時評トップに戻る TOPに戻る 
行革時評

年金財源2兆7000億円の捻出法

事務局長 並河 信乃
2003/11/14

 今回の総選挙の重要課題の一つが年金制度の改革であった。2000年の年金制度改革で、2004年度までに基礎年金の国庫負担部分を現在の3分の1から2分の1に引き上げる方針が国会での付則として盛り込まれており、その約束の期限が到来しているわけである。これについては、直ちに2分の1にせずに段階的に引き上げるというなし崩し的先送り方針がすでに昨年末に打ち出されており、今回の選挙でもこの点については与野党ともに大きな違いはないようだ。なによりも、これを実施するとした場合に2兆7000億円という財源を捻出しなければならず、妙案が浮かばないからである。

 しかし、ポケットのどこを探しても2兆7000億円という巨額な財源はないかといえば、考えようによってはある。それは国債費の中の定率繰り入れ分の廃止または圧縮である。国債費の総額は2003年度予算で16.8兆円、利払い費が11兆円とされているから、その残りの多くが定率繰り入れ分と考えると5.8兆円となる。これを全部または一部やめて、2〜3兆円捻り出したらどうかというのが、ここでの提案である。

 国債整理基金への繰り入れを停止したところで、明日から国債の償還ができなるわけでない。国債を償還し残高を減らしていくことは望ましいことには違いはないけれども、今の状況では60年経っても借り換えていくしかないだろう。だとしたら、金のないときに約束を反故にしたり借金したり増税する前に、少なくともしばらくは繰り入れを停止することがまともな判断だと思う。

 この方策は、すでに何度も行われており、小生の経験したところでは、20年前の土光臨調で「増税なき財政再建」を実現するために、窮余の一策として採用したこともある。これは1989年度まで続けられ、また、93〜95年度までも行われた。決して誉められた方策ではないが、国債残高がこれほど大きくなると、律儀に60分の1づつ積み立てることが本当に望ましいことかどうかは疑問ではないか。

 妙な財源を見つけると、本来の歳出削減努力が甘くなる懸念もあるが、歳出削減努力は継続し、その分は増税や国債増発を防ぐというのが筋だろう。なによりも、こうしたことによって、一度約束したことはちゃんと実行し、年金制度や政府に対する信頼を取り戻すことが肝心である。