ー パイロット自治体制度へ応募のお勧め ー
1995年7月
パイロット自治体会議
目 次
@ パイロット自治体とは
A イノベーションは現場から
B どの自治体も参加できる国に対する唯一の提案制度
C 第3次募集も実現
2 これまでの実績
@ 39市町村が参加
A 多岐にわたる申請内容
3 制度改善の必要性
@ 法律改正マターも応募対象に
A 都道府県との事前協議の廃止
B 都道府県もパイロットに
C さらに応募の継続を
【資料編】
1 制度の目的と概要
@ パイロット自治体制度とは
A 制度の概要
2 これまでの実績
(1) 応募自治体数
(2) 応募の内容と実際の指定
A 申請された分野
@ 土地利用
A 下水道整備事業
B 老人福祉施設・保育所の整備
C 公営住宅建設
D その他
B 分権の形態
@ 権限関係
A 補助金交付の弾力化、簡素化
3 克服すべき問題点
(1) 制度本来の限界
@ 法律の範囲内という制約
A 補助金についてのあいまいさ
(2) 運用上の問題点
@ 政令も不可侵
A 都道府県との協議
B 応募側の問題
4 運用改善を目指して
@ 制度の位置づけ
A 法律改正マターも応募対象に
B 都道府県との事前協議の廃止
C 都道府県もパイロットに
D 自治体と住民の積極的な参加
E さらに制度の継続を
【別紙】 これまでの申請の内容と審査結果
@ 土地利用(農地転用、保安林解除、都市計画、土地区画整理)
A 下水道整備事業
B 上水道整備事業
C 老人福祉施設・保育所施設整備事業
D 公営住宅整備事業
E 教育施設整備事業
F 公園整備事業
G 産業廃棄物処理施設関係
H 文化財保護関係
I その他
【参考資料1】 地方分権特例制度について (1992年12月8日閣議決定)
【参考資料2】 地方分権特例制度実施要領 (1993年4月5日 事務次官等会議申し合わせ)
付:パイロット自治体会議について
1 設置の目的
2 構成メンバー
3 これまでの活動
@ パイロット自治体制度とは
@ 39市町村が参加
(1) パイロット自治体制度とは
(1) 応募自治体数、自治体名
北海道 釧路市@ 岩見沢市@
A 申請された分野
*国から県知事への権限移譲
*適用除外範囲の拡大
*中央省庁間の協議の省略、簡略化
*許認可手続の弾力化、随時受け付け
*提出書類の簡素化、処理の迅速化
*補助金適正化法の運用弾力化
*複合施設の建設
*補助金の一括申請
*補助事業の単独事業化
*積算方式の簡素化
*ヒアリングの廃止、簡素化
【別紙】 これまでの申請の内容と審査結果
@ 土地利用 (農地転用、保安林解除、都市計画、土地区画整理)
* 市出捐の第3セクターによる団地造成事業(鶴岡)
* 市街化区域編入候補地(農用地区域外)における都市地域整備事業(天童)
* 農振地域における新市街地整備事業(天童)
* 農振地域内における「福祉の森」建設事業(本宮)
* 未線引き都市計画区域における工場団地造成事業(本宮)
* 土地区画整理事業にあたっての用途地域の拡大など(掛川)
* 農振地域内における環境共生モデル地区新システムセンター、余熱利用施設および周辺施設整備事業(水戸)
* 農振地域内における新清掃工場建設事業(宇都宮)
* 農振地域内における下水道資源化工場建設計画(宇都宮)
* ごみ焼却プラント建設にかかわる代替農地取得、農振地域内代替住宅用地取得 (松本)
* 土地開発公社による市街化調整区域内農地取得(相模原)
* 農地転用に関する事務委任(掛川)
* 農地転用に関する事務簡素化(掛川)
A 下水道整備事業
* 農業集落排水事業の手続簡素化(宇都宮)
* 公共下水道の基準緩和(茅野市など3市2町1村)
*公共下水道の河川敷などへの埋設(久留米)
B 上水道整備事業
* 農振地域内における水道水源開発等施設整備事業(田川など1市4町)
C 老人福祉・保育所施設整備事業
* 空き教室の利用による老人福祉施設等整備事業(宇治、川越、町田)
* 学校用地の一部を公民館に転用(所沢)
* 空き教室活用による高齢者給食サービス事業(調布)
* 複合福祉施設の建設事業(那覇)
* 複合健康施設建設事業(藤沢)
* 老人福祉センターと軽費老人ホーム(ケアハウス)の複合建設(大垣)
* シルバー健康センターと医療検査センターとの共用(奈良)
×健康増進モデルセンターの整備基準の緩和・弾力化
D 公営住宅整備事業
* 高齢者・障害者に配慮した市営住宅管理(相模原)
* 高齢者向け借上賃貸住宅事業(相模原)
E 教育施設整備事業
F 公園整備事業
* 河川と一体の都市公園整備(三鷹)
G 産業廃棄物処理施設関係
H 文化財保護関係
* 日光杉並木街道関連横断道路建設事業(今市)
* 松江城公園周辺整備事業(松江)
* 防衛施設周辺整備事業(羽村)
* 交通安全施設の設置及び管理(羽村)
* 土地情報システム構築事業(掛川)
* 建設省国有財産管理事務(県知事権限)の市町村長への委任(掛川)
* 鉄道踏切拡幅改良工事(掛川)
* 地方鉄道整備に鉄道整備基金の活用(久留米)
* 一般旅券発給事務(掛川)
* 国有財産の譲渡(三原)
【参考資料1】
地方分権特例制度について
1 制度の趣旨・目的
2 対象地方公共団体
3 申請及び指定
(2) 指定
4 特例措置等
(2) 補助金等の特例
(3) 地方債起債の特例
(4) 機関委任事務の特例
(5) 関係省庁等の調整
5 地方分権特例制度推進本部の設置
(2) 本部は、内閣総理大臣を本部長とし、全閣僚及び地方関係団体を代表する者をもって構成する。また、本部に地方分権特例制度連絡会議を置く。
(3) 本部は、本制度の適用市町村の指定その他必要な事項について、本制度の円滑かつ効果的な推進を図るための 協議、連絡及び調整を行うものとする。
(4) 上記のほか、本部の運営等については、別に本部長が定める。
6 都道府県に対する要請
(2) 関係都道府県は、必要に応じ、適用市町村を包括する広域的な観点からの支援、調整等を行うこと。
7 実施期間
8 実施結果の評価と一般制度への移行
(2) 政府は、本制度に基づく措置の実施結果の評価等を踏まえ、更に地方分権を推進するため、地方公共団体の規 模及び行財政能力、行政需要等を考慮しつつ、一般制度への移行を検討するもの とする。
(2) 上記に定めるもののほか、本制度の運用に関し必要となる事項について、実施要領を定める。
1 対象地方公共団体
2 申請の手続等
A 求めようとする特例措置
(3) 共同申請
(4) 申請の受付窓口
(2) 考慮事項
4 特例措置等の申請等の取扱い
(3) 適用市町村に対する配慮
(4) 関係省庁等において調整が必要な事項の取扱い
(5) 特例措置の追加等の取扱い
5 本部の構成員等
(2) 本部の庶務
(3) 連絡会議の構成員
6 都道府県に対する要請
7 実施結果の評価と一般制度への移行
(2) 一般制度への移行
8 その他
内閣総理大臣
別紙3
内閣官房内閣内政審議室長
1 設置の目的
【参考資料:設立にあたっての呼びかけ文】
拝啓
なお、事務局は社団法人行革国民会議事務局が代行している。
3 これまでの活動
(1) 会合の開催
(2) 対外的な活動
その後、3年経過し、分権をめぐる環境は変りました。今年5月15日には地方分権推進法案が国会を通過し、成立しました。近く、地方分権推進委員会が発足し、一般制度としての分権推進計画の策定が進められることになります。
それでは、もうパイロット自治体制度は時代遅れとなってしまった制度なのかといえば、決してそうではありません。むしろ、一般制度化の議論が行われるための先駆けとしての役割はますます高まっているのです。これからの分権計画は機関委任事務や必置規制、補助金の縛りなどをひっくるめて、政策分野ごとに分権していくことが望まれています。そのためには、住民本位の政策を遂行していこうとすると、自治体の現場ではどのような問題が生じているのか、国のどのような縛りが障害になっているのかをはっきりと示す必要がますます高まってきました。もはや抽象的な分権の要求では間に合わない時代になりました。
パイロット自治体制度とは、自治体に自由な政策実験の機会を認めて、政策のイノベーションを図ろうとする制度です。都市計画や福祉、文教などもろもろの政策分野において、これまでとは違った展開を図ろうとする制度なのです。こうした実験の結果を分権計画の中に盛り込んでいくことが、これから必要なのです。むしろ、分権計画の検討の場が設けられることによって、はじめてパイロット自治体の役割、つまり分権の先行的試行という役割が明確になったといえるでしょう。
パイロット自治体制度とは、この現場の工夫を最大限活かそうというものです。多少の工夫を行うことによって使いやすくなるものもあれば、制度そのものを大幅に変えなければならないものも出て来るでしょう。こうした検証を行いながら、少しでも良い制度に改めていくことがこれから必要なのです。自治体も、制度や政策を国から押しつけられる、与えられるだけの受身の姿勢ではなく、自ら積極的にその改革作業に参加することが必要なのです。
また、パイロット自治体制度は国から特例を認めてもらう中央集権的な制度であると非難するものもいます。これもとんでもないいいがかりです。政令指定都市、第2政令指定都市である中核市、いずれも資格要件が国によって決められ、また、その権限の範囲もあらかじめ国によって決められているのです。これにくらべて、パイロット自治体制度はどの自治体も参加できますし、なにを申請しても自由なのです。
申請は自由かもしれないが実際には殆ど実質的なことは認められていない、との反論もあるでしょう。残念なことに、これはこれまでのところ、まさにそのとおりです。法律の改廃を要しない範囲での実験という枠が実際には極めてきつく、この改善が必要なことはあとで触れるとおりです。しかし、自治体が国に対して制度・政策の改革を要求する提案権は、ようやくこの間の地方自治法改正によって認められたにすぎません。この場合でも、個別の自治体ではなく団体にしか提案権はないのです。しかも、この地方自治法で認められた提案に対して、国はこれを実行したり尊重したりする義務はありません。昨年(1994年)9月の地方6団体の地方分権に対する提案はそのいい例です。
しかし、パイロット自治体は違います。各省庁は、パイロット自治体の提案を検討し、「可能な措置を講ずること」が定められているのです。また、申請どおりの措置が困難な場合には、その理由を明らかにするとともに、可能なかぎりの措置を講ずることになっているのです。たとえば掛川市はパスポート(一般旅券)の発給事務を掛川市に移譲することを要求し、全国的に注目を集めました。残念なことにこの要求は通りませんでしたが、外務省はこの掛川の提案を一笑に付すことは出来ず、真剣に検討せざるをえなかったのです。
こうした提案を、これからも積み重ねていくことは決して無駄ではありません。無駄どころか、これから具体的な分権計画をつくっていくための貴重な「肥し」となり、力となるのです。もっと多くの自治体がもっと多くの提案を行っていくことが望まれるのです。そうした積み重ねがあってはじめて本当に役に立つ分権が実現するのです。
93年8月末に第1次募集、94年8月には第2次募集が行われ、今年8月末には第3次募集が行われます。あまり時間はありませんが、多くの自治体の積極的な参加が望まれます。なによりも一旦パイロット自治体に指定されますと、あとから自由に追加申請が出来るのが特典です。すでにある各自治体の総合計画を下敷にして、とりあえず簡単なものについて申請し、指定を受けたら来年に本格的な実験を行うといったやりかたをお勧めいたします。
しかし、これまで2回にわたる申請が全く無駄であったわけではありません。たとえば、学校の空き教室を活用して老人福祉施設などに転用する申請が宇治市から行われたあと、同趣の申請が川越市、所沢市、調布市、町田市などからも行われ、いずれも認められました。この段階でこの空き教室の転用問題は一般制度化されたといってもいいでしょう。その証拠には、半年後の95年3月末に閣議決定された「規制緩和5ヵ年計画」にはこの空き教室の転用が1項目として掲げられ、95年4月から実施となったのです。
たしかに空き教室の活用問題だけではさほど大きな問題ではないかもしれません。しかし、空き教室だけでなく、さらに各省から補助を受けてつくった多くの施設に順次広げていければ、かなり状況は変ってくるでしょう。折角あいた「蟻の一穴」をさらに大きくできるかどうかが問われているのです。
このほか、自治体からの申請が申請した自治体だけに「特例として」認めるのではなく、一挙に一般制度化され、どの自治体にも平等に認められるようになったものもいくつかあります。下水道事業認可にかかわるいくつかの手続きにこの例が見られます。軽微なものではありますが、市が建設省に注文し改善を見たという意味では大きいといえるのではないでしょうか。
この制度には欠点も多くありますが、駄目な制度だと決めつけてもなんの進歩につながりません。申請しても認められなかったものは多くありますが、一度や二度の提案で実現するようなことならば、苦労はありません。すぐには実現しなくてもあきらめずにしつこくなんども挑戦しなければ、実現できません。なんといっても、分権を要求しているのは自治体であり、中央省庁ではないのです。要求する側が苦労するのは当然です。
この点に関して、阪神大震災の復興計画に当初見られた「規制緩和パイロット自治体制度」の構想がいつのまにか消滅したのは残念です。いまからでも、こうした試みは復活すべきだと思います。
また、「許認可等の特例措置を試行的に講じ、その実施結果の評価等を踏まえて一般制度への移行を検討し、もって地方分権の一層の推進を図ることを目的とする」と閣議決定の文章に記されているように、この制度を突破口として将来一般制度化を実現することにより、「現在の閉塞状況を打破(行革審答申)」しようとするものである。
A どのような市町村でも応募できる。人口規模は問わない。また、他の制度の指定を受けていても構わない(たとえば政令都市、中核市、その他地方拠点都市など)。
B 応募の分野には制限はない。ただし、「法律の制定・改正を要しない」ものに限る。
C パイロット自治体の総数には制限はない。
D 中央省庁は申請に対して速やかに回答し、拒絶する場合にはその理由を示し、また、代案を出すことが求められる。
E 申請にあたっては、都道府県と事前に協議を要する。都道府県は申請書に意見を添付するが、自らが当事者となる案件については、申請前に結論をだす必要はない。
F 申請が認められパイロット自治体に指定されると、その実施期間中は追加申請ができる。
G 実施期間は1998年度末までであるが、必要ならば閣議決定によりさらに5年間延長できる。
H 第3次募集の締め切りは95年8月末。また、すでに指定された自治体の追加申請の95年度の締め切りは6月末である。
山形 鶴岡市@ 天童市@
福島 本宮町A
茨城 水戸市@
栃木 宇都宮市@ 今市市A
埼玉 川越市A 所沢市A
東京 三鷹市A 調布市A 町田市A 羽村市A
神奈川 藤沢市A 相模原市A
静岡 掛川市@A
長野 松本市@ ‘岡谷市・諏訪市・茅野市・下諏訪町・富士見町・原村’@
岐阜 大垣市A
京都 宇治市@
奈良 奈良市A
兵庫 加古川市@
島根 松江市@
広島 三原市@(第2次申請は却下)
香川 高松市@
福岡 久留米市A ‘田川市・金田町・糸田町・川崎町・赤池町’A
長崎 佐世保市A
沖縄 那覇市@
また、都市計画地方審議会の開催頻度についても要望がいくつか出されており、これについては随時開催はできないまでも弾力的対応が行なわれることになった。
河川敷への埋設も、国道や県道の占有許可権限の地元出先機関へ移譲する件も拒否された。認められたのはごく簡単な事務手続の簡素化措置だけである。
しかし、保育所整備補助金対象を拡大することにより相談室や研修室を整備することは認められなかった。
ただし、建設省国有財産の境界確定事務、用途廃止事務は自治法153条の2にもとづき知事から市町村長へ委任されることになった。
2ヘクタールを越える農地除外手続、100ヘクタール以上の下水道事業認可など、国から都道府県知事へ権限移譲を求めるもの。これも法律あるいは政令の改正を必要とするとの理由で認められなかった。
農振法における農産物加工施設の範囲拡大、都市計画や下水道事業の軽微な計画変更の範囲など、適用除外の範囲拡大をもとめる申請は、いずれも認められなかった。
下水道事業認可にあたっての建設大臣と厚生大臣との協議については、この制度の廃止は出来ないものの、建設省と厚生省との連絡ルールの確立、処理期間の短縮などの措置を講ずることになり、一般制度化された。
都市計画地方審議会や文化財保護審議会の弾力的開催をはじめ、許認可手続の弾力化、随時受け付けは認められた。
権限移譲にかかわる申請が殆ど認められなかったのに対して、提出書類の簡素化などの申請はほぼ認められた。また、権限移譲の要求に対する代案として、提出書類の簡素化、処理の迅速化などが打出されたケースも多い。
学校の空き教室や給食施設活用による福祉施設整備がいくつか認められた。また学校用地の一部の公民館への転用も認められた。ただし、用地全体の目的外使用の場合の補助金返還義務の免除は認められなかった。
公営住宅と福祉施設、公民館と地域介護センター、老人福祉センターと軽費老人ホームなどの複合施設の建設が認められた。
社会福祉施設等整備費補助金と社会福祉等設備整備費補助金の一括申請のほか、多年度にわたる事業に対する補助金の一括申請あるいは物価スライド制の採用などの申請が行われたがいずれも認められず、重複書類の簡素化などの措置にとどまった。
補助事業とされていた準用河川改修や児童館建設を単独事業で実施したいとの申請が行われたが、河川改修についてはみとめられたが、児童館は認められなかった。埋蔵文化財の発掘事業の単独事業化ならびに特別交付税措置の申請に対しては、文部省は構わない態度であったが、自治省は一般制度化を前提とすることに対して拒否の回答を行った。
補助金算定の区分と工事区分の統合や多年度にわたる事業についての物価スライド制の導入など補助金積算方式の簡素化の要望がいくつか行われたが、満足できる措置はとられなかった。
関係諸機関で重複する、あるいは多年度にわたる事業で重複するヒアリングの簡素化については、ほぼ要望通りの措置がとられることになった。
以下、今後の改善を考えるためにも、まず克服すべき問題点を整理しておこう。
さらに、本来ならば条例を制定して独自の計画、事業を遂行していくのが筋であるのに、条例を制定しようとすると必ず法律との抵触が問題となる。パイロット自治体制度はこの自由な条例制定権を保証するものではないから、どうしても限界が出て来ることになる。
なお、補助金適正化法については次の補助金のところで触れることにするが、法律の範囲内でという縛りがあるかぎり、この補助金適正化法はかなり強力な縛りとなることは指摘しておかなければならない。
また、学校の空き教室の福祉施設などへの転用については、いくつかの自治体から申請が出され、条件つきではあるが認められ、これは95年3月末の規制緩和5ヵ年計画にも盛り込まれることになった。小さいながらもひとつの進歩である。しかしながら、たとえば学校用地全体を他の目的に転用する場合にも補助金返還の義務を免除してもらいたいとの申請は、補助金適正化法の規定に抵触するため認められていない。
申請の多くは補助金申請の事務手続の簡素化に集中し、これはかなり認められているが、補助金制度全体の改革に結びつくものはない。
この制度の仕組みとしては、申請にあたってはあらかじめ都道府県と協議を行なうこととなっている。この協議の内容は、ひとつはこの申請を行なうにあたっての支援、協力の要請であり、もうひとつはその都道府県が当事者となる特例措置についての要請である。都道府県はこの協議を受けて意見を表明し、申請市町村はこの都道府県の意見書を添付して申請することとなっているが、都道府県が当事者となる場合については申請前に都道府県が結論を出す必要はない(あとでよろしい)ということになっている。
このように制度そのものは必ずしも市町村を抑圧するために設けられたものではないが、実際には都道府県は中央省庁の出先機関的性格を帯びており、とくに原課では申請行為そのものがこれまでの行政に対する批判とうけとられ、介入して来るのである。この実情はなかなか外部には知らされないし、当事者もあとからのしっぺ返しを恐れて言いにくい。しかし、そうしたことが一般に行なわれていることは厳然とした事実である。また、こうしたことを言い立てた結果、第1次と違って第2次の申請の際には極めて協力的になった都道府県があったことも事実である。
今後の制度運営を円滑にしていくためには、この都道府県との関係をいかに改善するかが大きな課題となっている。
さらに、いざ応募するとなってそれぞれの庁内で担当課に案件の提出を求めても、がんじがらめの制度の中でそれを疑わないで仕事をする習慣になっているものにとって、にわかに案が出せるものではない。「行政のイノベーションは現場から」というのがこの制度の旗印であるが、実際にはそのようにはなっていない。結局、首長主導で応募案件を捻り出すという作業になってしまう。
さらに住民にとってもこの制度はほとんど馴染みがない制度であり、住民からの要望で応募したという案件はおそらくないと思われる。わずかに議会が関心をもって質問が出たりする程度である。地方分権の先兵をもって任ずる制度にしては、住民のバックアップがないところが致命的である。行政の内部での国と地方、都道府県と市町村のあいだの権限争いとなってしまっているのが現状である。
このような状況の変化に応じて、パイロット自治体の位置付けも自ずと変化しなければならない。5年間の実験の結果を出すのではなく、いま、自治体はどのような問題の解決に直面しているかをより直截的に示すことが求められている。中央の行政内部で分権計画が策定されることに対して、現場から具体的な提案を出すことが求められているのである。その提案は、単なる評論家的な提案ではなく、自ら実践することを前提とした提案であることが、他の提案と基本的に異なるのである。まさに率先して実験する主体としてのパイロット自治体が、これからの位置付けとなる。
もう1点指摘しておくべきことは、政府の規制緩和5ヵ年計画との関係である。この5ヵ年計画には地方分権の発想は全く含まれていない。しかしながら土地利用関係でも福祉関係でも地方分権で解決すべき問題は多く、今後規制緩和計画の見直しには地方の意見を強く反映させていくことが必要である。パイロット自治体は、この点についても提案をすべき役割を担っている。
この点に関して、阪神大震災の復興計画に当初見られた「規制緩和パイロット自治体制度」の構想がいつのまにか消滅したのは残念である。いまからでも、こうした試みは復活すべきである。
制度がさらに継続されることを望みたい。
* 農用地内の農産物加工施設の建設(岩見沢)
×果実加工施設の建設への農振法3条4号の適用拡大
(その代わり農用地区域からの除外で処理。農振計画の内容変更手続の事前協議省略)
×国勢調査10万人以上の市長に委任する団地造成事業開発にかかわる県知事許可権限を住民基本台帳10万人以上に運用を改める
(その代わり審査期間の短縮化を図る)
×森林法第10条の2の県知事許可を施行規則第8条3の事業(公益性の高い事業)と見なして省略する
(その代わり、手続の簡略化、添付書類の簡素化により短縮を図る)
△都市計画地方審議会の随時開催
(弾力化で処理)
〇市街化区域と調整区域の区分変更の随時化
〇知事の都市計画決定の大臣許可手続の迅速化
〇土地区画整理法による事業計画認可にあたっての関係機関(県道管理者、公安委など)との協議の迅速化
〇農振整備計画の変更協議期間の短縮
○農用地転用に事前協議廃止(土地収用法適用事業であり、そもそも不要)
○地区内事業を一括して事前協議に付すなど手続簡素化
×農地転用手続の市街化区域に準じた届出手続
(その代り、審査期間を極力短縮化)
×2ヘクタールを越える転用の許可権限を都道府県知事に委譲
(農地法の改正を要す。その代わり審査期間を極力短縮化)
○団地造成に関連して道路、水路等の先行転用
○内定段階での建築物詳細設計図の添付とりやめ
〇用途地域の拡大にあたっては人口フレームにかかわらず弾力的に対処
〇農用地を含めた用途地域決定にあたっての事前協議を認める
〇道路等の構造、位置を住民合意の計画により事業認可する
△◎土地区画整理補助事業の実施計画書の変更実施計画書の様式簡略化
(要望の一部は却下。しかし、認められた項目については一般制度化)
〇農振農用地区域の除外手続の事前協議省略
×都市計画地方審議会の議決手続の簡素化
〇補助金申請にかかわる事業前年度のヒアリング及び事業年度の内示後に行われる技術審査に係わるヒアリングは原則として県のみとし、国の審査は簡素化
〇農用地区域の計画変更にあたり、県と関東農政局との事前協議及び関東農政局の審査を廃止する
(土地収用法適用事業であるから、もともと協議は不要である)
〇建設計画に応じた補助金の年次別配分
×用地買収にかかわる租税特別措置について国税庁との協議の簡略化
〇都市計画地方審議会の弾力的開催
×農用地除外手続にあたり、県と関東農政局との事前協議の廃止
(その代わり、審査期間を半減する)
×小規模農家(50a未満)に対する代替地取得制限の緩和
×農振整備計画変更許可権の市長への委任、手続の省略
(その代わり、事務処理の迅速化)
〇一括申請でなく個別申請も認める
〇「遅滞なく・・工事を行なう」の規制緩和
(おおむね1年以内とする)
〇事前審査申出にもとづく協議が整った都市公園整備事業における農転本申請手続の簡素化
×造成工事事業者を開発公社に限定せず施設設置委託者(市)にも認める
(法の趣旨にあわぬ)
×都市計画区域内の農地転用許可権限の知事から市長への委任
(一定の距離をおいて客観的かつ公正な立場で、しかも全国的に統一された基準で行なう必要があるから不可。その代わり事務処理の迅速化を図る)
×同上の場合、県農業会議から市農業会議へ委任または委託
(農業会議は行政機関ではないので自治法252条14の委託は出来ない)
×農転に伴う地目変更登記申請にあたっては、非農地証明書または農地転用事実確認書のみとし、開発行為検査済証は不要とする
(不動産登記行政の適切な運営と農地行政または建設行政の運営の調和に最も配慮した手法である)
* 公共下水道事業計画認可権限の知事委任、手続簡素化(宇都宮および高松)
×知事認可の範囲(100f以下)の拡大
(政令改正を要するので不可。その代わり、手続の簡素化・迅速化を図る)
×建設大臣と厚生大臣との協議の廃止
◎(その代わり、処理期間の短縮を図るー一般制度化)
×事業計画の変更について大臣の認可を要しない軽微な変更の範囲拡大
(政令改正を要するので不可。その代わり手続の簡素化、迅速化を図る)
×都市計画変更について都道府県知事の承認を要しない軽微な変更の範囲拡大
(その代わり、手続の簡素化、迅速化を図る)
◎補助金要望事務手続の簡素化(類似調書の統一など)
◎下水道事業認可申請の事業計画書作成の簡素化
×下水道事業認可申請の事業計画書作成のうち、財政計画書の収入・支出計画書を省略し、事業費総括表のみとする
〇都市計画地方審議会の弾力的開催
〇事業認可申請、補助金申請等の県土木事務所経由の進達を廃止
〇国への申請前の県の審査の簡素化(ヒアリング前の現地調査廃止など)
×補助対象の範囲(管渠基準)
×事業認可にかかわる都道府県知事の権限委任範囲の拡大
(政令改正を要すから不可。その代わり手続きの簡素化・迅速化を図る)
◎補助金要望事務にかかわる図書の簡素化
〇下水道認可手続において、県審査報告書をもって建設省のヒアリングに代える
×河川堤防敷における下水管の埋設
×国道の占有許可を維持出張所に委任
(その代わり手続の迅速化には努める)
×県道の占有許可を土木事務所へ委任
(判断には慎重を要する)
* 浄水場移転事業(三原)
〇保安林解除手続について公益上のものは事前審査を実施
×既存の里道、水路を公用廃止し代替道路、水路を築造する場合、都市計画法上の機能交換の手法のように財産処理する
〇農転の事前協議の廃止
(土地収用法の事業認定を受けた場合には特例的に省略する)
〇手続の簡素化
* 総合的地域保育センターの建設(釧路)
×保育所整備補助金対象範囲の拡大(相談室、研修室、ふれあいルームの整備
など)
(その代わり、事業内容によっては一時的保育事業の活用により弾力的に対処する)
○事務手続の簡素化(整備計画書、協議書の添付書類の記載簡素化)
×用地処分にあたって補助金の返還免除
◎財産処分報告書の提出をもって大臣承認とみなす
(規制緩和5ヵ年計画に盛り込み)
〇この場合でも補助金の対象にする
×補助金の返還義務免除
○財産処分報告書の提出をもって大臣承認とみなす
○教室については財産処分報告書の提出をもって大臣承認とみなす
○学校給食施設整備についても同様に
×学校栄養職員が従事できるように
〇公営住宅と福祉施設の同一建物内の複合建設
〇福祉施設の複数年度の事業としての採択
◎シルバーハウジング生活援助員派遣事業を特別擁護老人ホームに委託できるように
〇特別養護老人ホームの調理室を保育所でも共用
〇児童舘の遊戯室と老人憩の家の大広間、児童館の図書室と老人憩の家の図書室の共用
×保育所、特別養護老人ホーム及びディ・サービスセンターの社会福祉施設等整備費及び社会福祉等設備整備費の国庫負担金等について、事前協議を省略し一括申請による事務の簡素化
(その代わり重複する書類等を省略)
×児童館および老人憩の家の整備を市単独事業とし交付税措置
(その代わり地域づくりに関する地方債等について適切に配慮する)
〇公民館分館と地域介護サービスセンターの複合施設の補助金対象化
〇その際、公民館の会議室を在宅介護支援センターも共同利用
△同上の補助金申請、審査、決定を同一化、統一化
(努める)
×建設2年目の補助金申請は物価スライド換算方式を採用し、事務を簡素化
(その代わり、重複する書類は省略する)
〇同上の起債申請にあたっては添付書類とヒアリングの簡素化
×補助区分と工事区分とが食違っており煩雑であるので、総額で補助金算出が出来るように
〇複合施設の補助申請の場合、重複書類の省略
〇継続事業の際、初年度と重複書類の省略
△医療検査センターが隣接するため、シルバー健康センターの医療部門の設置基準や人員の相互補完の弾力的運用
(看護婦の兼任など具体的な個々の事例について検討する)
(モデルセンターの構想については検討中であり、可否は回答できない)
〇補助金申請手続の簡素化、迅速化
△職員配置基準の弾力化
(個々の事例で判断したい)
* 公営住宅建設事業の弾力化(三原)
〇改良住宅の耐用年数に弾力性をもたせる
〇建替えのため改良住宅の区域外移転を行う
×高齢者、障害者の特例入居を認める
(公募によらないものは不可。ただし、優先入居措置(別枠募集)は可)
×市町村の建設する公営住宅は農地法の適用除外
(土地収用法の適用事業ではない。その代わり、手続の簡素化、迅速化を図る)
〇公営住宅の種別を同一棟内で全体種別数を変更しない範囲内で随時変更
(認める方向で検討する)
△同上の権限委譲
(上記の検討結果を踏まえて結論を得る)
×福祉型借上公共賃貸住宅の供給計画承認を県知事に委任
(建設費および家賃の補助の前提条件であり不可)
〇上記事務の簡素化・迅速化
* 理科教育等施設整備事業の権限委任(高松)
×補助金交付事務の都道府県知事への委任範囲の拡大
◎補助金の内定・交付決定通知までの処理期間の短縮
△添付書類の簡素化
(さらに努力するが、もう十分やっている)
* 電源立地交付金による市民プール改造事業(加古川)
〇都市公園内の市民プール大規模改修事業に電源立地交付金をあてるよう、通達の緩和
○一体化した計画の採択と事務の簡素化
* 産業廃棄物処理施設整備費(佐世保)
〇建設計画にあわせた年度別事業費割合での補助金の交付
* 特別交付税による埋蔵文化財の発掘(本宮)
×埋蔵文化財発掘事業の単独事業化と特別交付税措置
(文部省:構わない
自治省:補助事業として定着しているから、一般制度化を前提とする特別交付税交付は不可。なお、補助事業、単独事業を問わず特別交付税の対象にはなる。)
〇文化財保護審議会の手続簡素化
〇文化庁復元検討委、文化財保護審議会の開催回数の増加
〇軽微な現状変更許可申請の手続簡素化、迅速化
〇準用河川改修を単独事業として実施
×内堀浄化の補助率を文化庁の保存整備事業として補助率引上げ
×災害復旧事業で修景的工事の実施
(修景的工事まで行うことは法の趣旨に合わない。ただし工法の採用は可能である。)
I その他
* CATV事業(宇都宮)
◎申請書類の簡素化
〇道路占有許可手続の簡素化
×複数年次にまたがる事業の一括契約
(市が自己責任で公示の一括契約をすること自体は自由)
〇補助金交付申請書の書類簡素化
* 防衛施設周辺生活環境整備事業の手続簡素化(佐世保)
〇概算要求、実施計画、補助金交付申請と3段階の申請手続の添付書類等の簡素化
×交通安全対策特別交付金の使途の弾力化
(政令改正を要す。市の一般財源でやるべし)
◎公共測量の成果については精度管理表、基準点網図の添付を不要とし、審査書のみとする
△指定申請書類の簡略化
(一部可、一部不可)
△境界確定事務と用途廃止事務の市町村長への同時移管(自治法153条2)
(境界確定事務については95年度中に移管は可能。用途廃止の事務移管は努力していきたいが、96年度以降になる。)
△拡幅改良1件につき他の踏切1ヵ所廃止という行政指導の廃止
(総合的に判断。まだ相談はない)
×地方拠点都市整備事業の一環として地方鉄道整備について鉄道整備基金の活用など弾力的運用を図る
(本制度の助成対象とすることは不可能)
×一般旅券発給事務の市長への再委任
(都道府県への出頭が必要であり、法改正を要す。また、発給には全国的に厳格な統一性が必要であり、専門知識を備えた一定数の職員が事務所ごとに必要であり、外務省による研修、指導、監督が不可欠)
×住宅団地造成予定区域内の国有財産道路等を宅造交換することなく譲与を受ける
(土地開発公社との交換を省略して三原市に譲与する根拠法令はない)
閣議決定
地方分権特例制度(以下「本制度」という。)は、一定の地方公共団体が実施する地域づくりについて地方公共団体の自主性・自立性の一層の発揮等を可能とする許認可等の特例措置を試行的に講じ、その実施結果の評価等を踏まえて一般制度への移行を検討し、もって地方分権の一層の推進を図ることを目的とする。
本制度は市町村を対象とし、下記3により申請し、指定された市町村について適用するものとする。対象とする市町村は、原則として人口(市町村が共同で申請する場合には関係市町村の人口の合計)が20万人以上であるものとし、地域づくりに係る具体的な申請の内容が本制度の趣旨・目的に合致する場合には、人口20万人未満であっても適用対象とすることができるものとする。
(1) 申請
@ 本制度の適用を受けようとする市町村は、内閣総理大臣に対して、地域づくりに関する具体的な計画とその実施のために必要な許認可等及び補助金等に係る自主性・自立性の発揮等のための特例措置の内容及び関係省庁等において調整が必要となる事項を明らかにして、適用市町村の指定を申請するものとする。
A 申請を行おうとする市町村は、あらかじめ関係都道府県と協議するものとする。
B 市町村が一部事務組合等により共同で地域づくりの計画を作成し、実施する場合においては、共同で本制度の適用を申請することができることとし、その手続きは上記@及びAの例によるものとする。
C 適用市町村は、本制度に基づく特例措置の追加又は変更が必要な場合には、上記@及びAの例により申請することができるものとする。
@ 内閣総理大臣は、上記 (1)の申請を受けた場合、下記5に定める地方分権特例制度推進本部に所要の検討を求め、同本部の合意に基づいて本制度の適用市町村を指定する。
この際、必要に応じ、民間有識者の意見を聴取することができるものとする。
A 適用市町村の指定は、その人口規模、地域特性、提出された地域づくりの分野、地域づくりの計画の実施に係る特例措置の申請の内容等を考慮して決定するものとし、全体として均衡のとれた指定となるよう調整するものとする。
各省庁等は、本制度の適用市町村が地域づくりに取り組むに当たり、その自主性・自立性の一層の発揮を可能とするため、関係の許認可等、補助金等などに関して、法律の制定又は改正を要しない範囲で本制度の趣旨・目的に沿って検討し、可能な特例措置を講ずる。
この特例措置(その具体的内容は、別途定める実施要領において例示するものとする。)は、適用市町村からの具体的な申請を受けて検討し、実施するものとし、本制度の趣旨・目的に沿うと考えられるものである限り、申請の対象分野及び事項はあらかじめ限定しないものとする。
なお、申請どおりの措置が困難な場合においても、本制度の趣旨・目的に照らし、可能な限りの配慮をするよう努めるものとする。
(1) 許認可等の特例
まちづくり、福祉・衛生・保健、教育・文化など地域づくりに関連して適用市町村から申請のあった許認可等について、許認可等の趣旨・目的に違背しない限りにおいて、適用市町村の自主性・自立性を可能な限り生かし、かつ、迅速な処理を行うよう、次の考え方を踏まえて検討し、必要な措置を講ずる。
@ 適用市町村が許認可等に係る経由事務や意見提出等を行うこととなっている場合、適用市町村の意向を尊重 する。
A 許認可等に当たり、法令上地方公共団体の意見を聴くことが義務付けられていない場合であっても、必要に 応じ、適用市町村の意見を聴取する。
B 民間と同様な立場で国の許認可等を受けて運営している事業等について、適用市町村の公共的・公益的立場 を考慮し、許認可等に当たっての審査内容の重点化、簡素化等により、審査等の簡素化、迅速化、提出書類の 簡素化等を図る。
C 適用市町村に対する国の関与等について、許認可等に当たっての通達等に基づく事前協議等一定の手続きの 省略又は簡素化、審査等の大幅な簡素化、迅速化、提出書類の簡素化等を図る。また、適用市町村に対する職 員等の必置規制等について、政省令等で規定されている資格要件、配置基準等の弾力的適用を図る。
D 関係都道府県に対して、地域づくりに関連して必要な許認可等の事務の適用市町村への委任を要請する。
E その他、適用市町村からの具体的な申請を踏まえ、必要な措置を講ずる。
適用市町村等から申請のあった国の補助金等について、補助金等の趣旨・目的に違背しない限りにおいて、適用市町村等の自主性の拡大や事務負担の軽減等を図るため、次の考え方を踏まえて検討し、必要な措置を講ずる。
@ 法律に基づき国の負担が義務付けられているもの以外の補助金等について、個々の事務・事業の趣旨・目的、地方への同化・定着状況、補助金等の性格等を勘案しつつ、適用市町村において当該補助金等の対象となりうる事務・事業を補助金等の申請を行うことなく、地方単独の事務・事業として実施することについて検討することとし、予算編成過程において結論を得ることとする。なお、これに伴う必要な財源については、国と地方の財政状況を勘案しつつ、地方財政計画全体の中で措置することとし、適用市町村に対しては交付税等による措置を検討する。
A 補助金等要綱について、適用市町村への補助基準等及びその適用の緩和、弾力化を図る。
B 適用市町村に対する補助金等に係る事務手続について、交付申請手続の簡素化、補助事業等の遂行状況の報 告の簡素化等を図る。
C その他、適用市町村からの具体的な申請を踏まえ、必要な措置を講ずる。
上記 (2)の@の措置の進展状況に応じ、当該補助金等の対象事業に係る地方債に関しては、許可予定額の総枠を設定し、その範囲内で適用市町村の報告に基づき自動的に許可される措置を講ずる。
その際、適用市町村に対し、政府資金、公営企業金融公庫資金などの安定・良質な資金の配分に配慮する。
なお、地域づくりに関する地方債については、適切に配慮する。
適用市町村に係る機関委任事務についての指導監督等については、専ら国の行政のため行われる事務等を除き、適用市町村からの具体的な申請を踏まえ、可能な限り弾力的に行うよう配慮する。
適用市町村から提出された関係省庁等において調整が必要となる事項について、必要な調整を行う。
(1) 本制度の実施について関係者間で協議、連絡及び調整を行い、その円滑かつ効果的な推進を図るため、内閣に地方分権特例制度推進本部(以下「本部」という。)を置く。
本部の庶務は、総務庁及び自治省の協力を得て、内閣官房において処理する。
国は、関係都道府県に対して、本制度を円滑に実施するため、次の点について協力を要請するものとする。
(1) 関係都道府県は、地域づくりの計画に基づいて適用市町村から提出された特例措置等の申請について、上記4 に掲げる考え方を踏まえ、所要の措置を講ずること。
本制度は、当面、平成10年度末まで実施するものとし、必要な場合には閣議決定によりその後更に5年間程度延長することができるものとする。
(1) 国、関係都道府県及び関係市町村は、本制度の実施期間中、その実施結果の評価に努め、必要に応じ、本部に 報告するものとする。
9 その他
(1) 本制度については、総務庁が実施の推進に当たるものとする。
閣議決定の2において「人口20万人未満であっても適用対象とすることができる」とされている「地域づくりに係る具体的申請の内容が本制度の趣旨・目的に合致する場合」とは、適用市町村の指定を申請する際に提出される許認可等などの特例措置等の内容が、「地域づくりに関する具体的な計画」の実施に当たり、自主性・自立性を発揮する上で必要かつ効果的なものである場合という趣旨であるが、広く対象となり得る機会を与える観点から取り扱うものとする。
(1) 提出資料
閣議決定の3 (1)@により、地方分権特例制度(以下「本制度」という。)の適用を受けようとする市町村が提出する資料は次のような内容のものとする。
@ 地域づくりに関する具体的な計画
地域づくりに関する具体的な計画(以下「地域づくり計画」という。)は、適用市町村の指定及び許認可等などに関する特例措置等の必要性等について具体的に検討するための資料とする。
このため、提出される地域づくり計画は、単なるイメージや抽象的な構想にとどまらず、具体的な内容を盛り込んだものである必要があるが、本制度の趣旨に照らして、特に申請される許認可等などに関する特例措置等との関連で適用市町村が実施しようとする事務・事業が明らかになる程度の具体性を備えたものであればよく、必ずしも新たに策定することを要しないものとする。また、当該市町村の一部の地区を対象とする事務・事業を内容とするものであっても差し支えない。
本制度の適用を受けようとする市町村は、別紙1の例を参考にして、別紙様式1により、許認可等、補助金等、地方債起債又は機関委任事務に係る特例措置を求めようとする事務・事業ごとに、関係省庁等並びに関係法令・通達・補助金等要綱等の名称及び関係条項等を示した上で、特例措置の具体的な内容と特例措置を求める理由又は考え方、特例措置の適用を希望する時期又は年度を明らかにして申請を行うものとする。
なお、閣議決定の3 (1)Cにより特例措置の追加又は変更の申請を行う場合においても、上記の方法によるものとする。
B 関係省庁等において調整が必要となる事項
本制度の適用を受けようとする市町村は、関係省庁等において調整が必要となる事項について、別紙様式2により、調整を要する事務・事業ごとに、関係省庁等、関係法令・通達等の名称及び関係条項等並びに調整を要する事項の具体的な内容を明らかにするものとする。
(2) 関係都道府県との協議
閣議決定の3 (1)Aにおいて本制度の適用市町村の指定の申請を行おうとする市町村が、あらかじめ行うこととされている関係都道府県との協議は、本制度の適用市町村となることについての支援、協力の要請と当該都道府県が当事者となる特例措置等についての要請を内容とするものとする。
当該市町村は、内閣総理大臣に対して適用市町村の指定を申請する際に、上記の要請に対する当該都道府県の意見を添付するものとする。ただし、当該都道府県が当事者となる個別具体的な特例措置等の要請の取扱いについては、適用市町村の指定の申請の前に結論を出すことを要しないものとする。
市町村が閣議決定の3 (1)Bにより共同で本制度の適用を申請する場合には、地域づくり計画等のほか、一部事務組合等共同で地域づくりを実施するための方式を明らかにするものとする。
閣議決定の3 (1)において内閣総理大臣に対して行うこととされている適用市町村の指定の申請の受付に関する事務は、総務庁において処理することとし、総務庁行政管理局を申請の受付窓口とする。
(5) 申請の期限等
@ 本制度の適用市町村の指定は、平成5年及び6年の2回行うことができることとし、その後においては、本制度の実施状況等を踏まえ適用市町村の指定の追加の要否等を検討するものとする。
A 適用市町村の指定の申請の期限は、平成5年については8月末、平成6年については6月末とする。
B 特例措置の追加又は変更の申請の期限は、原則として、毎年6月末とする。
3 指定の手続等
(1) 地方分権特例制度推進本部による検討
市町村から本制度の適用市町村の指定の申請があった場合、内閣総理大臣は、地方分権特例制度推進本部(以下「本部」という。)に対して、地域づくり計画、特例措置等の申請の内容、下記4「特例措置等の申請等の取扱い」に基づき各省庁等が行った特例措置等の検討結果等を示して、適用市町村の指定について検討を要請するものとする。
適用市町村の指定の検討に当たっては、あらかじめ指定数を特に限定しないものとするが、本制度の効果的かつ効率的な実施を図るため、申請の数が著しく多い場合には、市町村の人口規模、地域特性(工業都市地域、田園都市地域、農村地域等)、地域づくり計画の対象分野、各省庁等が行った特例措置等の検討結果等を考慮し、多様な地域及び分野において本制度が実施されるよう所要の調整を行うものとする。
(3) 内閣総理大臣による指定等
内閣総理大臣は、本部の合意に基づいて本制度の適用市町村を指定し、当該市町村の長に対して通知するとともに、公告するものとする。
(1) 特例措置の検討
内閣総理大臣(総務庁行政管理局)は、許認可等などに関する特例措置の申請があった場合、速やかに関係資料を所管省庁等に送付するものとする。
各省庁等は、内閣総理大臣に対して提出された許認可等などに関する特例措置の申請のうち所管事項に係るものについて検討し、一定の期間内に検討の結論を得るものとする。特例措置は、この検討の結論において実施することとされたものについて講ぜられるものである。
(2) 検討結果の提出
各省庁等は、特例措置についての検討結果を内閣総理大臣(総務庁行政管理局)に提出することとし、申請どおりの措置を講ずることが困難なものについては、その理由を明らかにするものとする。
各省庁等は、申請どおりの特例措置を講ずることが困難な場合、当該市町村の申請の趣旨を尊重して、その他の可能な措置を講じるよう配慮に努めるものとする。
「関係省庁等において調整が必要となる事項」の取扱いについても、上記(1)〜(3)によるものとする。
特例措置の追加又は変更、及び補助金等の特例のうち予算編成過程において結論を得ることとされているものについても、原則として、以上の手続に準ずるものとする。
なお、本制度による適用市町村の指定が行われた後、講ぜられるべき許認可等、補助金等などの特例措置の追加、変更等を行う必要が生じた場合において、上記3
(1)に準じて速やかに本部を開催することが困難な事情があるときは、当該特例措置の検討結果を地方分権特例制度連絡会議(以下「連絡会議」という。)に示すことにより処理することができるものとする。
(1) 本部の構成員
本部の構成員は別紙2のとおりとする。
本部の庶務は、総務庁行政管理局及び自治省行政局の協力を得て、内閣官房内閣内政審議室において処理する。
連絡会議の構成員は別紙3のとおりとする。
連絡会議には、必要に応じ構成員以外の関係行政機関の職員等の出席を求めることができるものとする。
内閣総理大臣は、都道府県により行われている許認可等などに関連した特例措置等の申請については、本制度の趣旨・目的に沿って所要の措置が講じられるよう協力を要請するものとする。
(1) 実施結果の評価
各省庁等、本制度の適用市町村及び関係都道府県は、本制度の実施期間中、その実施結果について、市町村の自主性・自立性の発揮、事務処理等の簡素化・迅速化、事務負担の軽減、特例措置の実施に伴って生じた問題の有無、支援・協力を含む適用市町村と関係都道府県及び各省庁等との関係等に関する評価に努め、必要に応じ、本部に報告するものとする。
本制度に基づく措置の実施結果の評価等を踏まえた一般制度への移行の検討については、本制度の実施状況並びに地方公共団体の規模及び行財政能力、行政需要等を考慮しつつ行うものとする。
本制度及びその運営に関する意見・照会等については、本制度の円滑かつ効果的な推進を図る立場から、総務庁行政管理局において対応するものとする。
地方分権特例制度推進本部の構成員
法務大臣
外務大臣
大蔵大臣
文部大臣
厚生大臣
農林水産大臣
通商産業大臣
運輸大臣
郵政大臣
労働大臣
建設大臣
自治大臣
国家公安委員会委員長
総務庁長官
北海道開発庁長官
防衛庁長官
経済企画庁長官
科学技術庁長官
環境庁長官
沖縄開発庁長官
国土庁長官
内閣官房長官
全国知事会会長
全国市長会会長
全国町村会会長
地方分権特例制度連絡会議の構成員
内閣総理大臣官房審議官
法務大臣官房長
外務大臣官房長
大蔵省大臣官房長
文部省大臣官房長
厚生大臣官房長
農林水産大臣官房長
通商産業省大臣官房長
運輸省官房長
郵政大臣官房長
労働大臣官房長
建設大臣官房長
自治省行政局長
警察庁長官官房長
総務庁行政管理局長
北海道開発庁総務監理官
防衛庁長官官房長
経済企画庁長官官房長
科学技術庁長官官房長
環境庁長官官房長
沖縄開発庁総務局長
国土庁長官官房長
全国知事会事務総長
全国市長会事務総長
全国町村会事務総長
パイロット自治体会議は1994年1月に設立された。その目的は、パイロット自治体制度に応募した自治体、あるいは応募はしないがこの度あるいは地方分権推進に関心を抱く自治体の首長間の横の連絡を密にして、ひとつはパイロット自治体制度の運営改善を求めていくこと
、さらには今後の地方分権論議に「意欲的な市町村」の立場から発言を行っていくことである。
パイロット自治体会議設立発起人
榛村 純一(掛川市長)
滝井 義高(田川市長)
恒松 制治(前獨協大学学長)
三木 邦之(真鶴町長)
鰐淵 俊之(釧路市長)
遅々たる歩みしか見せてこなかった地方分権論も、最近に至りようやく進展の兆しが見え始めました。第3次行革審はその最終答申において、地方分権に関する基本的な法律制定の必要性を指摘し、そのための大綱づくりを1年以内に行うよう政府に提言しました。また、国会内でも議員有志によって、地方分権推進法制定の検討が進められております。
しかしながら、パイロット自治体の指定結果などに見られるように、中央省庁などの意識はまだ殆ど変わってはおらず、今後、こうした動きを具体化し内容の豊富なものとしていくには、かなりの努力が必要であると思われます。とくに、住民に一番身近である市町村が地方分権推進の先頭に立たなければ、意味のある地方分権(=地方主権)は実現出来ないと考えます。
私たちはこれまでパイロット自治体連絡会議において議論を積み重ねて参りましたが、このたびそれを一層発展させた形でパイロット自治体会議を設立し、市町村の立場から地方分権実現のための戦略を練り、具体的な行動をおこすことにいたしました。この会議は、趣旨に賛同される市町村長有志の集まりとし、関係諸機関とも連携をとりながら出来る限り簡明直截な議論を行い、世論に訴えながら地方分権の実現を図ろうとするものであります。
当面の目標は、まず94年前半はパイロット自治体制度の拡充・強化を中心にすえ、後半はその経験を活かしながら地方分権推進大綱と基本法の内容の具体化におきたいと考えております。
言うまでもありませんが、地方分権は政府から与えられるものではありません。私たちが主体的に行動してはじめて勝ち取れる権利であります。どうか、ひとりでも多くの方々のご参加を期待しております。
2 構成メンバー
パイロット自治体会議の代表世話人は榛村純一掛川市長で、1995年7月現在の会議参加者は次の通りである。
(50音順・敬称略)
安宅 敬祐 岡山市長 葉山 峻 藤沢市長
岩川 徹 鷹巣町長 増田 昌三 高松市長
小倉 満 大垣市長 増山 道保 宇都宮市長
西川 正純 柏崎市長 松尾 徹人 高知市長
斎藤 博 所沢市長 三木 邦之 真鶴町長
榛村 純一 掛川市長 宮岡 寿雄 松江市長
鈴木 雅廣 天童市長 安田 養次郎三鷹市長
滝井 義高 田川市長 山本 清治 三原市長
竹内 謙 鎌倉市長 吉尾 勝征 調布市長
恒松 制治 前獨協大学学長 鰐淵 俊之 釧路市長
自治体会議の発足は94年1月であるが、それに先立って93年8月から3回にわたって事前連絡会を開催し、その討議の結果は行革国民会議の要望書の形にまとめ、当時の細川首相に提出した。
発足以降は、原則として月1回の会合を開催し、パイロット制度ならびに地方分権全般についての情報交換を行っている。その結果、各自治体のスタッフ間での情報交換の場としても、大きな役割を果している。
@ 初期の段階においては、総務庁小池政務次官ほか各党関係者にも参加をよびかけ、問題点の所在について認識を深めるよう努力した。
A 93年12月13日には、パイロット自治体連絡会の討議をもとに意見書「パイロット自治体制度の運用改善を望む」を作成、行革国民会議の名前で発表するとともに細川首相に提出した。
B 地方分権関係のシンポジュームの場において、機会あるごとにパイロット自治体制度の運用の実情と改善を述べた。(たとえば神奈川県主催で93年11月18日に開かれた第18回地方の時代シンポジュームなど)
C 94年3月から6月にかけて組織された連立与党地方分権・地方行革チームに行革国民会議並河事務局長が参加し、パイロット自治体制度の運用改善を意見書に盛り込んだ。
D 榛村代表世話人は朝日新聞の論壇(94年10月12日)に投稿、第3次募集を主張し、これは実現を見た。
E その他、新聞、雑誌の記者、取材において、積極的にこの制度運用の改善を主張しており、パイロット自治体会議の存在は世間的に認知されている。