桜並木が広がり、鳥や魚が遊ぶ楽園として、平穏な姿を見せる小糸川は、過去、洪水で流路が幾度となく変る地異が頻発した。その典型的な名残の一つが富津岬である。 小糸川のもう一つの特色は、水面が周辺の田畑からみてかなり低いことである。川の水面から川縁(川周辺の農地の端)を見上げると非常に高く、その高さが家の屋根を上回るところが多い。大旱魃に見舞われたとき、水車造りの名人 藤原治郎吉が、多量の水を川から高い農地まで汲み上げる大きな揚水車を作り、流域の暮しを救ってくれた。 災害をもたらす洪水を防ぐための河川改修、旱魃の被害を解消するための揚水車構築は、水車周辺に住む先人達の農耕に対する悲願であり、水との知恵比べであったことが窺い知れる。まさに「水との闘い」であったといっても過言ではない。 |