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依然続く 雇用・能力開発機構の施設投げ売り

2003/05/09

 厚生労働省の特殊法人である雇用・能力開発機構は、岩手・松尾村の日本勤労福祉センター岩手レクリエーションセンター「八幡平ハイツ」の売却再公募を行っている。昨年末に公募したときには、宮城・蔵王町、大分・湯布院町、鹿児島・霧島町など全国にある同種の8施設の一括購入を求めたため、売却が不調に終わっていた。今回は個別購入のため既に数社から問い合わせも来ているようで、8月末までに売却先を決める方針。

 以前から施設の格安投げ売りが問題視され話題になったが、このように自治体以外にも民間に譲渡する例も増えているようだ。

 神奈川・大井町の勤労者施設「いこいの村あしがら」の本館(建設費9億円)を神奈川県が105万円で買い取ることとなった。買い取り後に、同額で運営主体の財団法人「あしがら勤労者いこいの村」に譲渡し、引き続き同法人が運営する。この施設の土地所有者は県であるため、所有者の県に売却した。

 県と市が共同で購入するところもある。

 富山県と富山市では、同市にある勤労者福祉施設「とやま自遊館」(建設費71億円)と「呉羽ハイツ」(建設費6億円)をそれぞれ5200万円、1700万円で共同購入することで合意した。両施設の取得費と、自遊館のコンピューターシステム整備費の計1億2900万円を県と市が半額ずつ負担し、2013年度まで支払う。施設は県と市が出資する財団法人「富山勤労総合福祉センター」が購入し、県と市が財政支援する形を検討中。

 これら以外には、依然として市町村が施設を購入する例が目立つ。
 新たに売却された、もしくは売却の決まった例を売却金額別で紹介する。

・約1万円…三重・阿児町「長沢球場」(建設費1億800万円)、大王町「ともやま野球場」(建設費1億2200万円)、福島市の勤労者体育センター、宮崎・小林市「サン・スポーツランド生駒」(出資額約1億9300万円)、岡山・高梁市「高梁市民プール」(建設費4950万円)

・約10万円…三重・志摩町「志摩共同福祉センター」(建設費8620万円)、阿児町「阿児勤労者体育施設」(建設費1億5400万円)、岡山・笠岡市「中高年齢労働者福祉センター」、福島市の福島中高年齢労働者福祉センター「サンライフ福島」、福島建設労働者研修福祉センター「サン・スカイつちゆ」、新潟・畑野町「いこいの村佐渡」(建設費12億7千万円)

 その他、約100万円で山梨・小淵沢町「いこいの村八ヶ岳」(総工費27億円)、約2300万円で福島市の福島勤労者総合福祉センター「福島テルサ」など。

 3月13日付朝日新聞によれば、雇用・能力開発機構が所有する宿泊施設や体育館など全2070施設のうち875施設が売却され、696施設についても合意が得られ、廃止されるのは100以下になるとのこと。全施設の建設費は4498億円、売却見込み額は100億円程度。

 まだ購入が決まったわけではないが、東京・中野区「中野サンプラザ」(建設費102億円、土地評価額140億円)は約50億円で雇用・能力開発機構から打診されている。
 4月11日の区議会総務委員会で、2004年度にも区が「中野サンプラザ」を取得する方針であることを明らかにした。3月に区民から意見募集したところ、6〜7割が取得に賛成していることを受けて。ただし、雇用・能力開発機構が売却の条件としている全職員143人の再雇用については「人件費削減が不可欠」としており、交渉は難航中。

 神奈川・小田原市では「スパウザ小田原」(建設費455億円)を約8億円で購入する意向。だが、日本共産党小田原市議団が1月〜3月に実施した市民アンケート調査では「スパウザ小田原」買い取りに66%が反対していることが明らかになっている。

 なお、このような時期に厚生労働省と雇用・能力開発機構が建設した、京都・精華町の「私のしごと館」が3月30日からプレオープンした。現在のところ、開館後1ヶ月で来館客が2万人を突破し好評とのこと。このまま無駄なハコモノにならないよう願うばかりだ。(田中潤)