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行革時評

補助金削減:これが三位一体改革か

事務局長 並河 信乃
2003/11/28

 小泉首相は11月21日、2004年度予算編成で三位一体改革を緒につけるため、1兆円の補助金削減方針を打ち出し、25日に各省に対して削減目標額を示した。示された額は、国土交通省に3200億円、文部科学省に2500億円、厚生労働省に2500億円、農林水産省に500億円、その他省庁に1300億円などあるという。いかなる根拠でこの数字が出てきたのかは明らかではないが、各省庁は28日までに削減項目や額、手法を決め、官邸に報告することになった。

 しかし、補助金が削減されたとしても、それが丸ごと廃止されるのか、交付金のような形で残るのかは今のところあいまいであるし、国の事業として廃止されてもそれが地方の事業として税源移譲など財源確保措置をとるのかとらないかもまだ何もわからない。要は、各省庁からの回答をみて対応を決めるというのだろうが、議論が逆立ちしていないか。

 三位一体改革とは、中央政府に集中している税財源を自治体に移譲し、自治体はその財源をいかに有効に使うかを考えることにより、膨れ上がった財政規模を国・地方合わせて全体として縮小させていくということだろう。限られた財源をどう使うかを、中央政府ではなく自治体が考えるというところが最大のポイントだ。民主主義政治の下で財政膨張をいかに抑えるか、そのためには受益と負担の関係を明確にして、それぞれの地域で自前の自動調整機能を復活させていくというのが、新しいシステム設計の根幹のはずである。

 ところが今行われているのは、依然として各省庁が補助金の存廃の決定権をにぎり、しかもその財源措置の有無は財政当局が握るというきわめていびつな状況である。20兆円近くもある補助金の一部をいじるというきわめて限定された措置のために、大きな枠の組換えができずに、結局、これまで行われてきた補助金削減案と同じレベルのものになっている。

 財政構造改革の議論は、土光臨調以来から数えても、もう20年以上にもなる。中央集権的な財政構造を維持したまま、総枠縛りと各省横並びという手法による「改革」では、どうにもならないところまできている。しかし、11月26日に発表された財政制度等審議会の「平成16年度予算の編成等に関する建議」には、こうした反省は微塵も見受けられない。「中央政府に比べて地方のほうが財政的に豊かだ」という説を繰り返し、言葉の上では「地方の自立支援」を謳いながら、財政支出の削減・打ち切りを随所にちりばめている。

 財政当局の主催する審議会の答申とはそんなものだと割り切ってしまえばそれまでの話であるが、この審議会の財政構造改革部会長は経済財政諮問会議の民間議員であり、財政制度分科会長兼歳出合理化部会長が地方分権改革推進委員会の議長、さらにほかにも経済財政諮問会議の民間議員や分権改革推進委員会議長代理が参加しているとなると、これは黙視できない。こうした人たちに議論を任せないで、改めて、財政構造改革とは何かについての在野での議論を巻き起こすべきではないか。