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行革時評

北海道道州制特区を日本再編の突破口とするために

事務局長 並河 信乃
2003/12/22

 12月19日の経済財政諮問会議において、小泉内閣は北海道道州制特区に本格的に取り組むことになった。この会議には北海道の高橋知事も出席して、北海道を先行事例として、権限、財源の移譲、出先機関の統合などに取り組んでいきたいと述べ、小泉首相からは道州制は自分が言い出したことであり、さまざまな問題があると思うがしっかりやってほしいとの発言があった。出席者からもしっかりやってほしいと激励されたとのことである。(高橋知事の提出資料は、とりあえず北海道のHPを参照されたい。)

 19日の読売新聞(朝刊)によれば、これに先立つ18日に小泉首相は国土交通省の北海道開発局を独立行政法人化する検討を指示した模様で、2005年の通常国会に法案を提出し、2006年度から実施というスケジュールを想定しているという。もしこの通りに実現するのであれば、北海道道州制特区は大きく前進することになる。独立行政法人は国の機関には違いないが、その運営についてはある程度の自由裁量の余地が認められており、この独立行政法人の経営陣に地元が参加することになれば、北海道政府の実現への第一歩となるからだ。

 もともと、橋本内閣の中央省庁再編については、ただただ既存の官庁をホチキスで止めただけのものであり、再編には値しないとの見方が一般的である。そのときから小生は、せめて国土交通省の出先機関をそれぞれ独立行政法人化して、その予算の使い方など意思決定には広く地元の参加を求めていくことが必要だと主張してきた。これは、イギリスの例を参考にした考え方であるが、ようやくこうしたことが検討の対象となったことは喜ばしい。
 もちろん、その実現には多くの困難が予想されるが、北海道を皮切りにしてこれが全国に広まることになれば、公共事業のあり方について多くの改革が進められるだろう。いま、問題となっている高速道路の問題にも新たな展開が開けることになる。

 北海道開発局を取り込むことだけが道州制特区の狙いではない。ほかにも国からの権限や財源の移譲が必要なことは当然であるが、一番大事なことは、北海道が経済自立を目指して自前の戦略を立てることであり、そのためには道庁に集中している権限や財源を道内の市町村に移譲し、北海道内のすべての地域が改革に向かって一斉に動き出すことである。こうした中から、あらたな地域産業政策、地域農業政策、地域医療政策、地域福祉政策、地域教育政策などが生み出されていくことを期待したい。

 すでに構造改革特区、地域再生計画あるいは三位一体改革とか、地域に関連してさまざまな改革メニューが出されている。今回の道州制特区とはこうしたものをすべて包含したものであり、いずれは全国に波及することを想定したものである。一口で言えば日本を地域中心に再編成することであり、その端緒を北海道に求めるということである。北海道の責任は重大であり、北海道側にはかなりの構想力が必要となってくる。安易に考えて、札幌にある道庁の権限だけを肥大させるという愚かな結果にだけはしてはならない。