|
||||
構造改革特区推進会議は2月12・13日に、第3回ワーキンググループ(WG)を開催した。各WGで出された議論の概要は下記の通り。 1 共通事項 *これまでは特区提案と申請が連続で続いていたが、次回は6月の提案まで多少時間が空くので、それに向けて、規制緩和を求める案件をいくつかに絞って、それぞれの自治体で同時多発的に提案していくことを目指す。 *特区と地域再生計画の区別が分かりにくい。機会があれば推進室の担当者を招いて話を聞いてみたい。 *もう少し議論を煮詰めてから、省庁や県の担当者と議論する場を設けたい。 *これまで東京でWGを開催してきたが、東京から離れた自治体も参加できるよう各地でのWG開催も検討したい。 *規制のあることが当たり前になっている職員意識から、なかなか特区提案してもらえない。職員のマインドを変えていくのが課題となる。 *都道府県が障害になっているケースが多々あるが、都道府県それぞれによって、市町村にやる気があっても、バックアップしてくれるところと、してくれないところがある。また、国の出先機関のような中間的な機関がネックになる場合もある。 2 自治制度 【各自治体の取り組み】 *米原町は、人権擁護委員や民生委員に永住外国人を採用できないかと検討しているが、既に大阪府などの提案について、公務員のうち公権力の行使にあたるものには外国人の採用は不可との答えが出ている。しかし、町長が法務省に相談したところ、提案を歓迎するような雰囲気であった。 *掛川市は、全国規制緩和で住基カードを選挙の入場券として活用できるよう提案したが、住基カードについては住民に無料で配布することはできるが、住民から申請がない限りは配布できないことになっており、強制的に配布できないため選挙には活用できないとのことであった。ただし、その後総務省からモデル地区として実証実験を行うことの打診を受けている。 *志木市は、臨時職員の期限を1年から3年に延長する特区が第3次として認められたが、資格要件を要する職の場合、人材育成の場合、業務量の一時的な変化による職制・定数の改変などの場合という3つの条件がつけられており、使い勝手は良くない。 *草加市は第4次で多くの提案を行ったが、これまでのところ、殆ど拒否回答である。自治制度関連を掲げれば、以下のとおり。(委員欠席のため、事務局から紹介) @効率的迅速行財政特区 1 半期予算 C 2 継続費弾力運用 C 3 繰上償還推進 E 4 早期発注 D−3 5 機器リースは債務負担行為が不要 Dー3 6 建設工事の早期着工・完成 C A共生・参加特区 1 外国籍市民の住民票記載 C 2 外国籍市民の地方参政権 C 3 審議会委員報酬の無償化 C B安心で便利な行政サービス特区 1 住民基本台帳閲覧の制限 C 2 国保税の100円未満の端数処理 D−1 → C(17年度税制改正) 3 商品券納税 C 4 条例の罰則上限の引き上げ C 5 女性消防士の活動制限撤廃 E 【今後の課題】 *特区と地域再生計画との違いがはっきりしない。地域再生計画では、権限の移譲も対象となるという触れ込みで、提案もかなり多く出されているが、実際にはなにも認められていない。 *地方税制や財政について、移譲を求めると逆に補助金をくれなくなる恐れもあるし、議会などでも叩かれてしまう。これからは、実際に国と直接にコンタクトして補助金交付などの折衝をする場合と、大義名分を振りかざして筋を貫く場合の使い分けが必要だ。この推進会議は、後者の場合の手段だ。 *この自治制度WGは比較的範囲が広いので、ほかのWGを束ねる形で、実質的に企画幹事会を兼ねるのはどうか。 *今後の検討の柱としては、補助金適化法、公務員制度、権限移譲(特に都市計画など)の問題を考えていくのがいいのではないか。 (その他、他のWG関連の事例紹介があったが、それらはそれぞれのWGの項に記載した。) 3 医療福祉 【各自治体の取り組み】 *岐阜市は、福祉施設の調理事務を外部委託しようと考えているが、なかなか認めてもらえない。 *山梨市では、介護保険料特別徴収額平準化対策として、第1号被保険者保険料のうち特別徴収保険料仮徴収第2期、第3期分の保険料を基準額にかかわらず市町村が任意に設定することができるようにすることを地域再生計画として提案した。現状では、特別徴収の仮徴収額は前年度の最後に行われた額を上限とされており、保険料の平準化を行おうとすれば普通徴収を併用するしかなく、これには説明の手間と時間がかかるだけでなく滞納の危険性も高い。厚生省の回答は、介護保険法の次期改正の項目として検討しているというものであった。 *岐阜市では特に新しい提案はこの分野では行っていないが、熊本市の提案などを参考に、難聴幼児通園施設の調理業務外部委託を行う特区を申請し認められたので、3月に契約、4月から実施の予定である。 *足利市では、特に提案はしていないが、医療費の増大を何とかできないか苦慮している。県単位に国保を再編する案もあるが、市町村単位では破綻している。 *多治見市では、新交通システムについて提案しているがいい返事がない。今後も引き続き提案していくつもりである。 *我孫子市では、年金を担保にして金融機関から借金して、お金がないからといって生活保護を申請して、また年金を受け取れるようになればそれを担保に借金するという人がいて困っている。そこで金融機関に審査を厳重に行うことを義務付ける提案を地域再生計画として行ったのだが、厚労省は添付書類を審査しているという返答だ。現状ではとてもちゃんとやっているとは思えない。 *浜松市ではブラジル人が多く居住しており、健康保険への加入が課題となっている。 【今後の課題】 *支援費が予想以上に膨らんで、どこかで歯止めをかけないといけない状態になっている。支給の上限を出したところもある。 *支援費については、介護保険とほとんど変わらないため、一緒にすればどうか。 *現在の介護保険制度は費用がかさむ方向になっている。豊島区の議員から成功報酬などでインセンティブを与える特区提案が出されているが、その基準をどのように評価すればいいのかが難しい。逆に悪用される場合もあるだろう。事業者や対象者にお金でインセンティブを与えるのではなく、そうした事業そのものを支援する方がいいのではないか。似たような例では、在宅で寝たきりの人を介護している家族に金品を与えているところがある。 *介護保険事業を安定させるためには、軽度の認定者を減らす努力が大切だ。この部分が増えている。予防のトレーニングなどが有効だ。 *医療費の増大で困っているが、レセプトを導入しようとすると、医師会が圧力をかけてくる。こういう問題こそ、複数の自治体で同時提案していくべきだろう。 *国保については市町村だけでやるのは難しいのではないか。 *三位一体改革により、生活保護の国庫負担金の割合を引き下げる案が出て一時騒然としたが、幸い延期された。しかし、生活保護だけはセーフティネットとして国に保証してもらいたい。これが機能しなくなると、ほかの政策にも重荷となる。逆にいえば、これがしっかり機能すれば、養護老人ホームなどはいらなくなる。 *生活保護の担当者は気の毒だ。以前は80人に1人の配置だったのが、100人以上も抱えている。しかも、騙されまいとして、人相までが悪くなる。本来、この制度は立ち直りの猶予を与えるための制度だったはずなのに、すっかり依存体質になっている。 *福祉はマーケットになったので、その市場を支えるような枠組みが大事だ。 *病院が3ヵ月を過ぎると、治療が必要なのに追い出す。この問題にどう対処するかが問題だ。 *住所地特例は特養でのみ認められているが、有料老人ホームなどでも認めてほしい。土地の有効利用を考えた場合、事業者は利益が出やすいのでグループホームなどを作って、ほかの自治体から高齢者を連れてくる。実情としては、ほかの自治体から移ってくる高齢者に対して、住所地は変更しないようにお願いしている。 *これからは特養ではなく、小規模多機能の施設の方がいい。 *市が養護老人ホームを経営している。多額な年金受給者等に、より多くの費用負担をしてもらうよう、費用徴収基準の見直しをする地域再生構想を提案した。 *病院のベッドも急性疾患と慢性疾患とのバランスが悪い。3つある市立病院のうちひとつを慢性疾患に特化させた。 *社会福祉協議会のあり方が問題だ。養護老人ホームの設置が社会福祉法人以外に出来るかどうか。 *社協以外にも補助金を出すことにすると、結果的に社協をつぶすことになるので、議員から圧力がかかる。 *市で地域福祉計画を策定していた矢先に、県が支援計画を作り、そこで介護や福祉は社協がやると明記されたため、やり難くなった。 *認証保育をやっているが、幼保一元化を進めるとうまくいかなくなる。 *最近、国は児童手当などを拡充しているが、これは時代に逆境している。これが少子化対策になるとはとても思えない。 *三位一体改革で締めるところは締めているのに、自治体に裁量権は認めてくれない。こういうことについて、推進会議として意見書を提出するというのはどうか。 4 教育 【各自治体の取り組み】 *太田市は、外国語教育特区が認められ、私立の小中高校の一貫校設立に向けて準備している。これに関連して、県から市へ権限が移譲され、市が私立学校審議会を設置し、そこで、事業計画案が検討され、市長に答申した。この答申に基づき、市長がその事業計画を承認したところである。特区校とはいえ、学校教育法及び、私立学校法等をクリアしていく必要があり、規制はまだまだ残っている。また、特区の第4次提案において、外国語で授業を行うために検定教科書を翻訳したテキストを認めてもらおうとしたが、文科省から著作権の問題があり難しいと拒否され、市独自で教科書を作ることになった。指導内容は学習指導要領に準拠していくことになる。民設民営であるが、市が土地を提供するという形で20億5千万円程度かかる。市からは、補助金として、約6億5千万円の建設費補助金を支出するが、国からの補助金は私学助成のみである。この特区校は、来年4月に開校する。1年生は、1クラス30人の3クラス、4年生は、30人の2クラスから始める。4年生からの募集は初年度から3ヵ年だけである。児童生徒の受付を行ったところ、倍率は2倍近くに達し、市外からが50%となっており、子どもの教育への関心の深さが際だっており、かなりの人気であった。応募者の中には、父親を置いて、母子で太田市に移り住むというケースもある。この成果を検証するのには時間がかかるし、教員のクオリティをいかに維持していくのかが課題となっている。また、外国人の先生を束ねるコーディネーターも必要となる。なお、開校に先立ち、入学前に英語に親しむための「プレスクール」を今年4月に開校し、5、6歳児と3年生(4年生として入学予定の児童)を対象に、塾形式の事前英語教育を実施する。 *太田市は、これとは別に、「定住化に向けた外国人児童・生徒の教育特区」構想を打ち出し、バイリンガル教員による授業を公教育の中で実施できるよう、特別区域計画の認定申請書を提出した。(第4回) 概要は、市内の19の小学校と、11の中学校を6ブロックに分けて、外国人の子どもたちの集中校を設置し、日本語の特配教員と、バイリンガル教員により、習熟度別に、小中一貫での日本語の授業と、主要教科の授業(国語、算数、数学、英語等)を集中的に実施することにしている。 *川口市は、少人数学級を実施するための加配教員を市が非常勤換算でやれるように提案(第2次)したが、現行法で可能という答えが返ってきた。その後、県が2004年度から少人数学級編成基準を拡大し、35人学級を可能とする方針を打ち出したため、やりにくくなった。 *川口市は、地域再生計画で、子どもの居場所作りとして、学校や公民館に塾などを誘致することを認めてもらうことを提案したが、現行法で可能との回答が出た。また、社会奉仕体験などを教科に組み込むことについては、特区の研究開発学校設置で対応可能ということであった。 *岐阜市は第3回の認定申請で、小学3年生からの英語教育の実施と不登校児の「学びの部屋」設置を出し、認められたので、いずれも今年4月から実施することになった。 *多治見市は第2次、第3次、第4次と教育委員会の権限を住民組織に移譲する提案を繰り返し行い、撥ねつけられてきた。しかし、地域再生計画でも同じことを提案したところ、「現在、中央教育審議会において、地域に開かれた学校運営の改革の一環として、保護者、地域住民等が運営に参画する新しいタイプの学校の在り方について具体的な検討を行っているところであり、学校運営への地域住民などの参加を制度的に可能にするために必要な措置を平成16年度中に行う予定である」から、少し待てという返答が返ってきた。 また、義務標準法ではADHDなどへの配慮が足らず、これを標準法に明記するようにも求めたが、これについては県教委の枠内でやれという回答であった。このほか、公民館のコミセン化については、現行法で対応できるとのことであった。 *浜松市では地域再生計画として、外国人との地域共生構想を提案、外国人学校を学校法人・各種学校として認可する権限を県から市に移譲することをもとめたが、「地方自治法第252条の17の2に規定されている、都道府県と市町村の協議の上、私立の各種学校や学校法人の認可権を市町村に委譲するという方法を採ることが最も適当であると考える」として現行法で対応可能という答えになった。現在外国人の数は約2万2000人で、人口の3.8%である。そのうち1万4000人がブラジル人などで、ブラジル語3校、スペイン語1校の学校があるが、これを学校法人として認め、補助金の交付や税控除を行いたいと考えている。誘致 *掛川市は、第3回認定申請で幼保一元化を認められたが、現在は幼稚園と保育園の建物の間にあるオープンスペースで合同保育を行っているのが現状である。 *横須賀市は、第2回申請で国際教育特区が認められた。その第1ステージとしては、公立学校で外国語教育を実施することで、今年の4月から母語が英語である正規職員を2名採用、その後年1名ずつ増やして2007年には5名にする計画である。第2ステージとしては、普通高校廃校跡地に私立高校をつくる計画があるが、その実施主体の選定に時間がかかっている。 *足利市では、昨年8月の第2回認定で、英会話特区が認められ、来年度から実施の予定である。しかし、その指導者をどうするか、民間のノウハウも導入しながらやっていきたい。ただし、公立の学校のため、生活学習や総合学習の時間を活用するしかなく、最大年35時間である。 *志木市では、第2次提案でカリキュラムの弾力化を求めたが、市内4校それぞれが自由にやろうとするのは駄目で、カリキュラムは市内で統一しなければならないといわれた。 【今後の課題】 *教職員の人事権が国・県・市・学校という多重構造の中でがんじがらめになっているのは問題だ。 *公設民営については、幼稚園と高校では認められたが、小中学校の義務教育については聖域となったまま。これをどうするか。 *外国籍児童の学級学年編入および義務教育年齢の弾力化については、体の大きさの違う子どもが体育などの授業を一緒に受けられるのかという声もある。 *小中一貫校で英語教育を行う案もでているが、教育委員会が乗り気ではない。 *現行法で可能という回答が多いが、そのようなものについては、県内特区のような形でやれないか。 *特区と地域再生計画の申請の二度手間は省きたい。どちらか一方で済むようにしてもらいたい。 5 農業 【各自治体の取り組み】 *川口市は、特区の第2次提案で、農協が市民農園を開設する場合、組合員の所有の農地利用に限られているのを撤廃することを求めたが、これは認められなかった。後継者がいない農地(市外居住など)が荒廃するのを防ぐため提案したものだが、これからもチャレンジしていく。 *相模原市では農業への法人の参入はいわゆる「ダチョウ特区」で始まり、今、2番目をやろうとしているところである。農地取得の下限面積の引き下げは10aまで認められるようになり、個人の参入も出来るようになり、応募も何人かあるが、農業委員会がなかなか厳しい。 地域再生計画でも「新都市農業推進計画」を提案、農地保有合理化法人の範囲を第3セクターの株式会社などにも拡大するなどを盛り込んだが、農水省は守りに徹した姿勢である。 *小田原市では、第1次、第2次、第4次と提案を行い、第1回第2弾の認定を受けた。内容は、法人による農業参入と特定農地貸付法の特例における市民農園の開設者拡大である。ところが、神奈川県は土地利用についての規制が厳しく、この特区の内容だけではなかなかうまくいかない。企業参入の場合では、集団的な農地がないことから、2〜3ヘクタールで参入を計画しているが、採算ベースからいくと最低でも5〜10ヘクタール程度必要である。更に、基盤整備等にかかる初期投資の問題もある。せっかく投資しても、いずれ返還しなければならないので、思い切った事業展開ができない。賃貸だけでは難しい。一方、NPO法人による市民農園の開設については、この4月に0.7ヘクタールで開園することになり、現在、鋭意土地の整備を行っているところである。 *山梨市では第1回第2弾の特区として、農業への企業参入が認められ、現在2社が事業展開をしている。規模はまだ小さく、いずれも約60aである。市民農園は今年5月ごろ約90aの規模で始まる見込みである。企業の参入の場合は初期投資が問題となるが、遊休農地等しか参入できないとなると費用負担が多くなってしまう。赤字では継続していけないが、これをどのようにサポートしていくかが課題になると思う。 なお、第2次提案として「アグリカルチャー振興特区」を提案したが、農地取得の下限面積の引き下げだけが認められ、そのほかの特定農地貸付法の規制緩和などは認められなかった。 地域再生計画では、「山梨市フィールドミュージアム構想」の実施をするため、農水省の補助事業の要件緩和の提案をしたが、現行制度で対応可能との回答であった。 * 岐阜市では、農業関連の提案・申請は行っていない。ただ、バイオタウン関連では窓口一本化などの提案を行ったが、現在もやっているとの答えであった。 *浜松市では民間からの要望はあったが、提案する段階ではない。ただ、今後市町村合併により周辺部の森林も市の領域となる。これらの森林が不在地主もあって荒廃しており、今後どうするのかが問題となる。 *掛川市では、第2次提案として、市民農園と農地法3条の規制緩和を提案した。市の窓口は法を守る姿勢が身についているので、市民団体からの提案がモトになっている。市内の遊休農地を環境に配慮した有機栽培などに利活用するという考えだが、そのための施設設置などは現行法でも出来るし、農転も県の問題だとはぐらかされた。 *豊田市では第4次認定申請として、愛知県と一緒に「農ライフ創生特区」を出している。これは2000人から3000人というトヨタからの退職者と700haの遊休農地を結びつけようというもので、市民農園開設者の拡大、農地取得下限面積の引き下げ等を組み合わせたものである。今後は、農業生産法人以外の農業への参入も視野に入れ、例えばトヨタの組合などが法人を立ち上げ、社員食堂などで使う野菜を生産することができたらと考えている。 地域再生計画では都市農山村共生活性化構想を提案した。土地利用決定権限を市に移譲する案などを盛り込んだが、現行法でも対応可能という答えになってしまった。 *米原町では、物流基地建設構想のための農転を検討しているところである。 【今後の課題】 *農地法などで国として農業を守るという姿勢ならば、農家が農業で生活できるように支援すべきではないか。特に後継者不足が深刻だ。農業を守るというのが、どのようなことを意味するのかがよく分からない。農業を守るといいながら実際には守っていない。規制緩和してくれないと、農業以外で生計を立てようとする人に弊害となっている。 *全国一律に農地法の規制があるが、地域によって違いがあるだろう。たとえば、北海道のようなところは株式会社の参入を認めて大々的な農業を展開し、都市圏は地域的に狭いので市民農園に重点をおくなどの考え方が必要だ。 *認定農家などに聞いても農地法は要らないといわれる。作業小屋ひとつ建てるのも大変だ。なぜ、こんなに規制するのか。特区よりも、農地法改正を直接求めた方がいいかもしれない。荒らしておくよりはそこを使って自由に楽しみたいという市民も多い。一々規制するのでなく、もっと自由にすべきだ。都市計画法の許可を得るためには100万円ほども費用がかかるので、誰でも出来ることではない。 *ただし、農地法を緩和しすぎると、80年代後半のバブルで農地が買い占められたような懸念も出てくる。投機目的で農地を購入されるのも困る。 *農地のままそこに施設などを建てるのは税制上の優遇を受けることになると農水省は言うが、実際の課税は現況課税であるからそうはならない。逆に、一旦、農地以外の地目にし、その後、施設を撤去した場合にその土地を農地にもどすことは、現実的には少ないと思うから、農地のままの利用を認めた方がいい。 *掛川市は緑茶の生産地だが、お茶農家の後継者不足で原料供給が危うくなっている。茶商が自前の原料調達のため農地取得を行い、そこで農家を働かす動きもある。実際に、農家も会社の従業員になりたがっている。 *民間会社の農業参入こそ、特区でどのような結果になるのかを実験してみるべきではないか。今のように、条件の悪いところしか参入できないというのでは、実際には参入できない。 *民間会社は農業だけでペイすることは考えておらず、食の安全などの会社のイメージ向上のために参入してくるところもある。 *農業で採算を取ろうとするのは無理なのかもしれない。もしも、民間企業が農業で収益を上げられるのならば、特区でやる以前に、あらゆる手段を使って農業に参入するはずだろう。 *特区をはじめた以上、成果をあげなければいけない。農業への企業参入についても、セールスや事前調査は行った。 *グリーンツーリズムなどは、長期休暇などをなかなか取らない現在の日本人のマインドではなかなか広がらないのではないか。 *市民農園の生産物販売も、農家が嫌がる面がある。農家も小口の軒先販売をやっているところがあり、競合する場合がある。 *農業分野では、企業参入と市民農園と土地利用の3つが主な問題点なので、これらを複数の自治体で一斉に提案するようにしたらどうか。 6 都市再生 【各自治体の取り組み】 *足利市は太田市と佐野市にはさまれているが、この2つの市にはイオンが進出してきて、活気があり、足利はどうするか対応が迫られている。市街化調整区域に商業施設は出来ないが、これを市街化区域に編入するには、きちんとした目標を立てて整備する必要がある。市街化区域に隣接した農地の開発に県は否定的な態度であるので、うまくいかない。一方、どこでも悩みの中心市街地活性化の話もあり、これと郊外の商業施設新設とを両立させるのは難しい。 *太田市も中心市街地活性化が悩みの種で、イオンが出てきてからなおさら問題が深刻となった。 *川口市では、土地区画整理事業をやっていく中で、公図上で分合筆できれば非常に助かるので、これを第2次、第3次、第4次と繰り返して提案したところ、第4次提案に対する再回答で、ようやく法務省は条件つきながら認める態度に変わり、2004年度中に措置することとなった。 *逗子市では、いま、市民130人によるマスタープラン作成中である。また、TMOも2004年度から動き出すところである。 *秦野市では岐阜市の「まちなかにぎわい特区」のようなものを検討中である。空き店舗などに民間が投資してくるにはどうしたらいいか。投資に見合う賑わいがなければ投資は生まれないだろう。賑わいづくりのため、昨年11月「わいわい秦野『市』」というのを開催し、自治会や文化団体なども参加した。その中で、歩行者天国も企画したが、極めてガードが固い。実績のないところでは難しい。 *岐阜市では第2次提案として「まちなかにぎわい特区」を提案し、そのなかで道路使用許可の弾力化を求めたところ、イベント等に係る道路使用の弾力化は全国的に対応ということになった。また、「伝統文化ふれあい観光特区」として、長良川の観覧船の航路も事前届出で浚渫できるようになった。屋外広告物除去については、第2回認定申請で認められ、今年の1月から行政指導を始め、2月から撤去作業に入っている。緑いっぱい特区として容積率緩和の提案を行ったが、これは地区計画で対応できるとの返事となった。 第3次では路面電車特区を提案したが、これは来年度一杯で名鉄が撤退する方針なのを受けて、スピードや車両の大きさなどの規制緩和で使いやすくし維持を図ろうというものであったが、すべて今でも出来るということになった。 第3回認定では、中心商店街再生特区が認められ、大店法の手続き期間の短縮、書類の簡素化が実現した。また、駐車場運営特区も認められ、基本料金以外は自由に設定できるようになったので、6月に条例を提出する予定である。 地域再生計画では、道路占用・使用許可、河川占用許可、国道・県道管理権の移譲などの提案を行ったが、道路の使用・占用については年度内に警察庁がガイドラインを出すようである。 *多治見市では地域再生計画として「多治見市産業再生」を提案、そのなかに河川敷の活用のための権限移譲、市街化調整区域における地場産業関連施設建設容認、飛び市街地の指定などを盛り込んだが、全滅した。ただ、市街化調整区域における建設は今でも制度的には可能なのだが、実際には出来ない。 なお、多治見市と瑞浪、土岐、笠原の3市1町の合併は今年1月の住民意向調査の結果を受けて白紙になった。今後、どういう都市再生を考えるかが課題となった。都市計画決定における線引き権限などは市町村に移譲すべきだと思う。 *浜松市では地域再生計画として、地域経済振興構想、中心市街地活性化構想、ユニバーサルデザイン構想の3本を提案した。公共空間の商業的利用のための占用・使用許可の規制緩和が中心である。また、市役所前など国道の横断歩道設置も希望しているが、これはなかなか難しい。 *掛川市では第2次提案でいろいろ出したがいずれも門前払いを受けた。今回の地域再生計画では3本提案した。ひとつは再開発事業で一挙に大きな建物を建てるのでなく、その手始めとなる段階的・簡易的な建築も認定してもらいたいということ。第2は区画整理事業の保留地の販売の促進・優遇策、第3は合併市町村と共同提案だが、合併に伴う県道整備を特例債でやらせて欲しいということである。 *米原町では市街化調整区域内に物流基地をつくる計画を進めているが、県では駅周辺の駐車場だらけのところを開発するのが先決だという態度である。新幹線の駅前の駐車場は必要なもので、つぶすわけにはいかない。線引きの権限を市町村に移譲する特区提案を行ったが、討ち死にした。 【今後の課題】 *線引きの権限移譲を求めているが認めてもらえない。地域の自助努力でやろうとするときに、権限なしでできるのか。地域地域でそれぞれ事情が違うので、同じ理屈は通らないのではないか。飛び地の市街化区域の要件として、50ha以上の面積などが必要で、これらが全国一律でいいのか。 *道路占用などについて海外の事例を見ると、ソウルや台湾などは露店が並んでいて活気がある。こうしたまちづくりがあってもいいのではないか。 *指定管理者制度の対象として、道路も掲げられているが、この意味がよく分からない。せいぜい、ボランティアによる道路の清掃くらいか。 *道の駅などに対する補助金が厳しくなってきた。このあたりを地域再生計画でなんとか申請できないか。 *県の対応については、企画サイドでは前向きなのに、各部門に行くと封建的になる。 *県のお金の出し振りが非常に厳しくなっている。川口市では廃棄物の処理をするのに、結局市が半分負担することになった。 *国交省は2004年度からまちづくり交付金制度を新設し、市町村に対して5月までに都市再生整備計画を提出するよう求めているが、地域再生計画と内容も時期も似かよっており、対応に苦しむ。こうした計画の乱立は問題だ。 |
||||
以上 |