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シリーズ討論

特殊法人の情報公開と今後の改革方向

松原聡東洋大学経済学部教授
国民会議ニュース2000年08・09月号所収

ここにご紹介するのは、さる8月7日に開催された第23回定時総会後の討論会の模様です。討論におけるご出席者の発言内容は事務局で丸めましたので、文責はすべて事務局にあることをお断りしておきます。


T 報告と問題提起
 1 経緯
 2 作業の目的
 3 振り分け基準とグレイゾーン
  【NHK】
  【特殊会社】
  【日銀】
  【船舶振興会】
 4 作業の特色
 5 今後の改革
 (附表)検討対象とした特殊法人等一覧

U 質疑・討論
 1 特殊法人の情報公開
  【議論の前提について】
  【NHKについて】
  【日銀について】
  【再びNHKについて】
  【商工会議所など補助金団体】
 2 これからの改革の方向
  【財投改革との関連】
  【特殊法人の独立法人化】
  【NTTとNHK】



T 報告と問題提起
東洋大学経済学部教授 松原  聡
(特殊法人情報公開検討委員会参与)


1 経緯
 1999年7月に特殊法人情報公開検討委員会が発足し、約1年間議論を行い、その結果が2000年7月27日に森総理に提出された。そこで、その間の議論についてまずご紹介したあと、これを今後の改革にどう結びつけるかについてお話ししたい。情報公開をすれば特殊法人の問題が全てクリアされるわけではないからである。
 99年5月に行政機関情報公開法が成立し、来年の4月からスタートする。この法案作成の検討にあたって、情報公開の対象として行政機関だけでいいのか、特殊法人なども含めるべきではないのかについて激しい議論が行われたわけであるが、結局、特殊法人というのはさまざまなものがあって、それを全て纏めて情報公開させるわけにはいかないということになった。それと引き替えに、同法に、2年以内に特殊法人についても法律を整備するということとなった。そこでこの検討委員会が設けられたわけである。
 このようなスケジュールが決まっていることから、委員会は1年以内に報告を出せということになり、7月27日に報告書がまとまったわけである。今後、これにもとづいて法案を準備し、来年の通常国会に提出して、行政機関情報公開法に2年遅れで実施されるというスケジュールとなっている。

2 作業の目的
 私が検討委員会の議論に参加して最初にとまどったのは、委員会の主流の議論が情報公開の対象とすべきものとすべきでないものとをどうやって分けるかという議論であったことである。私は、政府が法律で作った特殊法人というものは当然全て情報公開の対象となり、また、日銀などの認可法人や財団・社団のなかで特定の業務を法律で指定されて行っている「指定法人」などもまとめて情報公開の対象とすべきだという立場であったから、最初はなぜそんな議論を行っているのか分からずに激しいやりとりになった。
 途中で様子がわかってきたのは、今回の議論の大前提として、「特殊法人の情報公開」ではなくて「政府の説明責任を全うする」ための仕組みを考えることが目的となっているということである。そうなると、特殊法人とか認可法人などを、政府なのか政府でないのかという仕分けする作業を行うことになる。委員会の内部では、法律があれば公開の対象だという私のような議論と、政府の説明責任なのだから一つ一つについて政府の一部を構成しているかどうかを判断していかなければならないという議論、それからもっと広く、政府がカネをつかったところ、税金が流れるところはすべて対象とすべきだという議論があった。しかし、最終的には政府の説明責任という観点から、特殊法人や認可法人について、政府か政府でないかを区別していく作業を行うこととなった。

3 振り分け基準とグレイゾーン
 対象となる法人は240あまりあったが、そのすべてを個別に検討するのは大変なので、基準を2つ設けた。ひとつは、その法人について政府の出資があるかどうか。出資があれば、これは政府の一部を構成すると見る。もうひとつは、その理事長などが大臣の任命になっているかどうか。この2つの基準のどちらかに引っかかれば、政府と見なして法律の対象にするということとなった。ここで問題となったのは、役員が政府の任命ならば対象となり、認可だと対象とならないが、この双方に実態上に違いがあるのかということであった。しかし、認可と任命とは違う、認可は特殊法人側に主体性があるということとなって、認可の場合は含めないこととなった。
 しかし、この2つの基準でスッパリ切るというわけにはいかず、いくつかのグレイゾーンがでてきた。その中でとりわけ議論となったのはNHKである。先ほどの基準から行くと、経営委員会に委員は国会承認による内閣任命なので対象となるわけであるが、グレイゾーンとなった。もう一つは特殊会社で、これは政府出資(JRだけは特殊法人出資という形)であり、本来ならば入ることとなる。しかし、これらはそもそも民間としてつくったものだから、政府の一部と言っていいのかという議論になった。もう一つは日銀である。これは、これまで政府から独立させようという努力を続けてきたのに、ここで政府の一部としていいのか。最後が船舶振興会である。これはグレーでも何でもなくて真っ白である。政府出資もなく政府任命もない。ただ、国民が疑問に思っているものを外してこの委員会は恥ずかしくないのかという気持ちがあって、これもグレイゾーンとなった。

【NHK】
 NHKは法律によって強制的に受信料を国民から取っており、罰則規定がないだけある。経営委員会については内閣総理大臣任命であるから、形としては法律の対象となる。しかし、報道の中立性ということが議論となった。NHK側が、中立性を犯されるから公開しないと主張するのに対し、私などは放送法によって放送の公共性というのは民間放送も一緒に法の網に掛かっているわけで、株主総会で経営の問題が取りあげられると放送の公共性が保てないのか、NHKだけの問題ではないだろう、とかいろいろ議論が行われた。
しかし最終的には、NHKが国の一部を構成するとは見られないだろう、政府の情報を国民に報道する機関ではないだろう。したがって、政府の説明責任といったときの政府の中にこのNHKを含めることは無理があるということになり、NHKは法の対象から外れることとなった。しかし、NHKは政府の一部ではないから今回の情報公開法の対象から外しただけであって、NHKの業務自体については国民の関心は高い。受信料の不払いの問題もあればデジタル化の問題もある。したがって、NHKは別の枠組みで情報公開を検討すべしという条件が付くこととなった。

【特殊会社】
 次が特殊会社であるが、これも大変な議論となった。私などは、特殊会社とは政府がつくった会社であって、いくら株式会社といってもたとえばNTTは政府が3分の1以上の株を持たなければならないこととなっている。ということは株主総会における実質的な決定権を政府が握っていることではないか。しかも、代表取締役の選任は主管省である郵政省の認可事項となっている。したがって、株主総会で取締役を決めてもそれがそのまま決まるというわけではない。事業計画についても、政府に全般的な監督権限がある。したがって、特殊会社といえども情報公開法の対象とすべきだと主張したわけである。
 しかし、反対意見も多く、そもそも民間に即した形で設立したこと、又、東証第1部に上場している事実を重く捉えるべきである、そこでかなり情報の公開がされていると見るべきだという議論の流れのなかで、特殊会社については政府出資があるにもかかわらず、その設立の趣旨からして原則外すということになった。
ただ、最後まで議論が分かれたのは関西国際空港株式会社である。この会社は上場会社ではない、一般株主は3000人いるというが、オープンな形で上場はされていない。業務の中身を見たときに、国からの直接の税金という形ではないが、政府保証債が相当入っている。それから、空港建設の業務自体をこの会社が決めているのではなくて、政府が決めている。そういうことから考えると、この会社を情報公開法の対象から外すということはいいのかという議論となった。
関西国際空港側は、「仮に当会社が、一般企業に要求される以上の情報公開を行うことによって、弾力的・効率的な企業的経営が困難になるとすれば、民間株主の財産権を侵害するおそれがある」との理由で情報公開は嫌だと強くいってきたのだが、ここは最終的に委員会としては公開しないというわけにはいかないと公開の対象とした。ただ、ウルトラCの妥協案が出てきて、関空の業務を2つに分けて、空港建設に関することは情報公開の対象とするが、ホテルや売店などのそれ以外の業務については対象外とすることとなった。どちらか分からないものは対象とする。つまり、原則としては対象となるのだが、確実に空港建設から所轄が分かれているものについては対象外とすることとなった。

【日銀】
 日銀については、日銀側がヒアリングの席上、「日銀の組織上及び業務上の特殊性が、法制化の過程で十分に考慮されるならば、日銀に対して何らかの法律上の情報公開義務が課せられることになったとしても、格段異論がない」と述べて、自ら対象となることとなった。これまで何十という特殊法人や認可法人のヒアリングを行ったが、こうも気持ちよくOKといってくれたところは極めて稀なケースで、これはこれまで日銀が散々叩かれてきた結果なのかとも思った。ただ、この法律の趣旨からすると、政府の一部だから公開させるという論理建てであるから、それと日銀の中立性とは一部バッティングすることとなる。なお、もし日銀がどうしても公開や嫌だと言い張ったならば公開の対象に出来なかったのではないかと思う。

【船舶振興会】
 船舶振興会は、先の二つの基準からすれば対象外になるのであるが、ここを外したならばこの報告全体が国民から評価されないことになるということで、対象とした。ただ、ここだけを取りあげる訳にはいかないので、ギャンブル関係法人ということで地方競馬会その他を一緒にして考えることとした。
政府がギャンブルをやっていると見られるのは具合が悪いが、本来刑法で禁じられている行為が政府が絡むことにより違法性が阻却されているという意味で、対象としたという論理建てである。しかし、船舶振興会はギャンブルをやっているのではなく、そこで得たお金を配っている団体である。しかし、そこも広い意味でギャンブルの行為の一部と考えるということで対象に加えることとした。

4 作業の特色
 以上のように、政府の行為ということに絞ったため、特殊法人などを全部対象とは出来なかったが、2つの基準で仕分けをし、グレイゾーンは個別に検討して振り分けを行った。その過程で細かな議論はいろいろあった。たとえば、NHKについては受信装置を持っているひとは受信料支払い義務があるが、受信者イコール国民ではない。そうした場合、国民に対する情報公開と考えるのか、あるいは受信料を払っていないものは請求権がないのかとか、いろいろな議論がある。これはおそらくこれからNHKの情報公開を議論するときの問題点となるだろう。
 なお、委員会の議論の殆どはこの対象法人を絞るところに費やされ、情報公開の仕組みそのものは情報公開法に依拠したものとなった。
 また、対象の範囲としては特殊法人のほか認可法人を加えること、また、途中で特別行政法人も法律が出来てこれも対象となった。そのほか、指定法人も対象となり得るだろう、つまり、関空が入ったわけだから中部国際空港はどうなるかということになる。これもヒアリングをやったが、実は指定法人については誰も全貌がつかめない。どこかが調べると720、他が調べると590と実態が不透明で、そうしたなかでどこかを入れると、なぜうちが入ってあそこが入らないのかという問題が生ずるので、法律としては整理しきれない。また、全てをチェックするには時間が足りないということで、問題はあるが時間切れということになった。
 もう一つの特色は、情報公開というのは国民の情報開示請求権と対象機関の自らの情報提供義務というのが車の両輪となっている。先に成立した行政機関情報公開法は開示請求権を中心としたものである。情報提供については、非常に抽象的に、「努めなければならない」といった規定が1〜2行あるだけである。ところが、特殊法人等の情報公開法の場合は、情報の提供に関してしっかりと法律の中に書き込むべきだ、要するに各特殊法人その他はホームページ等を使ってきちんと情報提供すべきだときちんと書き込まれた。車の両輪が行政機関情報公開法よりはかなり書き込めたといえると思う。

5 今後の改革
 今後の特殊法人改革はどうなっていくのか。私自身としては検討委員会で、法律があるなら全部対象とすべきだと主張して負けたわけであるが、その結果、政府でないとの理由で対象から外れた特殊法人等がいっぱいある。どれだけあるかについては、ここはこの検討委員会報告の良いところであり私も頑張った成果だと思うが、対象となったもの、ならなかったものを報告書の最後に一覧表として掲げてある。
したがって、情報公開法の次に是非進めなければいけないと思うのは、対象から洩れたところである。民間法人化されたといっても農林中央金庫法はある。

しかし、これは政府ではないということとなった。私は、これらは廃止するか完全に民営化するかが自然なのではないかと思う。今回の検討でこれらが非常に中途半端な存在であることが明らかとなった。逆に言えば、今までの特殊法人改革がなかなかうまくいかなかったのは、いろんなものがありすぎた。船舶振興会から道路公団、NTTなどいろんなものがアドホックにつくられた。北方領土協議会というのもある。このわかりにくさというものが政府か政府でないかに分けたことによって、大分すっきりした。この政府でないとされた特殊法人等については、廃止か完全民営化を迫っていくのが流れとして自然だと思う。
 もう1点は、橋本首相のやった行政改革会議の最終報告からの抜粋であるが、要するに独立行政法人を作るときに、完全に負のお手本が特殊法人であった。そうならないようにしたのが独立行政法人である。独立行政法人の場合には通則法がまず出来た。通則法でしっかり縛りを掛けた上で個別法を作った。では、この悪い見本の特殊法人はどうするのかということになる。ここで、この独立行政法人と特殊法人の関係については、行政改革会議は「徹底した見直しを行った上で独立行政法人化の可否についても検討の視野に入れる」ということになっている。したがって、今回政府であるという理由で情報公開法の対象となったものは独立行政法人化していくべきだと考える。独立行政法人の制度が完璧だとは思わないが、今まで抱えてきた特殊法人の問題の反省の上に立っている制度であることは間違いない。また、付表の網掛けの部分については、先ほどいったように廃止か民営化する。このように、この表を使ってもらえるのであれば、今回のこの情報公開の議論はただ単に特殊法人を情報公開の対象としたというだけでなく、特殊法人、認可法人、指定法人といった政府の外延にある政府系法人を整理するときの一つの物差しとなる。自民党でも又議論を始めており、サンセット法案のような報道もあるが、私は一番中核にあるのは特殊法人の独立行政法人化だろうと思う。
 お金の流れについては、税金が流れるところは公開の対象とすべきだとの主張もあった。イギリスなどはそうなっている。公共事業受注したところはその業務に対して情報公開の対象とするとなっている。私立大学も国から補助金を貰えば会計検査院の検査の対象となっている。しかし、私立大学は国の組織かといわれると引っ込まざるを得なかった。本当の意味では政府が作った政府系法人だけでなく、お金を受けた民間、あるいは政府のアウトソーシングを受けた企業というもの実は公開の対象とすべきではないかと思うのだが、そこは議論の先の又先の話で、審議会でも問題提起をしただけに終わっている。


(附表) 検討対象とした特殊法人等一覧

(注1) 見出し【○○○関係】とあるのは、「第2 対象法人」の記述との対応関係を示す。
(注2)      は、本法則の対象外とされる法人を示す。       
(平成12年7月1日現在)
 特  殊  法  人 【78】 【第2(対象法人)の1関係−理事長等任命又は政府出資がある】 56法人
〈公団〉
    水資源開発公団、地域振興整備公団、緑資源公団、石油公団、日本鉄道建設公団、新東京国際空港公団、日本道路公団、都市基盤整備公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団
〈事業団〉
 宇宙開発事業団、科学技術振興事業団、環境事業団、国際協力事業団、 日本私立学校振興・共済事業団、社会福祉・医療事業団、年金福祉事業団、農畜産業振興事業団、金属鉱業事業団、中小企業総合事業団、運輸施設整備事業団、簡易保険福祉事業団、労働福祉事業団
〈公庫〉
 沖縄振興開発金融公庫、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、住宅金融公庫、公営企業金融公庫
〈特殊銀行、金庫〉
 日本政策投資銀行、国際協力銀行、商工組合中央金庫
〈その他〉
 帝都高速度交通営団、北方領土問題対策協会、国民生活センター、日本原子力研究所、理化学研究所、核燃料サイクル開発機構、公害健康被害補償予防協会、奄美群島振興開発基金、国際交流基金、日本育英会、国立教育会館、日本芸術文化振興会、日本学術振興会、放送大学学園、日本体育・学校健康センター、社会保険診療報酬支払基金、心身障害者福祉協会、農業者年金基金、日本貿易振興会、新エネルギー・産業技術総合開発機構、国際観光振興会、雇用・能力開発機構、日本労働研究機構

【第2(対象法人)の1関係−理事長等任命がなく、かつ政府出資がない】 1法人
日本勤労者住宅協会

【第2(対象法人)の2の(1)関係−公営競技関係法人】 5法人
日本中央競馬会、地方競馬全国協会、日本自転車振興会、日本小型自動車振興会、(財)日本船舶振興会

【第2(対象法人)の2の(2)関係−特殊会社】 13法人
  ・ 日本たばこ産業株式会社、 電源開発株式会社、北海道旅客鉄道株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社、日本貨物鉄道株式会社、日本電信電話株式会社、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社
・ 関西国際空港株式会社

【第2(対象法人)の2の(3)関係−共済組合等】 2法人
農林漁業団体職員共済組合、勤労者退職金共済機構

【第2(対象法人)の2の(4)関係】 1法人
日本放送協会


 
 独  立  行  政  法  人 【60】 【第2(対象法人)の本文及び1関係−理事長等任命又は政府出資がある】 60法人
  国立公文書館、駐留軍等労働者労務管理機構、通信総合研究所、消防研究所、統計センター、酒類総合研究所、国立特殊教育総合研究所、国立オリンピック記念青少年総合センター、大学入試センター、国立女性教育会館、国立青年の家、国立少年自然の家、国立国語研究所、国立科学博物館、物質・材料研究機構、防災科学技術研究所、航空宇宙技術研究所、放射線医学総合研究所、国立美術館、国立博物館、文化財研究所、国立健康・栄養研究所、産業安全研究所、産業医学総合研究所、農林水産消費技術センター、種苗管理センター、家畜改良センター、肥飼料検査所、農薬検査所、農業者大学校、材木育種センター、水産大学校、さけ・ます資源管理センター、農業技術研究機構、農業生物資源研究所、農業環境技術研究所、農業工学研究所、食品総合研究所、国際農林水産業研究センター、水産総合研究センター、森林総合研究所、経済産業研究所、工業所有権総合情報館、日本貿易保険、産業技術総合研究所、製品評価技術基盤機構、土木研究所、建築研究所、交通安全環境研究所、海上技術安全研究所、港湾空港技術研究所、電子航法研究所、北海道開発土木研究所、海技大学校、航海訓練所、海員学校、航空大学校、自動車検査独立行政法人、国立環境研究所、教員研修センター

 (注) 独立行政法人については、平成12年7月1日現在で、各法人の個別法が制定されているものを掲げた。
 認  可  法  人 【84】 【第2(対象法人)の1関係−理事長等任命又は政府出資がある】 24法人
平和祈念事業特別基金、自動車安全運転センター、総合研究開発機構、海洋科学技術センター、預金保険機構、日本万国博覧会記念協会、通関情報処理センター、産業基盤整備基金、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構、農林漁業信用基金、海洋水産資源開発センター、野菜供給安定基金、農水産業協同組合貯金保険機構、生物系特定産業技術研究推進機構、情報処理振興事業協会、基盤技術研究促進センター、自動車事故対策センター、空港周辺整備機構、 海上災害防止センター、造船業基盤整備事業協会、通信・放送機構、日本障害者雇用促進協会、日本下水道事業団、地方公務員災害補償基金

【第2(対象法人)の1関係−理事長等任命がなく、かつ政府出資がない】 12法人
日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本赤十字社、厚生年金基金連合会、石炭鉱業年金基金、漁船保険中央会、全国農業会議所、全国農業協同組合中央会、全国中小企業団体中央会、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国社会保険労務士会連合会

【第2(対象法人)の2の(3)関係−共済組合等】 47法人
各省各庁等の共済組合【25】(総理府、防衛庁、防衛施設庁、法務省、刑務、外務省、大蔵省、印刷局、造幣局、文部省、厚生省、厚生省第2、社会保険職員、農林水産省、林野庁、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省、建設省、衆議院、参議院、裁判所、会計検査院、国家公務員共済組合連合会職員)、国家公務員共済組合連合会、日本たばこ産業共済組合、日本鉄道共済組合、警察共済組合、公立学校共済組合、地方職員共済組合、東京都職員共済組合、指定都市共済組合【10】(札幌市、横浜市、川崎市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、北九州市、福岡市)、全国市町村職員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会、議会議員共済会【3】(都道府県議会議員共済会、市議会議員共済会、町村議会議員共済会)

【第2(対象法人)の2の(5)関係】 1法人
日本銀行


  (民間法人化された特殊法人及び認可法人 )
 特  殊  法  人 【8】 【第2(対象法人)の1関係−理事長等任命がなく、かつ政府出資がない】 8法人
農林中央金庫、東京中小企業投資育成株式会社、名古屋中小企業投資育成株式会社、高圧ガス保安協会、大阪中小企業投資育成株式会社、日本電気計器検定所、消防団員等公務災害補償等共済基金、日本消防検定協会

 認  可  法  人 【12】 【第2(対象法人)の1関係−理事長等任命がなく、かつ政府出資がない】 12法人
  製品安全協会、軽自動車検査協会、小型船舶検査機構、中央労働災害防止協会、陸上貨物運送事業労働災害防止協会、郵便貯金振興会、建設業労働災害防止協会、鉱業労働災害防止協会、中央職業能力開発協会、林業・木材製造業労働災害防止協会、港湾貨物運送事業労働災害防止協会、危険物保安技術協会

(注)  「民間法人化された特殊法人及び認可法人」とは、臨時行政調査会第5次答申(昭和58年3月14日)における特殊法人等の自立化の原則に基づき措置されたもの。当該法人の事業の制度的独占を排除するとともに、政府出資の制度上・実態上の廃止、役員の自主的選任等の政府の関与を最小限のものとする等の制度改正が行われたものである。



U 質疑・討論


1 特殊法人の情報公開
【議論の前提について】
田中:特殊法人の情報公開の議論をするときに、「政府の国民に対する説明責任が全うされるようにする」ことを前提とすることが本当に正しいのか。特殊法人は必要があるから作られた公的存在であるから、政府の説明責任というよりは特殊法人自体の説明責任と考えるべきではないか。逆に、たとえば私立大学についても政府は金を使っているし、だからこそ会計検査院の検査も入る。その限りでは説明責任はあることになる。なぜ、ここで政府の説明責任という概念を持ち出したのか、またその考え方もすっきりしない。
 情報公開は政府の義務であり、特殊法人については、それは公的存在であっても、政府の一部を担っているところとそうでないところがあるという理解なのか。

松原:私は田中さんと同じ意見で、それを随分いって駄目だったわけである。要するに、この委員会は行政機関情報公開法のなかの42条で特殊法人については別途検討ということから始まっている。審議の初めの時にいろいろ議論があって、そうなるのも仕方がないなと思ったのは、行政機関情報公開法の中のどっかに何条かくっつけて、特殊法人とは何かという規定を設ければそれで済んでしまうという議論が出たくらいで、行政情報公開法が非常に強くそのベースとなっている。そうすると、行政情報公開法が主権者たる国民に対する政府の説明責任が全うされるようにと書いてある以上、それがそのまま横滑りして特殊法人についても当てはまるのだといわれたわけである。私は最後まで腑に落ちなかったのだが、この議論はどう頑張っても全く揺らぐことなく、どうしようもなかった。

司会:そもそも行政情報公開法の議論の時、なぜ、特殊法人も含めないのか、特殊法人も対象として、その範囲は政令で定めると1行入れればそれで十分ではないか、という意見もあったくらいだから、今回の作業は行政情報公開法の幹の上の枝葉という位置づけになっている。
 ところで、今回対象から外された特殊法人についても、その法人についての情報は主務官庁は持っているわけだから、本省に対して我々は請求権はあるという理解でいいのか。

松原:そうなると、なにもやらなくてもいいことになる。ただ、そこは重要なポイントなので、ヒアリングの時も特殊法人だけでなく主務官庁からも意見を聞いた。そこで出た意見は、全ての情報を主務官庁が把握しているわけではない。したがって、直接事業を行っている法人に対するダイレクトな請求権というのは大事だということになる。逆に言うと、この法律が施行されると特殊法人も過去の書類をすべてファイルしなければならなくなる。そういった資料が全て主務官庁にあるかといえば、これはない。

司会:今回、対象外となった法人について、その主務官庁に請求したとき、これは対象外となった法人だからといって門前払いとなることはないのか。

松原:報告書の中の文章にはなっていないが、議論の過程でちょっと話題になったときに、当然請求の対象に含まれるという答がありみなさんも納得していたから、駄目ということにはならないと思う。

得本:特殊会社の中にはJRとかNTT、JTなど民営化されたものが含まれる。そういったところが今回の情報公開法の対象に含まれるかどうかについて、どのようなスタンスを取ったのか。つまり、なんのために公開の網から逃れようとしたのか。

松原:情報公開してもいいといったのは日銀だけだった。なぜ、ほかが嫌がったかといえば、過去の情報を全てファイリングして整理しなければならないという手間の問題がある。小さい法人の場合、うちはどうやったらいいのか途方に暮れているところもある。
 NTTなどはすでに上場し情報公開しており、しかも一般企業と競争関係にある。こうしたときに一般企業以上の情報公開を要求されると会社の運営上大きなマイナスとなる、引いては株主に申し訳ない、という理由を述べている。NTTの東西地域会社の意見を紹介すると、「既に地域通信市場において厳しい競争にさらされていることから、今以上の情報開示を義務づけられた場合には他事業者との自由な競争を制限され、経営上大きな損害を蒙る」。持株会社は、「多数の一般株主が存在するが、今以上の開示が義務づけられると競争が制限され、一般株主の利益に反し、その財産権を侵害するおそれがある」というような形で絶対嫌だと主張したわけである。
私はそれでも入れるべきだと思っていたが、どうも駄目だったので、最後に記録に残すために、「日米協議で経営の根幹の接続料が変えられてしまうような会社を情報公開法の対象に加えることが出来なかったのは、私としては断腸だ」と発言しておいた。ただ、委員の大半は私と違って、NTTは対象から外していいという意見だった。上場している、競争している、株価でチェックされているということが判断の基準になったようであるし、また、NTT側も自分たちは一般の企業以上に情報公開しているという資料をいっぱい持ってきたので、それが効を奏したのかも知れない。

北市:情報公開法制定の時、よく外国の例が引き合いに出されたが、今回は諸外国の類似の例を調べたのか。また、自治体の公社や第3セクターなどの情報公開について、国の法律で網を掛けるとか、そういうような議論があったのかどうか。

松原:外国の件については、私は行かなかったが調査にいっている。アメリカ、フランス、ドイツ、イギリスに調査にいっているが、しかし、その結果はあまり参考にしなかった。他の国は全部に網を掛けているわけで、イギリスなどは先ほどもいったように公共事業の受注先についても網がかかっていた。調査した結果、日本よりも相当網のかけ方は広かったということは明らかとなっている。日本は政府の一部を構成するかどうかで仕分けしたからである。
 地方自治体については、報告の最後に「地方公共団体においては、本意見を参考にされるとともに」と書いてあるが、実にこれは不遜な書き方で、自治体の方が情報公開は進んでいて47都道府県全てが既に情報公開をやっていて、遅れているのは国の方なので、この書き方はいかがなものかといったのだが、まあ、こういう書き方になった。最後に出来ただけに自治体にとっても参考になるという自負があるのかも知れない。市町村レベルでもやっているところが多い。

田中:公社や第3セクターなども条例ですでにやっているという意味か

松原:そうではない、外れているところもいっぱいある

司会:ただ、ここ1〜2年、3セクの経営破綻が多いので、条例を改正して情報公開の対象に加えるところがあちこちで出だしている。ただそれも、開示請求権を認めるところとそれぞれの機関に情報公開の努力を促すところと2種類あるようだ。いずれにしても、松原さんのいわれるように、地方の方が先をいっていると思う。

鈴木:情報公開法を作るとき委員をやったのだが、特殊法人を入れるべきだというのは私ともう一人くらいだった。駄目だという理由はやっていることがバラバラであるというのだが、そうなると中央省庁もバラバラであって、仕事がバラバラだから一括処理出来ないという理由にはならない。なにをいいたいかというと、その程度でしか特殊法人の問題を認識していなかったということである。国との距離が近いところと遠いところがあるともいうのだが、そういうのならば国の研究所の末端組織などは特殊法人よりも遙かに遠いところもある。ああいえばこういうという具合で、こっちも面倒くさくなって議論をやめてしまった経緯がある。
 それにしても、政府の説明責任を根拠とした今回の作業は、特殊法人の本質についてどのような理解のもとに行ったのか疑問である。全く哲学がない。特殊法人というのは元々政府から独立して経営することを狙いとして作られたものであったのに、自主的経営権がないということが何十年もわたって議論の的だったわけである。それが今度は政府に代わって説明するというのだから、本音をとうとう暴露したということになる。
本音を言い出したときに、今度の逃げ込み先は独立行政法人で、もっと政府に近いところに入れてしまおうというのでは本末転倒ではないか。松原さんはそれが今後の改革の道だといわれたが、これはあきらめの精神であり、逆流であって、本来はその方向であってはならない。
 独立行政法人も、非国家公務員型にするのが本則である。ただ労使関係などから官庁から分かれてきたものは国家公務員型に半永久的になる。本則に基づくものはほとんどないというおかしな現象になっている。そこに目を付けるのが特殊法人であって、これを非国家公務員型の独立行政法人にすれば数が揃って格好が付くことになる。全く、理念・哲学のない作業が行われることになる。
 基本は、これらの法人を民営化して民間企業と同じものとしていくことではないか。なぜ、これが出来ないかというと、そんなことが出来るものはもうないということである。そんな法人がなぜ存続できるかというと、国からお金が流れてきて使え使えといわれるから存続できる。議論はこれに尽きてしまう。となれば、そういうことに何らかの手が打てるということが前向きの話であって、今回の情報公開はそういう点から考えると踏み込み不足だったように思う。
 もうひとつは、この対象外となった法人の中の最悪のものは「民間法人化された特殊法人・認可法人」である。これは私の土光臨調の時の最大のミステイクなんだが、理想は正しかったが、本当の民間法人になっていくというところがすっ飛ばされてしまった。「民間法人化」という概念はないはずなんだが、そんな特設ポストを作ってしまって、そこで永久にどこからもチェックされない法人になってしまった。しかも、かなり国家の権力的な仕事もやっている。ここら辺の問題がそのまま手つかずになってしまっている。
 NHKについては、どう考えても報道の自由と経営の効率化の問題とは別であり、国民は国会がしっかりチェックしてくれるという期待をもてるのかという問題をもっとまじめに考えなければならないということだと思う。

田中:政府の説明責任が大前提で2つの基準を作ったというのだが、政府の説明責任ということになると、ある法人を監督している場合には当然政府には説明責任があることになる。3分の1でも出資していれば、政府は権利行使をするわけだから説明責任があるはずである。逆に、説明責任がないということだと、政府には権限がないということになる。権限が少しでもあれば説明責任はあるはずである。
 上場会社の場合、証取法やその他で情報公開が行われているとか、競争関係の有無とか、これ以外の基準が別途にあればいいのだが、政府の説明責任一本槍で仕分け作業をしたところに論理的な面での問題点があるのではないか。

松原:独立行政法人の問題は審議会では当然対象とするとあっさり割り切って、それ以上の審議は行っていない。したがって、特殊法人を独立行政法人に持っていくというのは、私個人の意見である。
 独立行政法人の議論の原型はイギリスのエージェンシーであるから、一応政府の外に出してマーケットの洗礼を受けさせるということであって、生き延びるかどうかは保証の限りではない。ところが日本の独立行政法人は、おそらく未来永劫残る形となった。また、公務員型の特定独立法人が殆どで非公務員型の一般独立行政法人は4つしかない。その点からも鈴木さんのいわれるように、この制度はおかしなものとなっていることは確かだ。
 さきほど特殊法人を独立法人に入れて見たらといったのは、そこでマーケットの洗礼を受けさせるという甘い期待があったのかも知れず、鈴木さんに一喝されて撤回しなければならないかも知れない。
 「民間法人化された特殊法人」についてはこのリストにのせるだけでも大変だった。最初から対象外だという雰囲気に対して法律があるのだから検討の対象にしてくれと粘って、とりあえずリストに入ったということで、その存在を世に知らしめるというささやかな目的を達成したわけである。

【NHKについて】
 NHKについては非常におかしな議論があって、報道の自由とか公平性とかいうことがしょっちゅう持ち出された。しかし、放送法を読めば放送の公共性とか何とかいうのはNHKだけではなく、電波を使う全報道機関に対してかけられている。日本テレビなどの民間の上場会社は、株主に対して情報公開をやっているのだから、NHKがやれないわけがないだろうという議論はやった。
ただ、放送法を読むと、NHKには特別に公共の福祉のために、良質な番組を作りあまねく日本全国で受信できるようにしなければならないとなっている。これは民間には要求されていないことである。しかし、既にNHKの電波は日本全国で受信できるようになっており、これからの問題として、良質な番組を作るために情報公開は嫌だという論理が成り立つかといえば、それは成り立たないだろう。したがって、私は情報公開すべきだといったのだが、NHKは政府か、日本赤十字も政府か、という論理で対象から外された。
 この対象外とされたものについてどう扱うかという議論もチラッとあった。開示請求権までは駄目でも情報提供だけはやらせようかという議論もあったのであるが、この法律では開示請求権と情報提供義務はあくまでセットで考えているので、この報告書では対象外としてものについては一切ぶん投げてしまったということである。残念ながら、動かしようがなかった。

司会:これから国立大学を独立行政法人とするようであるが、学問の自由という命題もありながら、独立行政法人は政府の機関であるから当然情報公開の対象となる。であれば、NHKも報道の自由は守りながら情報公開してもなんら差し支えないと思う。

【日銀について】
 もうひとつは日銀である。日銀が自ら手を挙げたので対象となったのはいいが、政府だから対象とするという論理に組み込まれて本当にいいのか。法律屋はともかく経済学の専門家である松原さんや奥野さんは、これに対してどのような議論を展開したのか。

松原:私は日銀のヒアリングのときはあいにく欠席した。ただ、あとで議事録を読むと奥野正寛先生は私のいいたいことを殆ど述べておられた。つまり、奥野先生は相対的な自立性の方を強調して、「本当にいいの?」という懸念を出しておられた。逆に、経済学以外の先生方は、日銀がいいといっているのだからいいじゃないか、という議論だった。
 また、あとでまた日銀の議論が行われたとき(そのときは私も参加したが)、大蔵省から離れるということと国民に対する説明責任が無くなるということとは別問題であって、大蔵から離れたからといって情報公開が免除されるということにはならないという意見は述べた。

鈴木:個々の特殊法人が政府機関であるかどうかというところに判断基準を置くこと自体がおかしい。日銀は日銀として情報公開することは当然だ。

田中:だから、この法律とは別に、日銀は日銀として国民の情報開示請求権を認める法律を別途持つというやり方の方が論理に歪みがない。

松原:日銀は、「日銀の独立性からして一般の行政機関や特殊法人と同じ仕組みでいいのか、また、情報公開法における会計検査院と同様な位置づけも一つの選択肢としてあり得るかと考えている」といったが、思うに、日銀はここで情報公開は嫌だとごねることが今まで積み上げてきた独立性とか、大蔵省ではなく国民の方を向いているという姿勢が疑われることを、日銀が躊躇したのではないか。どうもそういう感じがある。

賀来:中央銀行というのはどういう機関かということについてはいろんな意見がある。日銀の中にも、日銀は一切の行政権限を持つべきではないと考えるピュアーなひともいる。私はあまりそうは考えてこなかったし、世界を見てもあとえばアメリカのフェデラル・リザーブというのは、通常の金融政策の他に相当強い許認可権限を持っている。いままでの日本の大蔵省の銀行行政の殆どの権限を持っている。だからといって、あれは中央銀行として堕落しているとはいえない。私は中央銀行は銀行券の独占発行権をもっているとか準備預金を無利子で預けさせる権限を持っているとか、広義の行政権限を日銀が持っていることは確かであるし、国民に対する説明責任も当然ある。国家組織のなかで相対的な独立性を保ちながら、この情報公開の枠組みの中に入っていくことには特に違和感は感じない。
 ちょっと議論がそれるが、この特殊法人等というものがどれだけの大きさなのか。政府の規模を国際比較しようとすると、日本は小さな政府ということになる。そのとき、いや特殊法人などを加えれれば日本は大きな政府なんだ、という説明を聞くが数字的にどうなっているのか。

松原:特殊法人で働いている人が50万人。このなかでNTTとかJRが大きい。役員が700人、そのうち半分弱が天下りという数字はある。
 ただ、難しいのは諸外国と比較するときに、特殊法人全部を入れて比較していいか。統計上は一般政府に入るか入らないかをSNA(国民経済計算)では分けている。NTTとかJRは一般政府に入らない。したがって50万人全部が入るわけではない。したがって、日本の政府が大きいか小さいかというときに、国際比較をSNA上で行うと、残念ながら小さな政府ということになる。もちろん、このSNAの仕分けが他の国もちゃんとやっているかどうかはわからない。

鈴木:よその国の国営企業の扱いもよくわからないし、大体において資料がない。
 ところで、NHKはどのような主張をしたのか

【再びNHKについて】
松原:NHKの主張は、「国からの出資を受けていない、また、業務も国の行政機能との関連で特定の事業を担当するものでもない、報道言論にかかわるマスメディアとしての放送事業である。自主性・自立性が事業運営の要である。情報公開についてもNHKの自主性を尊重して貰いたい。だから対象外にしてもらいたい。もし、今回対象となると、NHKと視聴者との関係の根幹が崩れる。」つまり、NHKだと思っていたら行政機関だったのかと感違いされる。放送法との関係でいえば、放送の自主性とか自由とかいうのが開示義務とバッティングする。」というようなものである。

竹中:そのような論理をいうならば、民営化してなにが悪いということになるが.....。

松原:NHKの人と議論をしていたら、自分たちは民間だという。国につくってもらった組織ではなくて、国民のみなさまにつくっていただいた組織だという。

竹中:だったら、受信料制度をやめてスクランブルを掛けて見たいものに料金を払う制度にすればいい。広告を取ってもいい。

松原:やはりいまの受信料制度に支えられている経営の安定性や財政力が魅力なのだと思う。

【商工会議所など補助金団体】
村山:商工会議所が対象外となっているが、このために地域の商工会議所の情報がとれなくなってしまう。余計なことをしてくれたといいたい。自治体からカネもひともいっていて、なにをやっているのか情報を開示させることが地域にとって重要な場合がある。

松原:要は、今回の作業は補助金が流れていても、出資がなければ対象外としたわけで、どうしてもこういう結果となった。また、会議所とか公認会計士協会などという組織は一種のクラブ組織で、構成員に対する情報開示は必要だがメンバー外には必要ないという考え方もあった。

竹中:企業や行政機関についての情報公開は、とにもかくにも進み出している。そうしたなかで、今回、特殊法人や認可法人の一部を対象外としたことは、これらの法人の情報公開を抑えて、ここが一番遅れるという懸念があるのだがどうか。今の商工会議所の例もそれだと思う。

松原:私もその立場で、意見が一致するので議論にならないのだが、たとえ出資がなくとも、役員の任命がなくとも、国がつくった法人であるというだけで大変なメリットがある。信用度も高まるし、場合によっては補助金も流れてくる。だから、入れろといったのだが通らなかった。何度もくりかえすが、最終的な判断はその法人が政府か否かであって、商工会議所は政府か、補助金が流れている私立大学も政府か、という議論で全てひっくり返された。
そのもとをただすと、政府の一部を構成するかどうかが判断基準となっていることであり、更にその大本には行政機関の情報公開法をベースにして今回の作業を行ったことがある。当然これがベースです、といわれてしまう。しかし、結果的には外れたところは全ての網から外れることになる。したがって、ここからが特殊法人改革の大事なところで、こここそ政府ではないのだから完全民営化を図っていくのがいいのではないか。

田中:いままでは法人をベースとした考え方であったが、しかし、関空については事業毎に割って考えた。これは一つの知恵で、これを拡大し、補助金が流れている限り政府は説明責任があると考えるべきではないか。商工会議所もカネが流れている限り、その部分については説明責任があることになる。なぜ、そういう議論にならなかったのか。
 行政機関の情報公開法の議論をしていたとき、特殊法人を見送ったのもやむを得ないかなと思ったのは、切り方を変えなければ駄目なのかと感じたからである。それなのに、全く同じ捉え方、切り方になってしまっているから間違いが起きたのではないか。

松原:関空についての妥協案が出てきたとき、これは他でも使えると感じた。そこで、カネが流れたら公開するというのですかと詰めたら、これは関空についての特殊な判断です、ということで終わってしまった。

田中:大体は主管官庁が情報を持っているから、特殊法人に請求しなくとも官庁に請求すれば足りるケースが多いだろう。しかし、業務によっては報告していないものもあるだろう。逆に考えれば、そういった細かなことも全て政府の説明責任とされては迷惑だという考え方もあったのか。

鈴木:関空が出してきた案は一見もっともらしいが、しかし、実際には法人というのはその双方の業務を合わせて成り立って居るわけで、その一部だけ公開したところで全容がつかめるわけではない。うまいこと誤魔化されたのではないか。

松原:関空の案を聞いたとき、これはいいと感じたのと同時に、これは関空にとって危ない案ではないかとも思った。ということは、関空を2つの会社に分離してもいいという考え方に結びつくことになる。競争があるからホテルなどの部門は駄目というならば、そこに内部補助があってはおかしいことになる。内部補助もなにもないのならば,すっきりと2つの会社の分離できることになる。そうなると、そもそもの関空をつくった時の発想とは違ってくる。
 ただ、審議はNHKと関空が一番抵抗して、ヒアリングも3回やったわけです。顔なじみになるくらいやりとりがあって、その最後にこの案が出てきたわけで、これ以外に落としどころがなかったというのが実情である。

2 これからの改革の方向
【財投改革との関連】
司会:これまで、今回の情報公開を巡って議論してきたわけであるが、これから特殊法人改革をどう進めたらいいのかに話題を移したい。特殊法人改革は情報公開だけでなく、財投改革とも関連を持っているわけで、それらも含めて、まず、松原さんにご意見を伺いたい。

松原:財投改革を特殊法人改革とセットにしたい、という議論は改革のメインだと思う。しかし、財投機関債の構想が殆ど頓挫し財投債になった、また、財政融資特別会計がつくられて、そこからお金を配分していくということになった。したがって、財投改革と特殊法人改革とをリンクさせていくという考え方は、もう無理だ。財投債を買うところは、もう国債も飽和状態であるならば郵貯資金しかないわけで、そこもあまり変わらないということになる。

【特殊法人の独立法人化】
 では、どう改革を進めるかであるが、問題は特殊法人だけでなく特殊法人「等」であって、これらを纏めろと従来から主張してきた。先ほど、対象外となった法人は独立行政法人にすべきだといったが、ジャンルとしてわかりやすくなると考えたからである。というのは、この情報公開法の報告書の最後の表を見てお判りの通り、政府系法人というものに5つのジャンルがある。特殊法人のほか、独立行政法人、認可法人、民間法人化された特殊法人、民間法人化された認可法人というのは国民から見てなんだかわからない。今回の作業で、情報公開法の対象となる特殊法人と対象とならない特殊法人、対象となる認可法人と対象とならない認可法人とに更に分けてしまったわけである。
 更に複雑なのは、新総務省設置法をみてもらいたい。今までは特殊法人が総務庁の行政監察の対象だったのだが、新総務省になると認可法人のなかから行政監察の対象となるものが出てきた。それは資本金の2分の1以上国が出資している認可法人である。平和祈念事業特別基金から下水道事業団に至る14の団体をかかげておいたが、この数は多少変動するかも知れない。いずれにせよ、こうなると認可法人が3つに分かれることになる。こうしたゴチャゴチャをなくすために、まず移せるものは独立行政法人に移してしまったらどうかといったわけである。
 今回の情報公開法の報告書には、「対象法人に関する情報は、国民に利用しやすく、体系的で分かりやすく、タイムリーで速やかに提供する必要がある」と述べたあとで、インターネットのホームページでその所在案内情報の整備を図れと書いてある。これは実は非常に難しい思う。というのは、認可法人全体を管轄しているところがなく、各省ばらばらだからである。
しかし、いずれにしても、こうした情報を整理して、どのような法人が存在しているのかをまず国民の前に明らかにすることが、改革の第1歩だと思う。反省している鈴木さんに追い打ちを掛けるわけではないが、いつの間にか見えなくなってしまった民間法人化された認可法人などをもう一度分かりやすくすることが肝要だ。そうしたうえで、それをどこかが責任をもって統括していくことになれば、改革は進み出すのではないか。
 そのあとをどうするかについて今考えているのは、既得権の処理である。たとえば、道路公団をなくせといったならば、建設省としては年俸2千何百万円の事務次官級の天下りポストを一つ永久に失うことになる。これをねじ伏せるだけの政治が出来るかどうか、非常に疑問である。

鈴木:独立行政法人などという厳かな名前を与えれば、いままでいつ財投のカネがこなくなるかと怯えていた人たちは安心するだけだ。それで延命となる。とはいえ、この世界はカネが来なくなれば確実に縁の切れ目だから、カネが無くなるかどうかの話だ。結局、国民が一生懸命国債を買うかどうかということに帰着すると思う。郵政事業自体もこれからは財投債を買う以外に運用の方法はないけれども、それではこれまでのような定額貯金といった魅力ある商品はつくれるわけがないから、そこで自然に集める額にセーブがかかる。そうなると、国債を買ってくれる第1の期待者がいなくなるわけで、果たしてこのメカニズムがどこで効いてくるかが問題だと思う。そのかわり郵政省の30万人の職員は相当ドラスティックに減らしていかないと経営が成り立たないことになる。
 だから、特殊法人などを纏めるというのはどうも抵抗があって、おかしなものはおかしげななかで、いろいろな名前を付けてぶら下げて置いて、おかしいおかしいといっていたほうがいい。いくつかに差別をつけておけば、カネの行くところと行かないところも出てきて、結局整理するか民営化するかの選択を迫れるのではないか。スカッとはしないが、所詮、スカッとしない話なので、こちらの方がお勧め品ではないか。

田中:スカッとさせたらいかんと思う。松原さんがおっしゃるとおり、自然に独立行政法人に傾斜していくと思うが、安易に独立行政法人にするのではなく、たとえば道路公団であれば、民営化すべき部分(たとえば管理する部分)は民営化して、つくる部分について、本当に必要かどうかの吟味をした上で独立行政法人にする。独立行政法人にすれば、財務諸表もきちんとつくらなければいけないし、通則法に基づくルールに従わなければいけなくなる。一挙に独立行政法人の箱の中にぶち込むのではなく、ひとつひとつ、民営化すべき部分、やめて行くべき部分を吟味していかなければいけない。
 今度の郵政改革は中途半端だとかいろいろ批判はあるが、財投に入れることをやめて郵政省が全部運用するとなれば、仮に国債を買ったり財投債を買ったりしても、その責任は全て郵政省がかぶることになるわけだから、いまいまでのようにカネだけ集めてあとは大蔵省の悪口だけ言ってればすむわけにはいかなくなる。個々が非常にこれから面白くなって行くところで、いずれにっちもさっちもいかなくなることを期待している。そこから改革が進むのではないかと思う。

得本:中央省庁改革のフォローの仕事をやってきたが、独立行政法人についての役所側の説明は、本来国がやるべきことでなかなか外に出せない,採算もとれない仕事をやるところだという。つまり、私を含めて一般の理解というのは、民間に馴染むものは特殊法人にして、馴染まないのは独立行政法人にしたということではないか。もしそうだとすると、道路公団とかをみんな独立行政法人にするというのは、まさに時代に逆行することになるのではないか。おかしなものはおかしなものとして、その一つか二つかをターゲットとしていくというのが運動論としてはやりやすいのではないか。

田中:特殊法人から独立行政法人になるものがあったとして、今の特殊法人は労働3権をもっている。国家公務員型の独立行政法人の場合は、団結権、交渉権(協定権も含む)はあるが争議権はない。特殊法人が国家公務員型の独立行政法人になるということはあり得ないし、やらしてはならないと思う。となると、独立行政法人のなかに労働3権を持ったものが増えてくると、国家公務員型の中からも非公務員型になって労働3権を持った方がいいという意見が出てくることが考えられる。

竹中:公務員型と非公務員型を分ける物差しは何か

松原:独立行政法人のなかで、特段の公共性のあるものが特定独立行政法人ということになって、これが公務員型である。そうでないものは一般独立行政法人で、非公務員型となる。特定というから少数派かと思ったら逆で、一般独立法人は製品規格協会とか通産関係4法人だけで、あとは全部特定独立行政法人になってしまった。郵政公社が国家公務員型になったので、それならばとみんな国家公務員型になったと聞いている。

鈴木:国家公務員型の独立行政法人というのは、国家公務員試験を通らずに採用されて国家公務員と同じ処遇を受ける、というなんとも不思議な組織となる。こういう不思議なものは不思議なままに残しておいて、次の改革のターゲットとするのでいいのではないか。

司会:これまでの特殊法人改革論は、結局、分類学になるか、財源や人員の総枠縛りの議論のどちらかであった。もっと、政策論を加味した改革論が構築できないのか。ゴミみたいな法人のことをいくら論じても国民生活上の関係は薄い。もっと、身近な問題に即して議論が展開できないものか。たとえば、住宅政策という観点から住宅金融公庫、都市基盤整備公団、さらには自治体の住宅供給公社や公営住宅を引っ括りにして相互の役割分担を考えるというわけにかないのか。規制緩和の議論も、最初は許認可数を減らすこと〜始まったのだが今では政策論とリンクさせる方向になっている。特殊法人改革論ももう一段進化しないといけないのではないか。

松原:たとえば道路公団をターゲットとして攻撃を仕掛けるということもありうるだろう。ただ、私が独立行政法人化にこだわったのは、特殊法人のまま今の日本道路公団法というなかで今の道路公団に対して情報公開その他の手段で挑むのと、独立行政法人になったときに通則法があってそのチェックシステムが働く、かつ、個別法で外部の評価委員会を設けるなど、我々にとって手段が整備されるのと、どっちがやりやすいかを考えたからである。いまは公団と建設省という関係しかない。それが通則法に基づいたよりオープンな形となった組織の方が手がかりが得やすいのではないかと考えたからである。自己改革も進むかもしれない。しかし、鈴木さんがいわれるように固定化してお終いかも知れないという危惧もあるので、今のところ気持ちは五分五分である。
 政策論の話だが、誰がどのようなインセンティブでやっていくのか。規制改革委員長の宮内さんも孤立無援だと嘆いておられたが、政府の委員会ですらそうなんだから、全くの外からどれだけのことが出来るだろうか。逆にこちらから質問したいくらいだ。

内田:特殊法人の問題は天下りの問題に尽きるのではないか。だから、公務員制度の改革をしない限り、いくら特殊法人をいじっても解決できない。政治の力といっても、生活がかかっていることについてはなかなか難しい。

司会:公務員は65歳まで再任用ということで天下りをしなくても済むような制度改革が行われている。現実は内田さんのいわれるとおりだが、あまりそれを強調すると改革が進まなくなるおそれもある。
 折角の機会なので、いくつかご意見をお聞きしたいのだが、NTTの問題はこれからどうすればいいのか。誰でもいいから教えて下さい。

【NTTとNHK】
松原:NTTは違う会社にしないと接続問題などは解決しないと考えてきた。持株会社というのは日本的妥協の産物であるから、再度、きちんと分ける。そのあと、離合集散があってもそれは構わない。
 電力も同じことだ。8月10日には通産省の本館についての入札が行われ、楽しみにしている。しかし、東ガスなどに聞くと、託送料金についてはオープンになったが、接続の部分で不利な条件が付けられていてこれでは入札できないとこぼしていた。やはり、違う仕事を一部一緒に、一部競争でというのはおかしい。NTTは完全分離すべきだと考えている。
 NHKはスクランブルをかけるしかない。地上波もデジタル化するしBSもデジタルとなる。BSはデジタル化しなくとも、既にWOWWOWはスクランブルをかけている。スクランブルを掛ければ全ての問題は解消し、お金を払ってくれる人向けの放送をやればいい。つまらなければ見ないだけのことである。
 NHKは公共性で偉そうなことをいうが、CSで国会TVが月500円(前は200円)で国会の中継などの放送を流している。民間事業者でちゃんとやれるのだから、NHKもペイ・パー・ビューであるべきではないかと考えている。

田中:私も今の意見に賛成だ。NTTの幹部は、大きければ強いのだという観念を持っている。大きくないと国際競争できないという固定観念をうち破らないといけないが、段々元に戻りつつあって、この15年は何だったのかという感じを持っている。

鈴木:NHKだけが悪いわけでなく、民放も問題が多い。つまらない内容の放送のために周波数の一番いいところを先住民族として占有している。あそこを開放したら、どれだけ携帯電話が使えるかわからない。内容はスポンサー優先でそれを視聴者に押しつけている。NHKも民放も、皆、見る方がお金を払う仕組みにすべきである。
 NHKにいわせると地上波で8割、BSで7割が受信料を払っているというが、少し数字が高めではないかと思う。しかし、仮にそうだとすれば、今の民放の状況を見れば,NHKがスクランブルをかけても、かなりNHKを見るだろうと思う。早くその方向に切り替えて行くべきであるしNHK・民放併せて改革をすべきだと思うが、これはすごい抵抗になって、八つ裂きになるだろう。
 NTTは、昨年からつまらんことをやって、さてまたどうするか。困った話である。

司会:ということは、持株会社をやめてバラバラにして、また、NTT法も廃止するということか。それならば、単純明快だ。
 最後に、自民党がまた特殊法人改革を言い出しているが、その意味は何か

松原:財政赤字をなんとかするために税金を上げなければいけないといってときに、その人質として特殊法人改革が出てくる。村山内閣の時もそうだった。そういう状況が近いという認識があるのではないか。また、行革会議の作業でも、特殊法人は何とかしなければいけないということになっていて、閣議決定も行われていることもある。その2つが流れだろう。但し、その着弾点はわからない。

司会:特殊法人は統廃合を繰り返してきたが、結局全てが延命となっている。もう、統合という考え方を特殊法人改革から追放すべきではないか、とも思う。
 時間が来たので、今日は議論はこのくらいににして、又、機会を見て議論を続けたい。