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村上大臣との懇談会議事概要
2004年11月11日
 2004年11月11日、推進会議では村上大臣をお招きして、懇談会を開催した。大臣側からは、村上大臣のほか特区推進室の滑川室長、御園副室長、檜木・宮地・梶島・藤澤参事官と内閣府本府の中藤審議官などが出席、推進会議側からは代表の榛村・掛川市長のほか、草加市、志木市、市川市、稲城市、川崎市、山梨市、岐阜市、大垣市、大阪狭山市、海南市、北九州市の各市長と遠野市、相模原市、豊橋市の助役・収入役、そのほか推進会議参加自治体の理事・部長らが出席した。
 以下は懇談会の概要である。

1 村上大臣との懇談会

◆ 村上大臣挨拶要旨

 特区は構造改革を推進していくための突破口であり、目に見える形で改革が進んでいるものであると考えている。既に全国で386の特区が誕生し、来月始めにはさらに100件近くの特区が生まれることになる。
 この特区推進会議は特区制度の応援団として、熱心な市町村長さん方が参加されていると伺っているが、本日は皆さん方から忌憚のないご意見を伺いたい。

 2週間ほど前のNHKスペシャルで草加市や上勝町の取り組みが報道された。私も拝見して感激し、実は自費で100本ダビングをして、国会議員の人たちや党の幹部の皆さん方にも配って見てもらおうと考えている。草加市で教室の高さ3メートルを2メートル70センチにする話が紹介されていたが、その翌々日、閣僚応接室で、隣が前内閣参与の中山恭子さんの旦那さんの中山成彬文部科学大臣だったので、中山大臣に「今後いろいろ文部省や国土交通などと交渉しなければいけないのだが、そのときは相談に乗ってよ」といったところ、「わかった」と快く引き受けていただいた。あのテレビを見ていて感じたことであるが、「百聞は一見に如かず」で、具体的に見ていただかないと、特区の話はわかりづらい。

 また、末吉市長や穂坂市長から著書を送っていただいたが、こうした方々の常日頃のご努力や情熱に感服している。行政の最前線で得られた経験や知恵を教えていただいて、これを将来的には行財政改革に結実させていきたい。私としては、皆様のご提案の中で妥当性のあるもの、緊急性のあるものについては各省大臣とトップ会談をして、可及的速やかに実行できるような形にしていきたい。

 今日は限られた時間ではあるが、忌憚のないご意見をいただきたい。

◆ 懇談

 引き続き、出席者から以下のような意見が出された。

【木下・草加市長】テープを100本ダビングしていただいたとのことで、ありがたく感じている。
 今、特区とは単に地域活性化だけの問題ではなく、将来の行財政改革につなげていかなければならないとのお話があり、また、大臣の情熱を披露していただいて、今日は来て良かったと感じている。大臣や特区推進室の方々の情熱や努力に負けないよう、我々も情熱を持って地域間の連携もとりながら頑張っていきたい。
 これまでは市町村が中央省庁とやり取りをしてもうやむやにされることが多かったのであるが、特区推進室が各省とのやり取りを全て公開して、例えば現行制度でも出来るという回答が示され、これまでの壁に穴があいていく。まさに、これは地方発の制度改革であると認識をしている。
 あのテレビでも紹介されていたが、こうした特区問題に本格的に取り組むためには、市も専任の担当者を置かなければならないのではないかと考え、専任者を理事で置いたわけであるが、これほど効果があるとは思わなかった。今後の人材育成、自治体間の連携のためにも、他の自治体でもこうしたやり方を取ってもらえればありがたいと思っている。

【穂坂・志木市長】 うちはちょっと負けが込んでいる。提案件数30件のうち採用されたのは6つで6勝24敗ということだが、打率2割と考えればそんなにひどい結果でもない。めげないでこれからも頑張ろうと思っているので、どうかよろしくお願いします。

【千葉・市川市長】 特区制度の重要性を理解しているものの一人であるが、是非ともこの制度を今後とも維持していってもらいたい。
 大臣がお見えなので、私どもが提案して駄目だった例をあえて申し上げると、市川市は人口密度が千葉県で1位のところであり、自動車の駐車違反が大きな問題となっている。警察にもお願いしていろいろやっていただいているが、とても手が回らない。これをなんとか行政でお手伝いが出来ないものかと考え、特区提案をしたのであるが、却下された。
 これを復活してくれというお願いを申し上げるのではなく、お手伝いしたいと申し入れても断られたことに各省間の壁、権益の壁を感じざるをえない。他にも同じようなケースがあると思うが、こうした壁をなんとか取り去っていただきたい。

【村上大臣】公権力の行使のところで問題になったのかもしれない。今年の春の国会で道路交通法が改正され、駐車違反の取り締まりの民間委託が2年以内に実施されることになっているので、ご提案の趣旨が生かされるようにしたい。

【石川・稲城市長】 サテライト型の特養を提案してこれが認められたことは大変ありがたく思っている。稲城市だけでなく、全国的にも広まるものであると考えている。
 一方、内部で検討中で難しいかなと思われるものは、市民農園についての規制緩和である。ヨーロッパ諸国ではどこにもクラインガルテンがたくさんあるが、日本の市民農園は面積も狭く、営農についての制限も強い。特に3大都市圏では生産緑地制度ということで、相続税の猶予をしているため、農地として認めるかどうかを税務署が判断することになっている。認められなければ相続時に宅地化農地として相続税がかけられることになる。これがクリアーできれば、日本でもクラインガルテンが実現できることになる。ただ、税の問題が絡むだけに実現は難しそうだが、これが実現すれば都市周辺で農地を保全しながら都市住民が農と触れ合い、また、農業生産も上がっていくことになる。これから提案させていただくことになると思うが、ご支援を賜りたい。

【阿部・川崎市長】 川崎市では国際環境特区と国際空物流特区に2つの特区が認定されている。あとさらにお願いしたいものが2つ、3つある。
 国際環境特区については、川崎市は環境対策先端技術の集積地であり、アジアの環境技術者を養成していく拠点づくりをめざしてアジア企業家村構想を進めており、だんだん形が見えつつあるところである。今後ともご支援を賜りたい。
 国際臨空物流特区は羽田の国際化が2009年であり、当面の課題は羽田の対岸にあるいすず自動車が2006年に撤退した後の広大な跡地利用である。国際臨空特区については全国展開という話もあるようだが、これまでの規制緩和に加えてあたらしくいろいろなものが出てくると思うので、全国展開の結果、特区がそれで打ち切りにならないよう、より高い水準を目指して努力できるよう継続してもらいたい。
 川崎は音楽家の多いところで、音楽のまち特区というのをやろうと考えているのだが、まだ、準備中である。その他、新しい産業を作るため福祉産業コンプレックスをつくるとか言う構想もあり、いずれも息の長い話であるので、この制度を今後も継続していただいて、全国の自治体と連携して取り組んでいけるようご支援をいただきたい。

【村上大臣】 音楽のまち特区とはどんなイメージなのか。

【阿部・川崎市長】 川崎に財団法人で音楽学校をもっているところがある。ここが外国から学生を招いたり、大学院を設けたりしようとすると、経営母体についての制約が出てくる。これを今の学校経営の認められた枠内でやっていくのか、あるいは新しい形をお願いするかどうかを検討しているところである。

【中村・山梨市長】 私のところは規模も小さく、いま特区と地域再生で農地と河川について認定されているので、現在それを実施していくことが精一杯であり、加えて市町村合併問題も抱えているので、特区の新たな提案をするパワーがなく、小休止というところである。ただ、3月22日までに合併が実現すれば、今度は中山間地域が加わることになるので、地域循環バスなどを申請しなければならないかというイメージを持っているところである。
 いま、地方分権とか三位一体改革とかが言われて、自治体が自ら考えていかなければならない時代になったが、私どものように小さな自治体はそういうことに目を向ける機会はなかった。しかし、いざ申請しようとすると何日も詰めて法律の細かい条文をひっくり返す経験をして、政策の企画立案の体験をしたことは良かったと思う。公務員の評価ということがこれから重要となるが、こうした経験を今後も生かしていきたい。

 今、まちづくり交付金のプロジェクトに取り組んでいるが、各関係課の職員がコンサルと一緒に議論をするなど、今までとは違った取り組みになってきており、こうしたところにも特区の成果が現れているのではないかと考えている。

【臼井・遠野市収入役】 市長が合併協議会を開催しているため、代理出席させていただいた。
 遠野市は「どぶろく特区」として有名になったが、正式には「ふるさと再生特区」というものであり、交流から定住に向けていろいろな試みをしていこうというものである。どぶろくの問題も地域の特性を生かした事業の実施をするための規制緩和をお願いしたものであり、いいことだからすぐ全国展開すればいいというものではないのではないか。岩手県でも4市町村で同じような認定を受けているが実現できているのは遠野市だけである。全国展開していくのは原則的にはいいことだと思うが、特区のままでもいいものがあるのではないかと考えている。

【末吉・北九州市長】 北九州市では特区は4分野8項目ある。打率は3割を割った程度である。
 北九州の場合は物流特区であるから、主として民間企業の皆さんと相手をすることになる。そのとき、これは出来ないというときに、法律上出来ないのか、政令なのか規則なのか、あるいは省庁間で話がつかないからなのか、この原因をはっきりさせるのに1年半かかった。もちろん、役所内だけでわかることもあるが、民間企業と共同作業をしていると、これは担当が違うとかいった縦割り組織の問題が民間企業にもある。また、企業では権限をみな東京に引き上げていて、地元では意思決定が出来ない。民間企業の方も権限を地方に下ろしてもらいたいといっているところである。
 特区を実施していくと、自治体では垣根が低くなることは間違いない。先ほど、警察のお話が出たが、我々のところでは警察との連携強化を図るため、職員を2名を派遣して警察の第一線の活動を支援している。制服を着た人たちにはやってもらわなければならないことが多いので、権限の問題には触れずにこうした協力体制を組んでいるわけである。特区でやるのも一つだが、こういうやり方もある。
 遠野市のどぶろく特区は他の追随を許さないものがあるが、北九州市の国際物流特区は大分苦労して始めたものなのに、出来るとなるとうちより実力のありそうなところが乗り出してきて大変である。しかし、特区には特許がないから、これは致し方ない。

【神出・海南市長】 これまで合併問題に忙殺され、やっと一段落したところである。この間、今年5月、県から線引き廃止を認めてもらった。海南市には昭和46年から線引きが導入され、市街化調整区域には家が建てられないということで、近隣の町村に人口が流出していった。私は本職が一級建築士であることもあり、この問題を取り上げてきたが、知事からも県の規制で地元が困っているものがあれば持ってきてもらいたいといわれたので、今年5月の県のマスタープランで廃止を認めてもらうことが出来た。そうなると、家が建てやすくなるので、この半年足らずの結果ではあるが、昨年に比べ建築確認が3割増という結果となり、よかったと思っている。
 建築士としてみると、先ほどの天井高とか採光基準を全国一律に決めることがいいのかという疑問がある。太陽光が必要な地域もあればいらないところもあるので、建築基準法を改正して、地域に応じた基準が設定できるようにすべきだと考える。
 また、合併協議でも問題になったことは子育て支援であるが、保育所の補助金が削減の方向に動いているので、全ての幼稚園で、2年保育を3年保育にし、また、現在、預かり保育の時間延長に移行中である。幼稚園だと交付税で園児一人当たり40万円くる。ただ、これがいつまで続くか不安であるが、保育所は民間と、市立では2園に絞っていきたい。

【吉田・大阪狭山市長】 昨年の統一選挙で市長に就任したのだが、6月議会で収入役を廃止しようとしたところ、事務方から町村なら良いが市では収入役はおかなければいけないと法律で決まっているといわれた。しかし、大阪狭山市の人口は5万7000人で、小さな市も大きな市と同じにしなければいけないのか、それならば特区で提案してみようということになった。それを職員に指示したら、特区というのは経済効果がなければ駄目ですよという答えが返ってきたが、とりあえず出してみろと提案した。たまたま、志木市の穂坂さんも同じ提案をされて、マスコミでも話題になり、「大阪狭山市、収入役いらん」と一面で取り上げられた。
 これが大阪狭山市の特区の初めての取り組みだったが、今は幼保一元化などを考えている。特区は職員の教育につながるし、ひいては都市間競争にもつながる。まちの特色を出していくということは職員の差が現れることであり、それが市の差になる。したがって、この特区という制度を是非とも続けていってもらいたい。最近では、農業委員会の委員長さんが特区のことで話があるとみえた。市民農園のことであったが、行政のことに農家の方が関心を示し、自分たちでもなにかしたいと農業委員会で話題になるということは、この特区という制度が分権時代のまちづくりの誘い水になっていることであると思う。

【村上大臣】 市民農園は、都市の人たちが自然に親しみながら、農地の荒廃を防ぐ一石二鳥の効果があると思う。そういうアイデアをどんどんこれからも出してもらいたい。

【小川・大垣市長】 うちも収入役をやめて特命担当助役にした。
 特区はオープンな形で議論が行われ、問題点がはっきりわかる素晴らしい制度だと思う。また、職員の意識改革にもつながっている。これまでは「これは駄目だ」となるか、要望を言うかのどちらかであったのに、具体的にこれはこうしたらどうかと考えるようになった。ただ、残念ながら負け越しとなっている。
 先ほど、市川の市長さんも言われたが、各省の縦割りの壁が厚い。自治体でも同じことがいわれるが、人事ローテーションもあるのでそれほどでもない(逆に回りすぎて、問題を先送りするとの批判もある)。この特区の話を聞いたとき、これが各省間の垣根を打ち破ることになると期待した。幼保一元化の問題も、いまは幼保合体とでもいう状況で、羊羹をふたつくっつけたようなものである。本当は中学生の方がきめ細かくやらなければならないのに、そっちは手付かずで、就学前の子供についてわざわざ分けてやっているというのはまさに省庁の垣根以外の何者でもない。こうしたことに特区推進室が取り組んでいただけるのはありがたい。
 大垣市では「ほほえみスタデイ特区」ということで、不登校児対策に取り組んでいるが、地味であまり目立たないものだが、不登校児が減ってきており、実績が少しづつあがりつつある。

【細江・岐阜市長】 構造改革特区では7・7・7というのは縁起の良い数字である。つまり提案が採用されたものが7、提案が通らなかったものが7(つまり打率5割)、また、特区として認定されたものが7つある。今度の第6次提案も行うので、この数字はまた変わってくる。
 今日、申し上げようと思うのは、駄目だった7のうちの一つであるが、特区制度のおかげで問題が解決した例である。実は岐阜市は市民協働で水害に強いまちづくり特区というものを提案した。これはどういうことかというと、水防団の処遇に関することである。今、総務省では消水防一体でやることを推奨しているが、全国700市の中で10市が水防団を単体で持っている。問題は、水防法によると退職報奨金を支払うと法定外支払いとして問題になる。またボランティア活動の公務災害に関するきちんとした定めがないので、処遇が非常に厳しい。この点についてかねてから交渉してきたのであるが、総務省からは消水防一体でやって欲しいと言われた。わたしもなんとかその線で出来ないかとやってみたが、岐阜市は長良川を抱え、水防団の方が消防団よりも大きく誇りもある。そこでなかなか埒があかないので、特区申請を行った。その結果、全国レベルで水防団に対して退職報奨金を支払っても良いという方向で国土交通省から回答があり、また、公務災害についても公務の範疇をしっかりと定めていきたい、出来れば来年の通常国会に法案を提出するということになり、特区としては実現しなかったが、特区を超えるもっと根本的な法律改正に結びつくことになった。
 特区制度は今後とも恒久的な制度として続けてもらいたい。

【細川・豊橋市助役】 市長は先日の日曜日に市長選挙があり3選を果たしたが、今日は代理で出席させていただいた。
 豊橋市は三河港という重要港湾を抱えており、輸入車は日本一、輸出車も名古屋港に次ぐ、世界でも有数の自動車港湾である。そこで、本市を含む3市1町で国際自動車特区を申請し、昨年認めていただいた。自動車の回送運行の仮ナンバー表示の緩和や自動車関連で外国からの研究者受け入れの緩和等の措置を認定いただいた。成功事例としても紹介されている。
 今、考えているのは徴税事務の嘱託化など行政サービスの効率化であるが、今後研究していきたいと思っているので、どうかよろしくお願いいたしたい。

【村上大臣】 欧米では引っ越しをする際、必要な手続が一括して出来ると聞いている。日本でも、税金や公共料金の支払いなどが住基ネットを使って一括してできるようになれば、事務費は大幅に削減できると考えている。特区を使ってこうしたことに突破口を開いてもらえれば大変ありがたいので、どうか、研究して提案してもらいたい。

【加山・相模原市助役】 私どものところは農業特区ということで、異業種からのダチョウの飼育に取り組んでいる。しかし、事業化となるとなかなか難しい。参入した当事者だけでなく、行政がどこまでお手伝いをすべきかという問題がある。屠殺する場所や排泄物の処理などの場所は確保できたが、福利厚生の施設や付帯施設などは現在の都市計画法や建築基準法のもとでは難しいという問題もある。こうした法的な整理を行いつつ、流通過程まで踏み込んで行政が指導し、事業として成り立たせていく道筋をつけていかなければならない。市では、特区も含めて都市農業のあり方を模索するために6名の専門職員を置いて取り組んでいるが、経営的に成り立つようなフォローができるように行政が支援していく方策を考えていくことがこれからの課題である。
 なお、卵から肉までの一貫体制というのはコスト的に難しいので、今は幼鳥を買い入れてそれを育てることをやっている。

【榛村・掛川市長】 NPOに寄付しても特別の場合でないと損金にならない。たとえばNPO特区をつくって、このまちではNPOに企業が寄付したら損金になるということにすれば、NPOは大きく育つのではないか。また、古い家があってそれを自治体が買いたいと思ったら起債するしかないが、その際の制限が多すぎる。特定の目的があってそのための起債が出来るようにして、自治体と住民が責任を持つという新たな起債の仕組みがあっても良いのではないか。
 また、これは昔からいっていることだが、パスポートは自治体が出してもいいと思うが、外務省は頑として聞かない。
 もう一つは、このごろいろいろ災害が起こっているが、これは明らかに森林の手入れ不足から起こっている。ところが森林の所有者は零細なので、殆ど手入れをする意欲がなくなっている。そこで森林組合が手入れをするために募集をかけると都会から多くの人がやってくる。ところが組合は所有主義だから、都会からくる人たちは組合員にはなれない。都会の人たちを組合員にすれば良いのに、林野庁は頑として認めない。
 中心商店街の活性化がどこの自治体でも課題となっているが、再開発法では再開発ビル方式なので、もっとソフトなまちづくり特区をつくり工夫をしていけば、触れ合いの場が出来てくる。もう右肩上がりの時代は終わったのだから、それを直さないといけない。
 今、地方6団体が税源移譲で争っているが、自治体に税源と権限を渡しても人材がいなければ駄目だ。国のキャリア官僚の仕事がなくなるので官僚は抵抗しているが、自治体が官僚をヘッドハンティングして、シティマネージャーのようにして、自治体側の味方につけたらどうかと考えている。そういう本籍のないキャリア官僚をつくったらどうか。

【村上大臣】 実は行政改革、規制改革、構造改革特区、地域再生、産業再生機構の5つの仕事を受け持っている。しかし、これらは全て絡み合っている。以前、初代の財務副大臣として塩川大臣の下にいたのであるが、いまや財政は大変な時代である。もう補助金や交付税頼りではやっていけなくなっており、構造改革特区や地域再生など、それぞれの地域のアイデア合戦になった。生き残りをかけた地域間競争の時代になった。その中で、知恵と力を出したところを我々は一生懸命サポートしていく。これが特区制度だと考えている。その意味では何度もトライしてみることが大事だと思う。

 本日は貴重なご意見を伺うことが出来て、感謝している。今後とも、忌憚のないご意見をいただきたい。

2 メンバー間の意見交換

 大臣の来席前と退席後、メンバー間で大要以下のような意見交換が行われた。

【末吉・北九州市長】 この特区制度の位置づけとして、3つばかり感ずることがある。
 ひとつは、自治体が自分で考えろと言われたこと。内閣官房のところに持ってくれば、これを応援するという仕組みははじめてである。自治体が自分で考えろといわれた最初のものは「ふるさと創生」だったと思う。あれを大きく評価する人もいれば、金塊を買っただけでは駄目だという方もおられるが、あれが小学校レベルのことだとすれば、今回の特区は中学校、あるいはそれより上の程度のものだと思う。特区の成果というよりも、自治体の政策立案能力の勉強の場として評価したいと思っている。
 2つ目は、特区という制度の性格だと思うが、税制と公共投資を抜きにして、規制緩和だけでやれというのは、これでも進歩だとは思うが、諸外国の例からすれば格段の差がある。これをどう考えるか。
 3つめは、こういう仕組みが出来て、よそのやっていることも大変勉強になるわけだから、個々のプロジェクトよりもどのようなプログラムを組んでいるかという面の評価が行われ、また、自治体が政策立案能力を持った人材をどう養成していくかをこの特区制度が投げかけてきたと思う。

【榛村代表】 末吉市長は、自治体が自分で考えろとボールを投げられたのは「ふるさと創生」で、その後が特区だといわれたが、私はその間に、不発に終わったが、パイロット自治体制度いうものもあった。これは5年間やったが、私がいまここの代表をしているのは、このとき「パイロット自治体会議」の代表をやっていたためでもある。ちょっとそれを付け加えておきたい。

【木下・草加市長】 この間NHKスペシャルで取り上げられたが、取材にこられてもっと取り上げてもらいたい問題もあったのだが、なぜか教室の天井高の話になった。
 特区制度のこれまでの評価ということになると、私は素晴らしい制度であり、よくこのような制度を考えていただいた、また、特区推進室がこれほど一生懸命やっていただいたことに感謝している。
 地域の活性化という点で成果があがっていることは確かだが、草加市としては、むしろ国の側にいろいろ規制があって、この緩和をオープンな形で提案できる。オープンなゆえにごまかされずに、また、論理的に成り立たないものは弾かれる。これは地方発の制度改革なのだと思う。
 例としてはいろいろあるが、郵便局では切手を売っているが自治体では売れない。これは今までなんども交渉しても駄目だったのだが、これを特区ではどうかと提案したら、現行制度で可能という回答が出た。見えないところでやり取りをしていると動かないものが、公開され、また、間に推進室が入っていただくと、細かいところで規制が解除されていく。コンビニ納税が実現するなど、いくつも成果があがってきているので、これからもこの制度がなくならないようにしてもらいたい。
 総務省関係では、志木市さんもいろいろ提案されておられるが実現していないものがあるので、自治体間で共同歩調、連携も取りながら壁を破っていかなければならないと思っている。

【阿部・川崎市長】 末吉市長の言われたことに同感だ。この制度は自治体が自ら考えて動いた結果、がんじがらめの国の規制が少しづつ緩んできた。しかし、よくみると全国一律の規制が外れないものも多い。自治体の努力と国の思惑がぶつかり合って、これが良く見えるようになっているところが面白いところだと思う。
 また、お互いに情報交換を行い刺激を受けることにより、こんなこともやってみようということになるので、絶対にこの火を消さないように頑張っていきたいと考えている。
 第1次、第2次の時にはみんな燃えていて、中味はたいしたことはなかったが、こういう枠組みが出来て、頑張れば実現できるところに意義があったと思う。しかし、だんだん収束してきて、難しいものが残ってきた。この残った難しいものをどう動かしていくかというところが、これからの国と地方の関係を根本的なところでどう改革していくかという課題につながっていく。今の三位一体の改革がどう進んでいくかはわからないが、これとも絡んでくる問題だと思う。

【細江・岐阜市長】 私が市長になったとき、特区の提案募集が行われた。そのとき、岐阜市はゼロだった。そこで第2次の提案募集の時には、絶対に10以上出せといった。正直言って、形から入った覚えがある。
 地方分権の時代になって、自分の頭で考えなければならない時代になった。これまでは市民や業界からはいろいろ柔軟な対応が要求されても、この法律があってだめだなどとあらゆる言い訳に法律や制度を利用してきた。これからはこうした言い訳が出来ない時代になった。特区によって、言い訳をしないで自分たちで途を切り開いていくということが必要であるし、分権時代には重要な切り口であると思う。
 なお、特区になるとその後は評価委員会が全国展開ということになるが、私は、地方分権とはそれぞれの地域の個性を引き出すことが重要なことであり、特定の特区を大事にするようにしてもらいたいと思う。いままでやってきた制度のなかに「これはちょっとおかしいのではないか」というものがある。それを拾い出して全国的に制度を改正するという一面がある。もう一つはそれぞれの地域の特性を生かした独特の制度を持った地域をつくっていくという面もある。全部を全国区にしていくということになると関係省庁も構えるし、ここだけならいいとして認めたものが全国展開されると困ることもあるかもしれない。
 また、この火は消してはいけない。これから5年、10年20年と行政をやっていく上で、ハタとこの制度はおかしいのではないかというものが出てくると思う。したがって、恒久的な制度化をしていくべきだと思う。

【石川・稲城市長】 これから自治体職員がなにを果たすべきかと考えたとき、政策形成能力と言うのが一番大きな課題だと思う。構成力、業務管理能力、業務評価力が基本で、それ以外はアウトソーシングすればいい。この骨の部分をきちんとやる能力をどれだけ職員がつけることが出来るかというところが大事だと思う。その意味では、この特区の提案というのはいい勉強になっている。まだ決して十分なものにはなっていないが、今のところ、2勝2敗のようなところなので、まずまずかと思っている。
 ただ、実際問題として、警察関係とか税の関係が門前払いの状況なので、その辺に風穴を開けていかないと限界があるのではないか。例えば、緊急車両なども、私のところは単独で消防をやっているので、市庁車をいざというときには緊急車両に使いたいと思って研究しているのだが、車の色はこうしろとかサイレンを付けろとかいろいろ細かい規制があって、うまくいかない。税についても、ちょっとでも税に絡むと全く見通しがつかないという状況はなんとか突破をしていきたいと考えている。

【千葉・市川市長】 特区制度の必要性と、これを恒久的な制度にすべきとのご意見には同感だ。ただ、あのホームページが非常に見ずらいのはどうにかしてもらいたい。
 なお、市川市ではひとにやさしいみちづくり特区ということで、道路に駐輪させてもらいたいと第4次で提案して、これは特区ではなく全国対応ということになったが、いまだに実現していない。そういう場合には、条例整備の関係もあるので、先にやらせていただきたい。全国対応ということで先延ばしされるのは困る。
 もう一つは、地域再生との関係である。補助金は特区では出来ないということだが、今回の提案募集には地域再生は入っていないので、今後この両者をどう整理していくのかが問題である。
 いずれにしても、折角のこの制度を少しでもさらに使いやすくしていくことが大事だと思う。

【榛村代表】 この特区推進会議はとりあえず3年やろうということで始めたわけであるが、今のお話では少し延長することも考えなければならないかもしれない。いずれにしても、日本の改革の1ページになるものであるから、きちんと総括しておくことが大事だと考えている。

【事務局】 省庁の壁を破っていくために自治体が共同歩調を取ることが大事で、この推進会議でもスタッフの方々に同時多発型提案や共同提案を呼びかけてみているが、実際には難しい。

【石川・稲城市長】 有料老人ホームの設置に対して共同提案を行ったのは、既に介護保険制度ができる前から東京の自治体のスタッフ間で勉強会が作られており、そこで話しがまとまり、近隣自治体にも呼びかけて実現した。テーマが有料老人ホームの問題と具体的であり、どこの自治体も悩んでいたからトップの判断も早かった。こうした既存の組織やグループを母体にしていくことがいいのではないかと思う。
 私もメンバーだが、青年市長会という組織もあり、木下・草加市長と福島・我孫子市長との間での都市計画に関する共同提案も実現した。今日の場もそうだが、顔なじみになって共同歩調を取っていくことがいいと思う。

【末吉・北九州市長】 大臣もちょっと触れられたが、税金や国保・介護保険料、あるいは電気ガスなどの公共料金の徴収業務を共同化していくことは課題として面白い。日本でもサービサーの検討が始まっているが、特区制度に馴染むかどうかは分からないが検討の価値はある。
 いずれにせよ、共同提案などはマターによってはやりうると思うので、共同で勉強していくことはいいと思う。

【榛村代表】 本来ならば、制度の根幹となっているものを洗い出して、体系的に改革の議論を展開していくことが望ましいのだろうが、市長会でもどこでもそれほどの力量はない。したがって、この特区制度を使って、ゲリラ的な戦法を取るしかない。

【事務局】 これからの予定であるが、WGは年内に開催したい。また、首長レベルの会合は日程調整が極めて難しいが、年明けには開催できればと考えている。
 いずれにしても、本日、今後の検討事項をお配りしたが、この中から重点を絞って議論を深めていくことを考えている。

3 事務局報告

 会合の冒頭に、事務局から大要以下のごとき報告が行われた。

@ ボツ案件の扱い
 6月に特区と地域再生合わせて652件の提案が行われた。これまでよりはやや少な目のように思われるが、しかし、自治体も民間も依然として活発な提案を行っている。しかし、9月10日に発表された政府の対応状況は、特区で12件、全国対応が35件、また、地域再生については、予算がらみのものを除いた結果であるが、地域再生計画に盛り込んで実現するものが2件、全国対応が11件と前回の実績よりも少ない。
 9月7日の経済財政諮問会議では、金子前大臣も出席されて特区問題が議論されたが、民間議員の方々から、最近実現率が下がっていることが問題だとの指摘があり、大臣からは年内にどういう状況なのか洗い直しを行い、その方策を考えて、来年度から実行していくということになった。
 私どもの特区推進会議では、当初からこのボツ案件に関心を抱いており、本日も実現できていない案件の主なものをリストアップして資料としてお配りしてある。これは第4次提案、第5次提案を中心に、特区として対応できないもの(C)という回答が出されているもの、また、省庁からは「これは既に自治事務であり、現行制度で実現可能である。あとは市町村と都道府県間で折衝してもらいたい」という回答が出ているものも加えてある。我々としてはこうしたことが今後の検討課題となるのではないかと考え、先日(11月11日のWGで荒ごなしのご議論をいただいたところであるが、今後さらに絞りをかけていきたい。ごらんいただき、抜けているものあるいはここに掲げるのはどうかと思われるものについて、あとでご指摘いただければありがたい。
 絞りをかけた上で、これをどう実現していくか。理論武装の面と共同提案あるいは同時多発的な提案など運動論の両面にわたって、検討していきたい。

A 特区の全国展開について
 9月の初めに評価委員会の八代委員長との懇談会を企画したが、流会となったので、八代委員長と面会し懇談した結果を、別途、スタッフの方々にはお送りしてある。
 評価委員会というのは特区を実施した後、特に問題がなければ全国展開を行うことになっており、その弊害の挙証責任は各省庁にある。9月10日に決定した第1次評価結果によれば、第1次提案を受けて実施した特区のうち26項目が全国展開することになった。
 これに対して、八代委員長は、最初だからといってちょっと全国展開を急ぎすぎた感もある。こうして必ず全国展開されるということになれば、各省は最初から特区そのものを認めないことになっては問題だ、との認識を示しておられた。今後、特区として行うことと全国展開するものとの使い分けができるのかどうか、必要かどうかをわれわれとしても検討していきたい。
 また、ボツとされた案件について、これが正当な理由に基づくものであるかどうかを評価することも必要である。評価委員会の任務は、特区を全国展開するかどうかの評価を行うこととなっており、評価委員会にこれを期待することは難しいとするならば、どういう方法でこれを実現していくかを検討する必要がある。

B 研究会の結成
 4月の事業計画に若手研究者との連携を盛り込んだが、9月に都市計画・土地利用関係の若手研究者7名との研究会を発足させた。研究者は研究者としても問題意識があり、直ちにその結果が役立つかどうかは分からないが、今後、その他の分野についても同様の研究会を設け、理論武装の一助としていきたい。

以上