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行革時評

補助金削減と地方住民税の増税:これが三位一体の改革か(再論)

事務局長 並河 信乃
2003/12/05

 12月5日の各紙朝刊には、自民税調が打ち出した個人住民税の均等割りの引き上げ案が一斉に報道されている。自治体の規模によって3000円から4000円の差がつけられていた税額(都道府県分1000円を含む)を揃えるとともに、これを最大3000円引き上げて7000円にするという案である。これが実現すれば、1600億円程度の増税になるという。また、妻に対する非課税措置を見直し、年収100万円以上の妻には夫と同じ税負担を求めるという案も盛り込まれており、これも含めるとかなりの増税となる。特にこれまで均等割りの税額が低かった町村では大変な増税になる。
 また、その前日には、総務省が地方税の制限税率を撤廃し、自治体が事業税や固定資産税の税率を独自に引き上げられるようにする案を自民税調に提示したと伝えられている(住民税については既に制限税率は撤廃済み)。

 この発想は、補助金の1兆円削減と5000億円程度のたばこ税の地方移譲の隙間を、地方税の増税で埋めようとするものである。つまり、中央政府の財政再建を地方住民の増税で進めていこうというわけだ。

 制限税率を撤廃し課税自主権をいくらかでも拡大させることは構わない。また、住民税を強化していくことも今後の自治体運営のためには必要かもしれない。しかし、その大前提となるのは、自治体の住民が自らの税の使い道について十分な発言権・決定権を持つということである。いま議論されている補助金の削減は補助率の引き下げに過ぎず、自治体の裁量が増えることにはつながらない。一方の地方住民税の税率も頭ごなしに引き上げが決定されるというのでは、住民自治の原則は大きく踏みにじられることになる。大手を振ってまかり通るのは中央集権的な財政当局の意思だけである。

 補助金の削減についても、厚生労働省の所管では生活保護の削減とするか保育所の補助金削減でやるかで、それぞれ応援団もついて大騒ぎという。こういうことを中央で一律に決めずに地域の実情にあった選択を認めていくというのが地方分権の思想であるし、三位一体改革の基礎ではなかったのか。

 小泉首相は「地方のことは地方で」というスローガンはよく口にするが、その現実の姿がこれでは、羊頭狗肉のそしりは免れない。