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合併アンケート:是非論から具体的なまちづくりへ

2003/04/19

 4月1日「平成の大合併」をはさんで、3月から4月中旬までに公表された合併アンケートはおよそ40ケース。1月から2月にかけて公表されたアンケートは100ケース近くあっただけに(2003/03/10の記事参照)、合併に関するアンケートはとりあえずピークを超えたようだ。

 合併特例法で定められた2005年3月の期限に向けて、合併の準備期間を考慮に入れると、全国的な流れとして、もはやアンケートで住民の意見を聞く段階ではないということだろう。

 単独でアンケートを行っているのは、北海道・稚内市、静岡・三島市など全体のうち4分の3。残り4分の1は、諏訪地域6市町村任意合併協議会(長野県)や南部町・南部川村合併協議会(和歌山)などの合併協議会や、津和野町・日原町(島根県)のように複数の自治体が共同でアンケートを実施している。

 内容面では、「合併の是非」などを問うものが全体の半数近くを占めている。また、合併の枠組みを問うアンケートは全体の3分の1となっている。

 綾南町(香川県)で実施されたアンケートでは、合併について「賛成」「どちらかといえば賛成」が計58.2%、「反対」「どちらかといえば反対」が計23.4%。さらに「賛成」と答えた人に合併の相手を選んでもらったところ、「高松市」が58.5%、「綾上町、国分寺町」が37.7%、「その他」が3.8%。となった。
 同町は、綾上町・国分寺と合併研究会を開いているが、今後の動きについてはまだ未定。

 紫波町(岩手県)で実施されたアンケート調査では、「合併の必要性」について「ある」が18.5%、「必要だが慎重に行うべき」が42.8%、「必要ない」が30.1%、「分からない」が8.6%となった。
 希望する合併の相手先として、「矢巾町」が37.9%、「石鳥谷町」が15.0%、「盛岡市」が13.2%、「盛岡広域6市町村」は8.1%。
 同町は3月31日に、矢巾町も含めて盛岡市、雫石町、滝沢村、玉山村などと合併問題研究会を設置した。

 那賀川町(徳島県)で行われたアンケートでは、小松島市、勝浦、上勝、羽ノ浦との1市4町の合併について、「他の方法を考えるべきだ」が78.3%、「努力すべきだ」が15.4%となった。

 さらに、「今後、那賀川町が進むべき方向」については、「期限にこだわらず他の枠組みでの合併を検討するのがよい」が76.2%、「厳しい財政状況でも現状のままでよい」が20.0%で、阿南町・羽ノ浦町との1市2町での合併を望む声が最も多い。
 同町は1市4町の法定協議会からの離脱を表明した。

 その他には、「将来のまちづくりについて」「合併に期待すること(しないこと)」「合併によるメリット(デメリット)」など問うものが6分の1ある。

 松江・八束合併協議会(島根県)で行ったアンケート調査は、現在のまちの現状や合併した後のことについて住民の意見を求めている。
 住んでいる自治体の現状を満足だと考えている項目には、「自然環境」「上下水道・ガス等の生活基盤整備」「買い物など日常生活の利便性」などがあった。逆に不満を感じている項目は、「働く場・雇用の機会」「道路網整備」「鉄道・バス等の交通機関の利便性」など。

 合併することで期待していることは、「行政コストや人員削減による行政改革」「山陰の中核都市としてのイメージアップ」「公共施設の相互利用・有効活用」。不安に感じていることは、「行政サービスの低下や税金・公共料金の上昇」「きめ細かなサービスが受けられない」「地域間格差が生じ、周辺地域が衰退する」など。

 合併後に優先して取り組んでほしい施策として、「病院など医療体制の充実」「高齢者福祉の充実」「雇用の場の確保」「幹線道路・生活道路整備」「若者定住対策」が上がっている。

 東彼杵町・川棚町・波佐見町(長崎県)が共同で行ったアンケートは、中学生・高校生も対象としている。合併して優先してほしい施策として、中学生はインターネットなど情報通信基盤整備や公共交通機関の充実を、高校生は国際交流の促進や買い物や飲食が楽しめる商業施設整備をあげている。

 大人が優先してほしいと考えている施策は、「雇用の創出」(58.3%)が最も多かった。合併の効果で期待することとしては、町長や議員、職員の減少による行政経費の節減(43.5%)、企業進出や新しい産業の創出など雇用の場の確保(33.1%)、少子・高齢化に対応した行政サービスの充実(32.5%)などがあった。

 この他のアンケートの例として、新町の名称についてアンケートで住民に意見を求めた南部町・南部川村合併協議会(和歌山)などがある。「みなべ町」が35.4%、「南部町」が23.8%、「南部川町」が16.1%、「みなべ川町」が16.0%となった。(注:「南部町」は「みなべちょう」と読む。「南部川町」も同じ)

「合併の是非」「合併の枠組み」などを問うアンケートから、今後は「合併後のまちづくり」などを問うアンケートが多くなっていくのではないだろうか。特例法の期限を逆算すれば、「合併の是非」「合併の枠組み」の議論は既に終えて、具体的なまちづくりについて考える時期が迫っているのだ。

 ちなみに、アンケートの結果について自治体はどのような態度を取っているのだろうか。「合併についての是非」が半々の場合や、アンケートの結果後まだ自治体の態度が明確になっていないところを除いて、ほとんどの自治体がアンケートの結果を参考にして、合併に対する態度を決めているようだ。法的な拘束力のないアンケートとはいえ、住民の意見が自治体の意向に反映されるようになっている。(田中潤)