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自治体による遊休農地の活用策

2004/09/09

 神奈川・大和市は9月1日、遊休農地を市が借り受けて耕作意欲のある市民に利用してもらう「市民ホームファーマー農園」をオープンした。既存の「市民農園」よりも利用面積を拡大し、1区画100uで25区画が設けられた。利用できるのは1世帯につき1区画で、期間は1年間だが、5年まで継続可能。平日に農作業できることを条件に入園者を公募したところ、50人の応募があり、抽選で25人を決めた。利用者はいずれも農業未体験者だが、事前に農業改良普及センター職員などから農機具の使い方、野菜の栽培方法といった指導を受ける。

 三重・四日市市は9月から、遊休農地の解消を目的に、素人以上プロ未満の農業者育成を図る農業ビギナー研修を始めた。本格的に農業に取り組みたい人が対象。研修期間は1年だが、初年度は2006年3月までの1年7ヵ月とし、小型耕運機や農機具の使い方、防除方法、剪定など専門性の高い栽培技術を伝授する。研修生が主体となって栽培、分からないところを職員らに聞く方法をとるとのこと。@畑AビニールハウスB果樹の3部門を指導する。@は1区画50uで、募集は10人、研修費は2万円。Aは暖房設備がある1棟100uで、トマトやイチゴなど4人で3万円。Bはナシ、カキなど6種類で、16人で2万円。

 広島市は9月下旬から、原則60歳以上の定年退職者を対象に実施する就農者の育成事業の募集を始める予定。2004年度は、面接などで5人程度を選考。2005年度に市農林業振興センターで1年間研修した後、農地を仲介する。農地の年間の賃料は5万円以内とする。農家として認定される下限面積30a以上の圃場整備されていない農地を耕す。米作を中心に、地域の直売所などに出す野菜を栽培する。

 以下、自治体による遊休農地活用についての施策を紹介する。

 岡山・新見市は7月から、「千屋牛農地放牧事業実施計画」を実施。農家から借り受けた20aで千屋牛の放牧を始めた。農地の管理が行き届かず、伸び放題となった草を牛が食べることで荒廃を防ぎ、一方で畜産農家の飼育負担も軽減できるとのこと。

 金沢市は7月、構造改革特区第5次提案に「金沢伝統的加賀野菜生産特区」を提案した。現状は規制されている森林組合の農業参入を農地法と森林組合法の特例適用により可能にし、中山間地での加賀野菜の生産の担い手とする計画。タケノコ、金時草などの生産拡大に加え、市内の遊休農地や放置森林の有効活用が図られる。だが、農水省は、森林組合が「森林の保続培養及び森林生産力の増進という目的から逸脱して、農業の経営を行うことは、森林組合の設立の趣旨に反する」として、対応不可とした。

 群馬・館林市は7月、構造改革特区第5次提案に「農村定住に伴う農地の権利取得後の下限面積要件の緩和」特区(サラリーマン農住特区)を提案した。農地法では農地集積を進めるため耕作地が50aに達しない場合の新規就農を制限しているが、定住と耕作を条件に住宅などに囲まれ集積困難な農地(5a以上〜10a以下)を取得できるようにするというもの。集積困難な農地の利用促進と農業地域の活性化が狙い。だが、農水省は「農地の零細化を招くことになるため、農地の効率利用を確保する観点から認められない」とした。

 ちなみに、構造改革特区では、遊休農地の活用策として「農地貸し付け方式による株式会社等の農業経営への参入の容認」や「市民農園の開設者の範囲の拡大」、「農地取得後の農地の下限面積要件緩和」などが認められている。(田中潤)