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行革時評

気がかりな北海道道州制特区の行方

事務局長 並河 信乃
2004/03/08

 道州制の検討があちこちで始まった。第28次地方制度調査会は3月1日に初会合を開き、小泉首相から道州制の検討についての諮問を受けた。今後2年間で検討を進めていく予定だという。これに応じて、知事会も研究会を発足させた。

 北東北3県はかねてから連携強化を検討してきたが、昨年8月には若手実務者レベルの「北東北広域政策研究会」が報告書を発表、まず3県が2010年に合体して特別県になった後、5年から10年で東北6県による道州制を目指すという。3県は10月から課長レベルの検討会議を発足させ、今年9月に予定される知事サミットに報告を行う予定だという。

 道州制の検討では関西も古い歴史があるが、関経連を中心に関西の知事も加わって関西州の検討がはじまり、出来れば今年5月には関西州の特区申請を行うことをめざしている。九州でも九州自治州の議論は昔から行われてきたが、九州経済界でも再度検討を開始する構えである。すでに九州知事会は4月から研究会を発足させる予定と伝えられているし、四国・中国の知事会でも昨年9月に研究会を設置することが決まり、議論が始まった。

 こうした中で、尖兵となるべき北海道の検討がやや手間取っている。2月に北海道はプログラム案をまとめ公表したが、その内容は構造改革特区に毛を生やした程度のもので、とても道州制特区の内容というにはさびしいものにとどまっている。

 現在、さまざまな制度が乱立してわかりにくくなっているが、構造改革特区とは規制緩和中心のもので、それに権限移譲や補助金や税制の使い勝手をよくする措置や金融支援などを加味して一回り大きくしたものが地域再生計画になる。道州制特区とは、さらにそれを大きくして、権限・財源の移譲や自主性確保、国の出先機関と自治体との調整などの機構改革などを含めたものになる。

 つまり、北海道で特区として先行させるのは、これまで議論されてきた道州制を北海道で実験的に行うことであり、まさに道州制そのものの実施である。ところが、肝心の現地では、道州制とは遠い将来の課題であり、とりあえずは道州制特区という軽いものを行っていくという、道州制と道州制特区とを分ける議論が行われているようである。これはまさに理解不可能な議論であり、もし道庁がこうした発想に立つとするならば、なんとも意欲に乏しい態度であるといわざるをえない。

 たしかに現実をみれば北海道の置かれた状況は厳しいし、各省庁の壁はとてつもなく厚い。しかし、それを打ち破るのが特区の特区たるゆえんであり、提案側が現実と妥協していては、とても改革は実現しない。段階的なアプローチは必要であるが、そのためには何をめざすのかという到達点が明示されなければ、道民や国民の共感を呼ぶことは出来ないし、運動にはならない。

 スケジュール的には、4月半ばには北海道が特区提案をまとめて内閣府に提出することになっており、もう、ほとんど時間がない。しかし、もし、このとき提案されるものがいま北海道のHPに掲載されているようなものだとすれば、道州制についての検討そのものが失速し、後続の多くの地域の失望を買うことになるだろう。