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緑化政策に力を入れる自治体

2004/09/10

 9月8日付神戸新聞によると、兵庫県は2006年度までに、「緑豊かな地域環境の形成に関する条例」(緑条例)の指定地域を拡大し、全県での土地利用計画策定を目指すことを決めたとのこと。神戸・阪神間や姫路など瀬戸内沿岸地域は、市街化区域や市街化調整区域に指定され、土地利用計画がある。残る地域で条例を施行することで、全県で土地利用のあり方が決められることになる。緑条例は1995年3月、丹波地域、淡路地域で施行。指定された地域では、1000u以上(一部区域は500u以上)の住宅地、別荘地、工場、倉庫、商業施設、レクリエーション施設、宿泊施設などの開発行為について許可、届け出などが必要。開発の許可が必要な「森林保全区域」や、県との協定が必要な「森林活用区域」などに分けられ、森林保全の割合や開発敷地内の緑化率などが決められる。

 以下、自治体による緑化についての施策を紹介する。

 千葉県では、「里山の保全、整備、及び活用の促進に関する条例」に基づき、土地所有者と市民団体の活動協定締結が県内各地に広がりつつある。保全に加えて自然観察や山菜取り、竹炭づくりなどの資源利用のための多彩な活動が展開。同条例は2003年5月に施行され、里山の所有者と里山を利用したい市民団体やNPOなどが締結する「活動協定」と、協定の認証制度が柱となっている。県は協定内容が適切と判断した場合に認定し、認定団体が実施する自然調査や講習会などに経費を助成する。

 青森県は2004年度から、崩壊した山腹の斜面に県産間伐材を使った柵を立てるとともに、植樹で緑化を図り土砂流出を防ぐ工法「グリーンアース作戦」を取り入れる計画。人件費はかかるが材料費が少なく、コンクリートダムに比べてコストを抑えることができる。2004年度は2ヵ所で実施する予定で、延べ550人の雇用が生まれると試算している。

 石川県は2004年度予算に、県内3地域で山の管理に手を焼く土地所有者に自然保護団体を紹介し、「里山保全再生協定」を結ばせる「ふるさと里山再生推進事業」として、事業費300万円を計上した。2004年度は試験的に実施。活動に必要となる工具や拠点施設整備など初期活動の経費も支援する。実験結果を基に、2005年度以降は県内全域に展開する。民間主導の里山保全の在り方は、4月に施行された「ふるさと石川の環境を守り育てる条例」に盛り込まれた。

 東京・昭島市は2004年度予算に、「(仮)奥多摩・昭島市民の森事業」として事業費400万円を計上した。都農林水産振興財団の「森林愛護・企業の森制度」を活用し、奥多摩の民有の山を50年借り、半世紀かけて森づくりをする。スギやヒノキと広葉樹の苗木を混植し、50年かけて森を造成。2004年度に市が財団、地主に300万円を支払う分収造林契約を結び、営業事業に取り組む。森から収益が上がった場合は3者で分配する。

 千葉・松戸市は4月、緑化愛護団体や森林ボランティアを支援するため、市営の育苗圃内に、ボランティア活動に必要な用具の貸し出しなどを行う「緑のボランティア支援センター」を設置。貸し出す用具は高枝ばさみ、移植ゴテ、刈り払い機、スコップなど。費用は無料。貸し出し期間は最長で土日曜日を挟んだ5日間。

 大阪・岸和田市は5月、市民と行政が一体となって自然環境を復元する自然再生推進法に基づき、里山の神於山で環境再生に取り組むため、同法による協議会の初会合を開いた。協議会は、市、府、国(林野庁)など計34団体による協議会。市民の活動をベースに再生への全体構想、実施計画をまとめる。対象面積は山頂を含め200haに及ぶ。

 東京都は5月、都が指定する地域で森林や里山などの環境保全活動に参加する企業の募集を始めた。年間50万円程度の資金を提供してくれる企業を5〜7社選び、森林管理や生態系の保護などの活動をしているNPOを紹介。金銭的な支援と同時に社員ボランティアを派遣してもらう。対象地域は八王子、町田、青梅市にある4ヵ所の森林や緑地、里山。

 奈良・十津川村は6月、歴史的背景を有する森林や優れた景観の森林について、区域を定めて適正管理による保全、育成、維持することを目的として、「「十津川の森」の設置および管理に関する条例」を制定した。区域内において樹木の伐採や草木・土石類の採取、土地の形状変更などの際に村長の許可を必要とし、林業効率の良い皆伐(すべての材を一度に切り出すこと)が規制される。また、ごみの不法投棄、土石・竹木の堆積(たいせき)を禁止する。

 長野県は6月県議会で、荒廃の進む県内の民有林について、所有者に代わって地域住民が整備を進める「ふるさとの森林づくり条例」案を提出したが、継続審査となった。条例で設ける制度は@森林整備保全重点地域とA里山整備利用地域。@は市町村の申し出か県の判断で指定し、地域住民と森林所有者が「地域森林委員会」を設けて保全計画を作成。所有者が整備に参加できない場合に備え、管理権の斡旋制度も設けた。@内では開発規制を強化。森林法では1haを超える開発行為に許可制度を設けているが、条例は0.1ha以上についても届け出制度を設け、無届けや虚偽の届け出には罰則を設定した。Aは市町村の申し出で県が認定。地域住民やNPOが里山を利用できるように、森林所有者と利用協定の締結を促す。なお、同条例は2月県議会に、「信州ふるさとの森林づくり条例」案として提出されたが、継続審査となった。それを受けて6月県議会では、森林所有者と森林づくり事業者の責務について、県の施策に「協力しなければならない」から「協力するよう努めなければならない」に緩和したり、名称や条文中の「信州」を「長野県」に変更した。

 そのほかに、緑化のために基金を設立する自治体もある。

 大阪・箕面市は1月、里山の環境保全を目指す市民活動を支援する公益信託「みのお山麓保全ファンド」を始めた。学識経験者らでつくる運営委員会の公開審査などを通じて助成先を決める。ファンドは同市が2億円を拠出。募集は年2回で、助成金の総額は年間1000万円。保全活動は、市が条例で山なみ景観保全地区にしている近郊の山林380haが対象。山の手入れのほか、山の幸の生産、里山保全につながるイベントの開催などの事業で、1件当たり最高25万円を補助する。

 東京・千代田区は3〜4月にかけて、傷みがひどくなった区の花サクラ再生の切り札として「さくらサポーター」を募集し、274人が登録した。また、再生事業費の一部となる490万円の募金を集めた。サポーターらは樹木の健康調査などを行う予定。区は、公益信託「さくらファンド」も設立し、資金を区民や広く全国の愛好家、企業から募り、木の剪定や土壌改善、病害対策など再生に取り組む。

 茨城・阿見町は6月、「みどりの基金」を新設。基金は町で進める事業や施策に充てるほか、町民参加のまちづくりを推進するため、地元住民のボランティア活動の支援や補助にも活用を図る。(田中潤)