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行革時評

コミュニティビジネスに総務省の支援は必要か

事務局長 並河 信乃
2004/03/16

 3月16日の日本経済新聞に、総務省が2004年度からコミュニティビジネスの育成に乗り出すとの記事が掲載された。具体的な内容は、自治体がコミュニティファンドを作り、それに出資する場合には、それを地方債発行でまかなうことを認め、その返済費用の一部を地方交付税で補うようにするというものである。

 この案はすでに昨年の11月の経済財政諮問会議で麻生総務大臣が総務省が考える地域再生計画案として発表しており、また、それを念頭においてのことであろうか、昨年暮れから年初にかけての地域再生計画募集ではいくつかの自治体からも提案が行われており、2月27日の地域再生計画決定では全国規模で実施とされたものである。

 総務省ではすでに「わがまちづくり支援事業」として町内会などの地域組織に対する活動助成を2001年度から始めており、今回の案はそれをコミュニティビジネスに広げたものである。コミュニティビジネスを今後盛んにしていくことは必要であるし、自治体がそれに対する財政的支援を行うためにコミュニティファンドを設けることはよい。問題は、それに対して総務省が支援をする必要があるかどうかである。

 もともとコミュニティビジネスとは自然発生的なもので、NPOが行政に取り込まれていく中で、コミュニティビジネスまでもが行政に取り込まれていくことは問題である。しかし、財政的にひとり立ちするまでの措置として、自治体がファンドを設け、債務保証したりすることは必要だろう。

 しかし、それを総務省が地方交付税を使って支援することは行き過ぎであり、望ましくない。第1には国が支援することで自治体側の真剣さが薄れ、脇の甘い計画が乱立することになる。総務省では2〜3年後には市町村ごとに少なくともひとつの新事業を立ち上げ、全国で3000の事業化を進める計画だという。とんでもない話である。本当のビジネスとは、そんなに簡単に立ち上がるものではない。計画通りにことを進めようとすれば、結局、十分採算も考えない代物が増えるだけに終わる危険性が強い。本当のビジネスを志す人はこんなものには乗せられないだろう。

 第2には、交付税は補助金ではない。旧自治省時代から、交付税を補助金代わりに使うことが横行し、目にあまるほどである。特に、いままさに三位一体改革などと称して交付税の削減を進めている矢先に、その総元締めである総務省が交付税のバラまきをするとはとんでもない話である。総枠は削減の一途であるから、この分はほかの部分を削るしか捻出の途はない。削るならばなにを削るのか、それはこの計画よりも優先度の低いものなのか、総務省は明らかにする義務がある。

 総務省がなにか新政策を打ち出そうとすれば、どうしても交付税を補助金代わりに使うしか途がないのだろう。しかし、ほかに途がなければ、やらなければよい。また、自治体も国にすがるのをやめるべきだ。それぞれの自治体で工夫をすれば捻出できない金額でもないだろう。工夫もしないでただただ国にすがり、いくばくかの援助をもらったとしても、そんな根性のところで地域が再生するわけがない。

 地域再生とは地域の人々が自由にのびのびと創意工夫をしながら活動することによって始めて実現するものである。この計画は総務省の活性化には役立つかもしれないが、地域再生にはつながらないものであるといわざるをえない。