T 第1回企画委員会開催に先立ち、金子一義特区担当大臣との懇談会を開催した。大臣の挨拶並びに席上の発言要旨は次のとおりである。
【金子一義構造改革特区担当大臣の挨拶】
今度、特区の大臣に仰せつかりました金子一義でございます。今日は榛村掛川市長を始め、こうして大勢の皆様方にわざわざお掛けつけを頂きまして、特区の今後のあり方を検討しようと、86市町村がすでに参加頂いているようでありますが、本当に心強い気持ちでいっぱいであります。今日は室長、参事官を始め、事務方も出席してもらいまして、皆様とのご意見交流を積極的に図っていこうと思います。
われわれのいちばんの課題というのは、今までは、残念ですけど、「こういうのをやりたいな」と県にいっても「消防法があるから駄目」、国にいっても「政令、省令で決められているから駄目」という状況でした。それを特区の事務方が、市町村の皆様方の何とか突破できないかというお考えを、皆さんと同じ立場で中央官庁に対して、皆様の声を代弁して、「何とか工夫できないか」「何とか外せないか」「消防法なら特区でできないか」「特例ができないか」などと交渉する。そういう体制を作り上げていこう、いわば、皆様方の立場に立った戦いになるのかもしれませんが、そうしたことを進めていこうとしております。私は鴻池さんのように「市中獄門引き回し」という勇ましい言葉はいいませんが(笑)、しかしこの特区の問題については、各中央官庁とガンガン渡り合って、できることは突破していきたいと思っております。
すでに1次2次あわせて164の特区認定がされました。今回も相当数が第3次特区認定受付期限の10月14日までに出てきておると伺っております。しかし、164認定されたものにつきましても、これから進めていく過程でいくつか中央省庁との関係で何か問題もあるようです。そういうものもすべて、どういう問題があるのかを洗い出してほしいと事務方に指示しております。それをすべて私が見まして、場合によっては担当閣僚とも折衝するつもりでおります。
いずれにしましても、これから地方分権が進んでいく。そういう中で、榛村掛川市長を代表として、今日お集まり頂いた市町村長の皆様方のご熱意もありますので、私も先頭に立って頑張らせて頂く覚悟でございます。これから皆様方も強力に進めて頂きますよう心からお願いを申し上げ、御礼の言葉とさせて頂きます。今日はどうもありがとうございました。
【席上発言要旨】
埼玉・志木市長:この特区制度は、私や市職員など内側にとっても非常に刺激的で、これは緊張して進めていかなければいけないと思っている。
志木市は教育委員会の廃止や市町村長の廃止を特区として提案し、ボツになっている。しかし、自治法も55年経っており、制度疲労をおこしている。シティマネージャー制度の導入などさまざまな試みをやっていかなければいけない時期にきており、判断材料のひとつをそのあたりに置いてもらいたいと思う。
また、今度特区の判定をする際には、本来これは国の職分なのか、それとも市町村の職分なのか、都道府県なのか市町村なのかという判断基準も必要だ。
鹿児島・加世田市長:今回「砂丘特区」に認定された。これは、遊休農地を再生するために、企業などに参入してもらい振興を図ろうというものである。本来ならば市で土地を購入し、それを企業に売り渡して農業をやってもらうつもりであったが、農地を企業に売却することはまだ認められていないので、市が土地を購入して貸し付けをすることにした。そうすると、その資金調達をどうするのかというのが問題になってくる。特区制度が新たな財政措置を講じないことを条件としているのは承知しているが、こうしたことを援助する制度がないために、市が自前で資金を調達しなければならない状況だ。
また、遊休農地のため、そのまま農地として使えるものとそうでないものもあり、軌道に乗るまで相当時間がかかるものあります。基盤整備事業の採択など、このようなことが運用の面でスピーディーにできるよう大臣のほうからご指導頂きたい。なお、これまでの農家助成措置については、企業が農業をやる場合も農家と同じ取り扱いをしてもらいたい。
山口・柳井市長:今の状況を見ると、医療とか農業とかのグループが、これまでの各省との関係を考え、特区によって得るものと失うものとを比較考量し、自制しているのではないかと思う。それを打ち破るためには、特区ということで新しい芽をどんどん実験的にやっていくよう、意欲的なものがたくさん出てくるよう、各省まかせではなく内閣がもっと積極的に音頭取りをする必要があり、大臣に大いに期待したい。
愛知・犬山市長:構造特区の問題は、行政の問題ではなく、政治の問題であり、自民党改革、政治の再生につながる重要な問題である。したがって、今度の衆院選挙のマニフェストでプライオリティの一番にあげるべき問題である。
滋賀・米原町長:土地の規制緩和をお願いしたい。私のところでは、広大な農地があるが、終戦直後に国営事業でできた農地のため思うように開発できない。農地法、農振法、都市計画法の規制緩和が必要だ。また、できてからは50年近く経っているが、干拓地のため水を排水するためのポンプの投資などが行われており、農地の用途変更をしようとすれば補助金も返さなければならない。
何よりも農地の転用については市町村長にまで権限を下ろしてもらいたい。農林水産省も国土交通省も現行法でできるといっているが、実際には非常に制限があり、できない状態となっている。
岐阜・河合村長:飛騨の関連産業は、木材の価格が下がって窮しているが、関連産業ではプロジェクトチームを作って、「木材経済特区」を申請しようとしている。公共施設等を木材でやろうということについて、建築基準法、あるいは防火の基準をできるだけ緩和してもらって、いろいろな形で木材を利用できる形にしたい。
岡山・御津町長:「教育特区」の認定をうけたが、気がかりなのが私学助成についてである。私のところは中学校で、義務教育の課程であるので、早い時期に私学助成を認めてもらいたいと思っている。
埼玉・草加市長:外国人の参政権を認めてほしいという提案を第1次に行ったが、駄目だった。その駄目だという理由は、国で議論している段階だからということであった。しかし、特区の精神とは、まさにこういう議論している段階だからこそ、自治体が自己責任でやるのだということだと思う。草加市では議会も全員一致して賛成しており、うまくいかなければ自治体が責任を取ればいい。それがうまくいけば全国に波及するのであり、議論しているから駄目だというのは、特区の精神に反している。
岐阜市長:国の行政が自己改革できないという前提のもとで、特区制度ができているのがさびしい。地方からの嵐のような怒涛の寄りがないと改革できないというが、中央省庁の中にも直すべきだと思っている人がたくさんいると思う。そういう人が声をあげられない、改革できないということで、外圧ということになっているのかと思うが、特区は最初の取っ掛かりでしかないと思っている。そろそろそうしたことも真面目に考えていかないと、特区は思いつきの羅列に終わってしまうおそれがある。
以上の意見が出された後、金子大臣から、「国と地方の役割分担は、明治以来長い時間をかけて築きあげてきたが、個別の議論をしていくと、そのまま残すわけにはいかず、見直していかないといけない。今日皆様方がおっしゃったことを参考にして考えいきたい」との挨拶があり、懇談会は終了した。
U 次いで企画委員会に移り、事務局からアンケート、幹事会の開催、WGの参加募集など、設立総会開催からこれまでの検討経過を報告したあと、今後の運営について話し合った。合意事項は以下のとおり。
@今後は、教育、農業、都市再生、医療・福祉、自治制度の5ワーキンググループ(WG)を開催し、特区として取り上げるべき課題など具体的な検討を行う。11月には第4次提案募集が行われるので、それに間に合わせるようにする。多くの自治体が一斉に提案していくテーマがいくつか出来ることが望ましい。
A都道府県が障害となっている場合があるので、これについては出来るだけ早く改善を求める必要がある。個別の市町村ではいいにくいので、推進会議として取り上げるべきである。都道府県によりそれぞれ熱意の程度は異なるが、特区にもっと力を入れるよう組織を作れと呼びかけることも一案だ。しかし、妙なものを作られてそこをすべて通すことになったりしてはいけないので、慎重に考えることが必要だ。
また、知事によっても違いが大きいので、革新派知事との意見交換の機会などもあったほうがいい。
B特区はあまり一般化して論ずると問題が拡散してしまう恐れもある。蟻の一穴ではないが、各自治体が規制によって弊害を被っているところを、それぞれが個別に具体的に打ち破ることが必要だ。 |