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行革時評

志の低い「北海道道州制特区」

事務局長 並河 信乃
2003/10/10

 自民党の選挙公約に「北海道道州制特区を2004年度に創設する」というのがある。これはどこまで深く考えて盛り込んだものなのか知らないが、もし本気ならば郵政事業の民営化よりもはるかに大きな問題である。

 これまでも断片的な情報は流れていた。8月8日に道州制実施のための基本法制定案を持ち込んだ杉浦正健自民党議員らに、小泉首相は北海道を道州制導入のモデルする「道州制特区」構想を明らかにし、8月26日には高橋はるみ北海道知事に検討を要請した。その要請の理由について、小泉首相は、記者団に「三位一体改革の考えの中でも、道州制は北海道が一番適している」と説明したという。

 その検討結果なのであろうか、10月10日の日本経済新聞の経済教室の欄には高橋知事の名前で、北海道を道州制の先行モデルとする案が掲載されており、タイミングの良さにあきれるばかりである。しかしながら、読んでみるとその内容は一般的でありきたりの、いまいちはっきりしないものである。北海道が先駆的なモデルになって、道州制(本当は連邦制)の道を切り開くのだという気迫は全く感じられない。この原稿を命じられて書いたひとは、本心では道州制特区など迷惑だと思っているのではないか。

 いかなる思惑で北海道を道州制の特区にしようと小泉氏が考えたのかは知らないが、地域で道州制(本当は連邦制)の試みを始めることは面白いし有益だと思う。北海道に触発されて、沖縄や九州が検討を始め、地域が自立し独立していく動きが出てくれば、この国にも希望が湧いてくる。

 しかし、残念ながら北海道の高橋論文では、中央政府に対峙するような心意気を持った地方政府ではなく、国の出先機関の色彩を色濃くもった都道府県を単に広域化していく程度の話しか浮かび上がってこない。もしこれが、自民党の選挙公約に掲げている「道州制特区」の姿であるというならば、甚だ志の低いものといわざるを得ない。皮肉を言えば、だからこそ公約に盛り込めたのかもしれない。