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小田原市が「スパウザ小田原」の運営をヒルトンに委託へ

2003/08/29

 神奈川・小田原市は8月26日、滞在型健康施設「スパウザ小田原」の運営委託について、ホテルチェーンの英ヒルトン・インターナショナル社と基本協定を締結した。賃貸契約は2004年2月から5年間で、5年ごとに更新する。賃料は年間売上高の12.5%(下限額は4億3000万円)。市の経費については、取得後10年間は毎年、取得費償還金9000万円、維持補修・部品交換工事費3200万円、予備費1億円、保険料800万円の2億3000万円かかり、4億3000万円以上の年間賃貸料からこれらの経費を差し引いた2億円が市の収入となる。初年度の売上高目標は28億円、営業総利益は1億8000万円に設定。5年後に売上高33億円目指す。
 「スパウザ小田原」は厚生労働省所管の雇用・能力開発機構が総工費455億円で建設したが、1999年の特殊法人改革の一環で保有している勤労者福祉施設の売却を進めており、小田原市は8億5000万円で購入する予定。9月市議会で、「スパウザ小田原」取得に必要な予算措置の議案を提出し、可否を判断する。この問題について、スパウザ小田原問題調査特別委員会が開かれており、取得についての意見は賛成が5人、反対が3人。運営不振でヒルトンが撤退した場合、市財政や市民に負担が出かねないとの意見もあがっている。

 「スパウザ小田原」売却で同機構に生じる損失は446億5000万円。このような「投げ売り」が全国で行われている。厚生労働省によると、全2070の勤労者福祉施設のうち売却済みが1563施設(8億4000万円)。そのうち799施設の値段が1万500円以下、埼玉・川越市の「川越武道館」(建設費2880万円)、和歌山・田辺市の「わかしおテニスコート」(建設費486万円)、鹿児島・川内市の「川内プール」(建設費2770万円)の3施設は最も安い1050円で売却されるなど、常識外の「投げ売り」状態で、回収率は総建設費1980億円の0.4%にとどまっている。
 施設建設の財源は雇用保険料で、失業者の雇用保険のうち、1000分の3.5が同機構に入る。この雇用保険料の使い道は、「失業給付」「雇用安定・能力開発・雇用福祉3事業」の2通りがあり、2001年度の保険料収入2兆9348億円のうち5519億円(19%)が3事業に使われている。

 また、厚生労働省は5月29日、同機構所有の雇用促進住宅を時価の半額で自治体に売り出すことを決めた。同住宅は、炭鉱離職者など転居を伴う再就職者支援を目的として、1961年度から全国1500ヵ所で、9500億円の雇用保険を使って建設。1999年10月には、同住宅3844棟を時価で売り出したが、4棟しか売れず、今回の値下げに踏み切った。勤労者福祉施設に次ぐ「投げ売り」に、批判が集中しそうな模様だ。

 このような「投げ売り」を行っているのは同機構だけではない。厚生労働省所管の年金資金運用基金は年金を原資として、1914億円を投じて全国13ヵ所で保養施設「グリーンピア」を建設した。経営の実態は7施設が累積赤字を抱え、6施設が閉鎖。政府は2005年度までに全施設を売却して事業から撤退する方針。これまで、施設の売却が決まったのが2施設のみ。「グリーンピア土佐浪」の一部分(建設費27億円)は学校法人に4億8200万円で売却。「グリーンピア二本松」(建設費81億円)は二本松市に3億3200万円で売却している。

 そんななか、赤字施設を自治体が買い取って見事に再生させたケースも出てきた。山口・小野田市は2003年3月、「いこいの村江汐(えじお)」(建設費7億7000万円)を105万円(時価1億4850万円)で購入。「いこいの村江汐」は2002年度に、1800万円の赤字を計上し、累積赤字は2億2500万円に上っていた。市はこの築30年のホテルを2008年まで使い続ける条件で購入。買い取りが決まると同時に民間委託を決め、徹底的なコストダウンを図った。2003年4月の再スタート後3ヵ月で、500万円の黒字となり、全国の自治体から問い合わせが相次いでいる。(田中潤)

雇用・能力開発機構の施設建設費や売却額は下記を参照
全勤労者福祉施設の売却金額
全勤労者福祉施設の建設金額

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