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大津市がグループホームの開設・運営で要綱制定

2003/06/17

 滋賀・大津市では5月1日、「指定痴呆対応型共同生活介護設置及び運営に関する要綱」を制定し、グループホームの開設・運営について市独自の基準を定めた。「プライバシーの保護」「リスクマネージメントおよび苦情解決」「研修・勤務体制の確保」など13課題を立て、計53項目を設定。それを「質問票」にまとめ、市の担当職員が事業者に直接聞き取りをする。グループホームの新規開設事業者には、県の指定を受ける際に必要な市町村の意見書にその質問票の結果を交付。既に開設している事業者についてもその結果を県に報告する。また、市民がグループホームを選ぶ際には、この結果を閲覧できるようにする。
 市によれば、ほかの自治体で要綱を制定しているところは聞いたことがないとのこと。

 グループホームは「有料老人ホームより安価なため需要が多い」「小規模なので狭い土地でも建設できる」「専門職員を1人置けば開設できる」など、ほかの高齢者施設に比べて開設しやすく、開設数が全国的に急増。2月13日付朝日新聞によれば、グループホームは全国で2600カ所を突破、2000年の介護保険導入前の10倍近くにまで急増している。

 だが、グループホーム急増に伴って、高齢者介護や福祉を専門としない不動産業などの進出も増加。症状が軽く手間がかからない人だけを集め、重くなると退所させるなど、利益重視型の事業者もおり、質の低下を懸念する声も上がっている。
 さらに、特別養護老人ホームなどでは、地域外からの転居入所者の介護給付を以前住んでいた市町村の介護保険で負担する「住所地特例」が適用されるが、グループホームは対象外。そのため、一部自治体では、施設が増えると介護保険の支出が増加し、市民が負担する保険料の上昇につながると懸念としている。

 大津市のほか、グループホーム抑制に取り組んでいる自治体は、群馬県(グループホーム、群馬県が開設を抑制の記事参照)や札幌市など。

 札幌市では、1999年度から2003年度までの5年間で、グループホームが120カ所以上に増える見込み。要綱などは制定してないが、市の窓口などでグループホーム新設を考えている事業者に対して、グループホーム急増の実態を説明していく模様。
 東京・町田市でも窓口の説明などでグループホーム抑制に取り組んでいる。また、同市では65歳以上の人が1人、グループホームなどに入居すると市民の保険料が月額0.5円上昇すると試算している。

 厚生労働省も介護の質の向上を目指してグループホームの規制強化に乗り出している。
 2003年4月から「1カ所に作れる上限を3ユニットから2ユニットに減らす(1ユニットは定員9人)」「夜勤・宿直の兼務も2ホームまでとする」、2004年4月から「1カ所に最低1人のケアマネジャー配置を義務づける」など運営基準を変更する。ケアマネジャーの配置義務づけと合わせて、利益重視型の事業者の参入に歯止めをかけるのが狙い。
 2002年度から、厚労省は外部評価制度を導入。国の評価機関から委嘱を受けた専門の外部評価員が、サービス内容をチェックし、施設側が独自で行う自己評価と比較しながら、ケアサービスの質的向上を図っている。(田中潤)