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シリーズ討論

環境税のあり方をめぐって討論
− 第5回 市民税調の記録 −

小林光環境省大臣官房審議官
国民会議ニュース2002年11・12月号所収

 12月10日、第5回市民税調を開催し、環境省小林審議官から環境税についての現在の環境省の考え方などをご説明いただいた後、討論を行ないました。以下は、その記録です。


T 環境税の活用に向けて
 1 環境税の性格
 2 温暖化対策と環境税
 3 経済活性化と環境税
 4 環境税の利点
 5 環境税の仕組み
 6 今後の段取り

U 自由討論



T 環境税の活用に向けて
    小林 光・環境省大臣官房審議官説明要旨


 私は、環境庁ができて3年目に入りまして、主に経済と環境の関係や、地球規模の環境問題を担当しておりました。環境税との関係では、92年のリオデジャネイロで開催された地球サミットの少し前ぐらいから、地球全体の環境保全をファイナンスしていく、つまり途上国などは資金不足という中で、世界全体の取り組みを進めていくために資金的なリソースの動員が必要になるということで、にわかにその頃から国内的にも国際的にも環境税という考え方が、現実味を帯びてきたということがあり、その頃から本件をタッチしております。また、その後の温暖化防止京都会議の時にも、環境税的な手段も俎上にあがってきましたが、京都会議の担当課長としてその検討をしました。今年の9月から、経済とのかかわりを担当する総合環境政策局の審議官を命じられ、又、環境税の議論の担当に戻ってまいりました。
 さて、本日与えられました題は、実は今の環境省のスタンスを飛び越えた、もっと先のお話になります。環境省の現在の公式なスタンスは、「2005年以降なるべく早い時期にこれを導入していくとが必要であり、そのために検討する」というものですから、環境税をどう実際に活用していくかということになりますと、大分先回りした話をしなければなりません。政府の立場としては、環境税は、本当に検討課題の段階で、いつ、何を、どうするかも決められていないというのが正直なところでありますから、個人的な見解ですがということを加えさせていただくかもしれません。その点、あらかじめご了承いただければ幸いです。

1 環境税の性格
 最初に、そもそも環境税とは税としておかしな税ではないかという議論がよくあります。つまり普通の税とは、国家に対して財政的資金的な能力のある人が、注文をつけずにコントリビューションし、そのいただいた税金は、国が国のために自由に使うというものです。それに対して環境税とは、能力があるかどうかではなく、環境に影響を与えている人から、影響の度合いに応じて税を徴収する、という政策税です。その税を課すことで、環境問題が解決していき、税そのものがなくなる可能性もあります。その意味でも、課税原則とは少し異なる。つまり、直接には国家の必要を満たすためにとる税金ではありません。課税原則には、昔は公平・中立、後この他には簡素というものがあります。実質的な内容としては、公平、国家に対するコントリビューションができる程度に応じて公平で、お金をとった結果としての経済の姿がとる前と変らない、形としては相似形となる。つまり中立です。そういうものが今までの課税原則ですが、それに少し悖るのでないか、という議論があります。
 これに対して、私としては、むしろそうではなく、これからは国民の意識に合致した租税になってくるのではないかと言いたい。結局、今の納税者の意識とは、行政コストを負担しているということだと思います。国が自由に使っていいお金を、自分の財政能力・資金能力に応じて差し上げているのではなく、行政の提供するサービスに対して、そのコストを負担しなければならないから、払っているのだと思います。昔の大蔵省が申告納税の初日に有名人の方をたてて、確定申告書を出しているところをニュースなんかで出しますが、ある納税者のコメントとして、私の税金を戦争のために使わないでくださいといって払っているニュースが印象的でした。ですから、むしろ公平というより、社会的コストを担う、税金として正当なものかどうかという公正に、納税者の意識は変りつつあるのではないでしょうか。
 もう一つは、これは後で議論しなければいけませんが、活力。つまり、中立じゃなくてもいい。税をとった後の経済の姿がとる前の経済の姿と相似形、そういった経済中立という意味ではなく、むしろ税金を課すことで活力を損わないか、あるいはもっと積極的にいえば活力は増えるか、ということで税を考えていこうとなってきています。活力に資するものかという点は、細かい論点として議論しなければなりませんが、少なくとも申し上げたいのは、税が経済に対して中立であるというの絵空事で、税とはむしろ政策の手段だと認識されるようになってきたと思います。そうした点を考えると、まず環境税とは、いずれにしてもコストを負担する手段であって、このために税を課すということが分かる姿がむしろ積極的に望まれるようになってきていると思います。
 また、かたや国民の意識も実は環境のために何かしたい、ということです。余談になりますが、20年前、地方の現場に出向したときのアンケートで、環境のために何かしたいということだけれども、何をしたいかを尋ねたところ、一番人気がなかったのはお金を払うということでした。その一番嫌われていたお金を払うことにも国民の意識は最近非常に高まっております。国政モニターという内閣府が行った世論調査のアンケートで、地球温暖化防止対策として燃料・エネルギーに課税する環境税の導入については賛成か反対かと尋ねたところ、賛成が45%、どちらかというと賛成が29%で過半数は賛成という状況です。その他、新聞などの世論調査でも、だいたい賛成派が40%台後半いるようです。こうした国民の意識、納税者の意識や環境に関わる国民の意識からしても、環境税といった手法はかなりスムーズに受け入れられるだろうと思います。

2 温暖化対策と環境税
 しかし、環境税という政策をとることについて、そういう考え方が受け入れられますと言っても、本当に温暖化対策に税を使うことが必要なのかは別の検討が必要だと思います。これが、二つ目の論点になります。今の温暖化対策はご案内の通り環境税といったものには全く触れていません。今の温暖化対策は、100ぐらいの取組み、施策がありますが、煎じ詰めてみますと、一部の規制と大企業の自主的な取組み、そのほか公共事業的なものがいくつかある程度というのが正直なところです。規制で一番効いているものに、おそらく自動車の燃費規制があります。それから省エネ法に基づいて、エネルギー使用の多い工場に計画を出させ、計画を達成していない場合、勧告を受けるという規制的な手段が若干入っていますが、温暖化対策と明示した上での話ではありませんので、エネルギー政策の中でできる限りのことはしている、しているが規制的な手法は非常に限られているわけです。
 それでうまくいけばいいのですが、ここからは個人的な意見になりますが、どこに問題があるかと言えば、結局規制を受ける人や自主的取組みをする大企業を除くと、ほとんどの人は、ほかの人がやっている対策にただ乗りしているということになります。大企業が一生懸命削減をする、何%減ったといっても、国全体では減りません。残念ながら産業部門が排出する二酸化炭素は、90年の4億9000万トンから4億9500万トンへと500万トンぐらい増えていますが、90年比ではほとんど変らないという状況です。それに対して、民生とか運輸部門は、それぞれ2億6300万トンから3億1800万トン、2億1200万トンから2億5600万トンへとかなり大幅に増えています。産業部門を更に詳しく見てみると、大企業の自主的な取組み相当な効果を出しているが、それ以外はあまり効果を出していない。だから国全体の二酸化炭素排出量が、現在90年比で8%増という結果になっているわけです。だから、今自主的にやっている取組みで十分だとは思いませんが、もっと大きな問題としては、何ら対策をしていない人が大勢いるということです。こうした人たちに、車の使い方や家庭の生活をいちいち規制するということはなかなかできません。ではどういう方法があるのかということで、政策の革新が必要になってくると思います。
 それからもう一つ、京都議定書ではご案内のとおり排出量取引ができます。現在排出量取引ができるのは先進国の間だけですけれども、先進国、政府ももちろん企業も排出者もそうですが、先進国の中では排出量目標が課されていますので、それぞれの見あいで減った分を売るということができます。さらに、途上国との間では、クリーン・ディベロップメント・メカニズム(CDM)という仕組みがあって、先進国の企業や政府が、途上国での削減に投資をして削減した分を自分の削減目標量の内にカウントできるようになっています。端的にいえば、炭素を削減する機会が国際貿易の対象になったということです。今まで、途上国は何も売るものがなかった、極端に言えば最貧国は何も売るものがない。けれども、炭素削減の機会をつくって売れるということです。そういう貿易財が一つ増えたわけです。その貿易を日本はしないのか。一般的に経済の発展とは交換の利益と新技術の2つしかありません。その交換の利益の対象が一つ増えたわけですから、それを利用しない手はない。
 それは、国内削減をしないで国外で削減して取引すればよいというのではなく、少なくともそうした新しい貿易財が出てきたことに、日本が全くコンサバティブでいいのか、という議論もあると思います。残念ながら国内的には、国内の二酸化炭素を沢山出している大企業にとって、削減したことによる利益というものが正直ありません。もし私がそういう立場だったら、例えばドイツに売ってやろうとか、イギリスに売ってやろうと思ったとしても不思議ではない、というぐらい日本の政策は実は遅れている。下手をすると日本国内での削減量が流出してしまう可能性すらある。日本は、京都メカニズムという新しい貿易の仕組みへの対応で後手に回っているわけです。つまり、多くの人に環境対策のモチベーションを与え、参加してもらい、さらに、大規模な人にとっては、排出量取引といったような新しい商売にも進出してもらうために、環境税が必要ではないかと思うわけです。

3 経済活性化と環境税
 しかし、今の経済を考えると、どこもデフレの下で体力がない、そんなところにまた出費だけ増えたら困るという議論もあります。これが三つ目の話です。ここでもやはり、経済との関係でも環境税は役立つと思います。むしろ、ご案内の通り需要が足らない、投資先もないというような時に、たんす預金していても仕方がない。むしろ、国内の温暖化対策技術に投資をするという仕組みがなんとかつくれないかということです。環境税がかかると、対策をしない人は税だけ払うことで支出が増えて赤字が増えるではないかという議論があるかもしれませんが、マクロに考えれば、それが新しい需要を生むわけです。
 話は先へ行きますが、そもそも環境税はどういう風に効くのかという話について説明したいと思います。環境税とは、何が起こるかというと燃料価格がその分上がるということになります。普通の方が思うのは、費用を節約する気持ちの高まり、燃料が高くなるとやはり大事に使わないととなる。ということで不要不急の燃料消費が節約されて二酸化炭素が減る、ということです。普通の人はこう思うのですが、私どもいろいろシミュレーションして環境税の導入でどのぐらい削減できるか計算しておりますが、実はこのルートは全然計算しておりません。一般の方のそうした節約が起こらないとはいいませんが、実はこの部分はそれほど数字的に重要と思っておりません。むしろ大事なのは、燃料価格の上昇から上のほうにいった線をカウントしております。これが、環境税、この場合には二酸化炭素を減らすための炭素税の効果だと思います。
 つまり、燃料価格が上がると、一つの省エネ設備があったとすると、その省エネ設備が節約する燃料節約額が増えるということになります。例えば燃料価格が2%上がれば燃料節約額も2%上がるわけです。そういうわけで事態が進みますと、省エネ投資がより高度なもの、2%分高度なものが引き合うということになるわけであります。そういう形で省エネ投資を行う人が増えてくる、あるいは、省エネ型の製品が普及してくる。その結果、産業構造として二酸化炭素の排出の少ないものに変わっていく。その結果、二酸化炭素が減っていく、そういうルートです。また、この省エネ投資を行う人が増えて省エネ技術も進歩する、省エネ製品も価格が低下する、そうすると省エネ設備による燃料節約額も増える、増えればそれだけ省エネ投資額も増える、というルートが働いてきますが、この省エネ投資に対する効果、つまり長期的な設備更新の効果を私どもはよく計算して、二酸化炭素がどれだけ減るのかを考えているわけです。
 それから、今、私は供給サイドへの影響を話しましたが、実は需要サイドでも同様の効果があります。例えば、製造時に二酸化炭素を多く排出する製品は価格が上がる、あるいは、使用時にたくさん二酸化炭素を出す製品の維持費が上がります。すると、私が消費者であれば、性能が同じであれば、二酸化炭素発生の少ない製品を選ぶ方が得になるので、その分だけ二酸化炭素発生の少ない製品の需要が高まる。そういった、需要サイドの力も働いて、先ほどの二酸化炭素排出量の少ない産業構造への転換が、供給サイド、需要サイド合わせて進み、その結果二酸化炭素が減る。これが、基本的に環境税が効果を発揮する経路です。申し上げたいのは、需要を減らす効果もありますが、省エネ投資、省エネ設備の供給を増やす対策でもあるということです。
 今は資源が全然雇用されていない、需要も投資もない時ですから、強制力を持つ環境税とは、いわば新しい投資を強制する、強制的に促進する、促す政策ともいえると思います。確かに、環境対策費がミクロで増えると、多少は経済的な影響があります。つまり、設備投資が増えることはプラスの影響もありますし、それから、需要が減るというマイナスの影響もあります。マクロで見ますとそれの差し引きが新しい政策をとる場合の費用となりますが、それがゼロかというと、そうではないと思います。ただ今のように、資源が使われず、雇用も足りない、失業者が多い、設備も遊休化しているという時は、むしろ経済がよくなる方に働く可能性の方が高いと思います。仮に資源が完全雇用状態であれば、環境費用が個々の経済主体に余分にかかり、環境を守るための費用が要るわけですから、どうしてもGDPの成長が下がる可能性はあります。しかしながら、今の経済が順風満帆な状態で発展している中で環境費用を上乗せするケースを考えた場合でも、一つは環境対策をしなければならないといった前提からみると、それは当然の費用です。今まで払ってないのがいけないということもいえます。今の産業構造が環境対策なかりせば将来に稼げたGDPに対してロスが生じる、ということをもって環境対策の費用と考えるのは、やはりおかしいと思います。本来、環境費用を払った上での経済発展を考えなければいけません。現に既存の産業構造も多くの問題抱えていて、これを変えなければいけないというときに、環境対策費用がかかるともしかして将来稼げたかもしれないGDPが減るかもしれないという議論はナンセンスだと思います。むしろ新しい経済をつくると考えれば、決して悪い選択ではないと思います。むしろ、交換の利益と技術発展という経済発展の源泉を考えると、やはり、この温室効果ガス排出を減らしていくというビジネスに早く参入して、創業者の利益をとるということのほうが、日本にとっては有利ではないだろうかと思います。そういう意味で経済との関係というのも一つの論点ではありますが、私としては、合理的な温暖化対策についてはむしろ経済をよくすると思います。
 さらにアメリカが入っていないのにやるのかという議論もあります。ここについてもいろんな議論があるとは思いますが、一点だけ申し上げれば、アメリカの参加とは関係なく、京都メカニズムで、たとえば東欧の余った排出量を買うということができるようになりました。ロシアも来年早々に批准して京都議定書は上半期には発効すると思います。そうすると、排出量取引ができる関係で国際的な排出削減費用は底値で形成されてしまう、かりにトン千円とか二千円とかいう値段で、外国の削減量が買えるようになる。問題は、むしろ安い東欧の排出量を買ってくれば本当に日本にとってそれでいいのかどうか。むしろ、その国内で経済の振興ということを考えると、純粋な環境税ではないかもしれませんが、国内で今対策をしていない人からお金を頂戴して、お金があれば対策をするという人にお金を回す仕組みをとったほうが、むしろ国内の発展のためにいいのではないか、国内で一トン削るのは仮に外国で削るのよりは高かったとしてもそちらの方がいいのではないか、と思うわけです。いずれにせよ、京都議定書が発効すれば、選び方としては国内でどこまでやるのかということだけが重要な政策的論点となってくるわけです。自分たちの国をどうしたいのかという観点からこれを考えていくことが大事だと思います。所詮アメリカはいつかは、入ってくると思いますし、やらなくてよいという仕事ではありませんから、そうならば、むしろ早く削減技術を持っている国となる方が有利になると思います。そこは議論の分かれるところだと思いますが、ご関心があれば後で議論したいと思います。それから行財政改革との絡みについては、温暖化対策税の仕組みそのものともかかわりますので今回スキップして次の論点に行きたいと思います。

4 環境税の利点
 環境税とは現在、特定の人だけが対策をしているというのを改めて、全ての人が対策に参加をしてくる仕組みであると考えていただければと思います。最後に、次のような利点があるから温暖化対策税を活用されたらいかがですかというのを、結論として申し上げたいと思います。
 1つ目はすべても人に対策の動機づけを行うということで温室効果ガスを出す人、排出に影響を持っている人すべてに動機づけを行う、ということが規制とか自主的な取組みと違った税のメリットです。2点目に公平性ということも言えると思います。環境税という名前になる以上、課税標準というか課税の考え方を環境への負荷、影響の程度に応じた負担をお願いするということでありまして非常に公平であるということです。それから、環境税は先ほどご説明したメカニズムの影響で二酸化炭素削減の行動を生み出すわけですが、どういう行動をして二酸化炭素を減らそうかということについては、そもそも税を課せられた人が税を払いたくないという動機でやるその自主性に任されるので、技術の選択は自由です。だから、新しい技術がどんどん選ばれて育っていくという意味での経済合理性があるとも考えられます。その後税収の使途という話は、これはまた別途の議論でありますからこれは置いておいて、そういった3つの利点は、今の温暖化対策にはないものですから、補うためにこの利点を生かす税を考えたらいかがでしょうかということになります。

5 環境税の仕組み
 次に各論に移っていきたいと思います。温暖化対策税を考える場合、例えば何に課すのか、税率はどうするのかといった色々な要素があります。とりあえず環境省としては、考えるべき要素として、課税対象、税率、課税の段階、税の使途などをあげています。そもそもこれを白地で考えるとしたらどうなるか。
 まず税率から話を始めてみたいと思います。実は環境税というのは色々な種類があります。環境を利用する行為に対して、環境への負荷の大小に応じた税額を課することで、税金を課せられた人が自ら環境負荷を減らす行動、対策をとることを促す、というのが環境税であるといえます。さらに、税収を環境対策に振り向けることによる効果を併せて狙う、ともいえます。こういう場合、環境の目的税と狭く言うこともできると思います。こうした環境税には、色々な分野があって、例えば現在地方自治体で考られている産業廃棄物税もあります。アメリカや外国ではフロン税とか、温暖化対策税、炭素税みたいなものの他、硫黄酸化物税、窒素酸化物税、排水課徴金、使い捨て容器に対する税、農薬に対する税、それからデポジット・リファンド制度など、様々な環境税があり、典型的な税も既にいろいろな国で随分と使われるようになってきております。
 そうした環境税の中に温暖化対策税というのもあるというわけです。温暖化対策税とは、温暖化に悪影響を与える物質に対して温暖化に悪影響を与える程度に応じた課税をするというものです。よく言われる炭素税とは、温暖化に悪影響を与える物質、これは京都議定書では6つの種類のガスを取上げていますが、そのうちの二酸化炭素だけに着目したのが炭素税ということになります。話は少し変わりますが環境税とはちょっと別にグリーン化というのがあります。グリーン化とは、既存の税の本来目的を損なわない、その達成に支障のない範囲で環境保全上の効果をなるべく高めてやろうということです。それに対して、もっぱら環境対策を目的に入れる税を環境税と言うことになります。
 さて、そうした環境税には、色々な種類があります。環境負荷との関係でいえば、ピグー税、ボーモル・オーツ税、ポリシーミックス下での環境目的税という三つの典型的な環境税があります。それぞれ提唱した経済学者の名前がついていますが、そのうち教科書的な環境税がピグー税です。これは、汚染がもたらす被害額をもれなく税額に反映させるというものです。例えば1トンの二酸化炭素を出すという行為で、例えば出している人には全然影響はないけれども、出してない人にとって、1トンの二酸化炭素の排出が10万円の損害を生むと仮に仮定すれば、その10万円を二酸化炭素1トンあたりの税額にしてしまえばよい。そうすると、市場の力でそういった汚染行為が減るという論理です。それが結果として社会的にみると、生産とか汚染物質を出す私的な費用と、結果として汚染を被って被害者に生じる社会的費用との合計額が最小化され、一番経済学的に合理的である、と言うのがピグーの提唱した税金です。しかし、それはものすごく高い税になると思います。
 それに対して、ボーモル・オーツ税とは、社会的費用を全て税額にしなくてもいいのではないか。とりあえずここまで減らせればいいという排出量の目標を定め、その為に必要な税額を政策的に決めて、そしてそれを税金として徴収すればいいという考え方で、税額は少し安くなります。色々なシミュレーションをしていますが、実はこの温暖化対策大綱では、二酸化炭素について言いますと、エネルギー起源の二酸化炭素が0%、それだけではなくてさらに、革新的技術開発、国民各界各層の更なる地球温暖化防止活動の推進で2%で稼ぐ、というふうに考えています。6種類の温室効果ガスのほとんどが二酸化炭素ですから、それを二酸化炭素でやるとすると、二酸化炭素は結局−2%となります。この−2%を達成するための税額を計算すると、大体、炭素トンあたり3万円から5万円の税額になります。例えばガソリン換算で1リットルあたり20円ぐらいの税となるというのが、このボーモル・オーツ税であります。
 これに対して、さらに税率の安いものというのもつくれるわけであります。それは何かといいますと、税がメインの手段ではない、他の対策として、規制や自主的取組みもあって、いろんな対策で排出量を減らすわけです。端的に言えば、二酸化炭素を減らす活動に補助金をあげる。それと組み合わせる、というようなことをやりますと、対策をしない人は税金を払い、対策をする人は税金を払わない上に補助金まで貰うという仕組みを考えれば、断然、対策をする人が有利になります。このように、税によるいわばムチだけじゃなくてアメも併用するというやり方でやると、税率は下げられて、−2%位を達成しようと思うと税の分担は大分少なくなります。こういう積極的な形で他とポリシーミックスと組めば、計算上は、3千円位で効果を発揮します。3千円をガソリン換算にするとリッター2円くらいになります。今、日本では三億トン強(炭素換算)の温室効果ガスの排出がありますから、だいたい9千億円くらいの税収になる。その9千億円をすべて環境対策、温暖化対策の補助金にまわすと、今申し上げたような低い税率でも効果を発揮します。
 これらの環境税には、一長一短があります。ピグー税とかボーモル・オーツ税は非常に税率が高いので、税収はもの凄く大きくなります。政府は環境支出を色々していますが、政府自身が環境保全に使う予算の総額は約3兆円です。その内、地球環境の保全と言われている、まあ殆どが温暖化対策であり、まあ原子力関連事業とありますが、原子力のうち特定の部分、安全性確保とか廃棄物処理とか限られた部分で原子力施設そのものをつくるお金ではありませんが、それらを含めて地球環境の保全には、8千億円を支出しています。つまり、政府は、環境対策費として三兆円くらいつかい、温暖化対策として約1兆円くらいつかっていますが、それを遥かに超える税収が出てきます。ボーモル・オーツ税の場合、税額を3万円とすると3億トンの温室効果ガスがあるわけですから、10兆弱という税収になり、今の政府支出を全部そちらに振り替えてもまだお釣りがきます。そうなった場合、税の効果で相当環境改善がされますので、政府の環境支出は今みたいに3兆円だとか1兆円もいらなくなる可能性もあります。するといよいよその税収は何に使うのかという議論になります。
 そこで考えられるのは、他の税を減税する財源にするということが一つあります。これは二重の配当とよく言われますけれども、例えば福祉財源にあてるとか、雇用を増やす財源にあてるとか、そういうこともできます。あるいは法人税や所得税、消費税をまけるといった他の税の減税財源に使うこともできます。あるいは減税をしなくとも政府のほかの歳出に充当するということもできるわけであります。政府の環境支出の3兆円のうち、石油税などの特定財源を使っているのも相当ありますが、一般的にいえば法人税、所得税、消費税などの一般財源を充てていますが、それが要らなくなる上、政府も他の歳出に充当でき、場合によって減税も出来る。そういった大きな税収が生まれてくるわけであります。これを積極的に訴えるという考え方も一つあると思います。これは、バッズ課税グッド減税という考え方で、社会にとってあまり好ましくないものについては、積極的に税をかけ、経済が発展する上でいいものについては税を安くしようという考えは、明示的に捉えているわけではありませんが、そういったやり方もできます。そんなことをすると二酸化炭素がだんだん減って税がとれなくなるという議論があるかもしれませんが、京都議定書ではせいぜい6%減らすことを言っているだけで、94%は残るわけです。そこまで税として信用のできない税であるというわけではありませんが、ダイナミックに考えればそういった経済の発展にとって好ましくないものには課税をし、課税の効果も利用してそれを減らし、悪いものがあれば政府の努力も要るわけですが、そうした政府のコストも減らし、市場の力をつかってそういうものを減らした上で、更に上がった税収で他のいい事をしようというダイナミックな考え方もできるわけです。
 それに対して、ポリシーミックスの下での目的税になりますと、実は先ほど言いました9千億円もの税収は環境支出に引き当てなければいけない。それを前提にして税率を安くしているわけですから、そこの税収の使途というのは環境対策に特定されるという関係があります。一部分、現在、法人税や所得税で充当していた支出が解放される可能性はありますが、ただ問題は、今温室効果ガスの排出量が目標を上回っているわけでありますから、今までと同じお金をただ一般財源から環境税に振り替えただけでは環境はよくなりません。そういう意味では、環境対策の純支出が純増にならなければいけないと思います。煎じ詰めて、税率をある程度高くしていけば、環境対策の必要性を超えて、少なくとも歳出面での必要性を超えて税収が生まれる。その結果もっとそれを活用して他の政策目的、福祉や雇用、経済発展などに当てていく余裕がでてくるわけです。これらは、現下の経済情勢の中では、政治的なリーダーシップで訴えて初めて可能になるかということになると思っています。
 話を元に戻すと、環境省では別に福祉や雇用をやっていないという縦割りもあるかもしれませんが、ピグー税導入ということになれば、そもそも税とは何か、どうあるべきかという発想自体を変えないととても入らないだろうというふうに思います。かたや温暖化対策についても、できることは既に始めているわけですから、そこを全て止めて、全部税に振り替えるということでもないとも思います。またもう一つは、税を、ピグー税とかボーモル・オーツ税みたいな炭素について例えば3万円とが10万円といった税をかけることは、かなりダイナミックな産業構造変化、市場変化を起こすことになります。政策的に産業構造を変えていくということになりますが、残念ながらそこまで環境対策で新しい日本をつくろうというまでのコンセンサスはなく、むしろ何とか今の産業に体力があるうちに不良債権処理をしようという程度の話が現在の経済政策で、ダイナミックな産業構造変化をあえてやろうというほどの体力もコンセンサスもないと思います。そういうことを考えると、ポリシーミックス下での税をまず選択をせざるを得ないだろうと思います。
 仮にそうだとすると、一旦政府に入った税収を、今度は補助金や公共事業という政府ならではの環境対策助成に支出に回すわけですが、どんなのもがそれに値するかを考える必要があります。そうした補助金なり事業をどういう資金配分メカニズムで実施をするのかという問題が出てきます。たとえば今の特別会計制度みたいな縦割り型の資金配分をつかうのか、あるいは、財務省が全部横割でやっている、ただし専門性はないといった資金配分に任せるのか、その辺の振り分けも必要になってくるかと思います。それはまた別途考えるとして、結果として何が起こってくるかというと、歳出をどのようにして対策に振り向けるかというところで三つの方法があります。一つは引き続き一般的財源を充当すべきというものです。例えば温暖化対策の制度づくりや一般的な調査を原因者負担によらず、一般的な財源、消費税であったり法人税であったり所得税で、広く国民が負担するというものです。それから別目的、今環境目的の目的税システムはありませんが、別目的の特別会計があります。最近環境の看板を使うのが皆好きでありまして、環境対策を特別会計でやるということも考えられます。しかしながら、専ら環境対策、温暖化対策のための支出については、やはり、その目的のために税を集め、その目的のためにつかうのだという、目的ととられている政策が整合的にくっついていて対外的に透明に見えるという仕組みが必要でしょうから、そこはそこで新たな例えば時限的特別会計のようなものも考えられると思います。歳出をイヤーマークする、環境対策にイヤーマークするための一番合理的な仕組みはこういうことでありますが、新しい制度を考える必要があるのではないかと思います。そこには引き続き一般的な財源でやるべき対策ではないとされたもの、既存の特会でもできないものが当然来ますし、あるいは既存の特会でやってはいけないもの、むしろ新しい温暖化対策の旗印の下でやるべきものも移ってくるだろうし、今まで全く手当てされていないものもここに招致してくる。そういうものを抱えて資金配分するメカニズムが新たに出てくるのではないかと考えられます。
 それが歳出面ということになりますが、歳入面の税率のところで温暖化対策支援に必要な規模の資金の財源に当てるために目的税的な税にすることがまず考えられます。おそらく温暖化対策支援に必要な規模の資金は、モデル計算上9000億円程度になりますので、税率はトン3千円ぐらいという比較的低インパクトな税になると考えています。税収使途のところに飛ばさせていただきますが、幅広い分野の中で優れた温暖化対策を支援する財源ということでありまして、当然今まで手付かずだった民生対策、それから二酸化炭素以外の6ガスの対策、都市改造、吸収源対策、あるいは革新的な技術の実用化・普及といったことはなかなか既存の特会とか一般財源では手が回っていませんので、こういったものに使うことになると思います。
 それから、環境税の歳出を環境対策に当てると申し上げましたが、いやいやそんなことはないだろうと環境対策の財源だけあればいいのだったら環境税でなくてもいいではないかという議論もあるかもしれません。しかし、消費税や法人税、所得税をつかうのは不公平だと思います。環境対策につかう以上、環境負荷に着目した課税をすれば、たとえ低率の税でも効果があります。これをやはり無視をできないので、所得税から、あるいは消費税に環境対策費分1%上乗せというのでは環境負荷を減らそうというモチベーションにはなりませんので、こちらの方がいいのではないでしょうか。また、それが公平ですし、対策をしないという人がいなくなるという意味でもただ乗りを防げるという公正さもあります。
 歳入面では、所得税、消費税、法人税をつかわずにやはり環境負荷に課税をして税をつかうべきだということになるわけですが、それでは課税の対象をどうするのかということになります。炭素にするのか二酸化炭素にするのか、要するに炭素というのは燃料の中に含まれていて、CO2というのはそれが燃やされて出てくるところに着目してやる。それからメタンのように、原料としては入っておらず、排出段階でしか捉えられないものもあります。色々考えなければならない論点として、本来排出する人に対策インセンティブを与えることが一番効果がありますから排出ベースにかけるのがいいと思います。また事実、排出段階でしか捉えられないものもあります。
 3番目に排出量取引などを考えますと、少なくとも排出者が、仮に上流では税がかかっていたとしても、転嫁されている税額が分か必要があります。なんとか実際の排出段階にも効果のある税にしたいと考えますが、ただ税収を上げてそれを温暖化対策に振り向けるということが低い税率の場合は必須になりますので、税収確保の観点ではむしろ納税義務者が少ない上流課税が便利で、費用効果がいい。それを下流にいる消費者に転嫁していくという方法がいいのかもしれません。その辺は良く考えなければいけないでしょうが、個人的には上流でかけられるものはかけた上で、例えばインボイスなり外税のように税額が分かる形で、排出者である実際の消費者にまで税額を明示して、排出者が対策をとれば後で減税になるという仕組みがいいとは思います。そういう形にすれば排出量取引と実際に温室効果ガスを出す人の自主的取組みとの組み合わせがよくなってポートフォリオが組めるというわけです。
 例えばイギリスの例を申し上げますと、イギリスの仕組みは非常によくできています。この気候変動税は、何も対策をしない人にはストレートにかかるのですが、気候変動税協定というのがありまして、自主的に対策をとったり国内排出量取引に参加して削減する人は税率を80%減らしてしまう。20%の税になるという形で減税を受けられるということになっています。税が丸ごとかかる人というのは要するに税以外に何ら対策をしない人ということになります。税収がどうなるかというと、協定を結ばないけど排出量取引に参加してやりたいという人に補助金を出す、あるいは温暖化対策全般に補助金を出すということに税収をつかっています。さらに例えばとても優れた取組みについては気候変動税をまけるといった仕組みを組み合わせることで、要するに排出者、国民、事業者にとって見れば、税は払いたくないけどもっと自分は費用効果的ないい対策があるということであればそちらで対策をとることを認めるといったポートフォリオを組める仕組みになっているわけです。このイギリスの例のようにプラットフォームとして税をつかっていくということが考えられると思います。
 このようになんとか温暖化対策税の形で課税の方はつくるとして、さらに今ある特会にある税との接合、更には貿易製品をどうするのかといったことも考えなければいけませんが、そういった議論をクリアした上で、将来の温暖化対策税が設計されるべきであると考えています。環境問題の大綱ということで政府税調では、環境税の導入も含めた税制面での対応については積極的に検討を進めていくことが望ましい、という言い方をしています。その際、あくまで汚染者負担の原則にたって幅広い観点から、つまり環境負荷に着目した課税をしなさいということと、課税の対象になりますのはやはり化石燃料が一番多いわけですから、既存のエネルギー関係諸税との関係についてもよく調整をしなさい、検討しなさいということが書かれています。それから最近は政府税調のお株を奪ったりして別途経済政策を決めている経済財政諮問会議の方では地球環境に配慮した税制を検討するという言い方をしています。そういうことで税についての考え方が政府税調あるいは与党の税調あるいは財政諮問会議にも入れられるようになってきておりまして、気運は進んできているということがいえると思います。

6 今後の段取り
 今後の段取りといたしまして、現在とられている対策の効果をよく検証した上で、追加的な対策が必要であれば2005年から実施することになっております。この時点で必要があれば温暖化対策税を私どもとしては提案をしていきたいと考えています。そこに至るステップとして、第一ステップたる2002年から2004年の期間は既存のエネルギー関連税制、特別会計については極力グリーン化をする。例えば道路特会において、暫定税率を維持していただく。この結果入った税収を何につかうのかといった議論があるかと思いますが、少なくとも課税面でいいますと暫定税率を維持していただかないと二酸化炭素が増えてしまう。歳出面でも何か環境対策をしてくれるのであればしてくださいということになりますし、石油特会に関しても、これはズバリ化石燃料そのものにかけるので、非常に似たことをやっているわけです。省エネ、代エネということをやっているわけですが、ここもグリーン化をしてくださいということをかねてから申し上げておりまして、今回経産省とのお話が成り立って環境省も共管をし、グリーン化をするということになりました。こうした練習試合をしながら第二ステップの温暖化対策税に進んでいきたいと思っております。
 以上、限られた時間でほとんど断片的な話ばかりで申し訳なかったのですが、後は至らないところ、ご質問いただいて補足をさせていただきたいと思います。以上でございます。




U 自由討論


安藤 : 安藤と申します。我々にとって非常に身近な環境問題というのが本当に温暖化であるのかどうか、これが身近というのがなかなか問題ですけれども、環境庁でこの問題をお考えになるときにいろんな意味で税をもって対策を考えるのは必要であるとは思いますが、温暖化というのが一番何のためにということであれば、国際的な枠組みの中で出ている議論であるということをおいて、日本の現状との関連、あるいは途上国の水とかゴミとかということとの関連、環境の切実さとの関連で、そこまで考えた場合にやはり温暖化というのが一番分かりやすくかつ必要性があるということなのかどうか。この点を伺いたいと思います。

小林 : 実際に世論の方で、国民にとって一番切実な環境問題とは何ですか、と聞きますと典型的には二つがダントツで取上げられるのですが、一つは温暖化、もう一つは廃棄物の問題、これが国民にとって一番心配な環境問題といわれております。つぎに、そういった問題の解決のために税が役に立つかどうか、という別途のクライテリアがあると思うのですけれども、そのゴミの場合にも税的な手段、経済的な手段というのは役には立つわけでありますが、普通は処理料金、税というよりは料金制度です。例えば最近ですと粗大ゴミの処理の有料化ということで実際にコストを排出者に負担していただくという仕組みが段々できてきて、むしろ一般的に税というとり方ではなくてその都度その都度の料金制度というのがかなり地位を固めておりまして、その手が有効ではないかと考えております。もう一つ温暖化についていえば、これも今まで規制できることについてはやってきたわけですけども正直規制に手詰まりであるというようなこと、それから自主的取組みというのはやっておりますけれどもこれは一部大企業に限られる、というようなことを考えますと、ほとんどの人が対策に参加していない。こういう状態がありますので先ほど申し上げましたように税をもって、税というのはすべての人にかかわりがありますけれども、そういった形ですべての人に参加をしていただくということが一番効果的ではないかということで、私ども行政の側から見ると、対策における税の活用ということになりますと、やはり一番に温暖化対策というのを考えたくなるというのが正直なところであります。

藤波 : 日本総合研究所の藤波と申します。今回あまり説明がなかったことかもしれないのですけれども、最近少し話題になっております石油税見直しの件があるのですけども、今回ご説明になった環境税と今回の石油税の見直しの位置づけについて、ご説明いただきたいと思います。

小林 : まず、実は石油税の見直しへの対応について役所のほうから自民党の環境関係、部会だとか調査会だとか色々ありますのでそういった部会やなんかの会長さんとかその下にある小委員長さんとかその上にある調査会長さんとかいうような人たちが皆集まってきた役員会というのがあるのですが、その役員会に大臣から報告したペーパーであります。報告したのが12月5日ということであります。そのメインテーマというのが石油税の見直しと温暖化対策ということで石油税の見直しをどういうようにしたのかということの報告であります。自民党には見直しの最中に色々ご意見を部会で聞き、そして役所として色々折衝、交渉、調整をした結果を更に12月5日に報告をしたという段取りになるわけです。石油税との関係とかその中におきます環境省の働き具合というのは関心事項だったわけです。その点についてのご質問だと思います。まず、5ページをご覧いただくと、これが11月15日に経済財政諮問会議に平沼大臣と我が方鈴木大臣とが連名で提出した資料でありまして、これがオープンになっておるわけですが、ここで石油税の見直しについては次のように書いてあります。今回の政策見直しというのはエネルギー起源の排出抑制策を抜本的にしようとかセキュリティー対策を強化しようといったような観点から負担の公平を図る観点で負担構造を組み替えたということでありまして、エネルギー政策として総合的に色々なことを考えて、セキュリティーとか色々なことを考えて、公平な負担とを求めるという意味で税率を決めました。今回の見直しの内容は、そういうエネルギー政策に対する負担の公平という観点から、今まで負担を全くしていなかった石炭を課税対象に追加しました。それから、税率も変えているわけでありますが、それは、各燃料の税負担能力や負担格差、燃料の持つ性格等々をエネルギー政策の観点から総合的に勘案して税率調整したということで、環境税であれば、さっき申し上げたように、温室効果に比例した税率になるべきです。単純に言えば、炭素換算1トンあたり幾らという課税表示になるわけですが、今回の石油税見直しは炭素トン換算すると実はバラバラであります。やはり石油が一番高いと思います。それで必ずしも炭素税そのものではないです。いろいろなことを考えて税率調整しました。歳入面つまり課税面で見ても、性格はエネルギー政策であり、歳出も色々な事に充てる、内容も環境負荷に比例したものではない。ということで、CO2排出抑制を目的とする環境税とは異なるという整理をしています。環境税をどうするのかというとそれは第2ステップに向けた検討課題ですと、両大臣が共通して言っているということであります。温暖化対策税についてはどうするのかというと、今回の石油税の見直しの取組みというのも含めて、2004年にはさらに温暖化対策としての見直しを行う。だから今回決めたこともそのときまた変更することもある、そういう整理になっているわけでありまして、実際2004年に見直しして、2004年にすぐに環境税に乗り換えるわけではありませんから、仮に2005年に乗り換える。そうするとすれば、3、4、5年の半ばぐらいは、石油税でやっていく、そういうことになると思います。そういうわけで、現在の排出量の超過状況をみますと第一ステップ、何もしなくてもいいというわけではありませんので、極力そういうことで歳入面でも石炭課税あるいは税率アップということで対応する、それから歳出面で言いますと、もちろん経産省の方の省エネ、代エネの強化をするわけですが、環境も新しく今まで経産省ができなかったようなことについて石油税をもって対応する、それはあくまで省エネ、代エネであります。例えば吸収源対策とか都市改造とか他の 6種のガスの対策はできないのですが、省エネ、代エネというスキームですからその中で環境省もこのまま新しい事業をする、そちらの面でも少しでもCO2を減らしましょうと、つまり、石油特会の枠内の最大での努力をする、こういうことを11月15日に両大臣で決めたということであります。実際には大臣間の覚書といったら変ですが共同声明みたいな格調高い声明が出てますが、それは今日持ってきておりません。もう少し細かいことは大臣の声明と同時に事務当局の連名文書というものを出しております。今私が口頭で申し上げたこと、さらには環境の歳出規模が幾らぐらいになるかとか、その予算はどうやって作ることになるのかとか、そういったことも含めていろいろさらに細かいことが書いてあります。

柳川 : 生活者福祉ネットの柳川です。宜しくお願いします。お話を聞いていて、ちょっとよく分からないところがありまして、お尋ねしたいのです。実は私はもう10年あまりになりますが、都会の生ゴミを燃やしてしまわずに、土に還しましょうという運動をしています。今までは乾燥して届けるにしてもなんにしても廃棄物ですから、県境を越すことができないとか、いろんなことに困りながらやってきたのですが、4月から廃棄物ではなくて資源として考えてくれるようになりましたので、少し喜んでいましたら、秋になりまして、バイオマスの関係のお金が1兆円以上出るということで色々な資料で、国からの資料ですが、3箇所ぐらいの所からいただきました。それで色々人とのお付き合いの中で国の農水省の方の紹介で関東農政局という所にいきまして、資料をもらったり説明を伺いました。そして、あとまた業者さんと市民で活動している人たちと1兆円以上のお金の8割は廃棄物処理業者と商社の方たちが押さえてしまいましたけれど、2割ぐらいは残っていますから、あなたたちのようなNPOの人たちも使えるはずでしょうということで11月の末までに何とかしなさいと東京の人たちや港区の人たちとよく話したということで、よく話して勉強しましたが、結局1銭ももらえないということだけは分かったわけです。そこで、お話を聞いていて、温暖化対策だったら、その8割のお金というのはほとんど燃やすか、最後のところはほとんど燃やすんです、どこも色々調べてみると。例えば三菱商事さんですと港区の大きなホテルへ、待ってください私たちが大きな施設を作りますから、そこであなたの生ゴミをやりますというのを一生懸命言って回ってるから私たちの耳に入ってしまうのですが、では、それはどうするかというと、まずバイオで発酵させて、ガスを取り出して燃料にします。そしてその残りかすはどうするんですかと聞いたら、それは最終廃棄物として捨てるというのです。では、8割のものは、温暖化の面から見るとおかしくはないかと、私たちはそれをたい肥にして土に還そう、あるいは農村の女性たち、あるいは農業をこれから続けていこうという人たちと一緒になって、都市と農村を結んでと、今一生懸命細いパイプが少し太くなって女性たちの、特に専業主婦の自立の道にこれを使おうと思って、実はアクアアクリポリス計画というのをここ数年立てて、今年は東京都の生活文化局から80万のお金を頂きまして必死に取り組んでいるわけですが、もしこの環境税が温暖化のためにという旗を振るならば、こっちで生ゴミを燃したりと、税金のことはよく分からないけれども、何かやっていることが矛盾しているのではないかと思っての質問なんですけれども。こちらは農水局だと聞いていますから、何で両方がもう少し話し合ってもらって、燃さないで済むものを燃さないとか、この環境税を考えるのなら、これだけを考えないで、廃棄物の、特に生ゴミの問題についてとか他にも色々ありますが、特にとにかく温暖化という所にすごく引っかかって、こういう問題はどうなるのだろうと思っての質問です。

小林 : お気持ちはよく分かるのですが、というか私も個人的に須田さんと一緒になってNPO活動とかをやったりしておりまして、役所はうまくそういうことを説明してくれないとか、役所のやっていることが縦割りで大丈夫なのかとか思うことはたくさんあるので、まず気持ちはよく分かる。今のご質問は、歳出をどのように対策に振り向けるか、必要な環境対策は一体何なのか、それは今みたいな縦割り型の資金配分で大丈夫なのだろうか、そこなんです。私も正直言って温暖化対策という観点からみて、例えばバイオマスだったら農水省がやりますと、化石燃料だったら経産省がやりますと、それで資金は自分で何かしらないが手当てします、というやり方が全体を並べてみたときに合理的かどうかは、かなり疑わしいとはちょっと言い過ぎになりますが、役人として言うのはあれですが、正直これからもっと対策をやろうといった場合には必ずしもそれが有利な仕組みではないのではないかと思います。その一例として今指摘があったのがゴミ問題だと思います。一兆円、おそらく12月27日付けぐらいでバイオマス日本戦略というのが発表されるのでしょう。その話で、その一兆円なるものが一体どういう所から出てくるお金か私もよく存じあげないのですが、ただいずれにしても、バイオマスをもっと活用しようと言うことをいっているという中で、そこだけ、つまり今おっしゃった生ゴミを最終的に燃やしてしまうということが温暖対策上一番合理的かどうかという疑問に、必ずしもその狭い道だけだと答えていないのではないかと、こういう心配だと思います。そういう心配は確かにあると思います。ただ今横で聞いていて思ったのは、生ゴミを、農地還元がどれだけできるのか別にしていえば、単純に燃やして、例えば各区の工場で燃やしますが、それで燃やして少しでも発電するとか、熱を取るということだと、おそらく熱効率が15%ぐらいの低い状態ですから、温暖化対策としていえば15%の熱が化石燃料からふり代わってその分CO2が減ります、というだけのことです。それに対して、おそらく今おっしゃっていたのは、生ゴミを、企業の方の言い分ですとメタン発酵させて、メタンを燃料電池か何かに入れて電気にする。そうするともっと熱効率が上がる、ということです。だから、そういう意味では今のただのゴミ処理と比べると少しは進歩だと、だけどもっといいのは例えば生ゴミを堆肥化して、その間に出るメタンはまた処理しなければいけませんが、また農地に還元して、その分、例えば化学肥料とかそういうものの投入量を減らすとかした方がトータルしたCO2とかメタンを含めて温室効果ガスが減るのではないか、という議論だと思います。そういうのが色々あるわけでして、私が一概にそれがいいとか悪いとか、どこまで農地還元できるのかということについては、今定かにはなりませんし、またおそらく受け皿については相当制限があるだろうというように思います。けれども、そういうのを全て横並びに見て一番合理的な対策の組み合わせはどういうものだろうかという議論をする場がなければいけないと思います。ですから私どもが縦割りではなくて横並びに見て、一番投資先としていいのかをみんなで議論する場を含めて、こういった資金配分メカニズムというのを作っていかないと、場所場所、縦割りでこれが最適だと思ってやっても必ずしも最適とはいえないという可能性がある、そういう点を実は申し上げておきたいと思うんです。ただ、個別な話、それが正しいかどうかは私はよくわからないのですが、もう一点、ちょっと話がずれますが、廃棄物は宝の山だと思います。温暖化対策として省エネ、代エネと並ぶもう一つCO2を結果として減らしていく方法の大きなものとして、リサイクルとかリユースはあります。そういう意味で、その廃棄物対策を温暖化対策の観点からもう一度見直してみる、あるいはさらに活気付けるということは一つの選択肢として大きなものだと環境省の方でも認識しています。そのへんも、将来色んな政策がありうると思います。

並河 : 時間が経ちましたのでせっかく席上にお配りいただいたので、炭素税研究会の方、むしろ、小林さんのお話とぶつけた形で、自分達はここの所が違うのだということをお話いただけますか。その方が論点がはっきりするかもしれません。

畑 : 気候ネットワークの畑と申します。私たちのほうで配らせていただいた資料は4種類でございます。1つが今ご説明にあったエネルギー特別会計の見直しに関するプレスリリース11月23日付けのもの、それから今日はあまり議論で出てきてませんが、道路特定財源について8月29日付けで首相宛に出した意見、それと、私たちが提案しております炭素税の制度設計の提案について概要とそれから少し厚い20ページほどのものと2種類ございまして、全部で4種類です。今環境省の小林さんの方からご説明がありました。それを踏まえて、うまく使わせて頂いて、簡単に申し上げたいと思います。まず私たちが提案している制度提案その概要の詳細とをお配りしているものですが、どこが違うのかというお話ですが、大きな方向としては、基本的には小林さんのお話に概ね賛同というか同じ方向で考えております。こういった政策手法が必要である、またその導入を図っていくということについては同じであります。どこが違うのかというと、まず一つは、私たちはこれを早急に導入すべきである、というのが一番大きいと思います。やはり環境NGOの立場から今の日本の温暖化防止の政策は非常に不十分である、先ほどお話がありましたが、温室効果ガスの排出量が8%、一割近く増えている、その軌道を変えていくためにも、この経済的手法、価格の高化による炭素税というものを早く導入することが重要だろうということです。そこの所が多分最大の違いであります。ですから私たちの制度設計の提案もまずできるだけ早期に導入するためにはどういうようにしたらいいかと考えています。ですから環境NGOの立場からすれば、できるだけ高い税率をかけて、それによって二酸化炭素をより多く減らすというのが一番望ましいことは間違いないのですが、それはやはりいろいろな反対、はっきり言えばそういう力も大きいわけですので、できるだけ各方面に理解してもらえて、なおかつ実現可能性のあるもの、今日本に全くない仕組みで、非常に行政コストもかかるとかそういったものはできるだけ避けております。そういった提案になっています。それで具体的には、これは今年の3月に出したバージョン3ということですが、この時点では来年の4月、もう現実的に無理になっていますので、実は今見直し作業を行っておりまして、実は今週末に新しいバージョンを出す予定なので、またそれはご関心のある方はお問い合わせていただければと思いますが、今年の3月の時点では炭素トンあたり6千円ぐらいの税率というのが最低限ではないか、というところで提案しております。それから環境省さんのお話と大きく違うのは使途についてです。使途については、私たちは基本的には減税に当てるということで考えております。ただこれについては、新しいバージョンでは減税に当てるものと一部は温暖化対策の予算に当てるという複数選択制度に変えようと今作業中であります。あと何かご質問があればお出しいただければと思います。

足立 : JACSESの足立です。畑さんと平田さんと一緒に炭素税研究会をやっていますが、本日お配りした11月23日付のプレスリリースをご覧頂いて、これは小林さんの方からご説明がありましたように、経済産業省の方に出されてきて、最後の方になって石油特別会計に関しては環境省さんとの共管が決まったというところで来年の12月から導入が見込まれているエネルギー税制の見直し案に対する我々のコメントになっております。その中で本日詳しいご説明はありませんでしたし、細部に入ることは差し控えたいと思いますが、基本的に石炭への課税をするという点は、我々とするとこれまで強く主張してきたことですし、評価できると考えています。税率が低いものですから、石炭への課税率をもっと上げて欲しいとか、歳出のグリーン化等に関しましても様々なコメントを出しております。特に先ほどお話があった、環境保全経費の話ですけれども、環境保全経費約3兆円ありますが、下水道とか我々からするとこれは本当に環境保全経費なのだろうかといったものが入っていってしまっている。そういう意味では今回歳出のグリーン化という中で、一方で原子力発電への重点化といったものも、これは環境省というよりも経済産業省の方がむしろキープしておきたいといった点だと思いますが、やはり一部こうしたグリーン化が進められる中でどうしても違ったものが混ざってきてしまうのが現状かと思いまし、こういった意味では先ほどのお話にもあったように環境税の議論の中でも環境保全経費というものを環境対策費に回すといった場合に、もしかしたら原子力まで入ってきてしまうのではないかといった、環境省さんの予算の中でそういうことになるとは思いませんが、そういったことをどう考えているかということも非常に重要ではないかと思っています。もう一点が、今回見直し案はほとんどできてしまっていますが、我々市民側にしっかりとした説明と対話の場が全くなかったというのが非常に不満なのと、もし次に温暖化対策税の話になった場合に、これも自民党や各省庁間、経済産業省、もし温暖化対策税の使途が吸収源対策等に使われるという話になった場合には農林水産省、環境省、財務省そして一部の政党の間で制度が全て決まってしまって、我々がご紹介させていただいた制度設計していますのは、炭素税というのは、一つは雇用や低所得者への影響もありえるという制度設計になっておりますし、先ほど小林さんがおっしゃったように、様々な主体が議論していきながら制度設計していくものだと、いうことで考えていますので、やはり今回のエネルギー税制の見直しの決定がなされたようなプロセスを経ないで、しっかりと市民参加をもって炭素税の議論を進めていかなければいけないということで考えていますので、最後のプレスリリースにあります、政策プロセスの部分の我々の主張と炭素税における導入のプロセスの透明性と市民参加の確保といったものが非常に重要であると考えております。

並河 : ありがとうございます。あと40分ということで段々時間がなくなってきたわけですが、少しディスカスしていきたいと思いますが、どなたでもいいのですが、どう考えたらいいのか、小林さんのご説明を伺うと、環境省の政策はこれで財源は確保できるけれども、それで温暖化対策に効果はあるのか。要するに政策と費用との間の相関関係が必ずしもはっきりしていない。環境省ははっきり言って効果がいまいちならば、というのだったら、ピグー税とまではいかなくても、もう少しやらないといけないと個人的には思いますけども司会がそういうことを言うといけませんので、どなたかご質問か、ご意見はございませんか。

小林 : 税収をどう使うかということで炭素税研究会の方ではむしろ雇用の確保とか福祉の財源に当ててもいいのではないかという、バージョンが代わるとまた違う意見になるのかもしれませんが、とりあえずそういうお話もありました。私どもは、なかなか環境税が太りたいために言っているわけではありませんが、実際環境に対するお金の支出というものは、見直すべきものはあると思いますが、決して全然十分ではないと思っています。ただ役所が縦割りで、こういうことをやったら補助金をあげるよというようなやり方はどうも色々差し障りがあると思っていまして、ゆくゆくはこういうことにしたいという提案も実は少ししているのです。それはコースの補助金というものです。これは例えばどういうやり方でもいいから1トン削ったら幾ら補助金をあげるよと、やり方は何でもいいですが、新しい技術だろうが、一生懸命皆が汗を流してでも、とにかくやり方は何でもいいのですが、1トン削ったら幾らという形で補助金を差し上げるというやり方にした方が技術も政府が固定したりしないし、技術進歩にも役に立つ、創意工夫も生かされるという意味で革新的なものです。今回は見出しだけですが、もしかしたら、石油特会の税収をあてる中で、一部実験をしてみようかということで新聞にも少し出ていましたが、エコポイント制とかいうので、何らかのやり方で1トン削れば幾らの補助金を、極端に言えば出来高払いで払う、そうであればいわゆる役所の失敗というか政府の失敗も防げるし、結果として削減できなかったということも起こらない、そういうやり方はどうだろうかということです。それは補助金として全く発想が今までそういうものはありません。政策効果だけに着目してやり方は問わないで、出来高払い、ある程度先に払わないと対策をする人も金繰りに困ってしまうということで、完全出来高払いというのではないでしょうが、発想としては今までないやり方なので、すぐに実験できるとは思いませんけれど、そういったものの実験をまずしていったらどうだろうかということで提案しています。それから、先ほど炭素税研究会のお話にもありましたが、今回の石油税の見直しの中ではせいぜい議論といえば、オープンな場では中央環境審議会で1回議論させていただいただけでして、確かに広い場では議論していませんけれども、是非そういう意味で色々な広い場で議論をし、将来本当に環境対策のための税というものが入ったときの税収の配分についても投資委員会みたいなものがあった方がいいと個人的には思っています。ご指摘の点についてお話しました。

新村 : 住友生命総合研究所の新村です。大変面白いお話ありがとうございます。私たちも環境問題を勉強しておりまして、環境税というようなものを少しづつ勉強しているわけですが、今私の持っている疑問は、先ほどご説明がありましたようにヨーロッパではかなり早くから導入されていると、当然ヨーロッパにおいても国際競争力の話とか、そういったことがあったはずでありますけれども、それを入れる政治的プロセスみたいなものへの検討というものがかなり重要ではないかと。特に企業とのドイツでしたかしら、協定を結んだり、英国の例というのもすごく面白いと思うのです。こういう知恵を上手に使うことによって税金への抵抗を非常に小さくするということに関して現在政府が動いているのかということと、私は海外のことは又聞きですけれども、海外についてなぜそういうことが政治的にフィージブルであって、日本ではどうも先送りになっていることの一番大きな原因みたいなもの、それから特に日本の政府はこれまではあまり、産業界との取引というものを表立ってやっていなかった、裏ではやっていたと思いますが、こういうものを表に出してきちっと取引をすると、そういった知恵を伺ってすごく面白いと感じたんですが、そのへんの所をどういった見方をしておられるのか、日本でどういうことが考えられるかということについて教えていただけたらと思います。

小林 : 環境政策における経済的手法活用検討会報告書という12年5月ですから今から2年半ほど前の報告書です。これは今おっしゃったようなイギリス型を想定してずっと書かれているわけですが、イギリスの何とかレポートという今の制度のもとになったレポートと時期的にはいい勝負で、要するに制度案の提案だけだったら決して日本もそれほど遅れていたというわけではない。これは誰のレポートかという点を次に申し上げますと、現在の政府税制調査会の会長の石先生のレポートであります。その方が今まで苦節10年というか、環境省の知恵袋になって頂いて長い歴史があって、6ページを見ていただきますと環境省がこの問題に取り組みだした12年前からの歴史があります。佐和先生、石先生がそういうことを一生懸命やってきて、今ご紹介したレポートは石先生の卒業レポートでして、このあと2足のわらじはまずいということになりまして、税調の方に行かれた。そして、その結果、税調の方でも色んな進展があると思います。問題は内発的にも色んなアイデアが出てくるのに、なぜ実現できないのか、それになるとなかなかどうしてなんだろうかと日頃から悩む所ではあるのですが、やはり日本の政治の仕組みというか意思決定の仕組みというのは非常に逐次的でちょっとづつ手直しをしていく、温暖化対策についてもおそらく今やっている対策だけでは2008年を枕を高くして迎え入れられるわけはない、というのは役人の人は皆知っているのだけれども、じじゃあさっきの炭素税研究会のように早く乗り換えた方がいいのではないかということになると割りとそういう結論にはならない。いくところまでいってダメだと分かったら次に乗り換えようという仕組みで、そういう発想が多いのでやはり、既存の色んな政府税調とか党税調とかいうような仕組み自体ではなかなかこちらの市民税調もそうですが、そういったことを関わっていることを実現するというのがそもそも入り口から行われないと、問題が起きて困ったということにならないとそういうところにいかないという仕組みになっているのではないかとしか言いようがない。それからもう一つ各政党を見ても環境で票を取れるわけではありません。環境が好きな先生はたくさんいるのですが、それはもう私利私欲に関係なく一生懸命働く、何の儲かることもないのにやる、それは各党ともいらっしゃるのですが、選挙になると、環境のことで票が取れないとか言っているわけです。そういう意味で実際に政治プロセスが環境によってではまだ動いていないと思います。原因については分かりません。もう一つは、ヨーロッパは間違えたら直せばいいという世界でやっているのに、日本は何が何でも間違えたらいけないということがまず一番になっているもので、みんな萎縮しているのかと思いますが原因については残念がならなかなか難しいとしか答えられないというのが正直な所です。すいません、むしろいいアドバイスがありましたら教えていただきたいと。

新村 : 私はやはりこれまでの政治プロセスの中では難しいと思います。全く新しいコンセプトの税金だと思うので、プロセスについての知恵をうまく出していかないといかないんじゃないかというのがイギリスのこれを見たときの感想です。イギリスだって最初から全てこうやっているわけではなくて、やっぱりこういうのであろうと、そして今すごくチャンスだと思うのは、大企業がものすごく変わってきていると思うのです。そういう意味では産業界との協定といいますか取引ですよね、日本の場合は皆代理戦争で、経産省が経済界の代理をして、自民党各部会がまた別の代理をして、代理だけが戦争をしているから話が混乱するのであって、表に出してきちんと取引だと思うのです、イギリスのはうまくいったら褒美をあげるよというような、やらなかったらダメよというのを制度化したわけです。そういうような知恵をうまく使わないと、いくらいい炭素税の仕組みを考えても実行できないのではないかと思っています。あまり私は知恵はないのですが、そこの所がネックになっているようで。

小林 : ですから直接産業界の方たちにお話をしなくちゃいけないと思ってまして、そういう席があればいくようにしていますが、なかなか表の席になると建前しか皆言ってくれなくて、実質的な議論ができないのが残念です。ただ環境省は調査をずっとやっているのです。もう10年ぐらいやってて、かなり知名度を得ている調査ですが、これは例えば環境レポートをどの位やってますかとかの基礎的な調査になっているもので、回答率も上場企業の半分ぐらいカバーしている。ここで見ますと炭素税導入賛成という意見も産業界ですら40%を超えているということです。自主的取組みだけであとでできなかったというのでは困ります。アンケートでどこの会社がどう答えたかということは外に出ない限りではこのぐらいの回答が来るようにはなっていますので、その意味では是非知恵を出していただければと思います。それからもう一つは、イギリス型というのは大人の知恵で、誰が考えてもああいうことしか基本的にはないと思うので、そういう意味ではみんなが早く席に着いて、各企業が建前だったり、メンツを考えないでいるようにすればというのがあったらありがたいと思います。例えばこういう場でも1つ提案していただくというのが大変期待できることではないかと思います。

安藤 : 同じことを上品ではなくもっと粗雑に聞きますが、政府が悪いのか、国民が悪いのか。後者について民度、日本人の民度が低いがゆえか、過去について聞きますと、新村さんのご質問、小林さんの印象はどちらでしょうか。

小林 : 何とも言えませんが、民度は急速によくなっている、他方で政府が急速に意欲を失っているというのが最近の感じです。ただ、最近の変化傾向は相対評価を言っているだけで絶対評価でどちらが悪いというのは何ともいえないです。両方が悪いのではないかと思っています。

須田 : 新村さんのお話でいうと、多分1990年代の社民党と緑の党の政権参加、これはヨーロッパでは非常に大きな契機になっていて、日本には緑の党がないぐらいの状態ですから、ブーメラン効果でNGOの方に戻ってくるわけです。そういう政治勢力をつくれなかった、あるいはつくっていないということが出てくると思います。それはチョット置いておいて、この市民税調で色々やっている中で税というのはできるだけシンプルなもの、しかも効果のあるものがいい、という話で議論をしている中で、やはり分かりにくいです。小林さん一生懸命説明してくれましたが、普通の人は理解するのが大変な話だという気がします。できるだけ単純な炭素税で、どうだというように決めた方が分かりが早くて議論が進みやすいのではないか。むしろ道路公団の議論のように中が割れるぐらいのことをやってくれて、中環審の議論がオープンでも外であまり関心を持たない。もうチョット大喧嘩になるようなことをやってくれないと日本の企業があまりにも内向きで、官庁寄りで、官庁を動かして自分の意見を言おうとしているから、合意ができないのだと思います。企業が自分の声を出して、一緒に議論ができるようになれば、僕は合意ができているのだと思います。当面の問題として一番の問題は、石炭に今、エネルギー料金が高くなると、自由化されると石炭に逃げている所がたくさんあるわけです。これは泥棒、それは最低止めなければならないことだけれど、これぐらいの課税では止められないのではないかという気がします。それから実質的に脱原発になりつつあるわけですが、原子力発電は4分の3使われてませんから、ところが実際に石特会計を含めてこれをやっていくと、既存の政策をフォローアップするような政策にお金をどんどん出していくことになるのではないかということを非常に危惧しています。三つめに、それにしても石特会計で環境省が初めて温暖化対策について予算をにぎるのです。環境省は8億しかお金がなかったのが、地球環境対策費というのは、課でいうと8億ぐらいです。実際何千億とでていますが、実際使えるのはそんなものです。それが何十倍か何百倍になるのですが、その使い方でよほど有効性のある使い方をしないと、あそこに金を出しても、最後にばら撒きをやった省庁だという話になるとこれはもうどうにもならないぞ、ということです。

小林 : まず、私は環境税で相当議論している所に来ているつもりであったので、そもそも環境税とは何かとか、環境税を提案するのだったらこういう言い方にしたいというような説明をしないで、すぐに論点の方にいってしまったので大変申し訳なかったと思います。説明振りはまずかったと思います。二点目の石炭課税についてですが、これは炭素トン換算すると石炭1トンあたり700円というのは、炭素トン換算すると1200円ぐらいなんです。私どもは、炭素税研究会よりも低い税率で結果が出てくると思っておりますが、最低でも3000円というようにいっているわけです。そうすると2000円ぐらい、チョットやはり足りないんです、倍か3倍のオーダーで考えなくてはと思っています。そういう意味で将来的環境税が入るときには石炭増税というものがもう一回ないとしょうがないと思っています。脱原子力という中で他の省エネ、代エネ一生懸命やらなければいけない、これはその通りでありまして、その中で今回の環境省の使うお金というのは初年度で数十億ぐらいですか、段階的にアップしますので、平年度でおそらく400億とかそういったオーダーだと思います。だから、おっしゃる通りで環境省の予算全体2700億ぐらいの予算規模になってますが、そのうち1700億ぐらいは廃棄物処理施設の整備と、自然公園の整備いわゆる公共事業でありまして、本体の予算は1000億円ぐらい、その内、公害健康被害患者さんの補償費とかそういうものを除いていくと政策経費はおそらく300億ぐらいです。ですからそれに400億オーダーのお金が来るということは、環境省としては、政策的な経費が、倍ぐらいになるというインパクトがあるということでして、そのお金を効果があるように使わなければいけないということはその通りであります。色んな所からもそう言われてますし、大臣がそう言っています。大変大きなインパクトがあるので心していかなくてはいけない所ですが、初年度は10月からこの石油税の新制度への移行というものがありまして、税収が平年度の、黙っていても半分、それから税率が段階的にアップしますので、実際には平年度の6分の1規模ということで、おそらく初年度の環境省の予算規模は60億から70億の間だと思います。そうなると60億でなるほどというのはなかなか難しいのですが、とりあえず将来の400億、あるいは将来の環境税に備えて、ばら撒きといわれるかもしれませんが色々なものの芽出しはしたいと思っています。例えばさっきあげた出来高払いのエコポイント制みたいなものを実験しておくとか、色んなものにつばをつけざるを得ないので、初年度は割とメニューが広くて1個づつは小さいという形になるのだと思います。

高橋 : 連合の社会政策局を担当している高橋です。連合の環境政策を担当しているセクションです。連合的には、環境税については既に1年かけて環境に関する税制研究会というのを立ち上げまして、概ね環境税を導入するならばこういうことが考えられる、ということで報告書をまとめております。それで最終判断をどうするのかということについては、いよいよ再来年ぐらいに第2ステップにのぼった段階で判断しましょうと、しかしポリシーミックスの考え方が大事ではないかということにしています。この間、石油特会のグリーン化の話の中、NGOの方からの話もありましたが、私たちにとっても寝耳に水というようなことがあったんです。これは経産省との関係もあるからやむを得ないとも思いますが、今後環境税ということになれば、早め早めに問題提起して議論していって欲しいということを思います。環境問題というのは少なからず意識の改革というか、国民一人一人の意識が変わっていかないと何も変わっていかないということもあるので、是非早めに問題提起するとか、考え方を出して頂いて、時間をかけてボトムアップの感じで積み上げていった方が皆さん合意できるのではないかと思います。そのへんを是非お願いしたいと思います。それに関連して、温暖化防止対策大綱の中で、ステップバイステップの考え方でやっていこうというようなことを考えておられますが、ステップ1のところでいくつかの考え方が出されています。そういうことを1つ1つ精査していくと、本当にこういうことをやっておられるのか、どうもステップ2に環境税を入れるとか、あるいはサマータイムを導入したいとか色んな話が聞こえてきますが、目玉ばかり追うのではなく、1つ1つステップ1ならステップ1でやっている、現在の既存の政策でできることというのは結構あると思うので、そのへんは是非しっかりやって欲しいと思います。そのへんがしっかりなされていないと、ステップ2もつまらないものになると思うのでそのへんの手順をしっかりして欲しいと思います。ここにある事業の提案ということで4つぐらいありますが、この辺でもできることはあるのではないかと思っています。とりわけ3番目の地方自治体の役割、あるいは温暖化センターの役割、推進委員地方協議会の話とか、今回法律を変えて、少しそのへんの規制緩和されるようですが、この温暖化センター、作りましょうと位って既に年ぐらい経つのですが、47つの県のうち、まだ13県しかできていないという現状、そんな現状で次のステップを踏むなんてことは僕らは絶対反対だというように思っていますので、このへんは丁寧な対応を是非お願いしたいということで、お互い議論していきながらステップ2、ステップ3とやっていきたいと思っていますし、かつ財界との関係も経産省、産業構造審議会、あるいは中央環境審議会、両方とも代理で出たりして状況は知っていますけども、どうも水と油のような議論もありますし、国を挙げて環境問題取り組むということであれば、今の環境行政の縦割りは何とかできるだけ速やかに乗り越えて、一元的実施をお願いしたいと思いますので、そういった意味で石油特会のグリーン化でお互いが、中身は色々あるようですが、共管であるということは新しい一元的な実施に向けたステップを踏んだのか、と期待しておりますので、頑張って欲しいと思います。以上であります。

並河 : 今の高橋さんのお話にちょっとくっつけてお聞きしたいのですが、さっきの小林さんのご説明だと、対策というのがまずあって、それの財源というのをこれであてるという形になるわけです。これから地方分権の時代になって、もちろん環境はグローバルな問題でありますけれども、個別の対策にブレークダウンしていくと、おそらく自治体の取組みが増えてくると思うのです。そうした時、環境省ではやはり中央で税を集めて、それを補助金なりという形で自治体に交付するという従来型のパターンを念頭においてシステムを設計されるのか、あるいは何か違うことをお考えなのか、そのへんは、これからの地方分権が進むのか疑わしいところがありますが、それを前提として考えると、10年、20年として考えたときに、システム設計のときにどういうふうに、そういう分権の話は組み入れられるのでしょうか。これもあわせて教えて欲しいと思います。

小林 : 若干個人的な意見にもなりますが、現在も少し今回の石油税、これは第1ステップですから、将来の第2ステップそのものではないが、都道府県とか、地方公共団体が行う施策というのが今までの石油特会では抜けていたので、この部分は環境省がやらなければならないということで、そこに重点的な投資をしようと思っています。もっと大きくなってきましたら、出来高払いの話ではないですが、例えば東京都が何トン削るからその分をくださいとか、そういうような財源移譲にあたって、成果について取引をするというようなビジョンの仕方はあるのかなと。課税のところは、課税して下さるなら、して下さって構わないと思うのですが、現実問題として北海道で出たCO2も東京で出たCO2も温室効果としては同じものでありますから、そういうものを地方が拾って、例えば北海道では1トン1万円だけど、東京では1トン5千円だとか、というのはなかなか苦しいのではないか、熱心な知事さんだと先に税金を入れるけど他の知事さんは入れないとかいうのもどうかという気がします。ですから、国に任せておくといつになっても入らないという議論になるのかもしれないですが、できたら必要な課税のところは国の制度として仕組んで、使用の方でむしろ、縦割り官庁が手取り足取りで配るのではなくて、包括的に何トン削るかで幾らという形で財源をお渡しするという仕組みが合理的ではないかと個人的には思っています。実際、11月15日の財政諮問会議でも石油税の報告をしましたが、関心は皆温暖化対策税の方だったんです。学者の先生もいらっしゃいましたし、総務大臣もいらっしゃったのですが、総務大臣の方からゆくゆくは温暖化対策のための環境税が必要だけど、是非財源については地方がいろいろ使うことも多いので財源の移譲についても考えて欲しいというご発言もありました。そういうところが総務大臣方の認識だと思います。

須田 : こういうものを提案するときに、この政策と矛盾している現状の分析がもっと前面に出て欲しいです。こういう政策があるから結果として温室効果ガスがたくさん出ていると、それを下げるためにはどういう形で、政策効果がこれで、うまくいくのだと、そういうフローチャート、これだけ色々なフローチャートがあるわけですから、今こういう結果出ているから、ここをしめるからこうやって引っ込むんだというののフローチャートが欲しいわけです。別に産業部門とか民間部門とかだけじゃなくて具体的な話で。CO2に税をかけると、これだけ減っていくから、その結果これだけ効果があるんだという話があると分かりやすいです。そうすると、燃やすというのはどういうことなんだとさっき柳川さんが言いましたが、燃やすっていうのは明らかにCO2を出すということだと、どこかでそれを吸収できるかできないかという議論と、どういう関連で出て来るんだという、分かりやすいような、ここに集まっている人たちは専門的な人が多いですけど、国民生活白書でこれがどう扱われるか、ということです。例えば国民の生活に関連するものとして、炭素税を扱ったらどうなるのか。そういうのがあって、片一方で実際生産の所でどのぐらい使っているのかという話とか、わかりやすいものがないのかとか。そういう意味で、僕が言っているのは、わかりやすいもの。どうも矛盾しているんです。安い石油をいっぱい出して、道路を通りやすくして、原子力を一生懸命やって、森林予算をいっぱい繕って、林道をつくってとか、何かこう矛盾している政策がいっぱいあって、実を言うとCO2を発生させる政策がメニューとしてはいっぱい並んでいるのに、片一方でそれを抑制しますというのが小出しであるから、そう思いましたので。

小林 : よくわかるのですが、政府は別に環境のためだけにあるわけではないので、どうしても正直CO2を出す政策というのも、片やあります。環境税を入れることで国民に負担を求めるならば、規制をするのだって何だって同じですが、お前のところがまず身ぎれいになってこい、と言われても、政府は全部完全にグリーン化はできないと思うんです。例えば私も自分の家でエコハウスということで他人様に色々対策しろと言う以上、自分もやらなきゃということで、家は全部太陽光発電から何からやるということでやると900万ぐらい、坪にすると、2割増しぐらい建設費が上がってしまう。だけど、これは皆が自主的にできることではないなと。やはり、そういうことやる人には補助金がきて、やらない人はせめてお金を払う、という仕組みがあると、実感はむしろするんです。だからそういう説明をしたらいいと思うのですが、かたやCO2が増える政策が必要なのは家をつくって分かったのですが、うちはエコハウスを作るのが目的ではなくて、両親の足腰が立たなくなったので仕方なく同居するということになったのですが、老人というのは実は浪エネなんです。昨日は冷房してると思ったら今日は暖房、ということで、やはり老人が増えれば、それだけそのためのエネルギーを使わざるを得ないです。それは世の中全部環境のためというわけにはいかないというのは実感しました。是非一部の経済振興策だとか老人対策とかそういう政策があることは許していただきたい。

新村 : おっしゃるとおりだと思います。国民生活から見れば、やはり暑いときには涼しくしたいし、そういうものと、それから環境が悪くなったら困るというのを秤にかけるわけで、その時に今環境税抜きのエネルギー料金でやっていることがその問題なんで、そのあとは適切な選択なので、全部が環境を向いたら、これもまた全体主義で怖いと、言う感じがします。そういう意味では、社会的評価を内部化すると経済学者は言うのですが、その上で、やはり選ぶのは私たち最終的には消費者でしかないというのことなので、環境税がというのが極めてニュートラルでいいと思っていて、それが、何で外国に比べてこんなに遅れているんだという意識で先ほど伺ったわけです。そのことについてもし分かったら何ですが、海外における炭素税の政策評価をするとしたら、本当に効果はあがっているのだろうかということについて、もし何か資料があったらコストパフォーマンスまではいかないまでも、そもそも目的であったCO2排出量の減少と産業構造の変革ということについて、どのような評価がなされているのか、どのような副作用があるのかといったことについて教えていただければと。

小林 : 今手持ちで持っていませんが、確か私が見た中ではデンマークかなんかで多少導入以来の歴史がありまして、その政策分析をしたものがあります。炭素税だけで対策をしている国は正直ないわけでして、炭素税一本のかなり高い税率の炭素税というのはありません。エネルギーに関わる色々な税があります。いわばインプリシットな隠された環境税と、その上に追加的に少しのせて他にも規制をしてみたり、事業をしてみたりというような結果としてポリシーミックスになっているものですから、税の効果だけを抜き出して分析するというのがすごく難しいわけです。もちろん何十年もやれば色々な経済状況の中でどのように効いたのかが分かると思いますが、正直言って分析は四苦八苦だったと思います。それなりに効果があったといえるのではないかというようなレポートだったのではないかと思います。見つけたらまたお届けします。環境省にあったと思います。検討会に出した資料の一つにありました。私どもで積極的に乗り込んで分析したものではありません。デンマークで作ったものをコピーして持ってきただけです。あと、OECD自身が税制の検討を一生懸命やっていて、各国に勧めているので、OECDのレポートの最新版があるはずです。まだ読んでいませんが、いろいろな効果について実証分析があると思います。温暖化対策税ということになると歴史がどこの国も浅いので、非常に古い歴史のあるものとしては先ほども言ったように、水の分野での汚染税、例えばフランスでは結構前からやっています。そういうのは、他の例ですがあると思います。

足立 : これは一つお願いというか、ご質問も含めてなんですけども、先ほどの効果という話になりますと、今炭素税に関しては、事前評価事後評価というのがあってCO2削減効果に関する評価が、90年代初頭から色々北欧諸国導入されていますから、まとめたレビューとかも多々されているのです。そういうものがまずあって、私の手元にもあってお渡しすることもできますけども、それとともにやはり雇用効果とか、ヨーロッパで導入された場合に労働組合の方とかもいらっしゃって、ただ単に環境にだけよくって導入するという形に、正直今日の小林さんの発表はとにかく環境によければ温暖化対策につかってとにかく導入しようという、非常にNGO的、私もそれですごく賛成ですけれども、どれだけ増税でもいいから通そうと、ここにいらっしゃる方はそういう感じではないかと思うんですけども、ただやっぱり税収中立型にして、我々も税収中立がいいというよりも、そうでないと通らないのではないかということです。環境にもいいけど雇用にもいい、雇用効果というのも色々モデルとしてヨーロッパでされているんです。そういう意味では環境省さんとかにもどんどん、我々雇用効果についてもモデル屋さんとかといっしょにやっているのですが、出していただいて、環境にもいいんだけれども雇用にもいい、という形にもしないと、多分一般の方に議論を進めていけないのではないかという気がします。正直、環境省さんが産業界の方と話すときに非常に弱腰に話しているとか噂で色々なところから聞いてくる、小林さんは多分そんなことはないと思うんですけど、ただ他の方とかそういう形になってしまうので、産業の方も実は私のところに話に来て、税収中立型だったらいいよという方が結構いらっしゃるので、我々それでただ押しているだけで、小林さんの考えで通るのだったらそれでもいいんです。できたら環境対策とともに雇用効果とかという形で一般の人にも訴えかけていくし、産業界の方にも訴えかけていくということをやっていただきたいし、いっしょにやっていけたらと考えています。

小林 : 環境省の方でモデルを作ったり、先生方のモデルを改良したり、レビューにつかったりしている中では、実際にはGDPロスだけを計っているのではなく雇用だとかそんなことも一応見ているのです。税収を仮に税収中立にした場合どこに戻すのが一番効果的かというのも一応はやってはいるのです。やっていまして、こういうことを言うと怒る人がいるんですけども、例えば国債を償還するとか法人税を減税するとか所得税を減税するとかいろいろやっていますが、国債償還も相当に効きます。法人税も結構効きます。消費税とか所得税というのはあまりよろしくない。そういうこともやってはいますが、ご指摘のように、環境省は、それ自身が縦割りですから、税収をどうつかうかということについて全く自由に提案するということもできない。こういう場であったら自由にできるのでおっしゃってくださっているのだろうと思います。私の方がこういう場では環境エキセントリズムのNGOで、足立さんの方が横割でいいかもしれません。いずれにしても、いろいろな研究はしますけれども、しかしやはり選ぶ方というのはまた別の方ですので、是非こういう研究をしたらいいじゃないかというアドバイスをし、選ぶ方にセールスをしていただけると大変ありがたいと思っています。ありがとうございます。

並河 : ありがとうございました。市民税調というのは幸いにして縄張り、縦割りでは全くなくて、税の話も使い道も何でも議論していい。議論した結果をどう反映するかというのは最大の課題ですが、とこかくここでは縦横無尽に議論できますのでこういう事を始めたわけです。ちょうど時間を過ぎましたので今日は終わらせていただきますが、今年はもう12月ですから、これ以上やりませんが、来年今まで何回か議論したものを一度総まとめにして、一番最初にたたき台のようなペーパーをお出ししましたけれども、それをどういうことにするかということを1月の終わりぐらいにもまたご議論していただいて、一、二回議論していただいたところでとりあえず中間決算ということにしたいと思っています。ありがとうございました。小林さんどうもありがとうございました。