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行革時評

これで改革推進内閣といえるか

事務局長 並河 信乃
2003/09/25

 小泉第2次改造内閣が9月22日に発足した。小泉首相は改革推進内閣で、これまでの路線には微塵の揺るぎもないと胸を張っている。たしかに、党内の期待を裏切って竹中氏の留任を断行したことなどはその象徴なのかもしれない。しかし、竹中氏が留任しただけで、構造改革路線が継続できるわけではない。そもそも、小泉首相の言う構造改革とはなにかが問題だが、これは別の機会に論じたい。

 とりあえず問題となるのは、小泉氏が掲げている道路公団と郵政事業の民営化を実行するための陣容である。まず、これまでとかくふらふらと腰の定まらなかった石原氏が国土交通大臣で大丈夫かどうか。父親の石原知事は、「今までは権限がなかったから駄目だったが今度は権限があるから違う」と親バカぶりを発揮しているが、要は権限の有無よりもやる気の有無だろう。藤井公団総裁の首を切ることくらいなら出来るかもしれないが、総裁の首を切っただけではなにも問題は解決しない。既に公団民営化の前に直轄高速道路建設制度が出来てしまっており、これがスルスルと動くようではなんのために公団を民営化するのかわからない。道路財源の一般財源化も昨年の予算編成過程で実現できなかったし、高速道路の建設をいったん止めて考えようという本来の狙いが今見えなくなっている。新大臣が改革を目指すのであれば、こうしたことに筋を通すことが役目なのだが、果たしてそうした役割りができるかどうか、やる気があるかどうかが問われることになる。

 郵政の民営化の担当になる麻生総務大臣も良くわからない。昨年7月の郵政関連4法案審議の最終段階で、麻生氏は政調会長として党を代表し小泉首相と法案の修正をめぐって協議したが、そのとき彼が郵政民営化に積極論を唱えたわけではない。竹中氏とウマが合うとの報道を見かけたが、たしかに2000年4月の総裁選では市場重視の積極経済論を唱えていた。だからといって、竹中氏に郵政民営化のかじ取りをすべて任せるとは到底考えられない。竹中氏は難渋するだろう。

 さらにいえば、これまでの片山大臣は郵政関係はともかくとして、地方分権についてはまあまあよくやったといえる。いわゆる三位一体の改革は3年間で4兆円の補助金削減というレベルに矮小化されてしまったが、それだって今後の展開は予断を許さない。今後、麻生氏が分権にどのような態度で臨むのか、郵政の民営化よりも地方分権の方がはるかに重要な事柄であり、構造改革の基本になるべきものであるが、それについての関心が薄そうな総務大臣というのは困ったものだと思う。

 首相は在任中は消費税の引き上げはしないと繰り返しているから、2006年度までは緊縮財政を貫き、経済の刺激は規制緩和や特区、民営化という非財政的な手法でやっていこうというものだろう。その規制改革や構造改革特区の担当大臣になったのが金子一義氏であるが、これまたどういう人なのかよくわからない。特区の担当大臣であった鴻池氏が評判が良かったのは、その鼻っ柱の強さ、喧嘩腰であった。金子氏も各省大臣を相手にして喧嘩を吹っかけるのであろうか。

 ついでにいえば、良くも悪くも内閣の要となるのは財務大臣であるが、これまた谷垣氏の思想、手腕いずれも良くわからない。お利口ぶりを発揮しようとして、結果として財務官僚の言うなりにならないように願いたいものだ。

 よくわからないうちに決めつけた物言いはよくないが、いまのところ、今度の組閣は改革推進内閣とはとてもいえない。しかし「男子たるもの、3日会わざれば刮目して待つべし」というから、よく目をこすって、それぞれの大臣の言動を今後監視していきたい。