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この1年間の主な出来事
−小泉構造改革2年目の評価と課題−



1 概観
2 財政
3 規制
4 地方自治
5 政策の見直し
6 民営化
7 機構定員
8 透明な政府


 2002年7月から2003年6月末までの、行革関連の主な出来事を示せば、概略、以下のとおりである。


1 概観
小泉政権2年間の成果
 2001年4月に小泉内閣が発足してから2003年6月末で2年あまりが経過した。発足当初の異常な小泉人気にはさすがに翳りが見られるが、それでも内閣支持率は40%後半から50%近くを推移しており、不支持率を大きく上回っている。
 小泉内閣は政策目標として構造改革を大きく掲げ、官から民へ、国から地方へというスローガンを連呼してきた。しかし、その成果は声の大きな割にはあまり挙がっていない。むしろ、構造改革といった内政よりも、テロ特措法や有事立法、イラク支援法のような「キナ臭い法律」の制定の方に小泉内閣の本質が現れているようだ。2002年9月の北朝鮮訪問は確かに電撃的であり、ある程度の成果を挙げたことは間違いない。しかし、そのあとのフォローがうまくいっておらず、赫赫たる成果とはいえない。

進まない構造改革
 経済財政諮問会議は、2003年春ごろに作成したと思われる「小泉内閣の構造改革解説」という文書をHP上に載せているが、そこに掲げられた改革項目を列挙すれば次のとおりとなる。
1 不良債権処理・金融再生・産業再生 2 政策決定プロセスの改革 3 歳出改革
4 税制改革 5 規制改革・構造改革特区 6 地方自立・活性化 7 日本の魅力再生 8 暮らしの構造改革・持続可能な社会保障制度 9 デフレ克服と大胆かつ柔軟な対応
 経済諮問会議はこれらの項目の進展状況を縷々説明しているが、しかし、ここに掲げられたものが誰の目にも明らかに改善されたとは思えない。特に問題だと思うことは、どのような新しい社会・システムをつくろうとしているのか、そのために何をやろうとしているのかが見えてこないことである。財政支出を削減するという財政当局の金庫番の発想以外、全体を貫く思想がないのはまことに問題である。

政治主導はどこに
 小泉首相が登場したときには、政治主導による政策運営が行われるのではないかと、誰もが一瞬思ったに違いない。その前の森内閣の時に発足した経済財政諮問会議が急に生き生きと動き出したように思われた。しかし、それはつかの間の幻想であって、いつの間にか官僚主導、とくに財務省主導の政治に戻ってしまった。首相の得意の分野であった郵政改革や道路公団民営化も、結局、指導力を発揮しなかった。そうした首相がまだ国民の間で人気があるというのが、今の政治情勢である。


2 財政
2003年度予算は緊縮型
 2002年12月24日に決定された2003年度政府予算案では、一般会計は2002年度当初予算比0.7%増、一般歳出0.1%増と歳出面はほぼ横ばいとなった。一方、税収は2002年度当初予算47兆円弱から42兆円弱へと10.7%の減となり、国債発行は36兆4450億円と30兆円の枠を大きく上回ることになった。国債依存度は44.6%、国債発行残高は2003年度末には450兆円となる。
 最大の歳出項目である社会保障関係費は3.9%増、地方交付税交付金も2.3%増、国債費も0.8%増となったが、公共事業費は3.7%減、文教及び科学振興費3.5%減、防衛関係費0.1%減となった。

2002年度補正予算は景気配慮
 これに先立ち12月12日に決定された2002年度補正予算案(改革加速プログラム)は雇用・中小企業対策などセフティネット充実に1兆5000億円、都市再生など公共事業に1兆5000億円、それに社会保障関係費など義務的経費などの自然増分9000億円、災害復旧経費など3000億円をあわせて4兆2000億円の規模となった。さらに税収が見込みより2兆5400億円減少するのを、経費節減で1兆1000億円、税収減に伴う地方交付税減額5000億円で差し引くとともに、残り4兆9000億円は国債増発によって賄うことにした。この補正予算の事業規模は14兆8000億円、GDPを1%(実質0.7%)押し上げ、9万人の雇用増となると見込んでいる。
 2002年度補正予算については、景気対策の観点から早くから自民党内部から要求が出されていたのに対し小泉首相は消極的であったが、内閣改造1ヵ月後の10月30日、総合デフレ対策を決定。セフティネット整備や都市再生事業の促進などを盛り込み、補正の方向を示した。その後11月22日に首相は正式に各閣僚に補正予算編成を指示し、公約であった国債30兆円の枠厳守から逸脱することになった。

道路一般財源化は断念
 小泉首相は道路特定財源の一般財源化を政策スローガンに掲げ、2002年度予算では2247億円を一般財源とした。2003年度予算編成においても、首相は6月末に扇国交相に財源の見直しを求めたが、一般財源化は暫定税率の見直しにつながるため、一般財源化は見送ることになった。また、道路公団民営化の議論に関連し、国直轄での道路建設や地方自治体の負担などのため、総額2兆7913億円のうち高速道路整備に1000億円、地方への税源移譲に930億円(平年度)振り向けた。あと、本四連絡橋公団の債務処理に2245億円、道路関係の社会資本整備3691億円を除いた1兆9996億円が一般道の整備に向けられる。2002年度は2兆775億円であったから、ごくわずかな減少になるが、これに高速道や地方への移譲を加えれば道路関係予算はかなりの増加になる。

地方への税源移譲は進まず
 2002年6月25日の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太方針第2弾)」では、地方財政改革案を1年後にまとめることになった。2003年度予算編成はその中間にあたるため、補助金5600億円の削減と道路特定財源の一部移譲にとどまった。補助金の中で削減額の大きなものは公共事業関係費2600億円、次いで義務教育国家負担金のうち共済費など2200億円である。義務教育については自治体の負担が増える分は交付税交付金などを通じて大半は国が負担することになる。
 注目の地方財政の補助金・交付税改革、税源移譲という三位一体改革については、2003年6月27日の閣議決定で、地方向けの補助金は2006年度までに4兆円削減し、そのうち義務的経費については削減額の全額、それ以外のものについては8割程度を税源移譲する、地方交付税は総額を抑制するという極めて中途半端なもので終わった。しかも、その具体的な内容は今後の予算編成の過程で詰められていくことになり、全容はまだ未確定である。鳴り物入りの騒ぎにしてはまことにさびしい結果である。

2003年度税制改正
 2002年12月13日の与党税制改正大綱では約2兆円の減税と将来の増税を組み合わせたものとなった。
 減税としては、当初から要求が強かった法人税減税は見送られ、研究開発・IT投資などに対する減税のほか、贈与税の軽減、株式譲渡益課税の軽減などが盛り込まれた。一方、増税としては発泡酒・ワインは2003年5月から、たばこは7月から、さらに2004年1月からはいわゆる専業主婦控除が廃止され、2004年4月からは消費税の免税点が1000万円に引き下げられる。また、資本金1億円以上の大企業については地方税の外形標準課税が2004年4月から導入されることになった。特定扶養控除の廃止も検討されたが、最終的には存続となった。また、専業主婦控除廃止の見返りとして、児童手当が増額された。
 そのほか、揮発油税その他道路関係税の特例を5年間延長し、道路財源の確保を図った。

増税が目白押しの税制中期答申
 2003年6月17日に首相に提出された政府税調中期答申は消費税率の引き上げ、年金課税の強化、所得控除の見直しなど増税メニューの目白押しとなった。一方、法人税率の引き下げについては当初の方針を一転させ、今後検討すべき課題とした。
 このほか、環境税の導入や納税者番号の導入なども盛り込まれている。
 一方、小泉首相は在任中の消費税引き上げを否定しており、消費税の引き上げなど本格的な増税は2007年度からという見方が一般的である。

国民負担率は50%をめどに
 2003年度予算では国民負担率は36.1%であるが、税収の落ち込みや減税により租税負担率は20.9%、うち国税負担は12.0%となっている。しかし、財政赤字を加えた潜在的な国民負担率を見ると47.1%となる。
 経済財政諮問会議では2003年6月の「基本方針2003」において、プライマリーバランスを黒字化するなど財政を健全化していくため、潜在的国民負担率で見て、その目途を50%程度としつつ、政府の規模の上昇を抑制する方針を盛り込んでいる。


3 規制
第2次答申は迫力不足
 2002年12月12日、総合規制改革会議は第2次答申を提出した。水道事業や刑務所など19の公共サービス事業への民間参入推進を図るなど約350項目の提言となった。
 改革会議は7月23日に中間報告「経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革」をまとめ、そのなかで特区制度の導入とともに、教育、医療、福祉、農業の分野への株式会社の参入などを検討課題として掲げたが、12月の答申では医療・福祉・農業部門での参入は進展が見られず、わずかに大学院レベルの社会人のための職業実務教育分野への参入を2003年度中に検討し結論を出すことが盛り込まれるにとどまった。
 こうした状況の中で、規制改革会議としては経済財政諮問会議との連携を強め、半年ごとに目標を設定して3ヵ月ごとに評価するシステムの導入、官製市場の民間開放実現のための2003年度末までのアクションプランの策定などを目指すとともに、規制改革推進体制の強化のために各省庁に対して勧告権をもつことなども検討していくこととなった。

アクションプランの策定
 2003年2月17日の経済財政諮問会議で、総合規制改革会議議長の宮内氏が12項目の重点検討事項を示し6月をめどに答申をまとめるアクションプランを説明、民間議員4人はこのうち6項目を最重点項目として早期実現を目指すことを提案、了承された。
 アクションプランの内容は6月27日の「基本方針2003」に盛り込まれ、12の項目については2年以内にその実現を図ることが決定した。なお、規制改革会議は7月15日に「基本方針2003」に盛り込まれた事項ならびにさらに取り組むべき課題などを整理した答申をまとめ公表した。そこに盛り込まれた事項の検討結果は年末の最終答申に盛り込まれることになる。

特区制度の発足
 構造改革特区制度の創設は2002年6月の「基本方針2002」に盛り込まれたあと、7月26日には首相を本部長とする推進本部が設置され、特区の第1次提案募集が行われた。締め切りの8月30日までに寄せられた提案は426件であったが、これをもとに特区推進室が各省庁と折衝した結果、全国的に実施するもの111件、特区として実施するもの93件となり、このうち法改正を要するもの14本を盛り込んだ特区法案が11月5日に閣議決定された。法案は12月11日に成立し、4月から実施されることになった。
 特区の内容については、1月15日に第2次提案募集が締め切られ、649件の提案が寄せられた。このうち全国的に実施するもの77件、特区として実施するものは47件である。これらを盛り込んだ特区改正法案は3月18日に閣議決定され、5月30日に可決成立した。施行は10月からである。さらに6月には第3次提案募集が行われ、279件の応募があった。
 実際の特区認定は4月に受け付けられ、111自治体129件の応募が行われ、4月17日に第1段として57件、5月19日に60件が認定された。第2次認定は7月に募集され、8月22日、47件が認定された。
 特区の内容としては、農業、教育、福祉、医療などへの株式会社の参入やNPOによる福祉移送サービスの実施、民宿によるどぶろくの醸造、あるいは産学協同の円滑化や通関サービスの24時間化などさまざまなテーマが挙げられているが、総じて小粒である。
 特区制度は全国一斉の規制改革実施が難しいところから、地域限定で実験的に行うことにより突破口を開こうというものであるが、これが規制改革を地域的に矮小化させることに終わらせず、規制改革の尖兵とするためには、関係者の継続的な努力が必要である。

スケジュールの遅れが目立つWTO交渉
 WTOの新ラウンド交渉は2001年11月のWTO第4回閣僚会議(カタール・ドーハ)で立ち上げられた多角的な貿易自由化のための新たな交渉のことで、2004年末の合意をめざすことになっている。
 新ラウンドにおける交渉分野としては、ウルグァイ・ラウンドが終了した時点で既に交渉開始が合意されていた事項(合意済み交渉課題:ビルトイン・アジェンダ)である農業・サービス分野のほか、関税引下げ交渉、更には「新たな課題」として投資、競争、環境、アンチダンピング等があるが、多くの途上国を巻き込んだ交渉であるだけに、途上国の関心事である農業分野の自由化の成否が新ラウンド交渉全体の成否のカギを握っている。
 2003年2月に東京で開かれた閣僚会議では意見の対立は解けず、結局、3月末に予定されていた農業分野、5月末に予定されていた非農業分野の大枠合意はいずれも失敗に終わり、6月末のエジプトでの閣僚会議でも進展はなく、9月のメキシコでの閣僚会議にむけて態勢の建て直しが必要となっている。
 日本にとっては、多くの課題がある中でなんといってもコメの輸入問題が最大の焦点となっており、EUあるいは途上国などとの共同戦線を作ろうとしているが、なかなかうまくいっていない。

りそな銀行の国有化
 ひところのような泥沼状態は脱したようであるものの、不良債権処理および金融業界の再生はまだまだ途上にある。
 2002年9月の内閣改造で、金融担当大臣は柳沢氏から竹中氏に代わり、公的資金を投入して不良債権処理・金融再生を加速させる方向が打ち出された。不良債権処理については作業チームが結成され、10月30日に決定された総合デフレ政策の中に産業再生機構の設立とともに金融システムの強化策として銀行の資産査定の厳格化などを盛り込んだ。ただし、竹中氏が求めていた「税効果会計の見直し」については結論が先送りされた。
 この税効果会計問題は、その後、2003年5月17日のりそな銀行の破綻で具体化した。りそな銀行の監査法人は税効果資本が実態以上に参入されていると指摘、その結果、りそな銀行は資本不足に陥ったもの。政府は直ちに公的資金投入方針を決定、6月10日、1兆9600億円を投入し議決権の72%を握る事を正式に決定した。

ペイオフ延期、生保の予定配当率引き下げ
 ペイオフは2002年4月から定期預金、金融債などで実施され、2003年4月からは普通預金などでも実施することになっていた。しかし、地域金融機関の経営状況悪化などもからみ、実施延期論が繰り返し主張されてきた。7月30日、首相は決済資金を中心に保護を継続する案の検討を指示するなど、ペイオフの全面延期には否定的であったが、9月の金融相交代後、方針を全面的に転換し、10月7日、預金性資金については2年間の延期、決済用資金については保護継続との方針を決定した。これらを盛り込んだ預金保険法一部改正案は10月25日国会に提出され、12月11日に可決成立した。
 なお、ペイオフ問題と平行して検討されていた、公的資金を投入して地域金融機関の再編を図る「地域金融機関組織再編成特別措置法」も預金保険法改正案とともに12月に成立した。公的資金投入による地域金融機関再編の第1号は4月1日の関東銀・つくば銀行の合併である。
 生命保険の予定利率を引き下げる問題については、2002年12月の生保安全網強化のため民間も1000億円負担することが決定した後、2003年1月から具体的な検討課題となった。これに対しては自民党内部には慎重論が強く調整は難航したが、5月23日、保険業法の一部改正法案は国会に提出され、7月18日可決成立した。

NTT接続料は引き上げ、東西均一料金制維持
 2003年4月19日、NTT東・西両社は接続料を今年度から2年間、平均5%引き上げる料金改定申請を行い、22日、総務省はこれを認可した。
 接続料については、2002年9月、電気通信審議会がNTT東日本の引き下げ幅は20%、西日本は5%と東西両社間で格差のある答申を提出した。しかし、この東西格差については11月の衆参総務委員会で東西均一料金維持の決議が出されるなど異論が出され、総務省は東西均一料金を維持し、東から西に交付金を渡す制度を導入することにした。そのためのNTT法改正案は3月に閣議決定され、法案は5月23日に参院で可決、7月17日に衆院でも可決され成立した。
 また、接続料金については、9月の答申の基礎となった固定電話使用量は2001年度上期実績から2001年度下期には急減し、答申通りの引き下げが不可能となった。総務省は2003年2月、電気通信審議会に2003、04年度の接続料金を平均約4.8%引き上げる案を諮問、電通審は3月28日、ほぼ諮問案とおりの改定案を答申した。また、接続料金について日米規制緩和協議で米国からの要求で2000年度から導入された算定方式も2005年度から見直すことも答申された。これまでの電気通信政策が転機を迎えている。

電気通信事業への参入、許可制は登録制または届け出制に
 電気通信事業法の改正案が2003年3月14日、閣議決定され、7月17日に可決成立した。85年の法施行以来の大改正で、事業への進出にあたっては大規模な施設を持つ事業者は登録制に、それ以外は届け出制に変更され、参入申請から事業開始までの時間は大幅に短縮された。また、電話基本料や市内電話などを除き、市外、県外、国際通話やADSLのサービスはあらかじめ総務省に料金を届ける必要がなくなり、自由な価格設定ができるようになった。
 電気通信事業法については、11月15日、公正取引委員会の研究会が報告書を発表、そのなかで事業法規制と独禁法の規制とが二重規制になっており、今後の規制のあり方としては総務省の行政裁量が及ぶ範囲を限定すべきとの注文をつけていた。
マスコミ集中排除規制の緩和
 2003年2月27日、総務省の放送政策研究会はマスメディア集中排除原則の緩和策を盛り込んだ最終報告書を発表した。12月からの地上波デジタル放送開始を控え、経営基盤の弱い放送局の再編を促すため、隣接県の2局では兼営なども認めることにしている。また、BSデジタル放送と地方放送は現行の出資上限33.3%を50%以下に緩和した。

スカイネットの就航
 2002年8月1日、羽田・宮崎を結ぶスカイネットアジア航空が就航した(8月は5往復、9月から6往復)。他社よりも約1万円安い低運賃が売り。搭乗率は就航開始の8月には80%台と高い成績となったもののその後50%台にまで急落したが、2003年に入ってからは60%、70%台にまで回復し、8月からは新たに羽田・熊本間も5往復(9月からは6往復)就航することになった。
 なお、スカイネットの羽田・宮崎間の就航に対し、既存大手3社は対抗して値下げを行ったが、これに対して公正取引委員会は9月末、優越的地位の乱用にあたる恐れがあると改善指導を行い、3社は対抗値下げを12月から取りやめた。なお、スカイマークは8月末、公取が調査に乗り出したことに対し、羽田・福岡便についても調査を求め、9月の公取の指導には羽田・福岡便もふくまれることになった。(99年のエアドゥ、スカイマークへの大手3社の対抗値下げの時には、独禁法上問題なしとして、新規参入社の経営悪化を招いた経緯がある)

航空会社の再編は進む
 日本航空(JAL)と日本エアシステム(JAS)は2002年10月、共同持ち株会社「日本航空システム」を設立上場し、経営統合された。2004年4月をめどに、国際、国内、貨物の3社に再編される見込み。新JALグループは売上は2兆円を上回りANAの1兆2000億円を大きく引き離して世界第3位、輸送量でも世界第6位になる。
 また、2002年6月に更正法申請したエア・ドゥは全日空の支援の下に再建を図ることとなり、9月に再生計画を提出した。
 一方、98年に羽田・福岡便で新規参入したスカイマークは、2002年4月には羽田・鹿児島線を就航、8月には国際線チャーター便に参入、さらに10月には羽田・徳島、羽田・青森線を撤退したANAから継承し2003年4月から運行開始すると発表した。

混乱続く移送サービス
 NPOなどが病院などへの移送サービスを行うことについては、厚労省は国交省とも連絡をとって、必ずしも営業免許(第2種免許)は必要ないとの通達を4月初めに出した。しかし、東京都や福岡県など自治体によっては、免許が必要としているところもあり、混乱が続いている。
 特区制度としては、岡山県が福祉移送特区によって、NPOが障害者や高齢者を合法的に有償で移送できる実験を始めることにした。

酒の小売には逆特区
 2003年4月23日、酒税法及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案および酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法案が可決成立した。前者は2003年9月から酒類小売販売を自由化するものであるが、後者は税務署長が指定する緊急調整区域では1年間に限って新たに小売免許を出さないという激変緩和措置で、2005年8月末までの時限立法。前者は政府提案であるが後者は議員立法で、いずれも全会一致で可決された。緊急調整区域は、規制緩和を進める特区ではなく改革を遅らせる「逆特区」といわれているが、その具体的な区域名は8月に国税庁のHPで発表された。

コンビニでの医薬品販売はやや前進
 2003年6月18日の経済財政諮問会議で規制改革重点12項目の基本方針が決定され、コンビニなど一般小売店での医薬品販売が安全性などを確認した上で2003年中に決定されることになった。具体的には、整腸剤やうがい薬、浣腸剤、一部の胃腸薬、一部の風邪薬(胸に塗るなど外用薬)や目薬程度だといわれている。99年の規制改革ではトローチなど10数種類を医薬品から医薬部外品に移して解禁したが、今回は医薬品のままで解禁するところが新しい。

電力・ガスの全面自由化は2007年以降に検討
 2002年12月27日、総合資源エネルギー調査会電気事業分科会は、2005年に電力取引所の創設などを含む一連の制度改革を行う内容の報告案を了承した。電力会社が自由に料金を設定できる対象は、電力需要全体の26%から2004年4月に40%、2005年4月には63%に拡大することになる。ただし、家庭用までも含めた全面自由化の時期は明示できず、2007年度以降に再検討することにした。また、発送電の分離は盛り込まれず、送電部分の会計を分離するだけにとどめた。最終報告は一般の意見も聞いたあと、2月18日に正式に決定され、経産省はこれにもとづき電気事業法改正案を国会に提出、法案は6月11日に成立した。
 また、総合資源エネルギー調査会都市熱エネルギー分科会は2003年1月10日、ガス事業の自由化範囲を拡大する市場改革案を了承、ガス事業法改正案は電気事業法改正案とともに国会に提出され、6月11日に成立した。これにより、自由化範囲は2007年までに小工場・ビルにまで拡大し、上位10社の年間販売量の50%以上となる。ただし、一般家庭向けは電力と同じく、2007年以降に再検討することになった。さらに、今回の法改正で、ガス管開放の義務は大手4社から全事業者に拡大された。

原発トラブル隠し
 2002年8月末、東京電力が福島県と新潟県にある原子力発電所計13基で、80年代後半から90年代前半にかけての自主点検記録をごまかし、ひび割れなど29件のトラブルを隠していたことが発覚した。その後、各社でも同様なトラブル隠しが発覚、検査体制の不備が浮き彫りとなった。こうした事態をうけて、その再発防止策を盛り込んだ電気事業法・原子炉等規制法の改正案が、内閣府の原子力安全委員会の機能を強化する修正を加えて12月11日に可決成立した。また、同日、事業者の法的検査を審査する独立行政法人「原子力安全基盤機構」の設置法案も可決成立した。
 なお、原発の前倒し点検の実施などのため原発は相次いで稼動を停止し、東電ではすべての原発が2003年春に停止した。その後、地元の了解を得て稼動が再開しつつあるが、夏場の電力需要のピークをどう乗り切るかが課題となった。

産廃不法投棄、国に立ち入り調査権
 2003年6月11日に廃棄物処理法改正案が可決成立した。これにより、産廃の不法投棄が疑われる場合、県に代わって国が立入り調査できることになり、また、未遂罪も新設された。同時に可決された特定産業廃棄物に起因する支障の除去特別措置法(産廃特措法)は、98年以前に不法投棄された産廃を国の補助金(費用の3分の1から2分の1)と自治体の地方債(元利償還の半額を地方交付税で穴埋め)で原状回復させるもので、10年間の時限立法。

独占・寡占規制の見直しに25年ぶりに着手
 公正取引委員会の独占禁止法研究会は部会を設け、電気通信や航空など公益性の高い分野における独占・寡占規制のあり方の検討を2003年6月からはじめた。3月の規制改革3ヵ年計画では、市場開放が進む中で公取が適切な対応をとることが求められているが、独占・寡占の規定は1977年に制定されたままで、現在の経済環境に十分対応できないと指摘されている。公取では2003年内に最終報告をまとめ、2004年春の通常国会に法案を提出する予定。

官製談合防止法施行
 2002年7月24日、官製談合防止法(入札談合等関与行為の排除および防止に関する法律)が可決成立し、2003年1月6日から施行された。初適用は岩見沢市で、公正取引委員会は1月30日、岩見沢市に対し改善措置を求めた。

食品安全委員会の発足
 2003年2月7日、食品安全基本法案が閣議決定され、5月16日、可決成立した。これにより、これまで農水省、厚労省に分かれていた食品の安全判断は食品安全委員会に一元化され、委員会は両省に勧告権を持つことになる。
 また、2月の閣議では食品衛生法改正案も閣議決定され、これは5月23日に可決成立した。これにより、残留農薬を含む食品の輸入販売に対する法人の罰金が1億円に引き上げられた。

労働者派遣法の改正
 2003年6月6日、労働者派遣法改正案が可決成立した。これにより、派遣期間はこれまでの1年から3年に延長され、また、製造業への派遣も改正法施行後3年間は1年間を上限とし、それ以降は最長3年となった。また、これまで最長3年となっていた26業種の上限を撤廃した。2004年4月から施行される。
 また、これまで禁止されていた医師や看護婦の派遣も、労働者派遣法の改正に伴い事前面接が可能な「紹介予定派遣」ができるようになったため、事前面接を条件として解禁されることになった。

職安法、労基法の改正
 2003年6月6日、職業安定法の改正案が成立し、自治体などが無料職業紹介を行えるようになった。
 2003年6月27日には、理由のない解雇は無効などといった解雇ルールを法制化した労働基準法改正案が成立した。なお、議論になった金銭解決については、経営者側の乱用を懸念する意見もあり、見送られた。

教育改革は特区で
 2003年3月18日に特区法改正案が閣議決定され、そこには株式会社やNPOなどによる学校設立を認める条文も盛り込まれた。改正特区法案は5月30日に成立し、10月から施行されることになった。
 なお、これに先立ち2002年11月5日に閣議決定され、12月11日に可決成立した特区法案においては、カリキュラムの弾力化が認められ、英語を主体とする小中学校の設置などが可能となった。
 なお、小中学校を公設民営化することについて文科省は抵抗してきたが、6月の経済財政諮問会議の検討などにより、これを認める方向で検討に入った。

幼保一元化は進みだす
 幼保一元化の議論も延々と続いてきたが、2002年11月に閣議決定された特区法案において、幼稚園就園年齢を2歳以上に引き下げ、また保育園児との合同教育・保育が出来る要になり、事実上の一元化に近づけた。さらに改正特区法では、保育の事務を教育委員会が担当することも出来るようにした。

医療分野への株式会社の参入
 医療分野への株式会社参入について厚労省は拒否の態度を貫いてきたが、2003年2月27日の第2次提案に対する実施項目決定の際には、自由診療の分野において参入を認めることとし6月までに成案を得るということになった。6月27日に発表されたガイドラインによると、株式会社の参入を認めるのは、再生医療、遺伝子治療、特殊な放射性同位元素を用いた画像診断、高度な美容外科、提供精子による赴任治療の5分野などとなった。

株式会社の特養経営
 株式会社による特養経営は、2002年12月に成立した特区法において、公設民営またはPFI方式による参入を認めることになった。

混合診療は一部実現に
 保険診療と保険外診療とを組み合わせる混合診療については、2003年6月の経済財政諮問会議の「基本方針2003」において、2003年度中に措置するとの方針が盛り込まれた。


4 地方自治
アメよりもムチの市町村合併
 総務省の発表によれば、2003年7月1日現在、市町村合併についての法定協議会357(1442市町村)、任意協議会160(592市町村)、研究会等その他213(530市町村)が設置(予定含む)されており、設置数の合計は、730(2564市町村)である。これは全市町村数(3185)の80.5%に相当するという。しかしながら、市町村の数を1000程度にまで減らすという当初の意気込みに対し、合併の一応の期限である2005年3月末になっても市町村数はせいぜい2000の大台にとどまるものと見込まれている。
 これまで政府は2005年3月末で期限の切れる合併特例法は再延長しないとの態度を示してきた。しかし、合併が思惑通りの進捗状況にないところから、地方制度調査会などを舞台として期限到来後の合併促進のための措置を検討、2003年6月、総務大臣は新たな法案を2004年の通常国会に提出する方針を明らかにした。新たな法案では、合併に伴う財政上の優遇措置は打ち切り、そのかわり都道府県の勧告権などを強めるなど一段と強制職が強まるものと見られている。
 なお、合併特例法では、合併に対する優遇策として、2004年3月末までに合併すれば人口3万人でも特例として市に「昇格」できることになっていたが、これを1年間延長し2005年3月末までとする合併特例法改正案が2003年6月、議員立法として提出され7月2日に可決成立した。

地制調の中間報告
 2003年4月30日、地方制度調査会は「今後の地方自治制度のあり方についての中間報告」をまとめて発表した。課題の一つは合併推進方法、特に合併特例法の期限到来後の合併推進のあり方であるが、これについては上述したとおり、財政的な優遇措置は打ち切るとともに都道府県の斡旋などを含む促進策などを提言した。なお、自治体の最低人口規模を明示すべきだとの意見もあったが、これは盛り込まれなかった。もうひとつの課題は、合併推進を前提とした基礎自治体内部の地域自治組織のあり方であるが、これについては行政区的なタイプと特別区タイプの2通りを示した。このようなものを示すことにより、合併への心理的抵抗を和らげるのがねらいであると見られている。
 なお、地方制度調査会の検討の過程で2002年11月に西尾副会長が強制合併の試案を発表したが、中間報告では合併を強制する色彩は表面からは消えた。

連邦制の検討が始まる
 地制調の中間報告でも、都道府県合併や道州制の検討が課題として掲げられ、6月には片山総務大臣が市町村合併後の課題として都道府県合併を挙げた。
 また、青森・秋田・岩手の北東北3県では合併も視野に入れて連携を強めているし、神奈川県の松沢知事が首都圏連合を呼びかけるなど、都道府県間の連携の議論が始まった。

財務省主導の地方財政改革
 2002年6月の経済財政諮問会議は「基本方針2002」を決定、そのなかで2002年中に補助金の見直しを行い、また、補助金、交付税、税源移譲の問題を三位一体で検討し、改革案を2003年6月までに取りまとめるとの方針が打ち出された。
 補助金の整理については地方分権改革推進会議を中心に検討が行われ、10月30日に出された報告では、社会保障、教育・文化、公共事業など5分野の見直し対象事業を列記したものの補助金削減額については明示せず、わずかに義務教育国庫負担金の中から共済費、退職手当など5000億円の段階的縮小と一般財源化を書き込んだに過ぎない。また、補助金削減に伴う税源移譲については何も触れないという極めて中途半端なものにとどまった。
 いわゆる三位一体の改革については、期限となった2003年6月ぎりぎりまで調整は難航したが、結局、2006年度までの3年間で補助金4兆円を削減すること、削減される補助金のうち義務的経費については全額、奨励的な補助金については8割程度を税源移譲することが決まった。ただし、削減される補助金や移譲される税目については何も具体的なものは示されていない。また、交付税については総額を抑制するという方針のみが盛り込まれ、交付税制度そのものの見直しは見送られた。結局、財務省の経費削減の主張と交付税温存という総務省の主張が盛り込まれただけの、本来の地方財政改革からは程遠い内容のものに終わった。

悪化が進む地方財政事情
 税収の落ち込みや過去の地方債増発による公債費の増加などにより、どこの自治体の財政も深刻な状況にある。2003年度地方財政計画によれば、2003年度末の自治体の借金残高は199兆円(GDPの40%)に達するものとなる。
 日本経済新聞が9月議会で本格予算を編成する神奈川県を除く46都道府県について集計したところによれば、一般会計総額は前年度比マイナス2.2%と2年連続マイナスを記録した。税収は法人2税が5.6%減と大きく落ち込み、このため地方債発行額は18.6%増、とくに赤字地方債の発行は倍増となった。

独自課税は依然活発
 2002年7月、福島県議会は核燃料税率をこれまでの7%から13.5%に引き上げる条例を可決、総務省も9月27日に同意した。東電も12月25日、この受け入れを表明、条例は12月31日から施行された。施行期間は5年間。
 新潟・柏崎市は2003年2月議会で使用済み核燃料に課税する条例を可決した。キロ当たり480円を課税し、原発の安全対策などに充てる目的税として2003年10月からの導入を目指す(東電は8月に同意、総務省も9月に同意した)。
 また、宮城県も2002年12月の議会で7%の核燃料税率を10%に引き上げる条例案を可決した。施行は6月1日を予定している(総務省は9月に柏崎市と川内市の条例について同意したものの宮城県についてはまだ同意していない)。
 また、産廃税については岡山、鳥取、広島3県と北九州市が同意を求めていたが、2002年9月、総務省はこれらに同意した。さらに青森・秋田・岩手3県で導入の「共通産廃条例」は2002年12月、それぞれの議会で可決された。トンあたり1000円を課税する。
 このほか、太宰府市の駐車税、高知県の森林環境税、岐阜県の乗鞍保全税など、自治体の独自課税の動きは厳しい財政難も反映して活発である。
外形標準課税は実施に
 長らく懸案となっていた法人事業税の外形標準化問題は、2002年12月13日の与党税制改革大綱で資本金1000億円を超える法人について2004年度から導入することになり、ようやく一応の決着がついた。

貸借対照表は過半数が作成
 2003年3月24日の総務省発表によれば、2001年度の貸借対照表を作成した市区町村は1761自治体で、全体に占める比率は前年の44.7%から54.3%に上昇し、過半数を超えた。都道府県はすべて作成している。

予算編成から財政課を外す試みが始まる
 予算編成を財政課の査定をなくし、大枠はトップダウンできめ細目は各部局に任せる試みは三重県、群馬県、岩手県などで始まった。また、東京・足立区や横浜市では、それぞれの部局での予算の節約がその部局の次年度のファンドとなる制度を始めている。

住民投票条例の制定が始まる
 合併に関して住民投票条例を制定し、住民の意思を問うことはもはや多くの自治体で行われようになった。投票資格も外国人や中学生にまで広げる自治体も出てきた。
 一方、常設型住民投票条例といわれるものも、愛知・高浜市、群馬・中里村、境村などに続いて2002年12月には埼玉・富士見市、2003年2月には政令市としては初めて広島市が制定した。また、2003年6月20日には桐生市も制定している。(なお、広島・大竹市も3月議会に提案したが継続審査となり、6月議会でも可決されず、9月議会に再提案されたが、またもや継続審査となった。)。

住基ネットが稼動
 住民基本台帳ネットワークは2002年8月5日から稼動(第1次稼動)した。これは全国の市区町村の「住民基本台帳」を専用回線ネットワークで結ぶことにより、都道府県や「指定情報処理機関」の間で、住民票情報のうち氏名・住所・性別・生年月日・住民票コードの5情報とこれらの変更情報の共有を可能とするもので、これにより、全国共通の本人確認が可能となり、行政機関への申請や届出の際の住民票の写しの添付が264の事務で不要となった。
 しかし、個人情報の取り扱いに不安を覚える意見も強く、福島・矢祭町、東京・国分寺市、杉並区が不参加を表明、横浜市は市民選択制を導入した。また、三重・二見町、小俣町は国への抗議の意味をこめて8月9日まで接続を拒否した。その後、9月には東京・中野区、12月には東京・国立市が離脱、一方、杉並区は2003年6月、国の個人情報保護法の制定などを理由に選択性を導入することにした。国分寺市も5月には接続の方針を固めたが、6月にそのための条例は議会で否決された(その後7月に、国分寺市は2002年8月からの第1次稼動には参加し、2003年8月からの第2次稼動には当面不参加の方針を打ち出した)。また、2003年5月には長野県の審議会が個人情報保護が不十分であることを理由に離脱を求める報告書を知事に提出、県ではこれを受けて独自に安全性をチェックするための侵入実験を行うことになった。

多選自粛条例の制定が始まる
 2003年3月、東京・杉並区は区長の4選自粛条例を可決した。一方、長野県議会は3月、同様の条例を審議せず廃案とした。その後、川崎市でも6月議会の多選自粛条例が提出され、7月3日、可決された。

介護保険料は平均13%アップ
 2003年4月に改定された各自治体の介護保険料の全国平均(基準額)を見ると、改定前の2911円から3293円へと13.1%上昇した。最高額は北海道・鶴居村の5942円で最低は山梨・秋山村の1783円。また、都道府県の財政安定化基金からの借り入れを返済を405団体が延長、このうち214団体が最長9年間延長し、保険料の引き上げ幅を圧縮した。また、低所得者に対して保険料を独自に減免している自治体は2002年4月より393団体増えて824団体となった。

幼保一元化は進む
 東京・品川区は2002年9月から幼稚園に保育園を併設し幼保一元化事業をはじめた。厚労省によると、2002年5月現在、全国の公・私立の施設で連携を進めているケースは171件。このうち同じ施設に同居する合築形式が59件、両施設がドッキングした併設が29件、同じ敷地に別の施設を設けるものは83件という。
 2003年4月から始まった特区制度においても、幼保一元化は定番メニューとなり、4月と5月の第1次特区計画認定において、群馬・六合村では幼保一体化施設の運営が認められ、また、埼玉・北本市、長野県内長野市など11市5町1村、山口・防府市、岩手・一関市、山梨・富士吉田市では3歳未満児の幼稚園就園事業を始めることになった。

移送サービスの有償化
 NPOによるボランティア輸送の有償化の問題は厚労省と国交省の解釈が食い違い、また、自治体の対応もさまざまであったが、神奈川・大和市、大阪・枚方市、岡山県内全域、熊本県内宇土市など1市9町、東京・世田谷区、長野・小海町、徳島・上勝町、熊本・菊池市で特区により有償化を認める事業を始めた。

中高一貫校は増加
 文部科学省が4月に発表したところによれば、2003年度に中高一貫校は45校増えて118校となった。2004年度以降にも50校増える計画があり、現在の34都道県から41都道府県になる。118校のうち公立が80校、私立が35校、国立が3校である。2003年度から公立の中高一貫校を設置したのは17都道県で、うち宮城、茨城、群馬、埼玉、東京、滋賀、標語、愛媛では初めての設置。

カリキュラムの弾力化など実験が始まる
 特区としては群馬・太田市の外国語教育特区のほか埼玉・狭山市、戸田市、新座市、千葉・成田市、東京・荒川区で外国語教育を中心とするカリキュラムの弾力化を実施することになった。また、東京・八王子市では不登校児童・生徒のための小中一貫校による多様なカリキュラム編成、福島・会津若松市や岐阜・多治見市、可児市のIT活用による不登校児童・生徒の学習機会の拡大、徳島・海部町、北海道・清水町、長野・大桑村、京都市、広島・三次市の市町村負担教職員任用の容認による少人数学級編成などの試みが行われることになった。

羽田再拡張の費用負担は再協議
 国土交通省は、羽田空港の再拡張の費用約9000億円のうち3000億円を東京、神奈川、千葉、埼玉の4都県が負担することにより、2003年度から工事着工を計画していたが、2002年12月、神奈川・埼玉・千葉の3県と横浜・川崎・千葉の3政令市は連名で地方負担に反対する意見書を提出した。東京都は石原知事が一部負担に柔軟な姿勢を示していたことからこの連名に加わらなかったが、その直後、東京都もこの意見書に同調し拒否の姿勢を明らかにしたため、財源のめどが立たず2003年度の着工は延期になった。石原知事は、航空担当の部長を更迭するとともに2003年1月には国との協議を再開した。

能登空港の開港、静岡空港は継続?
 国土交通省は2002年11月、建設が計画されているが未着工のびわこ、播磨、小笠原、新石垣の4空港の建設と、新千歳、秋田、山形、福島、新潟、佐渡、福井の7空港の滑走路延伸・増設を取りやめることにした。さらに、地方空港整備の手続きを透明にするため、滑走路新設や延長の要件となる数値基準を2003年2月にまとめた。滑走路の新設には離着陸回数が年10万回を超え、混雑時には1時間あたり30回に達していることが条件。大型ジェット就航のための滑走路を2500メートルに延長するには最大路線の需要が開業時に年50万人以上見込まれることが必要。2000メートルのためには11万人必要。
 こうした中で、能登空港が2003年7月に開港したが、1日2便の羽田・能登線のうち1便について石川県が70%の搭乗率保証を行うことで合意した。逆に70%を上回ると、ANAの子会社ANKが販売協力促進協力金を地元に還元する。地元の損失補てんは年2億円を上限とし、年間搭乗率が50%を下回る分については補填しない。
 また、事業着手から10年目となる静岡空港については、10年目の事業評価を控え、静岡県では未買収用地の強制収用の準備に入った。(なお、県の事業評価監視委員会は7月末、「事業継続は適当」との結論を出した。)

脱ダムが加速
 長野県議会は2002年7月5日、田中知事に対して不信任を決議したが、知事は失職後再出馬し、9月1日の投票で圧勝した。当選後、田中知事は浅川ダム、下諏訪ダムの中止を明言した。その後、県による浅川ダム契約解除に対し業者が損害賠償の訴えを起こしたが、県側はダム工事の談合を指摘、請求を拒否した。さらに、2003年6月24日、県の治水・利水ダム等検討委員会は駒沢川、角間川の県営ダムの凍結・中止を答申し、諮問された9河川全部について脱ダムを答申した。
 熊本県は2002年11月29日、球磨川の県営荒瀬ダムを10年後をめどに撤去する方針を固めた。ダムの完全撤去は全国初という。なお、国が熊本県内で計画中の川辺川ダムから農業用水を引く利水事業の計画変更をめぐっての訴訟で、2003年5月16日、福岡高裁は「土地改良法が定める対象農家の同意を得ていない」として、地裁の判断を覆し農家側の主張を認める判決を下した。川辺川ダム建設については地元で対話集会が続けられてきたが、この判決を受けて収用委員会は2003年5月末に結審という日程を白紙に戻した。
 また、栃木県福田知事は2003年6月18日の議会で、鹿沼市に計画中の東大芦川ダム建設中止の意向を示唆した。ただ、自民党県議や鹿沼市は推進の立場を崩していない。
 なお、2002年12月2日、島根県の澄田知事は中海・宍道湖の淡水化事業について農水省に正式に中止を申し入れることを議会で明らかにした。淡水化事業は1963年に着手、88年から凍結されていた。また、セットで計画された中海干拓事業は2000年に中止されている。

川崎市の地下鉄は延期
 2003年6月16日、川崎市の阿部市長は2003年度に予定していた市営地下鉄建設工事の着工を5年程度延期すると表明した。市では、5月にコンピュータで無作為に選んだ市民1万人を調査員が直接訪問してアンケート調査を実施、その結果、延期が40.0%、中止32.9%、で早期着工15.8%を大きく上回った。計画によれば、6205億円を投じて小田急線新百合丘駅とJR線川崎駅間21.8キロを結ぶもので、市債の元利返済も含めると事業費は8865億円と巨額になるといわれている。
 なお、東京都が2003年6月に発表したところによると、多摩都市モノレール、新交通ゆりかもめ、および建設中の日暮里・舎人線を民間と同様の収支計算をすると、ゆりかもめでは開業した95年度から2001年度末までの累積赤字は77億6000万円、多摩モノレールは98年度開業以降の累積赤字は256億1000万円、また2007年度開業予定の日暮里・舎人線の5年間の累積赤字は151億円となり、単年度で黒字化するのは当初予定の2013年よりも13年遅れるという結果となった。
 なお、経営の建て直しのため、2002年6月、民間旅行会社HISから社長を招いた長野県の第3セクター「しなの鉄道」が4月30日に発表した2002年度決算によると、97年度の開業以来初の黒字となった。

住宅公社は軒並み赤字
 2002年8月に国交省が発表したところによれば、都道府県、政令市が出資する57の住宅供給公社のうち、2002年度決算で5公社が債務超過に、19公社が経常赤字になる見通し。経営の悪化に加えて公社による住宅分譲の必要性が薄れ、住宅事業の廃止を予定または検討中の公社は22ある。借入金の総額は2001年3月末で3兆1574億円となっているが、公社が自主解散する場合の法律は未整備のため、国交省では住宅供給公社法の改正を検討している。
 2003年2月の新聞報道では、北海道、福島、茨城、鳥取の4道県が解散を検討中、静岡県と横浜市は他の外郭団体との統合を決めている。また、6月には埼玉県の住宅公社が住宅分譲から全面的に撤退することが明らかになった。

マンション規制、相次ぐ
 東京都内の江戸川、墨田、世田谷区、練馬区で高層マンションに高さ規制を導入する動きが相次いでいる。いずれも2003年7月までに要綱をまとめ、2004年夏からの導入を目指している。
 また、ワンルームマンションについても、世田谷区が2002年4月に専用面積を25u以上(一定規模のものでは平均が50u以上)とする規制条例を制定、中央区が新設を制限する条例を2003年7月から施行、豊島区は「ワンルームマンション税」構想を検討しており2003年中に結論を出す予定である。このほか、渋谷区ではごみ出しに関する条例を2003年1月に施行、新宿区も駐輪場に関する条例を検討、千代田区はマナー向上のための要綱を2002年12月に見直した。
 なお、国立市のマンション問題は、依然として流動的である。まず、市の条例に違反する建物の建築禁止や撤去を命じなかった都の対応は違法であると訴えていた裁判で、東京高裁は、2002年6月、条例が施行された時点ですでに建物は建築中であったとして、住民側の訴えを却下した。しかし、それとは別の、20メートル超の部分の撤去を求める裁判では、東京地裁は2002年12月、景観利益を侵害しているとして、20メートル超の部分を撤去すべしとの判決を下した。

ディーゼル規制、ロードプライシングの導入
 2002年9月20日、神奈川県議会はディーゼル車規制を盛り込んだ「生活環境保全条例改正案」を可決した。これで東京、千葉、埼玉、神奈川と首都圏で2003年10月からのディーゼル規制実施の足並みがそろったことになる。
 また、2003年2月19日、東京都の石原知事は、かねてから検討してきたロードプライシングについて、2003年夏過ぎまでに導入に向けての結論を出す意向を表明した。

カジノ導入は足踏み
 東京都石原知事は「お台場」にカジノ導入を目指し、2002年10月17日には都庁展望室でデモンストレーションも行ったが、2003年6月13日、現行法の下での実験は無理だと断念の意向を明らかにした。ただ、カジノ構想そのものの撤回は考えていない。
 なお、東京、大阪、静岡、和歌山、宮崎の5都府県は2003年2月6日、地方自治体カジノ研究会を発足させ、カジノの合法化の研究を始めた、2003年7月から神奈川県も正式なメンバーとなることになった。このほか、オブザーバーとして参加しているところは、茨城、栃木、群馬、福井、愛知、岐阜、京都、奈良、広島、香川、愛媛、大分の各府県。


5 政策の見直し
医療保険は都道府県単位、老人医療は独立型に
 2003年3月28日、政府は医療制度改革基本方針を閣議決定した。@75歳以上を対象に新たな保険制度を創設し、公費、保険料、市町村国保と健保組合からの財政支援で賄う。ただし、運営主体は今後検討する。A国保は市町村と県とが連携して県単位で運営、政管健保も県単位で運営、組合健保は県単位の新たな地域型健保組織を設立する。2005年度から法律改正に着手し、2008年度までの実現を目指す。
 なお、2002年7月26日改正健康保険法が成立し、2003年4月から、医療費の負担は3割に引き上げられることになった。2003年春には実施に反対する動きもあったが、結局、予定通り実施に移された。

株式会社の参入、混合診療、医薬品の一般販売など
 株式会社の参入、混合診療、医薬品の一般販売などについては、規制の項目参照のこと。

年金改革は次第に大詰めに
 2003年4月22日、厚労省は2004年年金改正にあたって、パート労働者の厚生年金加入や夫婦折半制の導入などの改革案を年金部会に提示した。年金部会では秋には案をまとめる予定である。
 また、2003年6月4日、塩川財務相は2004年度に予定されている基礎年金の国庫負担を3分の1から2分の1に引き上げることに対し、必要な財源が2兆7000億円と大き過ぎると述べ、次年度の実施見送りもあり得るとの考えを示した。これに対し、公明党は次期選挙用のマニフェスト原案で2008年度に2分の1になるよう段階的に引き上げる案を提示した。(坂口厚労相は既に2002年12月24日の記者会見で、基礎年金の国庫負担の引き上げは2004年度までに出来なくとも将来の約束が出来ればそれもひとつの方法だと、こだわらない考えを示している。)
 6月27日の「骨太方針2003」において、年金改革については給付の抑制、保険料の引き上げとともに、保険料固定方式などの導入や積立金の再検討などについても触れている。
 なお、政府は2003年2月7日、物価スライド制の適用により、4月から公的年金の給付額を0.9%引き下げる関連特例法案を閣議決定した。物価スライドで年金の減額は始めてである。特例法案は3月28日可決成立した。

介護保険の見直し
 厚生労働省は2003年5月27日、社会保障審議会介護保険部会を発足させ、介護保険制度の見直し論議をスタートさせた。現在40歳からとなっている保険料負担を20歳以上に引き下げることが最大の焦点。また、障害者福祉をも対象にすることもテーマとなる。

支援費制度の発足
 2003年4月から、身体・知的障害者の福祉の仕組みが措置制度から支援費制度に変わり、障害者が事業者と契約して必要なサービスを受けるようになった。費用の大半は行政が支援費として負担することになるが、利用者が契約したサービスが市区町村の決める単価を上回った場合は利用者が負担する。

育児保険制度の検討
 政府は2003年1月、子育て支援策の財源とサービスを一体として拡充する「育児保険制度(次世代育成支援事業基金)」の検討を始めた。新制度では、保険料と国庫補助を財源とする公的年金財政から5000億円から1兆円を育児保険に拠出し、保険料など新たな国民負担は求めない。厚労省では次期年金制度改革の中に盛り込めるかどうか検討している。
 なお、政府は2003年3月17日、次世代育成支援対策推進法案を閣議決定、育児休業の取得率向上などに官民一体で取り組むことになった。法案は7月9日に可決成立した。

教育基本法改正、中教審が答申。法案提出は見送り
 2003年3月20日、中央教育審議会は「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」の最終答申をまとめ、遠山文相に提出した。新たな理念として、「日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の道印としての意識の涵養」などを掲げ、基本法の全文か条文に盛り込むよう求めている。自民党では基本法改正案を国会に提出する方向で検討に入ったが、与党の一員である公明党の反対が強く、結局、6月、今国会提出を見送った。

教育特区、花盛り
 2003年4月から始まった構造改革特区制度で、第1次として15の特区が認定された。外国語教育を中心とするカリキュラムの弾力化などが人気メニューとなった。また、2003年2月の第2次提案に対する政府の対応方針においては、株式会社やNPOが学校を経営することも認められることになり、特区法改正に盛り込まれた。これは2003年10月から申請を受け付けることになる。ただし、株式会社やNPOの経営する学校には私学助成金は交付されない。また、初等中等校の公設民営については文部科学省は拒否の態度を貫いた。

国立大学の独立法人化
 2003年2月28日、国立大学法人法案と関連5法案が閣議決定され、7月9日に成立した。学長の権限を強化して運営に民間経営の手法を導入したり、教育・研究に対する第3者評価を予算配分に反映させたりするなどの措置が盛り込まれた。これにより、89の国立大学法人がそれぞれ国立大学を設置することになる。職員は非公務員型で、13万4000人が公務員から各法人の職員になる。
 なお、公立大学でも独立法人化することが選択できるよう、地方独立行政法人法案が2003年4月25日に国会に提出され、7月1日に可決成立した。
 また、国立学校設置法の一部を改正する法律案が4月16日に成立し、国立大学の統合が行われた。その多くは福井大学と福井医科大学の統合のように医科大学を統合するものであるが、東京商船大と東京水産大を統合して東京海洋大とするものもある。

社会資本整備計画を一本化
 2003年3月28日、社会資本整備重点計画法が成立した。これは、これまでばらばらであった道路や空港などの社会資本整備計画を横断的に再編するもので、予算編成を弾力化するために分野ごとの総事業費も明示しない。国交省はこれに基づき秋には新計画の閣議決定をめざす。
直轄高速道路建設制度の創設
 2003年4月25日、高速道路法の改正案が可決成立した。これにより、民営化された公団が作らない高速道路を国・地方が3対1の費用負担で建設することができるようになった。施行は5月12日で、国土交通省は9342キロの整備計画区間で未完成の2142キロのうち、どの路線・区間を直轄事業に切り替えるかを発表することになっている。しかし、当初予定されていた5月中の発表は大幅に遅れ、9月以降に持ち越されている。

成田空港公団の民営化、関空の支援
 2003年7月11日、成田国際空港株式会社法案が可決成立し、2004年4月から民営化されることになった。また、関西空港株式会社には2003年6月25日、村山・松下電器副社長が就任、経営の建て直しを図ることになった。(民営化の項参照)

地方空港は建設取りやめ
 地方自治の項参照

首都機能移転は消滅
 2003年5月28日、衆院の国会等移転特別委員会は中間報告をまとめて発表、そのなかで1地域への移転先絞込みを断念した。候補に上がっているのは栃木・福島地域、岐阜・愛知地域、三重・畿央地域の3つで、今後、衆参両院による協議会でこの3地域への分散移転か白紙撤回かを検討することになる。両院協議会は6月16日に発足した。

こめ政策の転換なるか
 2002年12月3日、政府・与党は「コメ政策大綱」をまとめた。これによると、国によるコメの減反は2008年度に廃止される。その間、2004年度から減反面積を調整する方式から生産量を調整する方式に転換、2006年度には減反廃止が可能かどうかを検証、早ければ2007年度には国の減反は廃止し、生産者の自主的調整に移行する。

食品安全委員会の発足
 規制の項参照

環境税の検討始まる
 環境税については中央環境審議会は2002年6月に中間報告をまとめ、2005年度以降の出来るだけ早い時期に炭素税を導入すべきだとの方針を打ち出しているが、その後経済産業省が石油、天然ガス、石炭にCO2排出量をひとつの基準として課税し、石油特会を抜本的に見直す案を打ち出した。これについて環境省は、既存のエネルギー税制、特会のグリーン化であると歓迎するとともに、これは将来の環境税とは全く異なるものであるとの態度を明らかにした上で、共同で特別会計を管理するとの合意が11月15日に成立した。これにより、総額6200億円以上の特別会計のうちから環境省に60億円ほどまわされることになる。
 政府税調も2003年2月には環境税の検討方針を明らかにしたが、6月17日の答申では導入には国民の理解と協力が必要だとやや腰が引けた表現になっている。具体的には2004年に専門小委員会を設置することが伝えられている。
 こうした中で環境省は2005年度の導入を目指し、6月末にはガソリン1リットルあたり2円程度(炭素1トンあたり3千数百円)の案を打ち出している。

産廃不法投棄、国に立ち入り調査権
 規制の項参照

ODAの見直し
 2002年7月25日、「対外関係タスクフォース」は国益を踏まえたODA戦略を内閣中心に策定する必要を強調した提言をまとめ、首相に提出した。
 その後、2003年3月14日には対外経済協力関係閣僚会議が開催され、ODA対抗の見直しの基本方針が決定、夏までに新大綱を策定することになった。大綱の見直しは92年の策定以来始めて。

有事3法、イラク特措法が成立
 2003年6月6日、武力攻撃事態対処法、改正自衛隊法、改正安全保障会議設置法のいわゆる有事3法が成立した。ただし、住民の避難や被災者の救助、土地収用の具体的な手続きを定める国民保護法制は今後の課題に残され、2004年春の国会に提出される予定である。
 さらにその後、6月13日、イラク特措法案(イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案)が国会に提出され、7月26日に成立した。これは陸上自衛隊をイラクの非戦闘地域に限って派遣するものである。
 また、テロ特措法の2年間延長法案(平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案)は6月13日に国会に提出されたが、継続審議となった。


6 民営化
予断を許さぬ道路公団民営化
 道路関係四公団民営化推進委員会は2002年6月24日初会合を開き、審議をスタートさせた。8月30日には中間整理を取りまとめて発表、そのなかで四公団の資産と債務を継承する「保有・債務返済機構」を独立行政法人として設立する方向を打ち出した。ただし、この機構が道路建設の資金を民営会社に供給するという考え方はやや後退させた。
 その後、推進委員会は日本道路公団を3分割するとともに、10年後には保有機構を解消すること、4公団で40兆円に上る借金は40年間で元利金等返済するなどの内容を盛り込んだ最終報告を12月6日とりまとめた。この最終取りまとめの過程で、通行料金の一部を新規高速道路建設に充てる案を強く主張していた今井委員長が委員長を辞任するという前代未聞の出来事もあった。こうしてともかくもまとめられた民営化案であるが、12月17日の閣議では、この報告を基本的に尊重するとの方針のもとに与党とも協議をしながら具体化を図るという、極めてあいまいな決定となった。
 その後、2003年内に行われるはずの関係法案整備についての情報がほとんど外に出てこない状況の中で、6月に道路公団の財務諸表が公開された。この資料は道路公団は債務超過ではなく、したがって今後の道路建設が可能という主張に結びつくものであったが、その主張の是非や財務諸表の真偽をめぐって議論が紛糾、一気に藤井総裁の更迭論にまで飛び火した。藤井総裁の更迭は時間の問題と思われるが、しかし、今後どのようは民営化法案を国交省が用意するかは依然として不明である。

石油公団は2004年度末で廃止
 2002年7月19日、石油公団廃止関連2法が成立し、石油公団は2005年3月末をめどに廃止されることになった。公団の新規開発案件への出資や研究開発機能は金属鉱業事業団に引き継がれ、残った資産は新たに設立される特殊会社が引き継ぐことになる。
 その後、総合資源エネルギー調査会は2003年3月18日、公団傘下にある国際石油開発、ジャパン石油開発、サハリン石油ガス開発の3社を統合するのが望ましいとの最終報告を平沼経産相に提出した。ジャパン石油開発は3000億円超の欠損金を抱えており、民事再生手続きなど法的手続きにより債務を整理した上で統合される。

空港民営化は上下分離撤回、成田単独で
 国土交通省は2002年6月14日、成田、関空、中部の3空港のターミナルはそれぞれ別々の民間会社が運営するとともに用地造成などをひとつの公的法人に集約する「上下分離方式」を提案した。しかし、この提案は関空救済であると各方面から批判が強く、結局2002年12月6日の交通政策審議会航空分科会答申では、3つの空港は上下一体でそれぞれ民営化することとし、成田空港を管理する新東京国際空港公団は2004年度に特殊会社(成田国際空港株式会社)に転換し、早期に株式上場を目指す。関西空港株式会社は将来の民営化に向けて経営改善を行い、中部は2005年の運用開始後完全民営化を検討することになった。成田国際空港株式会社法案は2003年3月11日に閣議決定され、7月11日に成立した。

政府系金融機関の見直しは先送り
 政府系金融機関の見直しは、住宅金融公庫の廃止は2001年末に決定したが、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行、商工中金、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、公営企業金融公庫の8機関については経済財政諮問会議で2002年中に整理合理化案を策定することとなっていた。しかし、2002年12月5日にまとめた政策金融改革案では、不良債権処理を加速させる2004年度までは中小企業向けを中心に政策金融を積極的に活用、2005年から07年の3年間で融資対象を縮小し、08年度以降に8機関の統廃合を進めることにした。将来は8機関で98兆円の貸出残高をGDP比で半減させることを目指すという。
住宅金融公庫法の改正
 改正住宅金融公庫法が2003年6月4日に成立した。これは公庫の業務に証券化支援業務を加えるもので、2003年末から民間金融機関の住宅ローン債権を買い取り、これを投資家に住宅ローン担保証券として販売する。また、今回の改正法の附則において、2007年3月31日までに公庫の業務を承継する独立行政法人を設置することが定められた。この新しい独立行政法人では、公庫がそれまでに融資した住宅ローンの債権管理や証券化支援業務を行うだけでなく、民間金融機関の住宅ローンの状況等を勘案して必要な業務を行うことも定められており、公庫が住宅ローンから完全に撤退するかどうかは明らかではない。

郵政公社の発足
 2002年7月24日、日本郵政公社法案など関連4法案が可決成立し、8月30日には生田氏が初代総裁に任命され、2003年4月1日、郵政公社が発足した。

郵便事業への一部参入が始まる
 2002年7月24日、民間事業者による信書の送達に関する法律案が可決成立し、2003年4月から施行されることになった。これまで国家独占であった郵便事業に、一定の条件のもとに総務省が民間企業の参入を認めるもので、「一般信書便事業」については、重量、金額等の制限は設けられていないが、それを営む事業者については、利用しやすい全国均一料金(最低基本料金80円)、全国における原則毎日1通からの引受け・配達、随時、簡易かつ秘密の保護が確実な差出方法の確保という条件が付されており、2003年1月に発表された施行規則ではいわゆる郵便ポストの形状・構造や最低設置数などが事細かに決められており、この結果、法律施行後も民間からの参入は行われていない。
 また、「特定信書便事業」とは、長さ、幅及び厚さの合計が90pを超え、又は重量が4sを超える信書便物を送達する役務、3時間以内に信書便物を送達する役務、料金の額が1,000円を超える信書便物を送達する役務のいずれかに該当する信書便の役務のみを提供する事業で、2003年6月末で11社が参入している。
 なお、信書の範囲については法案審議の過程で大筋が固まったが、2002年10月21日、総務省は指針案を発表しパブリックコメントの手続きを経た後、3月26日に正式に決定した。これにより、クレジットカードなどは信書からはずされたが、ダイレクトメールなどは信書とされ、一般の宅配便業者は総務省から信書便事業者としての許可を得ない限り扱えないことになった。

財投は減少、機関債は増加
 2003年度の財投計画は前年度当初予算費12.6%減の23兆4115億円となった。配分額の最も多いのは国民生活金融公庫の3兆5000億円で、2002年度まで最も多かった住宅金融公庫は4年以内に廃止するため融資業務は段階的に縮小し、2兆1000億円弱にとどまった。一方、財投機関債の発行計画は3兆3799億円で、前年度比24.8%増となった。
 なお、特殊法人や認可法人に対する一般会計・特別会計からの支出は、前年度比27.1%減の3兆312億円となったが、特殊法人から独立行政法人に38機関が衣替えし、そこへは8857億円新たに支出されるので、実質的な特殊法人への歳出削減額は2396億円、削減率5.8%と、前年度の1兆1294億円(21.4%減)に比べ、小幅の削減となった。

JR西、NTTの株式売却見送り
 株式市場の低迷を受けて、2002年度に予定されていたJR西日本、日本たばこ、NTTの株式売却はいずれも見送られた。
 2003年度予算では、NTTの株式は政府保有の700万株のうち最大100万株、3700億円を計上。また、日本たばこ(JT)についても、保有する133万株のうち33万3000株を売却する2002年度の計画を2003年度は実現させる方針。
 このほか、政府はJR西日本の株式63万株(約31.7%)、JR当会の株式89万株(39.6%)を保有しており、その売却のスケジュールも遅延している。

特殊法人から独立行政法人へ
 2002年10月18日、特殊法人等改革推進本部は「特殊法人等の廃止・民営化等及び独立行政法人の設立等に当たっての基本方針について」を決定、その後の閣議で49の特殊・認可法人を独立行政法人などに改編する46法案を決定した。法案によると42法人が38の独立行政法人に改編、6法人が、学校法人や共済組合に変わる。さらに、営団地下鉄が2004年4月には特殊会社「東京地下鉄」になる。法案は2002年秋の臨時国会に提出され、12月にはすべて可決成立した。


7 機構定員
外務省改革はうやむやに
 官房機密費の流用事件、ムネオ疑惑、大臣更迭などにゆれる外務省は、2002年2月、外務大臣の諮問機関「変える会」を発足させ、外務省改革の検討を始めた。2002年7月22日に取りまとめられた最終報告には政と官のありかた、大使人事、組織改編、ODA体制など広範な問題を取り上げられたが、話題になったODA体制一元化のための対外援助庁設置構想などは見送られた。
 外務省は8月21日、行動計画を発表したが、機構改革については先延ばしするとともに、「変える会」の提案した多くの改革項目は骨抜きにした。また機構改革については12月に中間報告が出された後、2003年3月27日に最終報告が発表され、領事移住部が領事局になるに伴い国際情報局を国際情報統括官に再編、条約局を国際法局に名称変更するなどの案が決定した。焦点の経済協力局は存置し、関係各省調整担当審議官を置くこととなり、結局、大きな変更は何も行われないことになった。新組織は2004年度からの実施をめざす。

公正取引委員会は内閣府所管に
 2003年4月から、これまで総務省の傘下にあった公正取引委員会は内閣府の所管となった。公取を総務省の傘下に置くことについては、中央省庁再編が行われた2001年1月から批判が多く、米国からも公取の強化の観点から疑問が出されており、2002年12月19日、移管の方針が正式に決定した。

公務員制度改革は頓挫
 第156通常国会は2003年7月28日に閉会したが、当初、この国会に提出が予定されていた公務員制度改革関連法案は提出が見送られた。
 公務員制度改革は橋本行革の一環として検討され、2001年12月に公務員制度改革大綱が閣議決定されている。公務員に能力・業績評価制度を導入すること、民間への天下りについては、人事院による事前審査・承認制度を各省の大臣が承認する制度に改める、労働基本権の制約を継続し、人事院勧告による給与水神の改定を行う仕組みは維持するなどがその内容。
 政府では2003年の通常国会に法案提出を目指してきたが、人事院の権限縮小については人事院が猛反発し、また、労働基本権の制約維持についてはILOが2002年11月に勧告を行うなど法案の内容については異論も多く、結局、2003年の通常国会への法案提出を断念した。


8 透明な政府
個人情報保護法の制定
 2003年5月23日、個人情報保護法案が可決・成立した。個人情報保護法案は2001年3月に国会に提出されたが、メディア規制であるとの批判が強く審議は進まず、結局、政府は2002年12月に一旦廃案とし、批判の強かった利用目的の制限など基本5原則を削除した新法案を2003年3月7日に閣議決定し、国会に提出した。、
 また、政府は2002年3月に行政機関が保有する個人情報保護法案、独立行政法人が保有する個人情報保護法案を閣議決定し国会に提出したが、これも2002年12月に廃案となった。しかし、住基ネットへの参加をめぐって行政機関の保有する個人情報の扱いに関心が高まり、2003年3月には両法案とも罰則規定を盛り込むなど修正した上で再提出し、5月に可決された。
 なお、これまたメディア規制法案として批判の強い人権擁護法案は2002年3月に国会に提出された後、審議は行われていない。もともとこの法案は人権侵害を防ぐことを目的としており、その類型として差別や虐待などと並んでプライバシーを侵害する報道と過剰な取材行為を掲げ、それを人権委員会の救済対象としたため、マスコミなどからの反対論を呼び起こした。

司法改革は法制化が始まる
 司法改革の課題としては、@国民の期待に応える司法制度の構築として、民事裁判の迅速化や敗訴者負担などを含む民事司法制度の改革、刑事司法制度の改革、国際化対応、A司法制度を支える体制の充実強化として、法曹人口の拡大、養成制度の改革、弁護士・検察・裁判官制度の改革、B司法制度の国民的基盤の確立として裁判員制度など国民の司法参加などが検討されている。
 このうち、医療過誤や建築紛争など専門知識を要する裁判を迅速化させるため、医師などを専門委員として裁判に参加させる制度の創設を盛り込んだ「民事訴訟法改正案」とプライバシー保護のため離婚裁判を非公開に出来る「人事訴訟法案」は2003年3月4日に、また、3月14日には、民事・刑事を問わず裁判の一審判決を2年以内に出すことを目指す「裁判迅速化法案」や法科大学院に裁判官や検察官を派遣するための法案、簡裁訴訟額の上限を140万円に引き上げるための裁判所法一部改正案などが閣議決定された。(成立したのは法科大学院派遣法案は4月25日、あとは7月9日または18日)なお、法科大学院の設置法案は2002年10月に閣議決定され、11月29日に可決成立、2004年4月に72校が開校する。