今年になって市町村合併に関する最大のニュースといえば、群馬県・富士見村長のリコールが成立した(2月16日)ことだろう。じつは他にも広島県・黒瀬町、静岡県・戸田村、鹿児島県・下甑村などでリコールの動きが起きている。合併をめぐって自治体側と住民側との考え方には開きがあるが、対立が深刻化したケースがリコールに発展しているということだろう。
県境を越える合併も進み出した。1月6日には、岐阜県・中津川市と長野県・山口村が法定協議会を設置。
2月24日の埼玉県・幸手市議会では、茨城県・五霞町との法定協設置議案を可決。4月1日に埼玉県内初の「県境」法定協が発足する。
一方、和歌山県・北山村でも三重県・熊野市と「県境」合併の可能性があったが、2月23日に住民の声を聞くため意向確認調査を実施。その結果、同県の「新宮市・熊野川町と」が約73%、「熊野市などと」が約27%に。これを受けて村長は「早ければ3月中に新宮市、熊野川町との法定協を設立したい」と述べた。
合併を巡る住民投票も増えている。1・2月だけでも、埼玉県・岩槻市や静岡県・東伊豆市など全部で15件。昨年1年間に実施された住民投票が7件。今年2ヶ月間で、すでに昨年の倍以上の件数が実施されたことになる。
そのうち、2月2日に静岡県・東伊豆町、2月9日に三重県・名張町では、住民投票で「合併しない」が多数を占め、単独でやっていくこととなった。
その他、1月26日に埼玉県・岩槻市では、さいたま市との合併を望む声が多数を占めた。東伊豆町や名張町以外の住民投票では、岩槻市のようにどの枠組みで合併するのか選択する形で行われた。
1・2月に実施された、あるいは結果が公表されたアンケート調査の件数は100件近くに上る。その約1割が複数自治体で協力してアンケートを実施している。
アンケートの内容としては、合併自体の是非・合併の枠組み・合併後の自治体像など。なかには、岡山市のように政令市移行についてのアンケートや、徳島県・上那賀町のように庁舎位置を問うアンケートなどもあった。
1・2月に設置された法定協・任意協数はそれぞれ55、64。昨年までに設置された協議会の数がそれぞれ192、195。この2ヶ月間で、法定協・任意協を合わせて全体の約30%近くの協議会が新たに設置されたことになる。
ちなみに、協議会を設置した人口20万人以上の市は、法定協が鹿児島市、高知市、千葉市、長崎県・佐世保市、広島県・呉市、福岡県・久留米市、任意協が秋田市、山形市、長野市、愛知県・一宮市、兵庫県・姫路市、那覇市の全12市。
住民投票、アンケート調査、法定協・任意協数をみる限り、全般的には2005年3月の合併特例法の期限に向けて、各自治体が合併への動きを加速させているようだ。合併の準備時間も含めて期限を逆算して考えると、自治体に残された時間は残りわずか。特にアンケートなどを実施する動きは、今がピークだろう。そろそろ協議会設置へ向けて動かないと、期限に間に合わなくなってしまうからだ。(田中潤) |