山口県美祢市が経済活性化策として打ち出した工業団地「美祢テクノパーク」への刑務所誘致問題について話し合う「矯正施設(刑務所)誘致検討市民委員会」が11月22日開かれたが、住民側の反対が強く、結論を持ち越した。
地域振興整備公団が美祢市豊田前地区に造成した工業団地「美祢テクノパーク」(28ヘクタール)は97年に分譲を開始したが、いまだに進出企業が一社もない状態が続いている。市は市議会とともに昨年から刑務所誘致の検討を進め、法務省に打診してきた。
犯罪件数が過去最高を記録し、刑務所の過剰収容に苦慮している法務省が、05年度を目途に刑務所を新設する方針を決めたからだ。
市が今年9月、市議会活性化特別委員会に提出した「矯正施設誘致後の消費・経済効果等の試算について」というリポートによると、「美祢テクノパーク」を刑務所として一括利用した場合、受刑者収容人員1000人、職員260人、その家族520人の計1780人が美祢に定住。交付税1億4400万円増、市民税4100万円増、刑務所内での年間水道使用料2260万円などの経済効果を試算している。
美祢市としても「美祢テクノパーク」だけでなく、昨年4月に美祢カントリークラブ、今年8月にはゴルフ場とサーキット場を経営していたセントラルパーク山口の破綻など悪材料山積。無用の長物となっている「美祢テクノパーク」を何とか生かし、定住者増、雇用創出、消費効果が期待される刑務所誘致に活路を見出そうというわけだ。
だが、刑務所誘致案には地元住民の抵抗が強い。市が住民説明会を開いたのは今年10月が初めて。住民の反対は第1に説明不足の点にある。加えて「刑務所の食品購入は地元に限られるわけではなく、市が試算するほどの経済効果が見込めるのか」といった疑問も強い。住民団体が実施した反対署名は豊田前地区の有権者の64%に上った。(田中潤) |
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