熊本市は7月6日、2005年度予算からインセンティブ予算制度を導入することを明らかにした。2004〜2005年度の2年間実施する。「経常的予算のうち枠配分対象以外の事業」「事業開始が2002年度以前の政策的予算のうち、投資的経費、義務的経費、積立金や特別会計への繰出金を除いた事業」で、各担当部局の創意工夫や内部努力などによる節減を対象とし、入札金額の減少など自然減は対象外とする。2004年度当初予算に両事業が占める割合は13%、計280億円。節減分を3月補正予算でいったん減額し、ほぼ全額を翌年度当初予算に単年度に限り追加配分する。
そのほか、予算編成で新たな取り組みを実施している自治体を紹介する。
佐賀市は2004年度予算から、一定枠内で各部の予算配分を決める「枠配分方式」や、各部の予算で節減した額の一部を戻す「インセンティブ予算」を導入した。枠配分方式は、各部の一般財源のうち、人件費などの義務的経費や投資的経費などを除いた分(一般経費)が対象。インセンティブ予算は、節減に成功した部に、翌年度予算編成で節減相当分の一部が自由裁量事業費として再配分される。
札幌市は2005年度予算から、市当局が予算を節約できれば、その分を翌年度予算に上乗せできる節約奨励制度「メリットシステム」を導入する。今までは、職員が予算を節約し翌年度に繰り越しても、節約分は財政当局に吸い上げられた。メリットシステムは努力した分だけ見返りがあるため、職員の節約への意欲が高まるとのこと。
横浜市は2003年12月、経費節減や財源確保の成果を次年度に繰り越す「予算におけるメリットシステム」の初年度(2003年度分)の成果が7億8400万円に上ったと発表した。提案数は157件。その内訳は、パソコンなどの活用による印刷・製本費の削減や委託料の見直しなど歳出削減が5億9000万円(122件)、広告開拓関係など新規財源見直しが1億8700万円(35件)。「創意工夫」「市民満足度」「難易度」「庁内波及効果」の4ポイントで財政局が採点し、上位10件(2億2900万円)については節減額の満額を2004年度予算に繰り越し、その他(5億5500万円)は2分の1を上乗せした。
京都市は2004年度予算から、予算執行にあたって工夫や節約で浮いた財源を、当該局長の裁量で別の事業などに使える「予算流用権」を理財局から各局に移譲した。これまでは、事業執行で予算が余った場合、理財局が一括管理、流用していた。この流用権を各局長に委ねることで、より効率的な運営を目指す。
岩手県は2004年度の予算編成から、各部局があらかじめ配分された財源の中で、自分たちで予算を組む方式を導入した。2003年度よりも15%減の金額で、それに基づき部局のつくった予算案を県ホームページなどで公開。さらに、政府予算案を踏まえた最終配分が割り当てられ、最終案を知事が査定するというもの。各部局の当事者意識が高まり、現場での判断が予算編成に反映できたとのこと。
福島県は2005年度予算から、部局ごとに総枠配分する制度を導入する方針。公共事業費などを含む投資的経費、人件費などの義務的経費のそれぞれに一定の削減割合を示し、各部局に提示。各部局は緊急性の高い項目を選別した上で、予算配分を決定する。ただし、規模の大きな新規事業や県政の重要項目については知事が査定する。
岩手・北上市は2005年度予算から、市長の裁量権を強化する。まず、各課で来年度の市政運営に向けた課題を整理して、担当課ごとに新しいミッション(目標)を練り上げ、上部機構である各部局に提示。それから、各部局ごとの戦略案とミッション案をとりまとめ、市3役や教育長、各部長らを交えて協議。それを踏まえて市長が次年度に実施していく最終的な全庁ミッションを設定する。それを各部各課に示し、具体的な事業や施策の企画立案に入ったり、大枠での予算の配分方針を提示する仕組み。このため予算編成に向けた前段階の作業も以前より大幅に早めて7月中旬から始める予定。(田中潤)
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