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行革時評

国幹会議は、まず高速道路整備計画を見直せ

事務局長 並河 信乃
2003/12/12

 12月12日午前の自民党道路調査会と国土交通部会の合同会議は、今後の高速道路の建設について、高速道路整備計画の9342キロはスピードを落とすことなく確実に整備する、新規路線は料金収入を活用した資金調達と国と地方の負担による「新直轄方式」で整備する、という方針を正式決定した。新たに民営化される新会社に対しては、道路を保有する「保有機構」が新線建設を委託する方法がとられるようだ。

 しかし、この「委託」とはどういう意味なのであろうか。現在のやり方は、公団は命令を受けて道路を建設する。これに比べて「委託」は表現はやわらかいようだが、問題は新会社が採算を考えて建設を拒否できるかどうかである。石原国交相は日経新聞のインタビューで、道路設計などで新会社の言い分を認めていくという発言を行っているが、それでも条件が合わなかった場合に新会社が拒否できるかどうかについては触れていない。

 12月25日には国幹会議(国土開発幹線自動車道建設会議)が開かれ、今後直轄方式で建設する路線の一部決定を行うとのことである。しかし、現在決まっている枠組みでは、整備計画の未整備区間事業費16兆円のうち新直轄方式で建設するのは3兆円分(15年間)であり、このままでいけば、残りは結局新会社に押し付けられることになる。命令でなく委託でも、やらされることに変わりはないというのでは、何のための民営化なのかわからない。

 そもそも道路公団の民営化とは、後先のことを考えずに「行け行けどんどん」と決められてきた計画を、まず、採算性などの民間的センスで見直し、それでも必要なものは政治的に決断して建設していこうという、新たな仕組みを導入するためのものだったはずである。政治的決断の場合には、当然、国と地元との費用分担などの問題も検討され、そこでも一定の歯止めがかけられるはずであった。しかし、今の新直轄方式は、表面的には4分の1の地元負担があるように見えるが、実は自動車重量税の重点配分などで実質的負担はゼロとなるといわれており、これでは歯止めにはまったくならない。

 さらに、自民党の決定では、日本道路公団の地域分割は、経営が安定してから行うとなっている。将来の収入をあてに借金させられてつくりたくもない道路を結局つくらされて、どうして経営が安定するのか理解に苦しむが、それよりも大事なことは、地域分割ができなければ、料金の全国プール制が温存され、利用者の多い道路の負担で閑散とした道路がさらにつくられていくことである。これでは、分割民営化の理念は真正面から否定されたことになる。

 こうした事態が生ずるのは、結局、9342キロを整備するという整備計画そのものが微動だにしていないからである。自民党の関心は、公団が民営化されるかどうかよりも、もっぱら9342キロが達成できるかどうかであり、これさえ守られればそこを誰が建設しようが構わないということだろう。

 12月25日には国幹会議が開かれる。自民党の安倍幹事長、額賀政調会長など国会議員10名、民間委員10名という異様な会議であり、その結果は目に見えているが、それでも民間側の委員は整備計画そのものを見直すことを提案すべきだろう。
 しかし、11月28日の道路関係四公団民営化に関する政府・与党協議会で配布された国幹会議についての説明資料には、当面の国幹会議で変更する主な事項として、
・基本計画及び整備計画の建設主体 (新直轄で整備される区間)
・整備計画での工事に要する費用の概算額(コスト縮減が図られる区間)
・基本計画及び整備計画のICの追加 (ICが追加される区間)
の3つが掲げられているだけである。要するに、計画そのものを見直す気持ちはさらさらないわけだ。となれば、せめて、「委託」とはどういうことなのかくらいは、きちんとした説明を求め、おかしければ反論して欲しい。