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行革時評

地域再生計画:地方再生交付金は改革にとって麻薬

事務局長 並河 信乃
2004/03/31

 3月31日の日経新聞では、政府自民党は、30日、地方再生交付金創設の構想を決め、額賀政調会長が全国知事会でこの方針を表明したと報じられている。自治体が提出した地域再生計画を審査し、有望なものには交付金を交付するというもので、地域再生計画の内容はどのようなジャンルのものでも構わず、交付金の総額は数千億円の規模だという。いわゆる「三位一体改革」で自治体財政に負担を強いていることを補うためにこうした考えが生まれたのかもしれないが、このような方針を打ち出すことにより、これまでの改革路線がゆがんでくることが懸念される。まだ構想は正式に発表されたものではないから、なんともいえないが、もしこれを実施するとすれば、今の地域再生計画の枠に取り込んでいくことになるだろう。そうなると、2005年度から実施するとしても、2005年度予算概算要求は8月末の締め切りであるから、6月の第2次地域再生計画提案に直ちに響くことになる。

 昨年暮れから今年初めにかけて行われた第1次提案募集においては、「新たな補助金や税措置の創設など、追加的な財政支出を伴わないものであること(ただし、例えば補助金の利用条件等に係る要件緩和など利便性の向上に関わるものであれば可。)」という条件がつけられており、2月末に決定された支援プログラムにおいても新たな財源措置を講ずるものは盛り込まれていなかった。これに対して、自治体側から不満の声があったことも確かであり、参院選挙前の自民党としては、こうした不満に応えた構想を打ち出したのであろう。一見、よさそうな提案に見えるが、はたしてそうであろうか。

 地域再生計画とは、本来、地域の自立を促し、中央政府の縦割り行政を排して地域の実情にあった政策体系を組み上げる試みであったはずである。規制緩和が中心の構造改革特区制度の足らざるところを補うために、権限の移譲や補助金制度の運用改善・統合を進め、国・地方ともに窮屈な財政事情の中で、地域の実情に応じた政策を推進していく手立てを考えていくことが構造改革に結びつくというものであったはずである。そうしたところに数千億の新たな財源を確保し、自治体に地域再生計画の提出を求めれることにすれば、自治体からの計画の殆どはこの財源を狙ったものになりかねない。カネがないなら知恵を絞るという、せっかくの試みが雲散霧消してしまう可能性が高い。国からの補助金(交付金)に頼るという、これまでの構造が温存され、改革は何も進まないということになる。麻薬の切れた患者が苦しんでいるときに麻薬を注射するようなもので、これでは問題解決には結びつかない。

 個々の自治体の立場からすれば、折角の財源を狙わずに、清く正しく美しい構造改革路線を追求しても、議会からなにをやっているのだと突き上げを食らうだろう。したがって、財源狙いの計画を出すなということは出来ないが、それだけでは今後の厳しい時代を乗り切れないと自覚し、あわせて本来の構造改革に沿うような項目も含んだ地域再生構想を練り上げてもらいたいものである。また、それを受け止める地域再生推進室も、本来の構造改革の狙いが貫徹するよう、幅広い取り組みを続けていくことを望みたい。