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行革時評

地域再生法に魂を入れるには

事務局長 並河 信乃
2003/10/03

 10月3日の朝日新聞、日本経済新聞朝刊には、3日に開催される経済財政諮問会議に民間議員4名が「地域再生法」の制定を提案すると報じられている。
 その具体的内容は実際に会議が開かれたあとでないとわからないが、報じられているものをつきあわせれば、地方公営企業の民営化、行政サービスの民間開放、建設業の事業転換支援、観光産業の振興、農業の競争力強化などが挙げられているという。おそらく、行政が独占しているサービスを一括法によって民間に開放し、地域密着サービスを生み出していこうという考えが基本なのであろう。

 「また、カネを使わない経済振興策の地域版か」と野次ることは簡単だ。94年の細川内閣による緊急経済対策から経済構造改革特区制度にいたるまで、規制改革・規制緩和は財政負担のない経済刺激策として多用・濫用されてきた。今回、経済財政諮問会議が地域経済の再生を課題に掲げたものの、財政には頼れないところから、こうしたアイデアがひねり出されたに違いない。

 カネを使わない経済対策という発想ではあるものの、この考え方そのものは悪い考えではない。むしろ、どうせやるならばさらに大胆にして、財務省的ケチケチムードを吹き飛ばす方がよい。その第1は、現在の行政サービスの分野にNPOなど市民セクターの参加を大々的に認め、促進することである。民間とは企業だけではなく、大きく育ちつつあるNPOやボランティアなど市民セクターをまず念頭におくべきだろう。将来、社会的サービスを受けるには、税金を払うかNPOに寄付するかを市民が選択できるようにして、そうした寄付には税が控除されるような社会にするのが望ましい。

 もうひとつは、経済諮問会議のもうひとつの課題である郵貯改革との連動である。地元で集めた郵貯資金は地元で使うような仕組みを設け、それに今の新たな地域サービス産業育成を連動させるのである。既存の地域金融機関との協調も必要だし、多少のリスクは地元の自治体が引き受けることも必要だろう。政府系金融機関をすっぱりと廃止して、その代わり、地域で必要だと考えるならば、その地域の郵貯資金を使って地域財投を設けることが望ましい。政策金融機関はもはや中央政府には要らないが、地方政府には必要な場合があるのだ。

 もし、この2つの考え方が実現すれば、これは財政当局の思惑を超えた立派な政策になるだろう。構造改革のお手本にもなるだろう。しかし、首相にも民間議員といわれる人々にも、こうした発想はないだろう。だれか、折角の考えに魂を吹き込むものはいないのか。