欠員2)全員が失職し、40日以内に選挙が行われる。上郡町は、相生市、赤穂市とそれぞれ法定協を設置、相生市、三日月町との1市2町の法定協も設置。2002年11月の町長選で、新町長が誕生して以来、合併問題で町長と町議会の意見対立が続き、住民有志が、合併の相手先を選ぶ住民投票条例案を請求したが、町議会が否決。それが住民の反発を招き、住民グループが議会解散請求に必要な署名活動を行った。

 そのほか9月に実施された住民投票は、合併の賛否や枠組みを問うものだった。合併に「賛成」が6件、「反対」が7件、「枠組み」を問うものが2件実施された。以下、各ケースを紹介する。

【合併に賛成】
 岡山・東粟倉村は9月5日、「勝英地域法定協」(勝田町、大原町、美作町、作東町、英田町)の枠組みでの合併の是非を問う住民投票を実施(同81.37%)。「合併する」419票、「やむを得ず合併する」70票、「できれば合併しない」115票、「合併しない」346票となり、「合併する」が最多となったものの、この枠組みでの合併に対する賛否は伯仲した。同村は翌6日、合併協議を継続する方針を固めた。

 福島・二本松市は9月5日、安達町、岩代町、東和町との合併の是非を問う住民投票を実施(同59.39%)。「賛成」8686票、「反対」7103票となった。市では「住民の意思を尊重する」としており、合併協議は予定通り進む見通し。

 兵庫・香寺町は9月26日、福崎町との法定協設置の是非を問う住民投票を実施(同67.48%)。「賛成」が5754票で、「反対」の4923票を上回り、法定協の設置が決まった。同町議会が5月、福崎町との法定協設置議案を否決したことを受けて、住民グループが住民投票を請求した。また、同町は4月に、姫路市と安富町の1市2町による法定協を設置しており、2つの法定協を持つことになるが、町長は「合併の相手先を決める住民投票も検討する」としている。 一方で、姫路市も7月に、夢前町、家島町とそれぞれ法定協を設置した。

 長野・木曽福島町は9月26日、木曽郡中北部6町村(上松町、日義村、開田村、三岳村、王滝村)での合併の是非を問う住民投票を実施(同72.14%)。「賛成」が3533票となり、「反対」の907票を上回った。一方で、上松町と日義村と三岳村と王滝村は同日、住民意向調査を実施。日義村と三岳村と王滝村では「賛成」の結果だったが、上松町では「反対」となり、同町は合併研究会からの離脱し、自立する意向を表明。これにより、研究会は解散を検討することとなった。上松町で「反対」が上回ったのは、6町村の中にスキー場経営の改善を求められている村があることや、合併で住民の暮らしがどう向上するか十分実感できなかったこと、2003年の住民アンケートで、大桑村、南木曽町との合併を望む意見が多数だったにもかかわらず、町が中北部の枠組みを選択したことなどが原因とみられる。今後は、「賛成」の結果となった4町村と、既に住民投票で「賛成」が多数だった開田村の計5町村での合併が焦点になる。

【合併に反対】
 福岡・岡垣町は9月5日、遠賀郡4町合併(芦屋町、水巻町、遠賀町)での是非を問う住民投票を実施(同52.81%)。「反対」が7617票となり、「賛成」の5601票を上回る結果となった。この結果を受けて、同町は15日、法定協から離脱の意向を表明した。法定協は解散する予定。法定協はすでに、合併後の新市名を「遠賀市」、仮本庁舎を岡垣町に置くなどを決めていた。

 長野・大鹿村は9月12日、松川町との合併の是非を問う住民投票を実施(同87.51%)。「反対」607票、「賛成」438票で、「反対」が上回る結果となった。両町村の任意協は解散する見通し。また、合併推進派の村長は2005年1月の任期満了時に引退する意向を示した。

 茨城・境町は9月12日、岩井市、猿島町との合併の是非を問う住民投票を実施(同67.77%)。「反対」8699票、「賛成」6124票となり、「反対」が大きく上回った。境町は3市町による合併を断念する。岩井市、猿島町は2市町での合併を目指す。境町は2003年5月、岩井市、猿島町と法定協を設立し、新市名「坂東市」や2005年3月の合併などを決めたが、住民団体が6月に、住民投票の実施を求めていた。

 大阪・守口市、門真市は9月19日、合併の是非を問う住民投票をそれぞれ実施(同50.64%、38.58%)。守口市では「反対」が5万1878票と「賛成」の7565票を大きく上回る結果となった。「財政再建のため」とする賛成派に対し、反対派は「住民サービス低下が心配」などと主張、市の合併方針とは反対の結果となった。この結果を受けて、守口市長は合併を断念する意向を示した。一方で門真市では、「投票率50%以上」の成立要件に届かず、不成立となり開票が見送られた。

 埼玉・久喜市、幸手市、鷲宮町は9月19日、3市による合併の是非を問う住民投票をそれぞれ実施(同53.53%、62.10%、55.07%)。幸手市では「賛成」が1万5488票、「反対」が1万1874票、鷲宮町では1万2089票、「反対」が2532票となり、「賛成」が「反対」を上回ったが、久喜市では「反対」が1万6904票となり「賛成」の1万3748票を上回り、2市町とは反対の結果となった。住民投票は「対等合併」「合併期日は2005年5月1日」「新市名は桜宮市」など法定協の決定について住民意向の最終確認のために実施されたが、土壇場で覆された格好。久喜市は幸手市、蓮田市など東部3市6町による30万人・田園都市構想を唱えたが、独自の路線を選ぶ自治体が続出し、2002年10月に首長会議は解散、残った久喜市と鷲宮町が2003年4月に法定協を発足した。茨城・五霞市との県境合併を進めていた幸手市では、合併方針を巡り市長がリコールされ、出直し選挙で新市長が誕生、2003年12月に法定協に加入した。

 埼玉・大利根町は9月26日、北川辺町、栗橋町との合併の是非を問う住民投票を実施(同68.95%)。「反対」が5090票と「賛成」の3134票を上回った。北川辺町、栗橋町が先に実施した住民意向調査では「賛成」が6割を超えたが、住民投票の結果を受けて3町合併は白紙に戻る見通しとなった。大利根町長が住民投票前に、「合併の協議項目に不満な点があった」と発言。そのひとつである新庁舎の建設について、大利根町側は「5年以内の新庁舎建設」を提案したが、合併協では新庁舎は当面、栗橋町役場とし、合併後に検討委員会を設けて建設時期などを検討することで合意していた。

 福井・上中町は9月26日、小浜市との法定協設置の是非を問う住民投票を実施(同85.50%)。「反対」3619票となり「賛成」の1811票を上回った。この結果、町と町会が一体となって進めてきた三方町との合併を選択した形となり、2005年3月にも両町による「若狭町」が誕生する見通し。

【枠組み】
 茨城・旭村は9月19日、合併の枠組みを問う住民投票を実施(同68.59%)。「鉾田町・大洋村」3104票、「大洗町」3027票、「合併しない」286票の結果となった。これを受けて、村長は鉾田町・大洋村との合併を目指す考えを示した。旭村では合併をめぐって、村長が2003年12月に、「鉾田町・大洋村との合併を目指す」と表明。それに対し、村議会は2003年12月に住民アンケートを実施したところ、63.2%が大洗町との合併を望む結果となったため、同町との合併協議を開始。ところが、「議員の身分」をめぐり対立し、7月には同町との合併協設置議案を否決した。一方で、鉾田町・大洋村との合併を望む住民は5月に、法定協設置を求める住民発議を直接請求したが、村議会は否決した。合併特例法では議会で否決されても、有権者の6分の1の署名を集めれば、法定協設置の住民投票を求めることが可能で、否決された住民は9月に住民発議による住民投票を本請求し、10月10日に2回目の住民投票が実施される。

 兵庫・三日月町は9月23日、合併の枠組みなどを問う住民投票を実施(同84.23%)。「佐用町、上月町、南光町との合併」が1472票、「相生市、上郡町との合併」が828票、「合併しない」が88票の結果となった。同町にとって、今回は2度目の住民投票だった。佐用町、上月町、南光町、三日月町は2003年6月に、法定協を設置したが、2003年12月に三日月町の住民投票で「合併しない」の方が多数を占め、同法定協は解散、佐用町、上月町、南光町による法定協が設置された。(田中潤)