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行革時評

専業主婦の年金制度:中途半端な厚労省案

事務局長 並河 信乃
2003/11/21

 年金財源の捻出とともに課題となっているのは、いわゆる専業主婦の年金についてである。厚労省の案では、片稼ぎの夫婦に限って夫婦折半までの年金分割を認めるというものであるが、これはいかにも中途半端である。片稼ぎだけでなく共稼ぎについても、夫婦折半、いわゆる2分2乗方式を全面的に採用すべきである。

 2分2乗方式にすれば、夫婦の年金権が合算され夫婦間で2分されるから、就労し保険料を払えば、それに応じて年金が増えることになる。厚労省案のように年金分割は片稼ぎの時期に限れば、就労しなくとも年金はもらえることになり、就労意欲がその分減退する。

 また、厚労省の案では折半されるのは厚生年金の報酬比例分であり、基礎年金分は依然として専業主婦は保険料の納付が免除されている。もしこの免除を継続するのならば、折半するのも基礎年金部分にまで及ぼすべきである。それがいやならば、専業主婦も基礎年金部分は納付するのが筋だろう。働いていない学生にまで納付を義務付けるのであれば、立派な大人が年金保険料を払わずに権利を主張するのはおかしい。

 共稼ぎであろうと片稼ぎであろうと、それぞれの寄与率に応じて年金受給権が生まれるような制度にすることを、これからの目標としなければならない。また、こうした制度を導入することにより、遺族年金の制度は不要になる。遺族の方々はつれあいの分をあわせて折半した年金を引き続き受給することになり、専業主婦の場合は今の3分の2の給付割合から6分の1だけ給付が減少することになる。しかし、もし働いていれば、その分の権利はつれあいの死後は満額受給できるから、影響は減殺されるし、また、自分の年金権か遺族年金のどちらを選ぶのかという2者択一ではなくなるから、全体としてはプラスではないか。

 これからの厳しい時代には、みんなが働いてみんなで制度を支えていくことが必要だし、そうした努力が報われるように制度設計をしなければならない。そうした見地に立てば、今回の厚労省案はいかにも中途半端である。