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市町村合併:8月住民投票 いくつかの自治体では不成立のケースも

2004/09/01

 香川・三野町は8月22日、詫間町との2町合併の賛否を問う住民投票を実施(投票率37.53%)。「賛成」2299票、「反対」468票となり、「賛成」が大きく上回ったが、条例が成立投票数として定める総資格者の3分の1(2748)以上には達しなかったため、不成立となった。今回の住民投票は、高瀬町、詫間町、仁尾町との法定協が高瀬町、仁尾町の離脱により休止となり、町長は詫間町との合併を問う住民投票に踏み切った。しかし、高瀬町、山本町、豊中町、仁尾町、財田町との合併を目指す住民団体が町長のリコール運動を展開するとともに、住民投票のボイコットを呼び掛けたため、複雑な状況となっていた。

 山梨・小淵沢町は8月22日、7町村(明野村、須玉町、高根町、長坂町、大泉村、白州町、武川村)が合併して11月に誕生する「北杜市」との合併の是非を問う住民投票を実施(同78.90%)。「賛成」が2312票、「反対」が1631票となり、「賛成」が上回る結果となった。ただし、「投票資格者数の半数を超える結果を尊重する」という条件を付けたため、「賛成」が58.6%の得票率となったものの、投票資格者数の45.8%にとどまり、条件をクリアするには至らなかった。それでも、「賛成」が「反対」を大きく上回ったのは確かであり、単独派の町長は「賛成票が多かったことを考慮して町議会と協議したい」としている。同町では2002年9月に合併アンケートを実施しており、「7町村(北杜市)の枠組みに加わらない」とする回答が37.0%で、「枠組みに加わる」とする回答の34.6%をわずかに上回っていた。

 宮城・三本木町は8月8日、古川市、松山町、鹿島台町、岩出山町、鳴子町、田尻町との合併に対する賛否を問う住民投票を実施したが、投票率が47.99%となり、成立要件の50%を下回ったため、開票されずに終わった。合併推進の町長は投票結果にかかわらず合併協定書への調印に臨む方針を表明しており、引き続き合併に向けての手続きを進める見通し。だが、今回の住民投票の経費は200万円の見込みで、「税金を捨てたのに等しい」という批判の声もある。

 高知・土佐山田町は8月1日、香北町、物部村との合併の是非を問う住民投票を実施したが、投票率が41.15%と50%に満たず不成立となった。一方で、香北町、物部村も住民アンケートを実施。香北町では「反対」が1878票となり、「賛成」の1302票を上回った。物部村では「反対」「どちらかといえば反対」が1086票、「賛成」「どちらかといえば賛成」が689票となった。これらの結果を受けて、香北町、物部村は法定協から離脱の意向を表明し、法定協は31日に解散した。

 8月に実施された市町村合併に関する住民投票は、不成立となったケースや合併に絡んでリコールの賛否を問うケースも含めて35件となった。不成立を除くと、合併の「賛成」の結果となったのが16件、「反対」の結果となったのが15件。以下、合併に【賛成】【反対】の結果別にそれぞれのケースを紹介する(複数の自治体でそれぞれ同時に実施した場合については、結果が実施した全自治体で「賛成」でなければ、【反対】に分類した)。

【賛成】
 長野・開田村は8月1日、木曽郡内の他町村との合併の是非を問う住民投票を実施(同86.26%)。「賛成」が1082票、「反対」318票、「議会に委ねる」49票の結果となった。村長は結果を尊重して、合併を推進する方針。木曽郡の中北部7町村(木曽福島町、上松町、日義村、開田村、三岳村、王滝村、木祖村)で構成した法定協は、「反対」が多数を占めた木祖村の住民意向調査結果(6月)を受けて、7月末に既に廃止。今回の住民投票は合併の枠組みが不明確なまま実施された。

 岡山・哲西町は8月8日、新見市、大佐町、神郷町、哲多町との合併について賛否を問う住民投票を実施(同70.18%)。「賛成する」が1514票で「賛成しない」の377票を上回る結果となった。町長は結果を尊重する方針を示した。

 香川・塩江町は8月8日、高松市との合併の可否を問う住民投票を実施(同76.95%)。「賛成」が1454票となり、「反対」の935票を上回った。同町の合併方針が信認された格好で、両市町の協議会の再開を目指す。両市町は2003年6月に法定協を設け、2005年3月末の合併を目標にしているが、6月町議会で、市との合併に反対する議員の提案により今回の住民投票が決まり、市との協議は中断していた。

 新潟・巻町は8月8日、新潟市との合併の賛否を問う住民投票を実施(同58.73%)。「賛成」8808票、「反対」5451票の結果となった。町長は9日、新潟市に正式な合併協議の開始を申し入れた。同町は5月に合併に関する住民アンケートを実施し、「新潟市との合併を推進(49.4%)」「合併しない(25.8%)」「わからない(23.1%)」という結果となっていた。

 富山・八尾町は8月8日、富山地域7市町村(富山市、大沢野町、大山町、八尾町、婦中町、山田村、細入村)による合併の是非を問う住民投票を実施(同70.07%)。「賛成」7352票、「反対」5554票となり「賛成」が「反対」を上回った。町当局は単独の方針を表明していたが、それに反する結果となった。同町は合併協議を継続する方針。一方で、婦中町は同日、富山地域7市町村による合併の是非を問う住民意向調査を実施。「反対」が8526票となり、「賛成」の5097票を上回った。人口規模で2番目の婦中町の民意が「反対」を選んだことから、今後は紆余曲折が想定される。

 北海道・日高町は8月8日、合併の枠組みを問う住民投票を実施(同80.90%)。「平取町、門別町と合併」が816票と最も多く、「平取町と合併」が355票、「自立」が161票、「門別町と合併」が34票の結果となった。日高町は平取町、門別町との合併を目指す考えだが、平取町が門別町との合併に否定的な見解を示し、任意協からの離脱を表明。日高町長は「3町合併は困難」として門別町との2町での合併を検討しているが、町議会は門別町との2町での合併に慎重な姿勢をみせている。

 長崎・川棚町は8月22日、2006年3月末までに東彼杵町、波佐見町と合併することの是非を問う住民投票を実施(同58.49%)。「合併する」が4093票となり、「合併しない」の2923票を上回った。町長は結果に従う意向。合併をめぐり、町長は2003年10月に法定協からの離脱を表明し、町議会も3月に離脱を承認、法定協は休止となった。しかし、町長は7月に、2町との協議を踏まえ一転、復帰を表明していた。

 佐賀・富士町は8月22日、佐賀市、諸富町、大和町、三瀬村との合併の是非を問う住民投票を実施(同71.24%)。「賛成」1757票、「反対」1119票となり、「賛成」が上回る結果となった。町長は合併を推進する意向を示した。

 広島・宮島町は8月22日、合併の枠組みを問う住民投票を実施(同90.52%)。「廿日市市」が917票、「広島市」が711票の結果となった。広島派の町長は「住民の選択に従う」とし、25日には廿日市市に合併協議を申し入れた。町長は2003年8月、広島市との合併を掲げて当選したが、廿日市市派が多数を占める町議会との対立で合併協議が停滞。町の経常収支比率は2002年度決算で136.5%と全国最悪となり、県からは4月に合併勧告を受けていた。

 熊本・七城町は8月29日、菊池市、泗水町、旭志村との合併の賛否を問う住民投票を実施(同73.6%)。「賛成」2660票、「反対」818票の結果となった。これを受けて、町長は合併を推進する意向を表明した。同町は2003年11月、意向調査を行った結果、「反対」が54%で「賛成」の46%を上回ったため、「法定協で具体的な協議が進んだ後、最終的な民意を問いたい」として住民投票が実施された。

 群馬・箕郷町は8月29日、高崎市との法定協設置の賛否を問う住民投票を実施(同66.67%)。「賛成」が5410票と「反対」の4439票を上回り、法定協設置が決まった。だが、同町では合併推進の町執行部と自立を求める町議会が対立。今後法定協委員の派遣、法定協の議決などで曲折も予想される。町議会は7月、町長が提案した高崎市を含む6市町村の法定協設置議案を、さらに住民発議に基づく高崎市との法定協設置議案も否決。一方で、高崎市議会が同町との法定協設置案を可決したため、住民グループが住民発議による住民投票を請求していた。

 富山・小杉町は8月29日、射水地区の5市町村(新湊市、小杉町、大門町、大島町、下村)での合併の是非を問う住民投票を実施(同69.91%)。「賛成する」が9545票と「賛成できない」の8789票を上回った。同町は同様の住民投票を2003年2月に実施しており、2度の住民投票で同じ結果となった。前回の住民投票の結果を受けて、同町は5市町村での法定協に参加したが、3月に新湊市を除く射水郡4町村での合併を目指し、町長は法定協からの離脱を表明。町議会も離脱議案を可決し、法定協は休止状態が続いていた。これに対して、5市町村での合併を目指す住民グループは町長の解職請求(リコール)運動を起こした。これにより、町は2分され、リコールを回避するため、再び住民投票を実施した。

 福井・鯖江市は8月29日、市長の解職請求(リコール)の賛否を問う住民投票を実施(同56.36%)。「賛成」が1万8178票と「反対」の1万149票を上回り、リコールが成立、市長は即日失職した。50日以内に出直し市長選が行われる。市長は出馬するかどうか態度を明らかにせず、一方のリコール推進派は候補者を擁立する方向。同市は2003年5月、福井市など周辺4市町村(鯖江市、清水町、美山町、越廼村)での法定協を発足させたが、住民の反対を受けて3月に、市長が合併断念を表明。これを受けて、住民グループが解職請求を出していた。「平成の大合併」をめぐる市長の解職は全国初。

【反対】
 岐阜・北方町は8月1日、岐阜市、柳津町との合併の是非を問う住民投票を実施(同55.70%)。「反対」が3956票となり、「賛成」の3605票を上回った。この結果を受けて、同町は31日に法定協から離脱した。同町は2003年2月、岐阜市、羽島市、岐南町、笠松町、柳津町との合併について住民投票を実施し、「賛成」が多数を占め、法定協へ参加した。しかしその後、岐阜市で大量の産廃不法投棄事件が発覚。処理費用が合併後の財政を圧迫するとの懸念から、羽島市、岐南町、笠松町が法定協離脱を表明。北方町は合併の枠組みが崩れたとして、再度の住民投票に踏み切り、前回とは逆の結果となった。なお、名鉄揖斐線存続断念を決めた岐阜市に対する不満もこの結果につながったとみられる。

 鹿児島・川辺町は8月8日、川辺地区法定協(加世田市、川辺町、大浦町、笠沙町、坊津町)の枠組みでの合併の可否を問う住民投票を実施(同80.03%)。「反対」が7893票となり、「賛成」の1645票を大きく上回った。同町は20日、法定協離脱案を可決した。法定協は2003年8月に発足し、2005年1月に「南さつま市」として合併する予定だった。将来は枕崎市と知覧町を加えた2市5町での合併方針や合併後の市役所の建設場所、住民負担などで意見の対立が表面化し、今回の住民投票を実施した。

 和歌山・古座川町は8月8日、串本・古座との3町合併か単独町政を問う住民投票を実施(同81.58%)。「単独町」が1943票と「串本、古座との合併」の617票を大きく上回った。この結果により、同町が再び両町との法定協に加わることはなくなった。同町は2002年11月に串本町、古座町と任意協を立ち上げたが、2003年4月の法定協設立には「行政姿勢の違いと財政感覚の格差」を理由に参加を見送った。その後6月に、一転して法定協入りしたが、財産の取り扱いをめぐって2町と対立し、半年で離脱していた。

 神奈川・真鶴町は8月8日、湯河原町との合併の是非を問う住民投票を実施(同66.53%)。「反対」が2604票となり、「賛成」の2576票をわずかに上回った。この結果を受けて、合併推進派の町長は13日に辞職。法定協は18日に、いったん協議会を解散することを決めた。

 岡山・真備町は8月22日、倉敷市、船穂町との合併の賛否を問う住民投票を実施(同67.42%)。「反対する」が6980票となり、「賛成する」の5576票を上回った。同町は24日、法定協からの離脱を表明した。一方で、船穂町も「柳井原土地区画整理事業は合併まで凍結」「飲料品会社の誘致などを目指す船穂産業団地開発事業は3市町が協議して対応する」という覚書には同意できないとして、いったん町長を辞職し、再出馬する意向を示し、26日付で辞職した。法定協は26日、10月3日の町長選で新しい船穂町長が決まるまで法定協を休止することを決めた。3市町は2003年10月、法定協を設置。2005年3月22日に新市を発足させることで合意するなど、合併協議は協定書の承認を残すだけとなっていた。

 広島・海田町は8月22日、広島市との合併の是非を問う住民投票を実施(同57.91%)。「反対」が8418票と「賛成」の4437票を上回った。町長は「民意に従い、当面は単独町制を維持する」と明言した。町と広島市は2003年9月に合併協定書に調印したが、市の財政難などを理由に、町議会は2003年10月に合併関連議案を否決。合併推進派の町長が辞職し、2003年11月の町長選では早期合併に慎重な町長が誕生。今回、住民投票で民意を問うことになった。

 大阪・忠岡町は8月22日、岸和田市との合併の是非を問う住民投票を実施(同69.39%)。「反対」が6804票と、「賛成」の2797票を上回り、合併推進派の町長は「結果には従う」と述べ、辞意を表明した。町側が訴えた財政難の回避という推進理由を、合併への不安が上回った格好。

 高知・大月町、三原村は8月22日、宿毛市、大月町、三原村による合併の是非を問う住民投票をそれぞれ実施(同75.82%、82.86)。大月町では「賛成」が2271票と「反対」の2141票を上回り、三原村では「反対」が784票と「賛成」の521票を上回り、賛否が分かれた。同村は法定協からの離脱を表明し、合併協議が白紙となった。同村では3市町村による任意協の段階から、執行部は合併を推進してきたが、村議会側は自立を訴え、任意協を脱退するなどの経緯があった。一方で同町では、2003年の住民アンケートでは「反対」が多数だったが、地方交付税などの削減による財政難への不安や、合併特例債事業への期待などから、今回の住民投票では「合併」を選択したとみられる。

 大阪・泉南市、阪南市、田尻町、岬町は8月22日、泉佐野市を含めた5市町村による合併の是非を問う住民投票をそれぞれ実施(同36.95%、38.07%、68.49%、43.78%)。泉南市は「賛成」4579票、「反対」1万4218票、阪南市は「賛成」4056票、「反対」1万4088票、田尻町は「賛成」444票、「反対」3583票となり「反対」が上回り、岬町は「賛成」4042票、「反対」3019票で「賛成」が上回る結果となった。この結果により、法定協は9月30日に解散する予定。5市町がまとまれば、人口25万人で特例市の指定も見込まれ、泉佐野など3市町に分かれている関西空港の空港島が1市に統一されるはずだった。関空関連事業などの不振で危機に陥った財政を合併で立て直したい泉佐野市などと、空港島内の町域にあるビル群など関空関連の固定資産税などが町税収入の半分(2004年度21億円)を占める田尻町などの間で、合併に対してズレがあった。

 埼玉・加須市、騎西町は8月22日、合併の是非を問う住民投票をそれぞれ実施(同34.29%、54.60%)。騎西町は加須市との合併に「賛成」が4680票、「反対」が4207票で「賛成」の結果となったが、加須市は騎西町との合併に「賛成」が8196票、「反対」が9862票で「反対」の結果となり、2市町の法定協は解散する見通しとなった。加須市では2002年8月に実施した市民アンケート調査で、「合併すべき」「合併を検討すべき」が7割を占め、そのうちの七割の市民が「合併するなら騎西」と回答しており、住民説明会でも反対の声はなかったので、今回の住民投票は予期せぬ結果となった。

 長崎・小値賀町は8月29日、佐世保市と北松宇久町との合併の是非を問う住民投票を実施(同85.42%)。「反対」が1297票と「賛成」の1243票をわずかに上回った。同町は2002年5月に、任意協を設置したが、2003年4月の町長選で合併に反対の町長が誕生し、2003年10月には任意協から離脱した。これを受けて、住民グループは住民投票の実施を直接請求していた。

 静岡・森町は8月29日、袋井市、浅羽町との合併の賛否を問う住民投票を実施(同78.20%)。「反対」が7204票、「賛成」が5683票となり、「反対」が「賛成」を上回った。町は9月、継続審査となっている合併関連議案を否決する見通しで、3市町での合併は白紙となる。3市町は5月に、合併協定書に調印。袋井市、浅羽町の各議会は6月定例会で合併を承認したが、森町は反対運動が起きたため、継続審議とした。合併協定書調印後の住民投票は全国でも珍しいとのこと。新市の名称が公募で最多の「遠州市」ではなく、2位の「袋井市」に決まったことや、老朽化が進む市立袋井市民病院の建て替えに絡む公立森町病院の存続問題、260億円の合併特例債対象事業費の使い道や新市の財政に対する影響、地域の声を反映する議員数の減少などが、「反対」の結果となった原因とみられる。

 群馬・下仁田町は8月29日、南牧村との合併の賛否を問う住民投票を実施(同71.13%)。「反対」が4273票と「賛成」の2093票を上回った。町長は合併特例法期限内については自立していく方針を示した。両町村は6月に法定協を設置。これまでに合併方式や新町名、議員の身分の取り扱いなどについて決定していた。同町では2003年12月の住民アンケートの結果で、40%近くが2町村での合併に反対、約35%が富岡甘楽広域圏(富岡市、下仁田町、甘楽町、妙義町、南牧村)での合併を望んでおり、住民投票でも「都市部との合併」を望む声が根強いことをあらためて裏付けた。(田中潤)