●構造改革特区推進会議は11月6・7日、教育、農業、都市再生、医療・福祉、自治制度の5つの分野別に第1回ワーキンググループ(WG)を開催し、以下の点で合意を見た。
1 11月末締め切りの第4次提案募集に向けて、共同歩調を呼びかけたいテーマについては、提案しようとしている自治体がほかの自治体に呼びかけ、共同歩調を取れるよう取り組んでいく。その手法として、提案自治体にその特区提案に関する1枚程度のペーパーを作成してもらい、それを推進会議事務局が仲介して、全会員に一斉配信する。
2 今後、情報や経験の共有を図るために、ホームページやメール等を活用する。ホームページについては、掲示板などで自治体交流の場を設ける。
3 政府は9月に地域再生本部を設置したが、これが特区では対象とならない税財政や金融の問題も取り上げられるのであれば意味がある。しかし、これも「新たな財政措置をとらない」という縛りをかけるのであれば、重複する。また、都市再生本部の活動との違いも不明確だ。しかし、いずれにせよ、特区推進会議として協力できることがあれば検討していく。
4 次回のWGはできれば12月中旬までに開催する。そのときは、いくつか具体的なテーマを決めて、突っ込んだ話し合いを行うことにする。
●それぞれのWGでの議論の概略は以下の通りである。なお、話題が特区で対応できないものも含めて多岐にわたるので、箇条書きで記す。
【教育WG】
*教育改革特区として、第3次提案で独立行政法人の運営による「新しいタイプの学校」を提案した。しかし、公設民営についての文科省のガードは固い。第4次は、規制緩和すべき項目をさらに具体的に示して要求していきたい。
*小中学校の運営を地域住民による学校運営委員会に委ねる「住民参加型の教育特区」の提案を第2次、第3次提案として行ったが、いずれも拒否された。これは繰り返し繰り返し提案していかなければ実現できないので、さらに提案していきたい。
*小中一貫校は認められたが、実際の授業はどうするのか慎重にやっていきたい。なお、6・3制を撤廃することには文科省の抵抗が強い。
*小学校で英語を教えるようにしたが、そうなると中学校ではどういう授業にしたらいいのか、学習指導要領に代わるカリキュラムを検討している。また、こうした試みの成果を市民にどう示していくかも検討している。
*英語の授業をチームティーチングとして在日の外国人に手伝ってもらう場合、担任との関係がなかなか難しい。
*40人学級編成に手をつけていくことを検討していきたい。
*教育委員会の権限の学校長への移譲を検討していきたい。
*教育委員会のあり方は検討課題。合議制で緊急時の対応ができるのか、責任の所在は明確か。むしろ、教育長の責任とし、それに対して意見や注文を言う組織を作るほうがいいのではないか。
*教育委員会は市庁内では聖域となっている。
*最大の課題は教員の意識改革である。現場に改革意識を浸透させるにはどうしたらいいのか。
*民間から大学設置の提案を受けている。
*幼保一元化を実施中、また、検討中のところもあり。
【農業WG】
*農業関係の特区には、株式会社の新規参入を認めるなど農業振興の提案と、農地をほかの用途に転用する提案の2つがある。また、農地を農地として活用する提案の中にも、業としての農業をやるのか、市民農園のようなやり方にするのかの2つのパターンがある。
*株式会社による農業参入は部分的に認められたが、コメに参入するのは現行の生産調整の下ではムリ。公共事業削減の中で、建設会社からの参入者は仕方なく畑作をやっているが、本当はコメをやりたいのだ。
*農地を株式会社が賃借したとしても、小作料は平地では高くとてもペイしない。
*遊休農地の活用と定年退職者の生きがい対策を兼ねて、「営農支援特区」を提案し、農地取得の下限面積制限は緩和されたので、今後、企業や労組とも協議して、来年1月には特区認定申請を行いたい。
*特定農地貸付法による個人への貸付下限面積が引き下げられたが、次は法人の参入を実現させたい。
*市民農園では販売は出来ないが、これでは「業としての農業」にはならない。市民農園などを入り口として、順次、本格的な農業へ接近していくルートを設けるべきではないか。
*本当は農協あたりがまとめ役となって、農業に関心のある人たちに土地を斡旋し、その販売も行えばいいのに、そうなっていない。
*戦時中の干拓地を転用して物流基地にしようとしたが、県が農転を認めず、計画がストップしている。
*商業開発を行おうとしても、農振法が引っかかって、これをクリアすることが非常に難しい。
【都市再生WG】
*このWGのテーマは都市部における地域活性化策だから、間口は広く、なんでも議論できる。しかし、商店街や地場産業など地方経済の停滞は本質的に規制の問題なのか。行政が頑張っても効果があるのかどうか。
*地域産業政策は税や財政上のインセンティブをつけなければ効果はあがらない。特区では財政的手段は駄目だということになっているが、それを承知の上で、そういうことが必要だと認識させるために要求していくことが必要だ。規制緩和だけでは小手先に終わる。
*土地開発公社が再開発用地として保有している土地を直接リースに出したいのだが、いったん市が買い戻さなければいけないといわれている。希望者はいるのに、市が買い戻すのは財政的に難しい。(お客が確かなら、そのリース代を当て込んでミニ公募債を発行したらどうか、などの議論あり)
*商店街活性化事業として、空き店舗にコミュニティ施設を建設しようとしたが、保育所は作ってもいいが、デイサービスの施設は構造基準をクリアすることが難しいといわれた。
*工業地域から工場などが撤退した跡地にマンションなどが建っているのだが、ここを住宅地に用途変更しようとしても、工業地域でいいではないかと県に言われて認められない。要するに責任をかぶりたくないのだ。
*昔に計画されて実行されていない都市計画道路建設や土地区画整理事業などについては、市町村の判断で中止できないか。
*国が現行法で可能といっても、都道府県の許可が下りないと、市町村は何もできない。都道府県は担当者次第で、担当が変われると認めてもらえるような場合もある。
*都市計画決定と農振除外がお互いにもたれあって、ちっとも進まないことがある。
【医療・福祉WG】
*施設の設置基準について、国による全国一律の基準は市町村の実態とは合わなくなっている。都市再生WGでも話が出たが、空き店舗でデイケアセンターをつくろうとしても、設置基準で認められない。商店街を散歩して買い物してもらいたいわけだから、せいぜい要支援や要介護1、2位の人を対象とする簡単な施設でいいのではないか。
*福祉施設を混在型にして、無認定者も利用できるようにしたいと考えて、特区申請すると、現行法でやれるといわれる。
*社会福祉協議会のあり方が問題だ。既得権として業務を独占している。
*地域の見守りを実際にきちんとやっている民生委員は少ない。
*住所地特例で特養の場合だけ、移動する前の自治体の介護保険でまかなうようになっているが、これを特区でさらに広げることはできないか。高齢者が集まってしまうと、結果的にその自治体の財政は破綻する。
*団地が一気に高齢化して、交通問題が深刻化している。近くのバス停までコミュニティバスを走らすわけにも行かないので、団地の中を路線バスに走ってもらいたいのだが、バス停に必要な場所が確保できない。フリーゾーンのように行かないか。
*コミュニティバスを走らせているが、無料のときには満員だったのが、100円にした途端にガラガラになった。また、バス停まで歩くのも大変なので、これからはバスではなくタクシーの活用がいいのではないか。タクシーを始めると、移動以外に便利屋の商売も増える。そのためにも、タクシーの業務拡大の方向性で考えるべきだろう。NPOの活用も考えられるが、交通空白地帯といえるかどうかが疑問だ。
【自治制度WG】
*志木市の提案を巡って
・志木市では、市町村長の廃止、教育委員会の廃止などを特区で提案した。市町村長を廃止するということは英国のシティマネージャー制度のようなものを導入できるようにすることである。議員も地方自治の専門家として、人数を縛る代わりに報酬を上げればいい。教育委員会を廃止するというのは、合議制では機動性に欠け、責任が明確でないからである。教育長に対し審議会を設け、現場の先生やPTAが参加できるようにすればいい。
・公務員制度については、週5日、40時間の勤務と営利企業兼業禁止の枠を外そうということである。つまり、臨時的任用や任期付き任用職員の活用によって、常勤の職員数を20年かけて現在の619人を301人にするという計画であるが、市長は50人にすると公言している。なお、志木市には職員労働組合がない。
・第1次、第2次提案としつこく提案したが、2月の鴻池・片山大臣のトップ会談で条件付で認められることになった。次は、これを無条件で認められるようにしたい。
・志木市では、自治体だけが公共サービスの提供主体ではないと考えており、これからは業務委託を推進していく。既に、郷土資料館などの運営を市民団体に委託しているが、市民のほうがよほど知識がある。市役所の総合窓口も委託に出して、好評だ。
・業務を住民に委託することについては、個人情報やプライバシー保護の問題は避けて通れない。市民団体は失うものがないので、契約で縛っても意味はあまりない。そこで、志木市では条例により守秘義務をかけることにした。ただし、この条例には罰則規定は設けていない。市民との協働を謳いつつ罰則をかけるのは似つかわしくないと考えたからである。問題があった場合には条例違反として訴訟を起こすことができるので、裁判所の判断に委ねることになる。
*市町村合併で吸収される自治体の住民自治を今後どのように維持していくかは大きな課題だ。志木市の試みをそのまま採用できなくとも、市民が公共サービスを担っていくという考え方は応用できるのではないか。
*単年度予算制度を改めることを検討していきたい。
*市町村サミットでは、地方主権通則法を設けて、改革を目指す自治体には条例が法令を超えることができるようにすべきだとの意見も出ている。また、税源移譲についても、税収の少ないところにはメリットがないので、財源の移譲を提案した。自治事務は財源の移譲で、法定受託事務は特区で対応するというのがいいのではないか。 |