2005年度までに刑務所を1、2ヵ所新設するという法務省の方針を受けて、刑務所誘致が全国各地で活発に行われている。刑務所誘致には、刑務所などの建設による地元の建設会社の仕事増、受刑者、刑務官らによる人口流入で地方交付税や補助金増、刑務官やその家族の消費活動による地方消費税増、住民税などの地方税増などのメリットがある。
現在、全国の刑務所・拘置所は189ヵ所、収容定員は6万5000人。不況などによる犯罪増で、毎年5000人から6000人の収容者増、2001年末には35年振りに定員オーバー。刑務所に限定した、2002年7月末の定員に対する収容率は114.5%となっている。
1月31日には、神園征・枕崎市長(鹿児島県)が枕崎空港を廃止し、その場所に刑務所を誘致しようとする考えを市議会に伝えた。枕崎空港の利用低下により、営業活動などを行う第3セクター「南薩エアポート」の経営が市の財政に大きな負担となっているため。
これを受けて開いた臨時議会では、議会や住民への説明不足、県や近隣市町と調整不足などの批判も出たが、「住民の理解を得れば」という肯定的な意見もあった。
500人収容の刑務所を誘致した場合、市に入ってくる交付税、市民税が年間約1億円、食料や生活必需品など地元に落ちる消費効果が年間約6億円と試算。
空港を廃止すると、国や県の補助金、地方債合わせて全体で約3億1000万円の返済が必要。
南薩エアポート(資本金1億4300万円)自体の累積赤字額は、2002年3月末で約1億4000万円。市の出資比率は約56%となっている。
枕崎空港は1991年開港以来、約4300人が利用した92年をピークに利用者は低迷している。
美祢市(山口県)でも刑務所誘致に動いていることを2002年12月5日に報道したが、12月8日、10日と市の「矯正施設誘致検討市民委員会」が広島刑務所周辺、山口刑務所をそれぞれ見学。1月31日には第4回目の市民委員会を開催。2月中には提言をまとめる予定となっている。
その他、留辺蕊町(北海道)、新冠町(北海道)、稚内市(北海道)、栗山町(北海道)、羽幌町(北海道)、横手市(秋田県)など全国44自治体が刑務所誘致を検討しているとのこと。
刑務所誘致に動いている自治体の多くが、バブルの頃の工場誘致やリゾート建設などで失敗したところだ。どの自治体もすがる思いで刑務所を誘致しようとしているが、刑務所だけでは地域は活性化しない。
1986年に刑務所を誘致した吉松町(鹿児島県)の場合は、受刑者分の交付税は3800万円、刑務官分の町民税は1300万円、固定資産税が120万円と、刑務所効果は計5200万円。このほか年間10万人が訪れる「パラグライダーの里」づくりなど、地域活性化にも幅広く取り組んでいることを忘れてはならない。(田中潤) |
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