2月21日付琉球新報によれば、沖縄市は50メートル8コースある勤労者体育施設水泳プールを1万500円(消費税込)で購入することが明らかになった。この施設は24年前に7900万円で建設されており、まさに破格の値段で市はプールを購入したことになる。
この施設の売却主は、厚生労働省外郭の特殊法人である雇用・能力開発機構(旧雇用促進事業団)。2004年3月の独立行政法人化に合わせ、施設は保有しないことになっている。そのため、巨額の金額を掛けて建設したスパウザ小田原(建設費455億円、8億円強で売却予定)、中野サンプラザ(同102億円、50億円で交渉中)なども含めて、地方自治体に驚くほどの安値で施設を売却しているのだ。
前橋市は勤労青少年体育センター(総額7500万円)を、有明町(佐賀県)は旧有明勤労者体育センター(同機構が8000万円出資)を、仙台市は泉ケ岳勤労者野外活動センター(建設費1億3000万円)を、それぞれ1万500円で購入。その他にいくつか例をあげると、山形市が北市民プール、江南体育館、福祉体育館を、石巻市(宮城県)が石巻勤労者体育センターを、加古川市(兵庫県)が志方体育館やプールを、それぞれ同額の1万500円で購入している。
それだけで驚くなかれ。川越市(埼玉県)は勤労者体育センター(建設費2880万円)を、川内市(鹿児島県)は農村勤労福祉センター(同2770万円)を、なんと1050円で購入している。
雇用・能力開発機構が所有していた保養施設は、全国で2070。そのうち昨年までに売却されたのが629。売却価格をみると、1050円で売却されたのが2、1万500円で売却されたのが357、10万5000円で売却されたのが220。大半の施設が10万円くらいまでで売買されたことになる。
なぜこのような値段で売却されたのか。厚生労働省は、基本的に売却価格は施設の時価から解体撤去費を引いた額としている。だが、元々収益が上がらないために売却せざるを得ない施設であり、さらにはそれら施設が老朽化しているので時価がほとんど評価されず、解体撤去費が時価を上回ってしまうのだ。
そこで、時価が100万円未満なら1000円、1000万円未満なら1万円、1億円未満なら10万円と最低価格を設定し、それに消費税分を上乗せする。頭の数字が「105」になるのはそのためだ。
産経新聞社の「ZAKZAK」によれば、去年までに売却された629施設の建設総額は3895億円、売却額は4億3717万円で、約3900億円の損失総額になる。今後さらに処分が進めば、この損失はさらに増えることは間違いない。このツケは全て雇用保険に回ってくる。
昨年末に、厚生労働省は雇用保険料率を現行の1.4%から1.6%に引き上げるのを2年先延ばすことに決めた。保険料率引き上げの見送りの財源として、2002年度補正予算に2500億円の国費を計上した。さらに、失業者に対する給付も大幅に削減する。厚生労働省は、雇用・能力開発機構が背負った赤字を労働者に負担させようとしているのだ。(田中潤) |