東京・千代田区は2004年度から、2年分の予算を一括編成する方式を導入する。同区は2003年度から、部長を最高責任者として予算執行、人事などの権限を持つ「区民生活部」「保健福祉部」「まちづくり推進部」「環境土木部」「教育委員会」の5事業部を発足。財政課による従来の予算査定方式を原則廃止、各事業部の要求に応じて予算の大枠を割り振り、具体的な使途は各事業部に委ねる方式に変更した。今回の一括編成では、実際の予算枠は年度ごとに設定するが、2年分を一括配分するので、余った予算を翌年度に持ち越すことが可能となった。
また同区は10月から、5事業部の業績を評価する仕組みの「バランス・スコアカード(BSC)」を導入する。各事業部の行動を「顧客(住民サービス)」「財務」「業務プロセス」「学習と成長(職員教育)」の4分野に分け、具体的な改善や向上の目標を設定。年度末に目標達成度を評価し、各事業部に配分する予算や人事、組織編制などに反映させる。BSCの評価は100点満点で、「顧客(住民サービス)」に50点を配分する以外は、各事業部の裁量とする。
このように、財政課による予算の事前査定を廃止する動きが広がってきた。
三重県は2002年度から、人件費を除いてほぼ全面的に各部局に予算編成を任せた。
群馬県は2003年度から、「予算編成本部」で各部局が持ち寄る予算の原案を検討し、主要事業をトップダウンで決める方式とした。本部が部局ごとに予算の大枠を決めて、部局は主要事業以外は割り当てられた枠の中で事業を新しく始めたり、廃止できる。
岩手県は2004年度から、財政課を予算調製課に改めるとともに査定作業を廃止する方針。
東京・足立区は2003年度から、予算枠と査定権限を各部門に委譲し、余剰金の半分を翌年度に繰り越せる「包括予算制度」を始めた。2002年度に先行してモデル事業に取り組んだ衛生部は、外部委託の効率化など工夫を重ねて5000万円を節約、黒字分を風しんの予防接種にあてた。環境清掃部でも、3億4000万円の黒字を見込み、2003年度予算に排ガス浄化装置(DPF)取り付け費用の融資あっせん事業などに1億3000万円を計上した。
横浜市は2003年度から、事業を行う際の工夫や新たな財源の確保で予算の節減が認められる場合には、その節減額の2分の1または全額を、節減の工夫等を行った局区の翌年度以降3ヵ年間の予算に上乗せする「予算におけるメリットシステム」を導入した。三重県、福岡市、神戸市などでも導入されているが、全額還元は例がないとのこと。
岐阜・大垣市は8月から、予算を事業部ごとに編成、管理し、事業部内の予算流用や部局内の人員配置を担当部局長の権限とする「事業部制」を導入した。このような分権型組織は、県内では岐阜市や各務原市が導入している。
東京・文京区は2004年度から、各部に予算を振り分ける「事業部制」を導入する方針。部で余った予算の4分の1を翌々年度に無条件で上乗せする実質「複数年度予算」も導入。さらに、部の予算が足りないときには、財政調整基金から無利子で、借り入れる制度を用意する。
千葉・市川市は2004年度から、事業に関連する部局から7級程度の職員を頭に5〜7人程度の職員を出し合い事業部を設置、事業終了と同時に解散する期間限定の専任の部署を設け、設置中は直接、事業部に予算措置を行う「事業部制」の導入を検討している。(田中潤) |