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シリーズ討論

これからの医療保険のあり方について
− 丹羽雄哉・与党医療保険制度改革協議会座長との懇談会 −

与党医療保険制度改革協議会座長 丹羽雄哉
国民会議ニュース1998年4月号所収
 医療保険制度の抜本改革については、昨年8月末に、与党の医療保険制度改革協議会が改革案をまとめ、目下、厚生省の医療保険福祉審議会で具体的に議論されていますが、薬価問題を中心に難航し、今国会にも法案を提出する予定が大幅に遅れ、秋からさらに来年の春に延びることが報道されています。さらには、財政構造改革法の改正にあたっても、社会保障費の取り扱いが重要な焦点となっております。
 こうしたことを踏まえ、さる4月3日、与党医療保険制度改革協議会の丹羽雄哉座長をお招きして、まとめられた改革案の考え方や内容についてご説明いただくとともに、意見交換を行いました。なお、お話の中で出てくる本とは、今年1月に丹羽座長が出版されました「生きるために −医療が変わる−(日経メディカル開発)」のことであることを付け加えておきます。お話の内容をさらに詳しく知りたい方には、ご一読をお勧めいたします。


抜本改革の経緯
改革は2年遅かった
改革の基本的考え方
改革は2000年から
患者負担は10年間凍結
開かれた医療の実現
薬価基準
新しい診療報酬体系
高齢者医療保険制度の創設
予算のキャップの見直しが必要
行革とは政治家には辛い仕事である
質疑応答



【丹羽座長説明要旨】

抜本改革の経緯
 今回の医療制度の抜本改革のいきさつから申し上げますと、昨年の9月から患者負担が1割から2割へ、お年寄りの負担が2.5倍になりました。薬剤費の別途徴収については大変評判が悪いのですけれども、こういうものもお願いいたしまして、何とか保険財政の帳尻を合わせることができた次第です。その検討を行った際、このような負担を患者に求めるだけでなく、医療費に無駄はないか、効率的であるかとうかという観点から抜本的に見直そうということになりまして、抜本改革に着手するということが与党3党(自民・社民・さきがけ)の幹事長、政策責任者の間の合意事項になりました。それに基づきまして昨年の1月16日から与党医療保険制度改革協議会が審議を始めまして、昨年夏、8月29日に最終的な改革案がまとまったわけであります。
 現在は、厚生省の中に医療保険福祉審議会というのがありますが、この場で、私どもがまとめた医療改革案を基にして議論をいたしております。当初、今国会にも法案を提出したいという腹づもりだったようでありますが、これまで30年間、40年間続いてきた診療報酬や薬価制度の改革を、十分な審議もしないで法案にするということ自身が大変無理なスケジュールだと思います。本来ならばこういう審議会でまとめてから私どものところへもってくるのが筋でございますが、今回は逆でございまして、私どもが昨年、7ヵ月から8ヵ月かけて政治の場でまとめた医療改革案を、いま厚生省の審議会が議論しているということでございまして、いろいろな議論があるようでございますが、秋の臨時国会には法案が提出されるという運びになっております。

改革は2年遅かった
 そこで、この与党案「21世紀の国民医療」についてでございますが、原案は私が全部自分で書きました。私はもともとジャーナリストですので、書くことはそんなに苦ではありません。それを基にして、厚生省の局長以上の人間と連日何時間にもわたって議論をいたしまして最終的に纏め上げ、それをまた協議会の場でいろいろ議論を行い推敲を重ね、最終的な形にしたものであります。今回、書きました本には、そうした改革案に至った背景であるとか、いきさつ、また、改革案には盛り込まれなかことなどを盛り込ませていただいたというわけであります。
 まず、これまでのいろんないきさつ、本でいえば第2章「なぜ医療改革か」というところでございますが、「私は今回まとめた医療の抜本改革は、少なくとも2年遅かったと痛感している。行財政改革そのものも同じことかもしれないが、いまのような医療保険制度そのものが破綻状態になる前に、もっと打つべき手はあったはずだ、と政治に携わる者の一人として深く反省している。」と書いてございます。
 どうして、この医療改革が遅れたかといいますと、2000年からスタートする介護保険の議論を優先させたためであります。実は私は介護保険については大変消極論者でございます。この話をしだすとそれだけで2時間くらいかかりますが、私は、介護保険の問題についても在宅からスタートしたらどうか、そして、国民の皆さん方にご理解いただいたら施設の方にも広げていったらどうかといった、在宅優先論というものを主張しておりました。実は、これは、在宅サービス優先で一度決まったんですが、市町村長さんなどから、やはり特別養護老人ホームとかが本来の介護のあり方であるという強い主張でありました。私は、それよりはマンパワーが不足しているから、マンパワーをもっと増やしていくべきだ。また、現に福祉施設に入っている方から保険料を取ることの難しさ、それから、保険料を取っていながら認定されずに施設に入れなかったなど、いろいろトラブルが発生することを心配していまして、小さく産んで大きく育てようという考え方でございました。まあ最終的には、選挙の終わった後、2000年からスタートということになりましたが、今でも、この本の中にも書いておきましたが、「もう、引き返すことはできない。私は介護保険がなんらトラブルもなくスムーズに離陸することに全力を挙げているが、率直なところ祈るような気持ちだ。」ということであります。
 話がちょっと前後して恐縮でありますが、こういうことで、ここ4〜5年ずっと介護保険、介護保険ということでありまして、医療保険が実は放置されていたきらいがございました。そういうことで、その反動として大変急激な負担をお願いしなければならなくなったし、本来ならば、これからご説明する医療改革を行ったあとで、負担をお願いするというのが筋でありますけれども、そのへんのところが逆になってしまったわけであります。

改革の基本的考え方
 私は、今回の医療保険改革の基本的な考え方について、座長としての叩き台を3月末には用意しておりまして、これが、あちこちの役所のなかで検討しているうちにスッパ抜かれました。だれにも相談していないうちにスッパ抜かれたわけですから、私は袋叩きにあったわけですが、幻の座長案などという人もいますけれども、しかし、最終的な与党案は基本的にはこの方針に則っているわけであります。
 その基本的な考え方とは、「今回の改革は行財政改革の先頭に立つものであり、今後の社会保障改革の第一歩を踏み出すものと位置付ける。」そして、改革の視点としては、「高齢化社会に対応した良質で効率的な医療体制をつくり、国民に開かれた医療を実現するため、医療における情報公開の推進と透明性の確保を図ること、公益性を堅持しつつ、医療における市場原理を導入することなどを柱とし、利用者の立場に立った医療改革を進めること」を掲げております。実際問題としましては、これについて、公益性と市場の原理とは矛盾するのではないかとかいろいろな議論がありましたが、このような私のメモからスタートして、最終的に与党協の案がまとまったということであります。
 まず基本的な考え方ということで、前文に書いてありますが、高齢化が進行する21世紀においても、世界に冠たる国民皆保険制度を維持し、国民に安心で良質な医療保険制度を維持していくことを、国民的緊急課題としております。その一方で、これまで例を見ない急速な人口の高齢化、つまり今、65歳以上のお年寄りというのは全体の人口の15.1%でありますが、これが30年後の2025年には25.8%になるだろうということであります。こうした人口の高齢化、さらには医療の高度化などによって、医療費は増大の一途を辿っており、このまま放置すれば、21世紀初頭には医療保険制度は破綻してしまうことは明らかだという現状認識を示しているわけであります。
 国民医療費はいまや27兆円、国民一人当たり22万円に達しております。27兆円と申しますと、よくわれわれが例にしますのは、パチンコ産業は30兆円でございますから、それよりひとまわり少ない規模であります。この国民医療費は毎年5〜6%、年間1兆数千億円ずつ増え続けており、国民皆保険もいまや重荷になりつつある。このまま5〜6%の伸びでいくと、30年後には国民医療費は141兆円、政管健保の保険料率は23.5%になることが見込まれておりますが、私はこの医療改革によって国民医療費を100兆円以内、保険料は17%前後に抑制することを目指したいと考えております。この医療改革を実現することによって、国民医療費を抑制していこうという立場でございます。
 ただ念のため申し上げますと、医療費そのものについては、実際問題として命と健康にかかわる問題でございますし、患者のニーズというものも多様化しているわけでございますので、保険財政外のところでパイを広げるということに、私は必ずしも反対はいたしておりません。ただ、保険財政には限界があります。保険財政のなかですと、今申し上げたような保険料の問題とか、お年寄りと若年世代の負担感の公平の問題などがございますので、医療改革を通して、もっと国民の皆様方に医療に対するコスト意識を十分にもっていただきたいと思っております。
 「私たちの最大の課題は、いかにして、患者負担や保険料負担などによって国民に負担を求めるだけでなく、限られた医療資源に無駄がないか、効率的であるかとの観点から、医療報酬や薬価の根本的な見直しに踏み切ったことである。」と本には書いておきましたが、この与党の医療改革をまとめるに当たって、私たちは、「つねに国民、患者の立場に立って、医療に対する不安や不信をどうやって解消し、医療に携わる人たちも生きがいと誇りをもって地域医療に取り組むことができるようにするか苦心した。つまり、今の医療の現状をすべて是とするのでなく、正すべき点は正し、よりよい医療を追求していく姿勢を示したつもりである」ということであります。

改革は2000年から
 改革案の前文の中で一番私どもの議論が難航しましたのは、医療改革をいつ実施するかということであります。「改革は2000年から」ということでありますが、まず、私が当初示した実施時期は、「抜本改革の実施は平成12年度(2000年)を目途とするが、新しい高齢者医療保険制度の創設については、介護保険の導入状況を踏まえて検討する」という表現で示させていただきました。しかし、8月初めに厚生省から案が出まして、それによりますと、平成11年(1999年)、つまり来年から始めるという案になっておりまして、社民・さきがけからは、厚生省の案よりも与党の医療改革協議会の案が時期的に後退しているのではないかという強い懸念が出されました。結局、最終的には、「抜本改革の実施は平成12年を目途とするが、可能なものからできる限り速やかに実施する。」「新しい高齢者医療保険制度の創設については、介護保険制度の導入状況を踏まえて、できるだけ速やかに実現する」ということで、決着をみました。
 さきほども申し上げましたように、30年間も40年間も続いていたこのシステムを、根本的に改めてスタートさせるには、今の医療制度審議会でもいろいろ甲論乙駁の意見がでておるわけでございますが、十分に審議しなければならない。それなりの準備期間が必要である。それから、医療現場に混乱が生じてはならない。こういうことから、社民・さきがけの皆さんが非常に急いでおられましたけれども、私ども責任のあるものとして、あえて厚生省案より1年遅らせて、しっかりしたものをつくろうということで、2000年のスタートになったわけであります。

患者負担は10年間凍結
 改革案の前文の最後にこういうくだりがあります。「医療保険制度の新たな患者負担のあり方については、この抜本改革の成果を見極めつつ、検討する。」
 これは、先程申し上げた8月初めの厚生省案では、被用者保険の患者負担を2割ではなくて3割。それから、大病院の外来(慶応病院なんか1日4000人も5000人も来るといわれていますが)の負担は5割にするというような構想を打ち出しました。新聞でも大見出しで報じられたところであります。これに対して私は、さっき申し上げましたように、そもそもこの改革案の検討は、昨年9月に被用者保険の負担を1割から2割へと2倍に引き上げる、お年寄りは2.5倍にするということから始まったわけであります。患者負担を増やすだけでなく、医療に無駄がないかどうかをも検討しようということからスタートしたのに、2割になるまえから、3割だ、いや5割だというような話は、悪乗り以外の何ものでもないということで、私は小泉厚生大臣ともだいぶ激しく論争いたしました。この前文は、こういうくだりを全面的に否定したものでございます。
 実は被用者保険の本人負担を1割から2割に引き上げるというのは、15年ぶりであります。私がちょうど国会議員になりたてでございまして、衆議院の社会労働委員会の末席の理事をやっておりました。筆頭理事が小沢辰男先生で、社会党の理事が村山富市先生でした。こういうときに、1割から2割にしたんです。しかし、健保国会波高しということで、本則では2割とするが、その実施は凍結という案を出したのが、行財政調査会長の橋本龍太郎先生でございました。ですから、15年ぶりに被用者保険については1割から2割になる。それから、お年寄りの負担も2.5倍になるわけでございまして、そこで出された厚生省案とは、まさに負担増に追い打ちをかけるようなものであります。小泉さんはなかなか面白い人で、私も好きなんですけれども、あの人は財政至上主義者でございまして、とれるものはなんでも取ってやろうということで、私はそれは悪のり以外のなにものでもないのではないかとやりあったわけであります。
 それで私は、本の中に書いておきましたが、「私は今回の医療改革で、とどまるところを知らず増大する医療費のムダをできるだけ省いて、高齢者医療保険制度の創設をもって、被用者保険の患者負担の引き上げは少なくても向こう10年間は凍結しなければならないと考えている」のであります。高齢者医療保険制度はこれから創設しようとしているのですが、これは別です。しかし、3割負担というのはむこう10年間はダメですよ、とあえて凍結宣言をこの本の中でさせていただいたわけでございます。

開かれた医療の実現
 そこでいよいよ各論にはいりまして、まず「国民に開かれた医療提供の実現」でございます。マスコミとか医療関係者の皆様方は、どちらかというと薬価、診療報酬、高齢者医療制度、こういうものに注目しているのですが、私は、基本は国民に開かれた医療提供の実現ということではないかということで、この与党医療協の案ではそういう姿勢を示す必要があるということで、これを最初に持ってまいりました。ちなみに、厚生省案は、診療報酬から入って、薬価、高齢者医療、そして医療提供体制という順番であります。そのタイトルは「医療提供体制」ということでありますが、私どもは、「国民に開かれた医療提供」にするんだということで、味も素っ気もない役所の案と私どもの案とは違うのだということをあえて強調したいわけであります。
 基本的な考え方としては、「保険財政が逼迫しているという観点で医療提供体制を単に統制するのではなく、必要な地域医療を確保しながら、限られた医療資源の効率的な活用を図る。また、患者の立場を尊重し、患者と医療従事者との信頼関係を維持しながら、医療における情報公開を推進し、国民の選択によって良質な医療提供が再提供される体制を目指す」ということでございます。
 このなかで、例えばもっと患者本位の医療ということで、病院のなかに患者や家族の苦情や相談窓口を設けたらどうかと考えております。だいたい大病院なんかですと、「患者さん、早くシャツを脱いで待っていて下さい」という感じでありまして、患者さんを診るのは3分もないですよね。3時間も待って1分か30秒くらいで、なにもありませんよといわれて、後ろの人のことも気になるから、もとに戻ってシャツを着る。こんな状態でして、もうちょっとアフターケアといいますか、薬をもらってもなんの薬かわからないということもございますから、病院のなかにこういうような相談窓口などを設けたらどうかということで、この本のなかでも具体的に相談窓口を持っております自治医科大学の例を挙げております。
 それから、患者本位の立場からということで、健康保険証の問題もあります。これは相変わらず古めかしい。1家庭に1枚、ビニールのカバーなんかしてありまして、これを後生大事に抱えています。私のところなんかも、私がこれを持っていくと家内がいつでもいやな顔をしまして、なんかしばらくもっていかれちゃうと病院にいけないのじゃないかと心配するわけであります。別に病院には行かないんですけれども、まあそれをもっているのは非常に安心感があるということです。こういう各家庭で1枚しかないのを改めて、ひとり1枚ずつの個人カードにしたらどうかということであります。保険証がクレジットカードやキャッシュカード並みになるということで、これは今年の予算からそういうものを取り入れて、そういう方向で検討しております。子供さん方が、例えば大学で地方に行ったりしても、そのためにコピーを送るという不便がなくなるのではないかと、こうみているような次第であります。
 そのほか地域医療計画の問題ですが、私は実はこれの反対論者だったのですが、出来てしまったものですから、これを取り外すのはなかなか難しい。しかし、いわゆる急性期の病床と慢性期の病床、これがまあゴチャゴチャであります。たとえば、伊豆なんかは慢性期の病床は一杯ありますが、現実問題として、急性期の病床群は全然ない。つまり、温泉がたくさん出ますから慢性期の病床ばかりになって、急性疾患のための病院はもう作れない。こういうような不合理な点を改めていこうではないかと考えております。

薬価基準
 次に薬価制度の改革問題について述べさせていただきます。
 まず、基本的な考え方といたしましては、与党案には「医療における薬剤の占める割合が高いことが指摘されている。これは薬価が高いことや、購入価格との間にいわゆる薬価差が生じているため、薬剤使用量が増えていることなどが原因とされている。薬価差を原資とする医療経営から脱却し、技術中心の医療に変えていくため、現行薬価基準制度を廃止し、薬価差が生じない新たな仕組みとする。」と書いてございます。つまり、ドイツなどで採用されている参照価格制度の導入を目指すことになりました。「これによって、医療における薬剤費の一層の適正化をすすめ、欧米並みの水準を目指す。」というわけです。現在、日本の場合は、国民医療費27兆円のうちの29.5%が薬剤費の占める割合であるといわれております。欧米並みということは、フランスは19.9%、ドイツは17.1%、アメリカ11%ですから、限りなく20%に近づけようということでございます。
 次に、現行薬価基準、つまり公定価格がなぜよくないかということでありますが、だいたい薬価差が生まれること自体がおかしい。公定価格というのは現在保険料と税金がぶち込まれている部分ですが、一番これが高い。それが転々と流通をするに従って、だんだんだんだんこの値段が下がっていく。普通、ものというのは転々と流通するに従って価格が上がっていくのが普通ではないか。一番高いところを税金と保険料で賄っているということはどうみてもおかしいのではないかというのが、私の公定価格廃止の理由であります。
 ただ、率直に申し上げて、病院の中には薬価差に依存している経営の部分が非常に大きいものですから、これに対する抵抗は大変強いわけであります。しかし、薬価差がありますから、出来高払いの方式でできるだけ数多くの薬を出すということで、いわゆる薬づけというものが生まれてくる。ちなみに、疾病ごとの平均的な処方薬剤数というのがあります。例えば、インフルエンザでどのぐらい診療所が薬を出すかということですが、日本の平均は3.6剤といわれております。まあ、おそらく、名前を挙げて恐縮ですが、PL出したり、のどの鎮痛炎症剤をだしてみたり、抗生物質をだしたり、それから胃薬なんてことなどで3.6剤。ところが、アメリカはだいたい1.2剤とか1.3剤。イギリスも大体その程度でして、日本というのはいかにこういう処方、薬剤数が多いかご理解をいただけると思います。それに加えて、薬価そのものも諸外国に較べて高い。それから、高価格薬剤へのシフトもあります。つまり高い方が効くのではないか、また、高い薬の場合は薬価差がそれだけ多くなりますから病院としては大変有利だということでありまして、いわゆる後発品ゼロだといわれているのですが、日本ではなかなかシェアが広がっていかないということであります。
 そこで、私ども与党医療改革協議会では、現在の薬価基準制度に代わって、市場の実勢価格を原則としながら医療保険から給付する基準額を決める給付基準額制度、いわゆる日本型の参照価格制度というものを導入することといたしました。参照価格制度ではメーカーが薬の価格を自由に設定することができます。いくらで売りたい、ということであります。ただし、同じ効能グループごとに保険機関の支払い限度額を設定いたします。例えば、給付基準額、つまり参照価格ライン、これは保険で面倒みますよというのを100円とします。これに対して医薬品の1、これはなかなか切れ味がいい、人気があるということで業者が強気で150円という値段をつけたとします。そうすると、給付基準額(=100円)を超える50円分は患者さんが自己負担をして下さいということになります。それから、保険の給付分に対しても2割とか3割の自己負担分がありますから、患者負担はこの二つを合わせたもの(50円+20〜30円=70〜80円)になります。一方、医薬品の2、これは給付基準額どおり100円だとします。その場合は超過負担がなく、患者負担は給付基準額の2割とか3割で済みます。ところが医薬品の3、これは比較的後発で例えば売値が70円だとします。そうすると70円で2割負担だとすると患者負担は14円だということになります。これが新しい参照価格制度の仕組みで、一定の範囲を認めて、それ以上は自由価格ということであります。そうしますと、大体このラインのところに値段は収まってしまうというのが諸外国の例のようでございますけれども、このへんのところを十分に検討していきたいと思っています。
 それから、薬剤比率が高い原因のひとつとして、皆さん方はご存じかどうかわかりませんが、医療機関卸というのがございまして、こういう方々がMR、MSというのだそうですが、全国で7万人いるそうです。7万人という大変な数のセールスが昼飯時とか夕方時にお医者さんに売り込みをかける。諸外国に較べてこの数はものすごく多く、こういうことを申し上げるのは大変失礼かもしれませんけれども、このMSがお医者さんの家の掃除までしているといった話も昔は良く聞かれたわけであります。こういうものについては、私どもは厳しく、そんなことはやっていられないのだと、あえて申し上げておるわけであります。
 こういう参照価格制度になりますと、私は医薬の分業が進むと思います。つまり、病院で薬をもらうのではなくて、病院の近くに薬局を置いて、そこで処方に基づいて薬を渡す医薬分業が推進される。今もうだいだい4割近くになってきておりますが、私はここ2〜3年のうちに5割になるのではないかと思っております。日本だけなんですね、医薬分業ができないというのは。病院で薬をもらう方が簡単で良いんだという説もありますが、薬価差がなくなって参りますと、医療機関はこれを持っている必要がなくなってきます。それよりも手放した方がいいんじゃないかということになる。まあ、こういうことでございます。

新しい診療報酬体系
 それから「新しい診療体系の構築」というところであります。
 基本的な考え方としては、「医学および医療技術の進歩、高齢化の進展に対応し、地域医療の活性化と国民医療の質の向上を図るため、診療報酬体系を基本的に改革する。その際、「もの」よりも「技術」の重視、ホスピタルフィーとドクターフィーの明確化、医療機関の機能に応じた評価、急性期と慢性期の医療にふさわしい評価といった観点から、現在の体系を見直し、薬価制度の改革も踏まえて医療機関の経営の安定化と効率化を図る。」こういうことを与党の改革案には書いてあります。
 これに関連して、皆様方お気づきかもしれないし、ちょっと面白い例を本の中には書いておきました。例えば、「もの」よりも「技術」を重視ということなんでありますが、現在は「もの」なんですね。「早い、まずい、冷たい」と評判のよくない病院給食の差益は、実は、薬価よりももっと大きいといわれています。入院患者に出す食事の費用は、診療報酬から病院に対して一人1日当たり1920円支払われる。ところが、病院では自前で栄養管理士を配置するほかは、だいたいメディカル給食というか医療食品会社の職員を厨房に受け入れて給食業務をさせているのがほとんどです。あれは病院の職員ではないんです。要するに病院からこの医療食品会社にいくらぐらいでおろすかを聞いてみると、大体1200円。つまり、診療報酬から1900円貰って1200円支払う。その差益が1日700円、これは大きいですね。
 診療報酬の部分では差益の部分と差損の部分とふたつあります。病院には事務員がおりますが、あれには実は診療報酬からは全然給料は出ておりません。受付なんかやっている人には保険からは全然給料は出ていないのです。このように、医療材料であるとか、薬であるとか、それから給食であるとか、こういうものが差益でありまして、大体、医師の技術料や看護など医療サービスそのものについては、保険から支払われていても低い評価であります。こういう仕組みが、薬浸け、検査浸けに拍車をかけているということでありまして、このへんのところをどのようにこの医療改革の中で変えていくか。「もの」の評価から、技術料の評価に変えていきたいと思っております。病院というのはトータルで計算をしているということでございます。
 それから、定額払いという話をよく聞きます。これについては医療関係者が非常に神経質であります。最終的には与党協の医療改革案では、急性期の医療は出来高払い、慢性期の医療は定額払い、もう病状がある程度一定しているものは定額払いというように、出来高払いと定額払いの最善の組み合わせを構築しなければならないということを、まず最初に明記してあります。それから続いて、急性期医療は入院当初は出来高払い、容態の安定などを考慮して、一定期間後は1日定額払い。一定期間というのは10日か2週間ぐらいだと思うのですけれども、定額払いにする。それから、外来医療については出来高払いを原則とする。慢性期医療については、入院医療については1日定額払いを原則とする。慢性期医療の外来医療は原則として出来高払いとするが、一定の慢性疾患については定額払いのあり方をこれから検討していく、ということです。
 それから「医療材料」であります。これは非常に薬とともに不透明じゃないかということが指摘されております。例えば、カテーテルは米国に較べて5倍、ペースメーカー(人工心臓弁)は2.5倍も高い。その原因は複雑な流通機構や薬価制度のあり方などに問題があるとされているということでありますので、私は、これを輸入時を参考にしながら参考報酬のあり方を検討していったらどうかと、考えています。
 それから、本では「医師の技術、経験も評価」というタイトルになっているところでありますが、これは俗にいう混合診療という問題で、医師会が最もいやがるところでございます。医師の技術の評価については、かねてから大学を卒業したばかりの新米の医師も、10年、20年と実績をあげているベテランの医師も同じ評価の保険点数では不公平だという意見がございました。そこで、医師は保険点数で決められた以外に、診療料や手術料を患者からとるいわゆる「混合診療」については、これは正直申しまして与党協の中でも意見が分かれたところでございます。混合診療を無原則的に認めると、患者は医療機関でいくら負担を求められるかわからない、暴れ馬を野放しにするようなものだという意見がございました。しかし、限られた医療資源の中で、今後、混合診療を一切認めないということは自らの首を締める、というような意見もございました。結局与党協の医療改革案では、一定の範囲内で、医師および歯科医師が特定療養費制度を参考にしながら(まあ差額ベッドみたいなものですね)、その技術や経験が評価できる途を開くということにいたしましたが、これに対して医師会は極めて慎重であります。医療団体というのは護送船団とはいいませんけれども、私どもは、これによってできるだけ風通しのいい、冗漫な医療をしているところはだんだんおかしくなってくる、やる気のある医療をしているところはもっともっと伸びていくということを狙いとしているのですが、率直に申し上げて壁にぶつかっているということも事実であります。
 ただ、アメニティ、医療周辺の部分については、例えば老人病院などでは、予め入院するにあたって、例えばおむつ代とかお世話料だとか理髪代とか書いてあります。私の友人がやっております青梅のあるたいへん有名な病院ですけれども、ウエイティング者がもう500人ぐらいいるんだということですが、この病院なんかはきちんと、平均で12万円、毎月もらっているということであります。これはおむつ代、理髪代、下着も含めた洋服代、洗濯代ということでありまして、1日に換算すると4200円ぐらいです。こういうものは、実は今まではどちらというと認知されなかった。それをこれからはきちんと認知したらどうか、要するに明朗化したほうがいいんじゃないかということで、医療機関が施設利用料などとして患者から支払いを受けることを原則自由とするということであります。
 それからもうひとつ診療報酬の中で申し上げたいのは、出来高払いとも1日定額払いとも異なる支払い方式で、疾患群別定額、アメリカでやっているDRGというのがあります。DRGというのは、例えば胃ガンの手術ならば全て含めて130万円、盲腸の場合は20万円だとか、疾患ごとに定額払いにする。この場合は、入院期間が短いか長いかにかかわらず一定額が支払われるということですが、これによってどういうことがわかるかというと、病院の質がわかるといわれるのですけれども、これについては実はかなり抵抗があります。
 日本の医療の問題としては、薬漬けの問題と入院期間が非常に長いという問題がございます。大体、これは精神病院も長期療養型も入れての計算でしょうが、日本の場合は、平均在院数が41日でございます。ところが、アメリカだとか、イギリス、フランス、ドイツでは8.4日、つまり、日本は5倍以上でございます。この辺の入院期間をどうやって短くしていくかということが、これからの課題ではないかと思っています。冗漫にいつまでも置いておいて、次の患者さんが見つかるまで病院から出してくれないという話も聞くわけでございます。この辺のところが今後の改革のポイントになっていくのではないかと思います。

高齢者医療保険制度の創設
 それから最後に高齢者医療保険制度の創設であります。高齢者医療保険のあり方については、連合が提案の「つきぬけ方式」、つまりサラリーマンが退職後も組合健保に加入する方式と、そこからは独立させる「独立方式」というのがありまして、4月の中間報告ではこのふたつが両論併記となったわけでございます。先程も申し上げましたけれども、現在27兆円のうち3分の1は老人の医療、2025年で141兆円といいましたが、このうち半分が老人医療費ということであります。ですから、日本の医療の一番の問題は、実は老人医療費をどうやって解決するかということではないかと思っております。私は、国民の4人に1人がお年寄りになる2025年、こういうことを視野に入れれば高齢者からも保険料の一部負担を求め、公費も思い切って投入するという独立案を選択するしかない。つまり、独立案というのは帳尻を今のように各健保組合にもってもらうのではなくて、これを高齢者の医療保険制度の中でもっていただきたいということであります。
 健保組合の保険料の領収の中に占める老人拠出金というのは27%であります。つまり、この本の中に日立の健保組合の話を書いてありますけれども、若い組合員はあまり病気に罹らないということで、あまり保険を使わない。その結果、ほとんどが見知らずのお年寄りの方のための老人拠出金として調整されてもっていかれてしまう。これが30%近くになるということで、若い方は大変不満を持っております。こういうことで、いつまでもお年寄りの問題を若い方の負担にするということでなくて、国からの補助金も思い切って入れて独立させるということが筋ではないかと思っております。
 こうしたことから、与党案は「少子高齢社会において若年世代の負担が増大する中で、今日の高齢者の社会的経済的状況をふまえ、今後も低所得者には配慮しながら、高齢者にも相応の負担を求めていかざるを得ない。こうした状況を踏まえつつ、高齢者を対象として疾病の予防、健康増進から治療までを含めた独立した保険制度を創設する。財源としては高齢者自らの負担の他、公費負担、世代間連帯の観点から若年世代の負担を求める」こととしたわけであります。
 医療改革は2000年にスタートするわけですけれども、介護保険はさっき申し上げましたように大変でありますからよくみなくてはいけない。したがって、高齢者の医療保険制度のスタートを2000年にするといっても、なかなか2000年から独立したものを作るのは難しい。そこで、まず定率負担にする。定率負担というのは、今1回行って500円で4回で打ち切り(昨年の9月までは1020円)という制度を、例えば被用者保険が今2割ですから、その半分の1割という定率負担にしていく。私が申し上げたいのは、手厚い介護を受けたものと軽い介護を受けたものが、定額制度の場合では負担が同じなのです。これは、自由主義の原則に反するのではないか。やはり、手厚い介護を受けたものはそれだけ負担が重くなる、軽い負担のものはそれだけ軽くなる。お気の毒だからどうのこうのというのは、別の次元の話ではないかというのが私の考え方であります。その際、新たな高額療養限度額などの限度枠を設ければ、負担が急に増えることにはならないというわけであります。
 以前の健保法の改正の際には、定率制の導入に強い反対がございました。私は定率論者でありまして、定額はおかしいと主張して、大分医療関係者とぎくしゃくがあったわけですが、今医療関係者は、全部、やっぱり定率の方がいいのだということになりました。ですから、定率負担にして、また、サラリーマンの被扶養者となっている高齢者にも保険料を払っていただくというやり方を、2000年からスタートしたらどうか。そして、独立した高齢者の医療保険制度というのは、介護保険制度が2000年からスタートしますから、なかなか同時に高齢者医療保険も介護保険もというわけにはいきませんから、その3年後の2003年が介護保険の見直しの時期なんですが、ここで独立したものとしてスタートしたらいいのではないか。つまり、まず最初に前倒しで、定率制の導入と高齢者の医療保険制度の保険料を徴収するということであります。
 地元で演説する度に票を減らしているんですが、お年寄りは我が国のために大変低い年金でご貢献をいただいていて、社会的弱者でありしかも経済的な弱者であるということで、70歳になると、お金のある方もお金のない方もみんな昨年の9月までは1020円、9月からは1回500円、こういうことでございました。しかし、例えば国民年金を毎月3万5000円ぐらいしかもらっていない方もいらっしゃれば、そうでない方もいらっしゃる。日銀の総裁も1回500円、国民年金を3万5000円しかもらっていない方も1回500円。お年寄りというのは社会的な弱者であるけれども、一律的に経済的な弱者と言い切れるかどうか。
 年金の問題でもお話があったと思いますけれども、世代間の支え合い、賦課方式でありますから、今年金をもらっている方はいいのですよ。私なんかも一生懸命年金を払っている。それはなぜかというと、既得権ではなくて期待権ですね。期待権で世代間の支え合いですから、一生懸命払っている。一番気の毒なのは若い方なのです。今のままでは、おそらく30歳以下の方は払った保険料ももらえないでしょう。この逆ざやをどうするかというのは大きな問題でありますけれども、それと同じように、この医療保険でも、さっき申し上げたように月収20万円もいかないようなOLから、老人拠出金ということで40%、50%ももっていかれてしまうことに大変不満なのです。資生堂の石野会長はカンカンですよ。とんでもない、うちの従業員は若いのだ。みんなその分だけ老人拠出金調整でもっていかれてしまうんだ、と。
 これをどういうふうに考えていくのか。私は、高齢者でも、一定以上の収入があるものについては現役と同程度の負担で良いのじゃないかと思っております。つまり、若い人はみんな2割負担なのですから、それ以上の収入がある方には70歳以上でも同じような負担をお願いしてもご理解いただけるのじゃないか。こういうことを選挙区でいうと、おまえは年寄りの敵だということで、今非常に人気が凋落しているわけであります。しかし、今更考えを変えるわけにはいきませんので、これをいい続けているわけでありますけれども、こういうことを真剣に考えていかなければならないのではないかと考えているような次第でございます。
 そのほか、高齢者の保険制度のあり方については、社民党は国でやったらいいじゃないかとかいうことでありますが、実際に使うのは地方自治体ですから、現実的には地方自治体にやっていただかなければいけない。しかし、小さな市町村がやるには限界があるわけですから、県とか政令指定都市が運営主体となってやっていくことが現実的ではないかと思っているわけであります。

予算のキャップの見直しが必要
 以上かいつまんで申し上げました。一言で申し上げますと、医療という分野は、行革に反して、規制緩和ではなくて規制し続けているところなのです。規制を続けているなかで、現在の保険制度の中で、なにか既得権を守りながらやっていこうじゃないかということで、どうも私には性にあわないんですけれども、ともかく一生懸命やらせていただいているような次第でございます。
 ただ言えますことは、今のままでいきますと、国民皆保険制度というのは間違いなく崩壊する。昨日も加藤幹事長に会ってきたのですが、是非とも皆さんにご理解いただきたいのは、今財政構造改革法の先送りというのが出ています。これはどういうことかというと、私が張本人で評判が悪いのですが、去年暮れの予算編成で薬価を9.7%下げた。その分差益が減ったので診療報酬を1.5%上げたけれども、事実上目減りだということで評判が悪い。しかし、厚生省の予算枠、キャップが決められている。社会保障関係というのは医療だ年金だと年間7000億〜8000億円の歳出の自然増があるのです。ところがこれに対して、平成10年度が3000億円の増、その後11、12年と2%増というキャップがかかっている。これを2年間先送りしたとしても、このキャップを何とかしない限りはまた来年予算編成のときに問題となる。要するに、既存の歳出が思い切って削れないのです。僕は生活保護でもなんでも削ったらいいと思うのですが、そんな簡単な話じゃないというんですね。今年度予算では、厚生年金に対する国庫負担を7000億円繰り延べましたが、今、年金に対する信頼がないときに、これ以上また繰り延べもするわけにいかない。こういうことで、今のままですと、また来年の予算編成が出来ない。もうこれ以上矢面にたつのはいやだ、私が落選するのはいいけれども、今度は政治そのものがおかしくなってきますよと加藤さんに申し上げたのですが、このキャップの問題、社会保障関係の負担増に関わる問題は何とか考えてくれないかといっているわけです。
 公共事業については補正という名のもとでどんどん後から信じられないくらい予算がつくというのに、社会保障関係は当初予算関係でありますから、あとから追加は出来ないということでありまして、これは是非とも皆さん方にもご理解いただきたい。来年の平成11年が一番大変で、平成12年からは、つまり医療改革を行い、介護保険も導入すれば12年からきちんと枠のなかでやりたい。ただ今までの流れを急に変えるわけにはいかないことを、是非ともご理解をいただきたいと思っております。

行革とは政治家には辛い仕事である
 私の選挙区は筑波研究学園都市というところでありまして、これは茨城県でありますが、一番多いのは研究機関で、薬の研究機関が一番多い。これはもう殆ど外資系も含めてあります。こうしたところで、いまお話ししたようなことをやっているわけでありますから、薬屋さんはそっぽを向いて、応援しない。それから、医師会からは、みなさんは聞いていらっしゃるかどうかはわかりませんけれども、とにかくとんでもない野郎だということで、医療機関も応援しない。そして、最近は年寄りの方からも丹羽はけしかんということであります。ところが、これまで私の選挙を応援してくれたのは、医師会と年寄りと製薬メーカーだけだったのです。これ全部にそっぽを向かれてしまったということで、行政改革をわれわれ政治家が行っていくのはなかなか大変なことだと感じております。
 私もそれなりに開き直ってやってはおりますけれども、非常に軋轢があって、相当な覚悟がなければこれができない。ある方にいわせると、物好きな人しかできない。最近はないのですけれども、一時はいろんな脅迫めいた手紙が殺到したり、いろいろなことがありました。私もそんなことでどうのこうのと豹変することもないですし、医療保険改革というものを頑張ってやっていきたいと思っておりますけれども、率直に申し上げて、そんなに喜んでやっているわけではない、自らを奮い立たせながらやっているということを是非ともご理解いただきたいと思います。
 私は、このままでいくとだんだん若い人の負担が重くなる、保険料が多くなってしまうということであって、これは大変なことではないかと思っていますけれども、若い人は選挙や投票には行って下さらないということでありまして、年寄りだけを対象にしながら選挙をやっていくのは、これも大変なことであります。いずれにしましても、こうやってひとつひとつ、私も地元で、今日ほど率直ではないのですが、基本的には同じようなことを年輩の方にもお話をさせていただいているわけであります。なかなか険しく厳しい途でございますけれども、こういうことをやっている政治家もいるということを、是非ともご理解いただきたいと思っております。
 話があっちへいったりこっちへいったり、またいろいろな問題でまだ意を尽くせないことがございますけれども、とりあえずこのへんで私の話を終わらせていただきます。


質疑応答

司会 どうもありがとうございました。特に最後のところで大変なご苦心がよくわかりました。私どもは東京に住んでおりまして、直接のお役には立てないのですが、ご健闘をお祈りしたいと申し上げます。1時間少々ございますので、どなたか・・・。
山口(会社員) 国民医療費27兆円ということは大変なことだということがわかりますし、負担を1割から2割ということもわかりますが、今日お話の中で、医師と病院の改革のほうがあまり見えてこないような気がするのです。一患者として、病院とか個人医院とかへいきましても、ちょっと質問するとあまりいい顔をしない医者がいたり、ちょっと突っ込むと怒りだす医者がいたり、いわゆるクローズド社会という感じが非常にするわけです。
 先程情報公開ということをおっしゃったわけですが、例えば単純にできる本人カルテの公開、それから最終的に清算義務を負わせたときの明細書みたいなものは、コピー1枚10円ということでなぜ開示できないか。いちいち法律がなくとも、本人のものですから、開示して他人に見せるかどうかというのは本人の自由ですし、そんなものを他人に見せるものでもないでしょう。そんなことは別に法律がなくてもできるのではないか。
 二つ目は、診療の不正請求があった場合に、単に返せばいいのかどうかという問題です。先程アメリカの例をちょっとおっしゃったけれども、そういう場合は通常、不正に得た利益の3倍という損害賠償金をとられる。これは行政手続きで普通やるんですけれども、民事制裁金というかたちになっています。それから、刑事罰は終身刑ということになっていますね。そういったいわゆる1罰100戒ではなくて100罰100戒ということがあってもいいんじゃないかと思います。
 それから、医薬分業のことに触れられました。現状は4割とのことですが、私はそこまでいっているのは知らなかったのです。現状をみていますと、ほとんど医院の指定・提携ということで本当に分業かなという感じもするわけです。例えばご存じのようにアメリカのドラッグストアは大変な数があるわけですけれども、どこへいったって診断書さえ出せば薬は出してくれますし、そういうことが果たして日本で行われているのか。大体、医院のすぐそばに薬屋があって、そこと提携して、そこへいくと薬をもらえるという形です。物理的に近いということは確かにいいんですが、どこへ行ったって出来るような状態になればもっといいんじゃないかと思いますし、情報がクローズになっているために患者本人がチェックする方法がないということで、結果的には医師や病院の傲慢さがこの形に出ている。それが27兆円から将来的には100兆円とさっきおっしゃったのですが、こういうことを野放図に認めているから、そうなるのではないかと思うのですが、それについてはいかがでしょうか。

丹羽 盛りだくさんのご意見でございますが、まずレセプトの開示につきましては、すでに局長通知で原則的として本人に全面開示ということが打ち出されております。まだ一部の病院で非協力的なところがありますけれども、大体、大きな病院はレセプトを開示する傾向になっています。
 今度はカルテの開示でございます。このカルテですが、基本的に開示していくということを、私どもの協議会でも打ち出しております。これも反対があったのです。ただ、難しいと私も思ったのは、カルテというのはただ病状を書いたものだけでなく、医師の日記なんですね。これはご覧になった方もいらっしゃるでしょう。私も慶応病院へ行って、実際にお亡くなりになった年輩の友人のカルテをみせてもらいましたが、いろいろ書いてあります。私はあれから病院へ行っても人間ドッグへいっても、もう少し抑えようかなという気になりました。「丹羽雄哉はわがままな患者である」とかそういうのが全部書いてありますね、はっきりいって。ですから、皆さん方も入院したときは気をつけて下さい。家内にもいっているんです。「ヒステリックに怒鳴った」とか、そういうのを全部書いてありますから。看護婦も書いています。ですから、そのへんのところも含めて当然開示していって、そしてそのなかで病気とどうやって闘っていくかということになりますけれど、ただカルテというのは単なる病気の症状だけではないということであって、そういうものを全て書かれているということを皆さんご理解いただきたい。
 「担当の看護婦が看護日誌にこう書いている。厳しい告知を受け入れても取り乱すことなく、1日1日を大切に生きている。素晴らしく、強い人である。」と、本の中でも紹介しておきましたが、こういう風にいろんなことが書いてあります。皆さん方はもうご存じだと思いますが、しょっちゅう看護婦を呼び出す人は全部そのへんのことが書いてありますから、良くご注意いただけたらいいと思います。しかし、流れとしてはレセプトが開示されて、今カルテの開示という方向にきております。
 次は不正請求。これまでは不正請求については、保険医の取り消し期間が最長が2年で、不正請求の加算金が最高10%だったのですが、今度これを、期間を5年に延長し、加算金も40%に引き上げることに与党協で決めました。ただ問題は、率直に申し上げて何十億万枚のレセプトの数がありまして、これをみるのがお医者さんなんです。一般の人は良くわからないのです、現実には。そういうところに限界があるし、重点審査ということでこの病院はおかしいというところで絞られているということがありますし、それから健保組合なんかで削りあっているようなところがあって、それ専門でやっている方もございますようですが、私はもうちょっと機械化をしていかなければいけないと思っております。解釈の違いなんかはありますけれども、不正請求に対しては医師のほうもかなり認識をしだしているのではないか。医師会は不正請求に対してはもう永久追放でもかまわないというぐらいの覚悟であります。ただ、私が5年と決めましたのは、ほかの免許であるとかそういうものに横並びにして、一番厳しいものにしたということでございまして、だんだんそういう方向になってきているのではないかと思います。安田病院なんていうのは、異例中の異例になっているのではないかと思っています。
 一番の問題は、こんなことをいってはいけないんですが、実際問題としては、病院ではやりにくいんです。病院は何百人といますから、なんかあるとすぐ、うちの病院でこういうことをやっているという投書がくるそうです、ご心配しなくとも。だから病院においてはだんだん少なくなってきている、なかなか統制が効かないというそうでありますけれども、まだ小さいところに一部あるのではないか。しかし、これも、大分減ってきている。
 ただ、数秒間で1つのレセプトをチェックするということで、なかなかこれには限界があるということを聞いております。レセプト審査を行う社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険団体連合会には1カ月間に9600万枚のレセプトが届く。ですから、1枚をチェックするのに数秒で目を通すというところに問題があるわけでありまして、このへんをどうやって改革していくか。ただ、医者じゃないとなかなか良くわからないというのも現実のようでありますから、その辺のところも正直申し上げてネックになっております。
 それからもうひとつ、医薬分業。現実問題としましては、医療機関とダミーの分業が行われているのではないかということでありますが、私も正直申し上げてそういう感じがしないでもないのです。ただ、医薬分業が行われていない国は日本だけなのです。だいたい他の先進国は医薬分業が行われているのですが、ただ医薬分業がないほうが便利だという意見、例えば僻地だとか病院へ入院している人だとか、これは分業ができませんから、この方がいいということがありますけれども、大体流れとしては、いろいろな中身はあるかもしれませんけれども、流れとしては医薬分業が行われて、自由にチェックをするという傾向になりつつあります。この本の中に書いておきましたのは、東京の蒲田というところが医薬分業の先駆的地域であります。しかし、長野県の上田でこの薬は副作用があるということをいったら、医師会から怒りをくって、薬剤師会の役員が全部辞めてしまったという問題もございました。なかなか医師と薬剤師との力関係からみて難しいものがありますけれども、今度の参照価格制度が導入されれば変わってくるのではないか。参照価格制度の一番のポイントというのは、医薬分業を推進することと薬の購入時をいかにしてチェックするかという問題、このふたつが前提になりますから、これは一気に、大変な勢いで進んでいくのではないかと思います。
 昨日私のところに薬剤師会の方が来て言っていましたが、今まで処方箋が1億万枚に達するまでに91年間かかった。ところが、2億万枚になるのには9年間でなった。それから、3億万枚には3年間でなったと。この調子でいくと4億万枚になるのは平成9年、10年の2年間でなるでしょう。5億万枚も平成11年、12年でできるでしょう。というのが、薬剤師会の見方でして、これで大体7割近くまで医薬分業が推進されていくだろうということになるのではないかとみています。

司会 今のことに絡んでですけれども、参照価格になったときに、医者からグルーピングで指定があって、それをもって薬局に行くと、さっきの話でいえば1、2、3と薬があって、どれになさいますか、これはちょっと切れ味はいいけれども高いですよという話になるのならば意味があると思うんですが、実際に医者から全部切れ味の良い薬を指定されたら、患者にとってどこまで選択の余地があるのか。気がついたら、結果としてはただただ患者負担が増えたということになるのではないか。参照価格制度全体の仕組みがわからないものですから気になるんですが、今の医薬分業と絡めて、どんな形に将来なるんでしょう。

丹羽 医者が、この薬は自己負担が伴いますがいい薬ですがどうしましょうかということを聞く。いや、私はそれよりももっとマイルドで安い薬がいいんですと、そういうふうになっていかざるを得ないんじゃないかなと思っています。ただ、ドイツの場合なんかは、だいたい天井に収斂されているという話も聞いています。そのへんのところは正直申しまして、やってみないとよくわからないところもあります。
滝井(田川市長) 私、今は市長をしていますが、30年前は医者をしていました。今の先生のご説明では、医療保険はいわば今まで通りの地域と職域と、それに老人保健を加えるという3本立てですね。私はこの3本立てだと、今までとあまり変わらない、おそらくうまくいかないのじゃないかという感じがします。
 市長から見ていますと、いまは保険が4つも5つも7つもあって、そして継ぎ接ぎだらけで、負担も給付も全部違う。以前、田中角栄さんが政調会長のとき日本医師会と医療は一本化すると約束をしました。今の医師会はどうも一元化で、一本化をやらないようですが、市長会では1本化でいくべきだといっているわけです。地域保険と職域保険を1本にしてしまう。老人を別にする必要はなにもない。それに介護保険も一緒にしたらいいんです。なぜならば、今度は介護保険の保険料は一括して徴収して、われわれのところにきます。あと年金の受給者についても、年金の源泉でとれるものはとるけれども、とれない3割はわれわれがとらなくちゃいけないことで、全部地方自治体にかかってくる。地方分権で、一番命と生活に関するものは身近な自治体がやるという原則を貫くとすれば、今のように3本立てというのは問題がある。これは基本的なものの考え方です。
 いま一番困るのは、医者が多くなりすぎているわけですね。23万〜24万人いるわけです。だから、医者を減らす必要がある。公立は減らしたけれども私立大学は減らせないのですね。減らしたら大学が倒れるかもしれないから、減らせない。まず、医学に入る入り口から医者をどう減らすか。それから、出口の国家試験をどうするか。今国家試験の合格者は100%じゃないですね。7割か8割だと思います。だからまずその齟齬をきちっとしてもらうことがひとつだと思いますね。
 医者の免許というのは厚生省の医務局がくれるんです。しかし、医者の免許を持っていても、別途、保険医の免許をもらう必要がある。そして医療の価格は、診療報酬や薬価基準で決まった公定価格で患者さんと取り引きするから、プラスアルファはとることはできない、そういうかたちになっています。従って医療というのは確実に統制経済のなかにあるわけです。ところが、薬は自由経済です。参照価格といってもそれは自由経済ですから、自由に売買出来るんですね。医療は統制経済にはいっているわけですから。1品1品について統制経済でやって、適正価格でやれば、今のような薬価差というはなくなる。今のような医療問題を根本的に解決しようとすれば、一番大事な、しかも老人医療費に匹敵する3割以上の薬は統制経済に入れるべきですね、医者は入っているんですから。それを入れずに今のような参照価格でいくと、これはおそらく薬剤師会も医師会もみんな反対しますね。
 それから、もうひとつは診療報酬ですが、今から30年くらい前のものを継ぎ足し継ぎ足ししてきているから、今の診療報酬というものは実に複雑です。素人には全然わからない。医学部もこれを教えない。だからみんな事務員を雇ってやることになる。そうすると、今診療報酬の審査で800億円かかっています。そして、政府管掌健康保険が1枚について116円70銭のお金を取るんですね。群種別あるいは地域別でもいいんですけれども、医師会に審査させる。だれがインチキするか悪いか医師会が一番知っています。そこで監督に厚生省の役人を何人か置くと、今の800億いるのが半分もかからんですよ。
 それから、ご存じのように国民健康保険は4割が無職ですね。だから保険にならないのです。ですから、これを保険にするためには、その地域の全部の人が連帯の意識をもってやる。介護保険と医療保険が一体になる。そうすると1枚の保険証で済むんです。事務がガタッと減ってくる。そういう根本的なところについて、お考えをいただきたいと思います。

丹羽 まず、地域保険に一本化したらどうかということについては、かねてから有力な御意見がありまして、私もそれなりに傾聴に値すると思っています。しかし、問題は健保という、率直に申し上げて金のなる木といっていいかどうかわかりませんけれども、これをまずばらばらにして、果たして我が国の医療保険財政というものがやっていけるかどうかということになりますと、なかなか自信がない。それから、市長さんのように大変気概をもってやっていらっしゃる方もいらっしゃるようですが、だいたい選挙を受ける身の人間というのは住民に甘いのですね。甘いことばかりいっていて、実際問題、例えば補助金は国のほうからもってきて、使う方は地域の方でやるということで、果たして責任がもてるかどうかということがございます。私たちもそういうようなご批判があることは十分承知しておったわけでございますが、しかし、将来はあり得るかもしれませんけれども、現実問題としては、私は現在の3つの制度にならざるをえないと考えます。
 ただ、私は政管健保はいらないかなという気がしないでもないのです。政管健保はこれはまあ組合の方、あるいは国保にはいってもらう。それから、例えば、医師とか弁護士とかいうものすごい稼ぎ頭が入っていないのですね。こういうものは地域保険に入ってもらう。あとは土木健保ですか、ああいうものはやはり地域健保に入ってもらわなくちゃいけない。しかし、率直に申し上げて、今のお話は筋論としてはわかりますけれども、果たして地域保険に全てして、それだけで十分に賄っていけるだけの住民の皆さん方の理解を得ながら進めていける首長さんがいらっしゃるかどうか。
 国保については県のほうは全くノータッチでありますけれども、県の方にももっと責任をもってもらいまして、県と県との間の問題、例えば北海道と沖縄の地域格差をどうみるかということを、もっと県レベルで財政調整をしていくような途を開いていく方が私は現実的ではないかと思っております。
 参照価格の問題についてはいろいろなご議論があるようでございますし、まだ私がここでなんら申し上げるような知識と経験がないわけですし、お答えはペンディングにさせていただきますが、ただ言えますのは、私は先程から申し上げますように、とにかく薬価差をなくしていくということからスタ−トした。そのなかで、参照価格制度、つまり実勢価格に委ねていく、そして、保険というものはこれから一定の部分しか面倒をみない。しかし、それ以上のものについては、値打ちのあるものについては、個人がそのなかで選択する自由というものを保障する。こういうような発想で参照価格制度というものが導入されたのだということをご理解いただきたいと思っています。
 それから、診療報酬のなかで、私がちょっと気になりましたのは、精神科の医者にいわれますのは、1時間話を聞いても、1分間話を聞いても同じ値段だということがありますから、これは患者さんの話を聞いている時間というものを、これからは診療報酬のなかで評価をしていきたいと思っております。

司会 小島さんなにかご意見ございますか。

小島(セコム顧問) 確かに日本の医療保険というのは、これはまさに世界に冠たるものだと思いますけれども、保険というのはマキシマムの費用を保障するものだというように考えられ過ぎているという感じがするわけでして、保険はミニマムの保障だということを、この際、国民的な意識として浸透しませんと、いつまでたっても医療費の高騰というのは抑えられない。これからは、それに近づくような形に手直しを少しづつやっていったらどうか。例えば診療費について、限度は設けて良いと思うのですが、その場で払わせて、あとで個人に対して組合なり基金から還付させるということにすれば、どの程度診療所で診療費がかかっているかということがわかるはずです。そういうようなことも大事なことではないか。
 それから地域医療の問題ですけれども、医療費について確かに北海道と沖縄の差が大きい、あるいは老人医療については長野のへんが非常に安いという、これは人口に膾炙しているわけです。これは本当になんとかしないと大問題になってくるのではないかという感じがします。米価・減反の問題、もうひとつ公共事業などにも地域格差はあるわけでございますから、それらも含めて、国民の社会的な負担についての格差の問題を是非切り込んでいただきたいと思います。
 それから、医療のサービスの問題ですけれども、私は実はセコムとは関係ないのですが、民間病院問題研究所というところの理事長をやっておりますが、中小の私立病院は今非常に苦しくなっているのはご承知のとおりです。この一番の問題は管理費用なんですね。あるいは、日比谷病院の場合は地価の問題ですね。大都市における地代は非常に高いわけですが、それに対して非常に均一な医療費で支払われるわけですから、矛盾が出てくるのです。私は、都会が過疎になってきているという感じを非常にしています。例えば毎日の地方自治大賞の選考委員なんかをやっているんですけれども、それでみていますと、高知県の大月町だとか、あるいは兵庫県淡路島の五色町だとか、これは有名なところですが、介護や医療に非常に力を入れているんですが、みていますと、中央からの金がすごく入っているわけです。ところが、今東京の23区で、日曜日に病気になったら、かかるところがないのです。大病院にでも飛び込むよりしょうがないという感じでございます。で、この大病院もだんだん紹介だけだとかいうことになってまいりますと、土曜日曜にかかる医者がなくなってくるのが、今23区の病人が非常に不安になっている問題だと思います。というのは、クリニックが非常に弱くなっていて、クリニックの医師の社会的地位、経済的地位を高めるようなことを、なんとかお考えいただかなければいけなのではないかなという感じがするのです。それのためには、今の国民医療費といいますか、保険料を中心としたのではなくて、プラスアルファ分について自己負担というものを考えないとやれません。いっぺんにやれといっても出来ませんが、しかし、そうした考え方の導入というものを、今非常にいい機会ですので、是非お考えいただきたいと思います。

丹羽 ありがとうございました。償還制度というのは一番効くというんですけれども、さっき申し上げましたように、老人医療で定率では駄目で定額だという一番の原因は、いくら金がかかるのかわからないのはけしからん。だから、500円なら500円だけもっていけばいいようにすべきだということでありますので、率直に申し上げて、大分認識の開きがあります。そういうことで、ひとつ私どもも苦労しているなということをわかっていただきたいと思います。
 それから、地域間の格差の問題は、これはなんとかメスを入れなくてはいけないと、やったんです。実は今度の予算の中でも入れようと思いましたら、自治省が猛烈な反対をしてきて、そこまで手がまわらなかったということです。ただ、本の中でも、そのくだりは書いてありまして、また、与党協の案の中にもそれらしきことは匂わせているわけでありまして、医療費の高いところと医療費の低いところの財政調整は、これからの大きな問題ではないかと思っています。
 それから都会が過疎地になってきているということでありますが、これも大変大きな問題だということは私も認識しております。確かに地方はいいんですね、土地が安いし、駐車場はおけるということでありますし、ベッドを広げるにしても非常に有利なんですけれども、都心の場合は大変な地価のなかで、これをどうやっていくかということが今後の大きな課題だということは十分認識しています。
 あと、混合診療なんですけれども、これは一気にはいかないだろうと思いますが、よく患者さんのことも考えながら、混合診療の途を開いていくということが、閉ざされた医療の中に風穴を開けることになるのではないかと考えています。

柳川(主婦) 医療保険とか介護保険とか、そういうものをひとつの場で論ずるチャンスあるいはお話を聞くチャンスがほとんどないんです。本当はこのことが一番ききたいことだと思うんです、選挙民にとって。で、同じ場で地域とか市民レベルで話し合うチャンスというのがないというのが現実だということをまず知って欲しいと思います。
 なぜそんなことをいいますかというと、私たち港区は過疎になっております。どんどん人が流出していくときに、区は住み続けられる町というキャッチフレーズを掲げて区政をやってきたんです。去年私たちは女の議会というのを本会議場を借りてやりましたときに、住み続けられる社会はあたりまえだ、住んでいてよかったという町にして欲しい、あるいはしたい。だから、私たちはコミュニティをつくるんだという決議文をだしてみたりしました。そして、改めて思うことは、港区の住民は医療介護になると相当遠いところまで、なになに県までまわしてもらうんです。なぜかというと、住宅が狭いから、夫が倒れても子供たちが例えば受験であったり、同居している家族がいたりすると、寝たきりの人の世話はできないのです。こうしたことを、同じ場で論ずるということは無理な相談なんでしょうか。

丹羽 おそらくおっしゃりたいことは医療保険の問題であるとか介護の問題が別々に議論されている。しかし実際問題は、あるお年寄りにとっては全て介護で片づけられない問題もあるので一緒に論じて欲しい、こういうことではないかと思っています。
 いま、医療機関というのは、ちょっと専門的で恐縮でございますが、急性疾患であればそんなに長いこと入院していないだろうということで、ベッドの広さが4.3平米となっております。そういうところにいろいろな必要上、社会的入院といわれる方も含めて70万人近くが、そういう狭い病院で何日間も何ヶ月間も過ごしておられます。その中には、もう現に医療的な措置を必要としない方が非常に多い。そうだとすれば、ベッドを6.4平米にするとか、廊下を広くするとか、食堂を設けるとかして、療養環境を良くしたものにして、病院とは分けていこうじゃないかというこのが、実は介護問題であります。
 介護問題というのは、どちらかというとこれまでは1個人の私的な問題であって、特にご婦人方の皆さんの犠牲の上にたっていたのでありますが、これからは社会全体で介護問題を支えていこうということで、介護保険制度を創設して、そのなかで在宅の介護や施設の介護を考えていこうとしているわけです。その狙いのひとつは、医療の施設に入っていた方を介護の施設に入っていただくことです。それともうひとつは、今度はなるべく施設ではなくて、軽い方については在宅で介護をみる。しかしその受け皿がまだ不十分であって、ホームヘルパーなどを介護保険を導入するに従って充実していかなければならない。こういうわけで、あくまでも介護と医療というのは不可分であると思っています。答えになっているかどうかわかりませんけれども・・・。
河登(会社員) 丹羽さんのお話のなかで、不正請求はだんだん減る、例えば病院の中でもチェックが働くからだんだん減っていくということだったんですけれども、安田病院みたいな極端なケースは知りませんけれども、私が直接間接聞いている範囲では、なかなかそう楽観はできないのではないかと思います。それは、でっち上げだけでなくて、例えば過剰診療とか、過剰投薬とか、そういう意味の問題を含めて、やっぱり今のシステムの中ではなかなか解決しない。それは、レセプトをチェックしてもチェックしきれませんね。それは事実上不可能だと思うんです。
 例えば普通の民間の企業であれば、競争原理が働いているから、例えばコストはだれもいわなくてもコストを下げた方が自分が得だし、あるいは製品の値段はあんまり上げるとお客さんはついてこないからということで、そのシステムの中にコストダウンはビルトインされている。ところが医療制度というのは、サービスを受ける患者とお金を払う人は全く別なので、チェックをしたってどうにもしきれない。ではどうしたらいいのかというのは難しいんですが、さっきの先生のお話の中で、ひとつは情報公開、レセプトの公開、カルテの公開、これは大変正しい方向だと思うので是非やっていただきたいと思うんですね。それにもうひとつは、市場原理の導入ということをおっしゃいました。これも方向として正しい。しかし、医療制度と市場原理というのはなかなか馴染みにくいものがありますので、具体的にどういう方向で市場原理を入れたシステムを考えておられるか、お伺いしたい。

丹羽 不正請求の問題はですね、これは率直に申し上げて、不正請求は2割だという人もいるんですよ。ま、私は良くわかりません、正直申し上げて。ただ、今のようなシステムであるならば、審査には限界があるのではないかと思っております。
 過剰診療・投薬については、いわゆる出来高払い方式が原因になっている。つまり、薬をたくさん出す、検査をたくさんするに従って診療機関に余計収入が入ってくるという出来高払い方式から契約払いに置き換えていくことによって、こういうものがなくなっていく。問題は粗診粗療という問題が出てくるんですけれども、少なくとも出来高払いを改めていけば、いわゆる濃厚診療というものはなくなっていくと思っております。
 それから、もうひとつの市場原理でありますけれども、薬の場合ではまさに参照価格制度の導入、これはあくまでも市場の実勢に委ねることです。それから、混合診療。こういうものもまさに基本的に市場制。保険という部分はついてはいるんですけれども、少しでも実勢価格のなかで判断していくのがいいのではないか。公定価格制度というものをやめて、そして市場の実勢に委ねて、保険は一部分しかみないというのは市場の原理というのを投入するひとつの大きな要因になっていくんではないか。それによって大きく変わっていくのではないかと思っています。

原田(専修大学) 私たまたま、丹羽先生とは故郷が同じでございます。先程、丹羽先生は大変地元で人気が薄れているという話がございましたけれども、必ずしもそうではございませんで(笑)、お父さんの代からいうと、もうほとんど20期に亘っての強固な地盤を持っていらっしゃるので、大丈夫だと思います。
 私は基本的にこの医療の問題も、できる限り市場原理を導入できることは導入するべきではないか、それで処理できることはやるべきだというふうに考えているわけです。そのひとつの具体的な例として、今お話がありましたように薬価に関して給付基準額を設定するんだと。これはいわば市場原理のひとつの指標みたいなかたちになるんだろう。ただ、ちょっとわからないのは、これは今までの公定価格と具体的にどう違ってくるのだろうか。つまり、公定価格が参照価格にただスライドするのではないか、というような気がするのです。それが、そうならないんだという保証がいったいどこでどうなるのかなということがわからない。
 それから、もうひとつは、数日前にNHKのスペシャルをみましたら、医療廃棄物の話をやっていました。つまり、医療行為で発生したさまざまなゴミですね、これが大変不法投棄されていたりして大変問題になっているというようなことがあって、この問題をどういうふうにするかということが、今日全然話に出ていないんですが、実はこれは一種の発生者汚染費用でして、処理費用の負担にはPPP(汚染者負担原則)を適用すべきでないかと思います。そうすると、いわば薬価にもそれを上乗せするべきだし、あるいは診療報酬にも上乗せするべきだという話になるわけですね。そうすると、そういう医療行為の初めから終わりまで経費を計上するようにすると、今より医療費は相当上がってくる可能性があるなという感じがするんです。この処理のところは、全然ということはないのでしょうが、あまり表立って出てこないような形で処理している。これがすこし表立ってやらざるを得ないような形になってくると、どうなんだろうかと、これはちょっと疑問点です。今日は全く話に出ておりませんし、まあ、いわゆる与党3党の中の話でも出てこなかったのかもしれませんけれども、厚生省の所管事項であると思いますので、その点を確認したい。
 もうひとつは、最初に、与党3党でこの案を決めて、それから厚生省の審議会にかけている、これはちょっと異例なことであるというお話がありました。確かに私なんかも各省のいろんなことをみると、非常に珍しいケースだと思うのです。通常は審議会で原案を出して、学識経験者が議論をして、それはあんまり現実的でないから、現実的なところで与党や野党を交えて国会の場で現実的なところに落ち着かせる、こういう話が普通なんですけれども、なんでこの件に関して、こういう逆の話になってしまったのか。
 つまり、私は、今おかれている状況の中では、この案はまあまあいい線をいっていると思うんですね。それが、そういう段取りになってしまったことは、なんかもう一度政争の道具に使われはしないだろうかという懸念を持っているわけですけれども、いかかでしょうか。

丹羽 新しい参照価格制度とこれまでの要するに公定価格制度とどう違うかということでありますけれども、公定価格制度というのは値段を決められればそれで全て取り引きされるということですが、今度は医療機関に購入された価格をもって、そして、それについて、ひとつの薬について、さっき申し上げたようにラインを引いて、強いものについては自己負担をしていただくということであって、いくらかでも市場の原理というものが反映されることになるのではないかと思っています。公定価格制度というのは、もう予め決められた価格で、それ以上でもそれ以下でもなくて、そのなかで全て医療機関で購入される。そこに薬価差益が生まれてくる。この違いが一番大きな問題ではないかと思っています。
 それから2番目の医療廃棄物の問題でご心配いただいていますが、私の認識とちょっと違うかどうかわかりませんけれども、医療福祉というのは非課税なんです。今ちょっと一部では騒いでいるんですけれども、だから薬で、例えば課税をどんどんどんどんしていって、卸ももってきて、しかし最終的に全部病院が負担して、消費者が負担しないという、こいういう原則になっております。これは、医療というのは公共性ということがあって、そういうなかにおいて医療福祉というものは非課税だということを、実は私が10年くらい前のことですが、部会長のときに決まって、これを今なお堅持しているということでいきますと、そういうようなご心配というのは今のところないんではないか。ただ、病院経営者の中にはですね、医療は課税して欲しいんだと。薬代だけでも年間3000万、4000万、とてもじゃないけれどもたまったもんじゃないと。こういう意見もございます。ただ、小さな診療所なんかでは、むしろ差損ではなくて差益なんだと。こういうことで、その分は診療報酬のなかでみているということになっております、形式的に。ということでありますので、私はこの問題は直ちに、さっき話のなかで申し上げましたように、診療報酬のなかには差益の部分もあれば差損の部分のあるのだと、トータルで考えているんだということに尽きるのではないかなと思っております。
 それから、最後のご質問でございますが、これは、最初にちょっと私のほうから申し上げたのは、もともとこの問題、医療改革というものを着手するきっかけというのは、3党の幹事長責任者のあいだで被用者保険が1割から2割になるんだと、それからお年寄りの負担が2.5倍になるんだというなかで、医療のムダがないか、効率的かどうかという観点から見直し、抜本改革を見直すということからスタートしたということで、まず私どもがまとめて、それを今、政府の方の審議会で審議をしているということであります。

司会 さっきレセプト審査の話が出ましたが、例えば保険者機能の強化という議論がよくでるわけです。保険医の指定の取り消しというのはこれは重大なことだと思いますし、なかなか難しいにしても、例えば組合健保なりなんなりが、あの医者はよくわからないから付き合わない、そこから請求者が回ってきても払わないという形で、一種のマーケット原理を導入できるものなのか、できないものか。
 もうひとつは、診療報酬にしても薬価基準にしても、なかなかこれを全国いっぺんに変えていくというのは非常に難しいところがある。そうすると、例えば組合健保ごとに、あるいは地域保険ごとに、国保ごとに、何か実験を小さいところでやってみて、うちは東洋医学を少し重視してやるとか、うちは予防医療を重点的にやる、その代わり診療報酬を少し高くつけるとか、そういう弾力的な試みを小さいところで実験的にやってみて、うまくいくようならそれを全国にもっていくような工夫が考えられないかどうか。
丹羽 保険者機能の強化というのは、実は医師が最もいやがることなんですが、与党協の案にも「保険者機能の強化」というのをたてさせていただきました。「保険者は、被保険者の立場に立ってその機能を強化し、制度運営の安定化のため、レセプト審査などの充実を図る。」こういうことでありまして、抽象的でありますが、折角こういう項目をたてたのでありますので、各保険者が単に金を支払うだけでなく、もっと具体的にこういうことをする、相談窓口ももうちょっと積極的に、各保険者が単に保養所をつくるだけでなくて、積極的にこういう問題に取り組んでいただきたいと思っています。
 それから、実験的に少しずつやったらどうかという、こういうご質問でありますけれども、まあ、漢方の問題とかいろいろありますけれども、昨日、協議会の方でOTCの問題がありまた。これはどういうことかといいますと、ちょっと話が恐縮でありますが、漢方だとか、ビタミンだとか、発布剤は保険から外したらどうかと、こういう意見が大変強くありました。そこで、私は特定の業種をねらいうちするのではなく、同じ成分、容量、効果で、ひとつは医療用で使われているし、また一般用の医薬品ということで、つまりOTCと薬局で使われているものについては、少し給付の負担割合を変えたらどうかという方向性を打ち出しました。これは実はフランスなんかでやっている二段階方式であって、これから大変大きな議論になるのではないかと思っています。
 それから、最近問題になっていますのは、スイッチOTCです。えらい宣伝しました。要するにH2ブロッカーというものなんですが、コマーシャルの最後にものすごい早口で「医師・薬剤師に相談して飲んで下さい」と言ってます。そしたらものすごい苦情が殺到しましてね。そんな危ない薬を売るのかと、売らせるのかと、こういうことであります。で、大変評判のいい薬ですね、私も1回だけ買って飲んでみました。あれは、医療機関向けと成分は全く同じ、ただ容量が半分なんです。そうすると、医療機関の場合には胃潰瘍に効く。しかし、半分になると胸やけに効くんだということなんです。じゃあ、2錠飲むとどうかというと、2錠飲むと胃潰瘍に効くんだというのですね。そのへんのところのルールをもうちょっと明確にしたらどうかというようなことを申し上げました。話が飛んで恐縮でございますが、これからはOTCっていうのは、消費者の利便性というものを考えるとどんどんどんどん増えてくる可能性がありますけれども、一定のルールというものを確定しなくちゃいけない。それから、一般用の医薬品と医療用の医薬品の区別、ルールっていうのが非常にあいまいで、あまりにも裁量範囲が大きすぎる。例えば、塩野義製薬のPLとエスタックゴールドとどこが違うのか。どこが違うかわかりますか。要するにPLというのは医療用の医薬品でありまして、これも風邪の引きはじめには非常に効果があるが、風邪を引いちゃったら効かないと、こういう薬だそうでありますが、エスタックゴールドというのは、ちょっと弱くしてある。そのためになにを入れたかというと、漢方の葛根湯を入れているそうですね。そうすると副作用がマイルドになるということでありまして、それで片方は医療用で片方は一般用の大衆薬だということで、どうもそのへんのところが非常に曖昧ですからもうちょっとルールをきちんとしなさいということです。ところが、これを何かはき違いして、コマーシャルの数を減らしたからいいじゃないかということで、最近はH2ブロッカーのコマーシャルはものすごく減ったそうだそうでありますが、そういう話じゃなくて、消費者にとってよくわからないのだというものを、もうちょっと分かり易くして下さいということであります。
 それから、話が前後して恐縮でありますが、実験という話でありますが、なかなか、どこかが自主的にやってくださるならばよろしいんでしょうけれども、こういうものをどこの町でどうのこうのというのは、いままで画一的にやっておりますから、私は現実問題として医療改革をやるときには一気にやるいうことでないとなかなか難しいのではないか。その中で正すべき点があれば正していくというのが、私は手法としてはいいんじゃないかと、こう思っています。介護保険の時も、一部の地区でやってみたらどうかという話が実はあったんです。しかしなかなかこれも実際問題としては難しい。独自性を発揮して自分のところの財源でどんどんやっていただく分にはこれは結構ですが、大阪では65歳以上を70歳と同じような待遇にしていたのを、今度横山ノック知事が補助金をカットするということで大変な突き上げを喰っていることを、NHKのクローズアップ現代をみて初めてわかりましたけれども、それぞれ独自のことをやっていいんでしょうけれども、なかなか難しいことであるという感じを私はもっています。

司会 ありがとうございました。そろそろおわりなんですけれども・・・。

丹羽 最後にひとこと。
 お年寄りの方に少し負担をお願いするというのも、全て一律的にということではありません。70歳になって、私のところでアルバイトしている人もいるんですが、年金だけで34〜5万円もらっているんですね。こういう方も500円であって、税金を引かれると19万円ぐらいしかもらっていないOLの方がたくさんいらっしゃる。で、たくさんの保険料を払っていらっしゃる。こういう方の負担が2割。また、教育とか住宅ローンとか、一番お金がかかるというのは40代50代の方なのじゃないか。こういうことを申し上げるのは大変不謹慎かもしれませんけれども、日本のお年寄りは自分たちの孫になるべくお小遣いをあげたいとか、子孫に美田を残すとか、こういうものが美風であったわけでございますが、これからの時代は残さず、頼らない。お孫さんにお小遣いをあげなくて結構ですから、しかし、お孫さんの代に莫大な借金を残すことだけは止めて欲しいということです。
 医療における矛盾というのはいろいろあります。それから、これもいいますと間違いなく自民党の票が減るということもありまして、いわないでくれということですが、例えば私の友人に医者がたくさんいます。皆さん、糖尿病の患者を探してくれというんですね、糖尿病は人工透析で、今だいたい40万円から50万円かかるというんですね。あるひとはベンツに乗って糖尿の人工透析を受けに行く。それで、その費用が40万円から50万円かかっても、自己負担はたった1万円であります。だから、糖尿になって働けなくなった方に対しては、私は1万円でもお気の毒だと思います。しかし、このひとは体つきもいいですし、ときにはゴルフもしますし、肉も食べますし、ベンツに乗って、年収5〜6000万円は稼いでいるでしょう。これも1万円。こういうことが果たして許されるのだろうか。こういうことをいうだけでもけしからんと、こういわれるんですね、はっきりいって。そんなことをいわないでくれと。しかし、そのへんのところをやはりこれからは率直に申し上げて、本音でいろいろ申し上げてご理解いただかなければ、これからの時代は乗り切っていけないのではないか。
 私だって、選挙で大勢の皆さん方からご支持いただいています。選挙がありますから、町の方ではいろいろお年寄りのためにつまらんことをやっているのですね。私は馬鹿だというのです。75歳を過ぎると1万円ぐらい配っているのですね、100歳になったら100万円配る。私は、そういう発想というものが続いている限りは、大変市長さんには失礼ですが、地域保険なんていうのは駄目だ。要するに100歳で100万円をもらって得をするのは、子供か孫しかいないのですよ。こういう発想がまだひどくあって、私はそういうことをやっている人は尊敬しないとはっきりいっているのです。結構多いのですよ、そういう発想が。まあ座布団ぐらいなのはいい。そういうお金があったならば介護の方にお金をかけるとか、そういうことのほうが私は必要なことじゃないかと思うのです。ところがやっぱりうれしいんですね、もらえると。みんな喜んであの市長さんはいい市長さんだということをみんな言うわけですよ。で、その負担はだれがしているかというと若い人の負担になっているのだということを、私はあえて申し上げたいのです。
 今日は、率直に、こういうような基本的な考え方で、これからも私どもは歯を食いしばって、自分の身を奮い立たせながらがんばっていきたいと思いますので、皆様方もしっかり私どもをお支えいただきたいと心から願っております。
以上