鹿児島・枕崎市では、民間航空会社の東和航空が5月から休業に踏み切った。これによって、枕崎空港を拠点に運航するのは県の防災ヘリコプターのみとなった。神園征枕崎市長は1月末、赤字経営で苦しむ同空港を廃止して刑務所を誘致する方針を表明(詳しくは2003/02/14の記事を参照)。これを受けて、東和航空は「将来の展望ができなくなった」と刑務所誘致の結果を待たずに休業となった。
刑務所誘致によって、食材の調達、刑務官とその家族の生活など経済効果は非常に大きいものになると見られている。さらには、受刑者数が地方交付税算定に加えられる。 北海道・網走市では、刑務所誘致を企業誘致にもつなげようとしている。受刑者の人件費は1日300円程度といわれており、人件費圧縮が課題の企業にとって、低賃金である受刑者の労働力は魅力的に映る。
このようなメリットがあるので、全国の自治体は活発に刑務所誘致に動いている。4月22日付朝日新聞によると、刑務所誘致に名乗りを上げている自治体は全国で49とのこと。北海道・留辺蘂町、沼田町、木古内町、稚内市、網走市、新冠町、栗山町、羽幌町、苫前町、白滝村、秋田・横手市、宮城・本吉町、広島・芸北町、甲山町、山口・美祢市、鹿児島・枕崎市など。
刑務所の収容率は2002年末時点で117%。過剰収容が問題となっているため、法務省は2002年8月、20年ぶりに2ヵ所の刑務所を新設する方針を決めた。2005年までに建設する予定だが、既に1ヵ所は福島刑務所に決まっているので、残り1ヵ所を巡って49自治体が刑務所誘致にしのぎを削ることとなった。決定は2003年度中に行われる予定。
だが、刑務所というとダークなイメージがあるので、誘致には地元住民の理解が必要だ。美祢市の住民団体が行った調査では誘致反対が6割を超える結果となった(2002/12/05の記事を参照)。
逆に、留辺蕊町が法務省に刑務所誘致を陳情した際、陳情に添えた町民の署名は4020人(町の予想の4倍)となった。留辺蕊町の人口は現在約9200人、そのうち65歳以上が3割を占める。なんとか人口減に歯止めをかけたいという住民の思いが刑務所誘致を後押ししているようだ。
大分・竹田市では民間業者が刑務所誘致に動いているが、阿南馨市長は3月10日の市議会で、「現時点で誘致する考えはない」ことを明らかにしている。阿南正治企画課長は「民間主導で誘致する動きがある一方、地元には反対する住民もいる」と答えている。
いずれにせよ高い競争率の中で、生き残るのはたった1自治体。だが、犯罪者の増加が刑務所新設となり、経済効果を生むというのも複雑な話だ。(田中潤)
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