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構造改革特区推進会議
第1回総会議事概要
2004年4月30日
 構造改革特区推進会議は2004年4月30日、第1回総会を開催した。総会議事終了後、出席した首長らによる自由懇談と、金子大臣との懇談が行われた。

T 総会議事
@ 2003年度事業報告・会計報告、2004年度事業計画・予算案について
 事務局から2003年度事業報告・会計報告、2004年度事業計画・予算案の説明が行われ、満場一致でこれを了承した。(添付資料1を参照)
 また、役員任期や改選手続きについては規約には特に取り決めが設けられていないが、設立当初の役員構成で2004年度も活動を行うことも了承された。

A 自由懇談
 事務局から、「構造改革特区・地域再生計画制度の改善のために(要旨)」を読み上げたあと、その内容を踏まえて自由懇談を行った。出された意見の大要は以下のとおり。
【席上出された主な意見】
○ 構造改革特区というのは、根本的な改革は難しいから小さな穴を開けて全体を変えるのだという姿勢で臨んでいることは分かるが、もう少し思い切った構造改革にそろそろ踏み切らなければいけないテーマがあるのではないか。たとえば、農業の企業参入。これは部分的に認められたが、全国のJA(農業協同組合)の大きな組織的な対応の中で、なかなか全国的な道が開かれていない。これを、株式会社が農地所有をしてもたとえば30年間勝手に売買しないように規制するなどの措置を講じて、その参入は自由化するといった思い切った形にしないと、農業人口が高齢化している状況の中では、もう10年で農業も終わってしまう。特区でボツボツと実績も出てきたので、いまこそ一気にやるといったところに来ているのではないか。これはひとつの事例であるが、ほかにもまだまだやることがある。

○ 先日、特区の1周年の記念イベントが官邸であったが、これにほとんどの閣僚が出席していない。特区についての各省庁の対応はまだまだ鈍いが、そういうところに閣僚が出席しない姿勢に、閣僚の特区に対する関心のなさが表れているのではないか。

○ 農業開放は本音のところでは進めたいが、行政の問題でなく政治の問題である。全国農協、各地域の農業団体などは強力な政治基盤で、首長の方からその地域で企業参入を主張していくというのは非常にやりにくい。農水省にもそういうところがある。したがって、全国ポリシーとして農業開放をやっていくしかないし、これは政治の判断しかない。単に行政レベルでは処理できない。

○ 三大都市圏における用途地域決定権限の市長への移譲がなかなか実現しない。これがどうしてできないのかよく分からない。三大都市圏については「国の利害に重要な関係があるから」というのが古くからいわれている理由だが、本当に国の利害に重要な関係のある地域というのは極めて限定されており、そうでないところの地域再生をどうするのかというのが今の課題である。
 具体的にいうと、大手造船企業が撤退した跡地が9ヘクタールほどあり、そこは大変貴重な土地で、私鉄のターミナル駅もあり、市にとっては重要な拠点として地域の再生をしていきたいと考えている。中核市の集まりでも、三大都市圏の中核市に用途地域決定権限を与えるべきだとの意見を取りまとめているが、都市計画法の改正でこうしたことを一般制度として実現出来ればありがたい。それが無理なら、現在問題を抱えていてやる気のあるところには、特区でそのやる気を実現させるための法律改正があってもいいのではないか。
 もうひとつは、権限の移譲だけでは地域再生はできないということだ。権限移譲では地域再生の前提としての行政内部の手続き、官官規制が緩和されるだけで、地域をどうダイナミックに変えていくのかという実体論とは別問題で、立体的にどのように再生していくかということは地域再生計画で考えなければいけない。したがって、特区と地域再生計画とを総合的にやれるようにしていく必要がある。

○ 特区制度のいちばんの問題点は、結局国がひとつひとつ認めるか認めないかという決定権限をもっているところだ。そこで、第三者機関の判定というものを是非やってもらいたい。市長の政策実現のためのリーダーシップを強化するため、部長も必要に応じて特別職で外部から人材を持ってくるという提案をしたところ、「市長が人事について自由度を高めると、要するに市長の人脈とか政治的配慮の人事になるので、専門性を蓄積して安定的な行政をやるには一般職でなければいけない」という回答が総務省から来た。なんでも官僚が仕切らなければいけないという露骨な回答だと思うが、こういうのは、第三者機関で厳しくチェックしていくシステムが必要なのではないか。首長が恣意的な人事をするかしないかのチェックは主権者である市民がチェックすればいい話だ。

○ 若い有能な研究者と連携することは重要である。中央省庁の審議会は徹底的に根回しされ、各省の言い分を通すための審議会になっている。したがって、中央のあり方を改革しようと思うなら、シンクタンクや研究者など我々独自で地方の主張をオーソライズするような審議会を作らなければいけない。地方と中央とディベートすることが大事で、そういう構造に持っていくことが構造改革の中で必要だ。

○ 確かに独自の理論構成なり学術的な背景を持った発言をしなければ駄目だ。しかし、今、学問の方も縦割りになっており、総合的に付き合ってもらえる研究者が必要なのだが、そういう人がいない。結局、永年やって経験をつんだ首長がディベートしてやるのがいちばんいいと思うのだが、なかなかみんな忙しくてそれも難しい。

○ 市街化調整区域の開発基準は大規模の場合は製造業主体になっていて、物流産業というのはあまり位置付けられておらず、物流センターやトラックターミナルといったものにはない。特区提案を行ったところ、現行制度でも対応可能という回答になったが、現実に県にあたるとそれはできないという。開発審査会に対する提案基準というものがあるが、これは国が建設省時代に作ったもので、これにどうしても該当しないので難しいという。基準を作った国が弾力運用するようにという通達を出してもらいたいと県の担当者がいっている。制度疲労を起こしている都市計画などについては、もう少し国も地方へ指導をしてもらいたい。

○ 構造改革特区のように自分たちが戦って要求して得た権限についてはしっかり行使するが、上から自動的に与えられた権限については義務感を感じだけでうまく行使していないことがある。
 特区については、税金、警察にかかわるところがことごとく認められていない。駄目な理由は、「事実誤認」「現行法で対応可能」「特区にそぐわない」などで、このように状況ではそのうちやる気がなってくる。このように各論を積み重ねていくのではなく、そろそろ本質論に踏み込まないといけない。そこで、この87市町村が共同で連名で本質的な問題についての特区提案をしていったらどうか。大本のところを取りまとめるという姿勢をそろそろ考えたらどうか。

○ それを出すには相当の理論武装や覚悟が必要だ。相当のエネルギーが要る。みなさんそれぞれご専門の方々だから、それぞれの強い分野で意見を出してもらいたい。

○ 法律論でやったら中央省庁は法律を作る専門家だから、その次元でやりあったら勝てない。現実問題でやりあわないといけない。

○ 今年度予算に研究調査費が組まれているが、何人かいろいろな分野の先生方でチームを作って対応するのがいいのではないか。総論と、多くの自治体で提案して駄目になった共通度の高いものと、将来の方向性から見て必ずしも大きくはないけれども穴を開けておかないといかないものを体系的に研究するような仕組みを作ってもらいたい。

○ 中央省庁も四六時中勉強しているとはいえ、実は実体論についてはそんなに強いわけではない。だから、たとえば与党の政調会など、要するに政治の舞台で、声を上げてきちんと問題提起をして、改革を進めていく形をとればいい。決して難しいとか、悲観的なことはない。

○ 構造改革特区という仕掛け自体に基本的に問題がある。提案されている事柄のほとんどが全国的にやったほうがいいことばかりで、ある地域ではいいがほかの地域ではあてはまらないということがあまりない。そういう一般問題について、各地域間の競争みたいな形で手を挙げさせるという国の仕掛けになっている。よくあるパターンだ。我々はそうことに問題があると認識した上で、この制度をいかに活用していくのか考えることが必要だ。

○ 6月の提案の時点で、それぞれの自治体がお互いに会員メンバーに呼びかけて、賛同する自治体同士で提案することを考える必要がある。

○ 特区の提案の中には、わざわざ特区で申請しなくてもそれぞれの省庁が独自の判断で許可すればいいのではないかというものや、省庁の縦割り行政のために阻害されているものもある。こうした、構造改革特区の申請に対してそれぞれの省庁はどのような思いで我々の申請に対応しているのか。はたしてどこまで反省しているのか疑問だ。

○ 省庁は特区を実現してやろうと思っているのか、断ることから始まっているのか。その説明の理由が分からない。政治的な配慮なのか、省庁の中の都合でいっているのか。改革をしたいと考えているところにこういう提案があったので、こういうふうにすればお互いにやっていけるというような回答が1件もない。省庁は改革をやっていこうという意志があって特区に対しているとは思えない。

○ 保育所の民営化にあたり、一挙に完全民営化は難しいので公設民営という形をとっているが、今年から補助金カットで、公設公営の保育所については一般財源化、民設民営には補助金はそのまま、公設民営の場合は補助金カットということになった。これでは、民営化を進めていく上でブレーキがかかってしまう。全体として民営化を推進するという方針に逆行している。こうした制度間の齟齬をなくしていくことも大きな課題だ。

○ 教育特区では株式会社による中学校を開設したが、株式会社だと税金がかかり、しかも、私学助成が認められない。中学生は義務教育で、親は同じ国民の税金を払っている。にもかかわらず、私学助成を公平に出さないというのは法律違反だ。

【檜木 参事官発言要旨】
 こうした発言に対し、同席した檜木俊秀構造改革特区参事官からいくつか発言があったが、それらをまとめれば大要次のとおりである。
1 特区の全国展開については、規制の特例措置が認められたら1年後にはオールオーバーに網をかけて評価し、半年で必ず結論を出すという形にしている。特区ができて1年が経ったので最初に認められた特区については評価できる段階にきており、問題がなければ全国展開すると閣議決定している。問題があるかないかの立証責任は各省庁にあるとしているので、きちんと立証できなければ全国展開するという制度である。評価委員会が9月に意見をまとめ、その意見を基にして特区推進本部が決定するという段取りである。

2 次の提案募集は6月で、特区と地域再生の両方を一体化して行う。特区と地域再生の両方にからむ問題であれば、特区の提案としても地域再生の提案としても両方とも出せばいい。特区と地域再生は基本的には同じスタッフでやっているので、双方の融通はきく仕組みになっている。

3 おそらくこの会議の目的は、できなかったことを大きな声にしていくことに意味があるのではないかと思う。数は力というところがあって、たくさん出ている提案だと各省庁も真面目に検討するというか、やらざるを得ないというところがある。

4 第三者機関が本当に実現するためにワークするのかどうかは疑問がある。議論は行えるが、最後に実現するということになると、霞が関なり永田町なりにしっかりとした体制を組まなければいけない。ただし、各省庁の回答が本当に国民や自治体から見て適正かどうか、議論できる場があったほうがいいというのはおっしゃるとおり。そこは、特区制度と第三者機関としての総合規制改革会議の後継組織とのリンクの仕方だと思う。6月の提案では、全国的な規制改革案も提案できることになっているので、そこでリンクすることもできる。

5 たくさんの要望があり、それなりにリーズナブルなものであるのに、それに対する各省庁の回答がおかしなものであれば、世論なりマスコミなりが注目して「おかしいじゃないか」と持っていくことが実現のためには重要だ。

6 理論補強をしてもらうような先生というのは各分野にいるはずだ。そういうときに、アドバイスしてもらえる人を見つけると、我々としてもありがたい。たくさんの提案があるために、ひとつひとつ深く勉強している時間があまりないときもあるので、そういうときに有効な意見がもらえらば、各省庁との議論するときに大変ありがたい。

7 特区ではなくて全国でやればいいのではないかという提案が非常に多いのは事実だ。現に、特区提案をして実現したもののうち、特区でしかできなかったのが176、全国でできたものが250あり、特区はある意味でひとつのツールに過ぎなくて、全国で対応しているものの方が数が多い。とはいえ、これまで認められなかった規制緩和が特区で認められたということも多い。農業、教育の株式会社参入など、特区を通じてはじめて実現できた。

8 各省庁の対応については、率直にいえば、当初に比べて実現した規制改革が数として減少しているのは事実だ。我々としては、2年目に入ってこの特区制度を大切にしていきたいということと、関連する制度が邪魔で事業が進まないという場合に、別の制度があるかどうかということが次の展開だと思う。たとえば、幼稚園の中に保育園、あるいは保育園の中に幼稚園を作るとその分補助金を一部返さなければいけないということがあったが、大臣同士の折衝で返還しなくていいということになった。

9 民間事業者の声を吸い取っていただきたい。民間事業者がこの特区制度で恩恵を受けると思うのだが、地方自治体からの提案が7割、民間事業者からが3割となっている。推進室もできるだけ経済界の方々に声をかけていきたいと思っているが、みなさんにも協力してもらいたい。そのために、制度について説明できる特区エキスパートを各県に2人以上を養成している。そういう人から説明会をしてもらっても結構だし、市役所の中で説明会をしてそれに企業の人が参加するということなどがあれば、我々が職員を派遣するという出前コンサルタントも行うので、ご相談いただければありがたい。

10 各省庁から「提案をやめてくれ」などといった圧力があれば、推進室のほうにぜひ教えていただきたい。残念ながら、各省庁の回答の中には積極姿勢の見えない回答もある。しかし、そういうものこそあきらめずに提案していただき、こういう場で大きな声にしていただき、また必要なものについては我々が上にあげて相談していくので、これからも一緒にやっていきたい。


U 金子一義特区担当大臣との懇談会
 総会の最後に金子大臣が出席されたので、大臣のあいさつのあと、意見交換を行った。
【金子大臣あいさつ要旨】
 国民年金未納閣僚問題が出まして、なんとなくざわついているような感じがしないわけでもないと思いますが、動じてさえいません。やるべきことを内閣としてきちんとやっていく、その気持ちで取り組んでいます。
 特区制度や地域再生計画制度の改善のための皆様方のご提案も拝見しました。特区と地域再生をどうするか。特区と地域再生の扱いをどうするのか。そこのところは、皆様の気持ちは生かせるようにしていきたい。特区と地域再生を組み合わせてもらっていいのです。基本は地域の皆さんがやりたいことをやってもらう。我々が認める、与えるということではなく、やれるようにしていくというのが私たちの基本姿勢です。それができるようにさせていただきたいと思っております。
 特区で認定を受けたが実際にやろうと思ってもできない。これは、具体的にあったら是非教えていただきたい。今日いただきました提案書にも株式会社では農業金融が受けられないということが書かれていましたが、本当ですか。もし本当にできないのであれば、どこの具体的な例なのかおっしゃっていただきたいのです。よく聞いてみると、株式会社で入ってくるのですよ、株式会社で金が調達できないわけがない。農業であれば株式会社であろうが、農場の整備などの金は補助金として出ます。農業のためにやるのならば、金は出せます。国民金融公庫総裁もいっています。金は出しますと。農業協同組合の方も一緒に理事長にも来ていただきました。認定農業者か準組合員になっていただければ出せるのです。一般論ではマスコミ的にはなんとなく出ないといいことがあるのですが、具体的な例があればおっしゃっていただきたい。ダチョウ特区というのもありまして、運輸関係ですけど実質建設業の方ですが、株式会社ですからやれます。普通の農家のようにやってくれというのとは違うはずです。株式会社ですから医療で入っても資金調達はメリットがあるからやるわけです。それを、町医者と同じようにものを言ってもらっては困るわけです。そのへんはいろいろ議論はありますが、いずれにしても、瑞浪市長からも、幼保一元化が特区でオッケーとなったら、厚労省が金を返還しろと言ってきたとのお話がありました。そんな馬鹿な話もないだろう。国の税金でしょう。そういうことで、坂口厚労大臣に話して、返さなくてもいいとなりました。地域再生でも、国の施設であろうが、科学技術研究設備であろうが、役割が終わったら他の目的に転用してもらっても結構だ。市あるいは県の開発公社を目的外に使う。犬山市は商業施設に転用するという、当初目的と違う方向でおやりになる。これも結構です。ですから、進まないということがあったら、是非おっしゃっていただきたいと思います。
 あと、法令ではできる、県、知事の認可に降りているのに、現実には県の職員のみなさんは国が指針を出さないとなかなかやらないという部分が色濃くある。つまり、自信がないのです。知事のところに持っていけばオッケーだが、なかなかあげられない。そうすると、局長か課長が国に指針を求めてきて、確認しないとなかなか進められない。そういう部分が、今度の地域再生でも1500件のうちの半分くらいある。こういうものは、国だけでなく県の進め方というか指導も、必要なことは、特区推進室で取り組んでもらいます。
 今度、ハードなもの、なかなか実現の難しいものを全部洗い出して、本当に筋がいいと思われるものについては、私は戦います、やります、進めます。ただ、大変恐縮ですが、農振地域の指定を外して公民館を作るというのがありますが、これはやっぱり心配なのです。本当にいいのだろうか。一方で、あるところから風力発電、バイオ発電をやるのに農振地域の指定を外せないという問題もありました。こういう皆さんからみても外してもいいと思うようなものはなんとかできるようにしていきたいと思います。
 特区と地域再生については、皆様方からいろいろなアイデアを寄せていただいております。私たちは地域再生群という政策群、こういう基本的な方向を今度の概算要求で入れていこうと思っています。具体的には、補助金の統合、一元化して皆様方に渡す。たとえば通信網整備で、都市部の通信関係は郵政、つまり総務省が持っている。農村部に行くとこっちは農水省の管轄となる。皆さん、市町村合併やるのに、そういうのでは困る。これ、郵政でやろうが農水省であろうが統合化していけるようにしていきたい。
 また、学童の放課後活動、これも、学校に上がると、公的な皆さんのところが運営しないと補助金の対象にならない。だけど、幼稚園から保育園、そして小学校の3年生くらいまでの学童児の放課後活動については、民間委託して運営してもらうこともやれるようにできないかということもお寄せいただいていて、これもひとつのテーマとして入れていきたい。
 最後に、中心市街地の活性化。経済産業省の中にたくさんのメニューがあるのですが、使い勝手のいいようにできるだけ一元化して市町村に使っていただきたい。そういう方向で、三位一体改革に先行するようなものを、第一歩に過ぎないかもしれませんが、進めていきたいと思っておりますので、一緒になってやっていきたいと思っています。

【自由懇談】
 以上の大臣からの発言に対し、以下のような発言が出席者から行われた。
○ 教育上の現在の悩み。カリキュラムの問題、先生の配置、学級のサイズなどをどうするか。これは現場にこそ政治的、行政的責任があり、現場の市町村長がいちばん把握している。現場の実態を知っている市町村長、あるいは指導者としての知事を信頼して、これにもっと委ねることが必要だ。文科省は現場を信頼していない。したがって、この意識転換を図りながら、少なくとも構造改革の一環として選択制を認めることが必要だ。行政システムでやるか委員会制度でやるか、出雲方式もあれば犬山方式もあっていいではないか。選択に委ねてもいいのではないか。文部科学大臣も知事を直接指導できる政策官庁として発展できることになる。今は知事の部下の部下のような教育長だけ集めて号令をかけているが、これは現在の教育問題を解明する、打開する道にはならない。むしろ、教育の現場は福祉、経済政策などコングロマリットで、総合的な政策の中で問題解決できる。不登校児を救うには親の経済状況をよくしないといけない。失業、リストラの家庭が崩壊、子どもを追いやる。こういうことは学校教育だけでは限界がある。これを解決するには、市町村長、商工会議所、ビジネス、雇用すべて当事者能力のある市町村長に委ねて不登校対策をやらせないと、学校や教育長ではできない。総合政策として最後の責任者としての市長を活用すべきで、こういう方向で、行政のシステムを移管してはどうか。そういう市町村があってもいいということを政権与党の政治的リーダーシップで明確に打ち出してもらいたい。

○ 農業についても、政策としては農地の解放が一般の制度になっていない。特区で実績がだいぶ出たので、与党政権として全中や全農と話をして、全国で一般的な政策としてやってもらいたい。

○ 特区についてはなかなか解決できないものが山積みになっているが、特区の1周年記念が官邸で行われたのに、出席した閣僚が小泉総理、金子大臣、亀井農水大臣、福田官房長官、河村文科大臣くらいであった。我々はいろいろな省庁にまたがって特区や地域再生を議論しているわけで、ほかの担当大臣は関心はおありなのかどうか。また、各省庁の大臣は自分の省庁にどれくらいの指示を出しているのか。

○ 特区で酒税法、どぶろくという製造に一定の風穴を開けてもらい、全国第1号でどぶろくの製造、販売が認められたということで、それに取り組んでいる。特区の効果で、全国第1号になった民宿は、年間100人くらい泊まっているお客さんがこの1ヵ月で100人を超えてしまったということがある。それが形になって、2号、3号と我々もやってみたいという声も出ている。そういう中で、タウンミーティングを総理官邸と市とを結んで行った。市民が総理にも直接意見をぶつけることもでき、職員、議会、市民も含めて意識が変わってきた。特区はこれまでの国、県、市町村といったものの構図を変える大きなきっかけにもなっているのではないかと思う。合併についても、タウンミーティングや特区に取り組みことによって、スムーズに運ぶようになったという効果もあった。

○ 中心市街地の問題がありますが、再開発法というのは地価が値上がりしたりといった右肩上がりのときの法律で、右肩下がりのときの再開発というのはどういうものであるのか。もう従来の手法では駄目で、それを具体的に生み出していかないといけない。

○ 各省へ特区提案を行い、その各省の回答をこちらに伝達するようなケースがいくつかあった。我々が文句のある場合は担当省に説明してくれということがあったが、どのような改革案も金子大臣のところで主体性を持って各省を説得するなり責任を持って受け止めていただきたい。各省に回すということに専念されないように願いたい。

【金子大臣発言要旨】
 こうした意見に対し、金子大臣からそれぞれ発言があったが、その大要をまとめれば以下のとおりである。
1 各担当大臣が特区について強烈な意識を持っているかということですが、やはり、立場で違う理屈のことを言われれば、悩みながらやっているのだと思います。しかし、今度の地域再生で強く感じたのですが、中央官庁の役人というのは、ひとつの流れができると乗ってきます。乗るのも早いです。環境と言うと、環境、環境と予算を取りにくるわけです。ITでもそうです。流れに乗るのは早い。今は、特区、地域再生というのは、間違いなくひとつの大きな柱になってきています。今回は間に合いませんでしたが、次年度の地域再生、地方に、市町村長に委ねてというのは、三位一体の動きとあわせて、各省の担当大臣が認識していることは間違いありません。少し扉が開くと、案外今度はどんどん押していけます。前任の鴻池大臣は勇ましいですが、あれと違うのかと言われるのですが、各大臣と話をすると、案外やってくれます。たとえば、地方自治法の改正でそれぞれの議会を年4回までしか開けないという法律を、議会の開催回数については地方自治体で決めるということにしました。総務省は国会でかつて議論されたが2度潰されており大変難しいと言ってきましたが、麻生大臣と話して、今国会で衆議院で議論されている最中です。そういう意味で、鴻池さんのようにテーブルを叩くようなことはしませんが、麻生さんはよく呑んでくれました。そこまでやらなくても、各閣僚もこういう方向にあることを理解してくれています。今までだったら絶対に反対だったと思います。

2 中心商店街等を、市が引き取って、リースするというような手法が出てきましたが、ああいうように、いったん市が全部買い上げてうまく使える人にリースするという手法もいいのでしょうが、市の財政が大変なのだろうと。そういったものも含めて、何かいい方法がないか。
 今、いちばん日本の中で大きく行き詰まっているのが、大阪の阿倍野地区です。阿倍野地区、は昭和50年代から地域開発を進めてきた。右肩上がりを前提としてきたものです。土地が上がっていくから、それにより利益が得られるというやり方を取ってきたのですが、中心的存在だったそごうが途中で倒れて、その分が空き、行き詰まってしまった。国土交通省ともなんとかならないかとやっているのですが、今の価格が高くなりすぎているのです。固定資産税問題がくるのです。そういったところをどうするのか。
 それから、宇都宮市が選択しましたが、固定資産税(の負担水準)を70%、60%に下げて売れ筋の店を引っ張ってくるということを、ほかに3地域から手が上がったと思いますが、その分財源をどうするのか、工夫の余地はないのかということで、党税調会長の津島雄二さんに預けて議論してもらっています。基本的には自治体で工夫の余地がないのか。
 私に都合のいいことを申しあげますが、月例経済報告が官邸でありまして、景気回復が広がり、亀山にシャープの工場などがどんどん広がっているという話がありました。亀山ってロウソクの町だったのになぜシャープが次々工場を広げて関連企業が来るのか。県が工場誘致に95億円、亀山市が45億円出しているのです。大変な負担なのですが、こういう現象も出てきている。亀山市は就職難どころではなく、人手不足で困っているという状況が出ているようです。

3 掛川市長を始め、特区推進会議の皆様、連休の谷間にもかかわらず、お出かけいただいた、この熱意は大事に受け止めさせていただきます。正直言うと、特区推進室も人手が足りないのです。見ていて気の毒なくらい人がいないことも事実です。確かに霞が関の人が地方を分からないのは当たり前です。推進室のスタッフには地方を分かっている国会議員の力を借りるよう言っています。それから、皆さんも地域を育てるのにあわせて地域の人を育てることも大切です。地域で伝達役、理解してくれる人を逆に送り込んでください。我々は、地方自治体の職員を育てたいと思っています。その気持ちをどういうふうに生かしていくか、一緒に考えてください。
以上

添付資料1 2003年度事業報告・会計収支決算書、2004年度事業計画・予算
      2 構造改革特区、地域再生計画制度の改善のために(要旨本文付属資料