21世紀に向けた新産業都市づくり

大垣市長  小倉  満

 

以下にご紹介するのはさる99年12月24日に開催されました第3回市町村主権フォーラムでの小倉・大垣市長のお話の概要です。

 

1 大垣市の概要

大垣市は、市域面積約80平方キロ、人口約15万人ですが、工業都市ですからブラジルなど外国人の方も3千人ほど在住されていますので、実際には人口は約15万3千人になります。県都・岐阜市が人口40万人ちょっとですが、それに次ぐ県内第2の都市ということになります。

 位置的には、木曽三川(木曽川、長良川、揖斐川)のうち一番西側の揖斐川流域になりますが、そこに広がる1市19町村は交流が活発で、非常にまとまりのいい地域をつくっております。この地域では、「西濃はひとつ」という理念のもと、積極的に広域行政を進めております。

 市内には一級河川が14本ありますが、これは他所には見られないことです。したがって、伏流水も豊富で、地下水を利用する産業が多く立地しておりまして、いまでこそ税収は大きく落ち込んでおりますが、以前は、財政的に余裕のあるところといえます。

 この地下水ですが、農業用水として使っているところは非常な地盤沈下が生じています。1メートル50も下がっているところがあります。われわれは、地下水は有限だということで、自主規制をしております。水に恵まれているということは、また水の災いも受けやすいということでして、大変な災害も受けております。

 江戸時代は戸田・大垣藩でしたが、戸田の殿様が非常に産業振興、学問奨励に意を尽くされまして、その結果、明治の内閣制度が発足するときには、日本の博士の3分の1か4分の1が戸田・大垣藩の出身者であったといわれております。文教のまちであるかどうかは行政の責任だといわれると大変つらいのですが、いま、「ルネッサンス大垣」という名前で生涯学習などの試みをやっているところです。

 関ヶ原にも近いわけですから、それに引っかけて平和の尊さを打ち出しておりますが、その中で一生懸命PRしておりますのが、「奥の細道むすびの地」です。奥の細道というと「みちのく」ということになっていますが、芭蕉は4回大垣を訪れております。そのこともあって、いまでも俳句が非常に盛んなところでもあります。

 産業面では、地下水の豊富なところですから、大正から昭和にかけて、10大紡績会社のほとんどが大垣に工場を持っておりました。まさに工業都市であったわけです。いま、理想的な都市像として、「水を愛し、緑を育む、人間性豊かな産業文化都市」を目標としております。かつては公害のまちと言われたこともありましたが、いまではまちの真ん中を流れております水門川には鯉が群遊しておりますし、鮎もとれる。それだけ市民意識が変化したといえると思います。

 

2 高度情報都市づくり

 大垣市を中心とする西濃地域は、製造品等の出荷額が県全体の4分の1を占める地域であり、これまで製造業集積地として発展してきましたが、昨今の景気低迷の影響を受け、現在、伸び悩んでいます。大垣市では、企業活動のグローバル化に伴い、紡績工場が撤退・縮小しましたので、産業の空洞化が顕著な形となっております。そこで、なんとか産業振興策をということで、商工会議所と一緒になって、こうした問題に取り組んできました。

 昭和59年4月には、「大垣地域産業ビジョン“TEAM21構想”」の検討に着手し、60年5月に完成しました。TEAMのTEはテクノロジー、AMはアメニティの略ですが、その中身は産業情報センターの設立、コンピューター企業団地の建設、技術系研究・教育機関の充実、地域の骨格道路の整備、この4つにテーマを絞って行政に要望したわけであります。この構想策定と相前後して、60年4月、たまたま私は企業の経営者から市長に就任することになりましたので、結局、自分たちで作った構想の実現に自らあたることになったわけです。

 この構想のなかで、産業情報センターにつきましては、昭和62年7月に、G.I.NET(グレート・インフォメーション・ネットワーク(株))を第3セクターで設立しました。この名前は、梶原知事が副知事時代に命名したものです。コンピュータ−企業団地は、県が中心となって「ソフトピアジャパン」という研究機関ゾーンを平成8年につくったわけですが、おかげさまで市内の企業7社をはじめとして、日本電気(株)や富士通(株)など18の企業が分譲地に進出して、それぞれ個性的なビルが建ち、新しいまち並みが出来ております。また、「ソフトピアジャパン」の中央にあるセンタービル(ソフトピアジャパンセンター)の技術開発室には、(株)日立製作所やNTT西日本など30社ほどが入り、また、インキュベートルームには27の個人や企業が入っております。さらに今度また新しくできるインキュベートビル「国際インキュベートセンター」にはインキュベートルームが100室設けられ、これを県が無料で貸し出すことになっております。また、この新しいビルには、情報通信産業の育成や高度情報時代を担う人材の育成を目的として、「全国マルチメディア専門研修センター」が併設されることになっております。

 こういう一連のプロジェクトは、私どもがうまく国の情報をキャッチして、国の制度を取り入れて実現させたものです。たとえば、「ソフトピアジャパン」内に、「大垣市情報工房」というものがありますが、これは郵政省の自治体ネットワーク施設整備事業によるものです。地方分権一括法が出来て、これからは地方分権の時代だといわれますけれども、財源等を考えますと、まだまだ中央にしがみついているというのが現状です。今度、首都機能移転ということで、2つの有力候補の中に岐阜県の東濃地域が入っています。東濃地域への首都機能移転が実現すれば、われわれ西濃地域にとっても、関西圏への玄関口として、大きな波及効果を期待しております。

 国の制度を利用したものとしては、その他に、遠隔医療・教育実験とか下水道管理高度情報化モデル事業などがあります。この下水道管理高度情報化モデル事業は、下水管に光ファイバーを通すものす。本来は、下水道を管理する光ファイバーなのですけれども、いま、この下水道管理用光ファイバー網を下水道管理用以外の「行政用地域内ネットワーク」として活用する実験、具体的には、「大垣市情報工房」と市内の中学校を光ファイバーで結んでマルチメディア教育実験を始めております。光ファイバーの敷設は平成8年からはじめて延長約20キロになっております。

また、現在進められておりますのが「21世紀型情報都市地域整備構想」です。これは、「ソフトピアジャパン」を核とした情報価値の生産性の高い「21世紀型情報都市地域」の整備を進め、マルチメディアの持つ優れた機能を最大限に生かしながら、バリアフリー社会とかベターライフ社会を構築していくものです。

具体的には、情報社会の実現すべき都市像を明らかにし、そのための施策を県や市町村が主体となって進め、国に対しても、必要な制度の創設を求めるものであり、いわゆる「地方提案型構想」です。

 これまで、西濃地域の20市町村全体のレベルアップをしていこうということで、たとえば域内の坂内村と大垣市の小学校との間で、同じ授業をやるということを文部省に提案し、遠隔教育実現を実現させております。それがいま全国に広がっております。そのほか、さきほどの下水道管理高度情報化モデル事業や次世代都市整備事業、遠隔教育実験、遠隔医療推進モデル事業、電線共同溝(C.C.Box)整備事業などがあります。タイミングもよかったのでしょうが、そういったことがきっかけとなって、いまは地元に根付いています。

 「県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)」では、高校を出て富士通(株)や日本電気(株)に勤めた優秀な人が入るラフネスな組織です。平成13年には大学院大学の開校を目指しておりますが、一応今は専修学校です。2年制で各年100名ずつとなっています。

 大垣市には紡績工場があったわけですが、中学を出た女性が働きながら学べるように高等学校、短期大学をつくったわけです。その学校が時代とともに要らなくなったわけですから、そこにこのIAMASを誘致しました。慶應義塾大学の教授をされていた坂根巌夫さんに学長に就任していただき、中心となって進めていただいております。

 「大垣市情報工房」もこうしたなかで誕生したものです。地域の産業振興、市民生活の向上に具体的に役立つ施設で、「ソフトピアジャパンセンター」の方はハイレベルな作業をやっておりますので、それを地域にメリットになるように咀嚼してネットワークを組んでいこうとするものです。この工房はマルチメディアキッチンと呼んでおりますが、市民の皆さんが気軽にマルチメディアを体験でき、大変な人気で順番待ちが出来るくらいです。まさに生涯学習の場となっているわけです。今後、これをどういう形で具現化していくか、生活に役立たせていくかが課題だと思います。

 今、私たちは、とかくドライになりがちな情報化社会の中で、人間性を見失わないように、市民意識の醸成を行政の責任として取り組んでおります。先ほど、この地域は水の恵みと災いが宿命的なところだということを申し上げましたが、輪中というのが今も生きているわけです。輪中堤はまさに自分たちの手で堤防を作って自分たちを守る、川の氾濫をそこで止める。こうしたことも、改めて生活の知恵・文化として情報化社会の中で活かしていくことが肝要だと考えているわけです。遠隔医療も遠隔教育も順調に進んでおります。これが今後さらに光ファイバーによるマルチメディアネットワークというものに進んでいく。これがバリアフリー効果になっていくだろうと考えております。

 われわれは行政の立場でこういう仕事をしておりますが、平成9年に「大垣地域産業情報研究協議会」が商工会議所主導で産官学の連携によって出来ました。その拠点として、「大垣市情報工房」の中に「西美濃産業情報ラボ」と「西美濃みどころプラザ」をつくっております。これも市民の連帯感を作り上げていくのに非常に大事なことで、市民の組織・機関と言うことで、市民のメンバーでそういう組織をつくりあげております。行政は行政だけの分野だけでなく、地域住民を巻き込んで一体となってやっていこうとしているわけです。そういう情報時代の意識づくりはなかなかそう形であらわせませんが、いろんなことの積み重ねでやっております。

 いま新たに進めておりますのは「健脳産業」の育成です。もともと伊吹山は日本一の薬草の宝庫といわれており、いま大垣市ではカミツレをはじめとして、薬草を栽培しております。それが、化粧品などにもカミツレの名前が出てきておりますし、地酒としての発泡酒やハーブ酒としても使っております。そのなかで、「健脳産業」という言葉を思いついて、いまその組織化をしているところです。そのスタートは、岐阜県の西美濃と滋賀県の北近江の市町村で「伊吹山薬草サミット」というものを開いたのが始まりです。また、県境の彦根市や長浜市とも「北近江・西美濃ふれあい協議会」というものをつくって県際交流をおこなっておりますし、桑名市など北伊勢と一緒になって観光サミットもこころがけておりますが、こうした広域政策の展開の中で、「健脳産業」というものが現れてきたわけです。

 つまり、「健脳産業」というのは食品ばかりでなく、生活をリラックスさせるものすべてを含むもので、観光、レジャーなど市民生活全般を含めて「健脳産業」をつくりつつあります。現在、「健脳産業育成会議(会長:大垣市長)」を組織しております。

 

3 中心市街地活性化について

 最後に、中心市街地活性化ということですが、大垣市では、平成10年12月に「中心市街地活性化基本計画」を作りました。これは商工会議所、商店街、消費者、一般市民、学識経験者など幅広い分野の方々に参加していただいて出来たものです。

 今、実は商店街に空き店舗が1割あるわけです。とりあえずそういうところには「まちの駅」とか「スインクショップ・農家の店」とか「マイスター倶楽部」などを設けております。「町の駅」というのは福祉・観光案内や商店街の会議室など市民の憩いの広場、「スインクショップ・農家の店」というのは農産物や健康食品、薬草弁当の販売などを行っているところですが、「マイスター倶楽部」というのは岐阜経済大学と商店街との共同研究室で、たとえば、マイスター新聞の発行や駅前の商店街のトイレマップなどをつくっております。

 こうしたことの積み重ねで、平成11年12月にようやく会議所からTMO構想(中心市街地活性化中小小売業商業高度化事業構想)が出来てきました。大変遅れたわけですが、いろいろな経緯があって、ようやくTMOが作られるわけです。

 こういうなかで、商店街活性化のための事業としては、観光案内ボランティアガイド事業、買い物循環バス運行事業、プレミアム商品券発行事業というものもやっております。「まちづくり工房大垣」というものも、会議所が中心となって市民が自発的に参加して知恵を出し合う組織として、活動を行っております。

また、2000年の3月から「決戦関ヶ原大垣博」が開かれますが、これを起爆剤として、商店街の活性化を図っていきたいと考えています。その準備も、大垣商工会議所や地元商店街だけでなく、各界・各層の市民など、約350名の方々の参画による実行委員会が行っております。

こうした市民主体による推進体制が確立できた背景には、多くの市民や団体が、地域コミュニティを大切にし、地域社会に貢献しようとする「まちづくり」の活動が展開され、自らの手で地域を良くしようとする土壌が育まれてきたことが挙げられます。とりわけ、「大垣市青年のつどい協議会」は、(社)大垣市青年会議所や(社)大垣青年クラブなど13の青年団体、1万5000人の会員が参加していますが、これまで、「水門川万灯流し」「十万石ふる里まつり」「スインク西濃ふれあいフェスティバル」などを開催してきました。いま、「西濃青年のつどい協議会」、「岐阜県青年のつどい協議会」というように、大垣市からはじまって、西濃地域、さらには岐阜県全域へと活動が広まっています。

 

4 公民のパートナーシップ

 以上、駆け足でご説明いたしましたが、新産業都市づくりと銘打って、市民の知恵を集めた個性的なまちづくりをしたいと考えているところです。特に私は大垣市の特色を生かした「公民パートナーシップ型のまちづくり」が、今後大変大事であると考えております。これからは都市間競争が激化するわけですから、われわれは市民・企業・NPO・ボランティア活動団体・それに行政ががっちり組んで、頑張っていこうということです。

 

 

【質疑応答】

● 大垣には大学はどのくらいあるのか

 

小倉:先ほどの岐阜経済大学、ここに2つ学部がありまして2千数百人います。もう一つ、大垣女子短期大学があります。これは1200人くらいです。あと、県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)があります。ここは1学年100であわせて200です。平成13年には大学院大学の開校を目指しております。

 

● 地下水について、我々のところでは地盤沈下が5メートルにもなっているところがあるが、どのような取り組みをしているのか。

 

小倉:いま大垣市の上水道も地下水なんです。日量約6万トン。また、地下水を汲み上げている工場が50社あります。そこで、1市5町の地下水を汲み上げている企業で地下水対策協議会というものを結成しておりまして、節水するということで自主規制をやっております。お互いに監視し合っているわけです。これが約28万トンになります。

 農業用水は揖斐川の水を使っていますが、これもなかなかややこしくて、水の権利は建設省、農業用水は農水省ですが、早く水が欲しくてもそういう融通が利かない。何度も要望をしていますがどうも改善されない。佐賀県では農業用水の汲み上げで地盤沈下が激しいようですが、幸い岐阜県内ではほとんどなく、海津町で1センチほどで済んでいます。愛知県ではもう少し進んでいるようです。

 うちの場合は1市5町で主だった工場を網羅していますが、その外にも工場が増えてきましたから、さらに枠を広げて7町でやろうとしています。これが実現しますと1市12町となりますので、それだけ広範囲に地下水の汲み上げを規制するということになります。

 なお、徳山ダムの利用は工業用水が一番多いのですが、首都機能移転が東濃ということになりますと、十分利用できる。そういうわけで、ここは水は豊潤です。木曽川の水はほとんど愛知県が取ってしまいますが、岐阜県は貧乏県でしたから、あれだけの水量をほとんど愛知県に取られてしまった。仮に首都機能が移転するとしたならば、水の需要が多くなると考えております。長良川河口堰の水も大半が愛知県に行ってしまいますが、これからは食糧よりも水が不足するのではないかと思っているところです。

 

● 中心市街地活性化についてだが、われわれのところも空洞化が進んでいる。その関連で、買い物循環バスについて、これはどういうやり方なのか

 

小倉:バスは3ヶ月間、無料でやりました。事業主体は大垣商工会議所ですが、その費用は市が負担したことになります。

 実は、全国あちこちでやっているワンコイン・バスをやろうと思ったのですが、すでに市内に入っているバス会社がどうしても承知しない。市内を走るバスは初乗り料金が170円なので、100円では困る、200円ならいい。あるいは、何回乗っても300円というのならどうか、などといってきました。しかし、初めから帰りの分を支払うというのはどうも馴染めないので、無料にしてしまったのです。武蔵野市のムーバスも研究してみたのですが、あそこはバスが全然走っていないところを走るから、バス停は関係ない。それでもだいぶ苦労はされたようです。

 3ヶ月実験をやってアンケートをとったところ、無料が一番いいという意見が多かったのですが、ワンコインもいいという意見も多かった。そこで、いま、バス停と市の施設だけを回るバスにして100円のワンコインとすることを検討中です。

 

● 地域振興券もわれわれのところで4億円ほどで、地元の商店街でといっても半分は郊外の大店舗に行ってしまった。独特の商品を持っているところは別だが、ほとんど商店街では使わない。

 

小倉:どこもそうのようですね。われわれのところも63%が大型店に行ってしまった。今、プレミアムつきの商品券を出しています。

 

● 学校現場での情報化はどこまで進んでいるのか

 

小倉:今、いろんなモデル事業をやっています。学校1校についてわずか100万円ですが、これを校長先生の考えで何にでも自由に使えるようにしています。いまのところ、中学校が9、小学校が17、あわせて26校ですが、いま中学校への光ファイバーの施設を進めております。まだ、下水の普及率が6割ですから、どうしても郊外の小学校は遅れることになる。そのため、モデル校を選んでやっています。

 たとえば、市内には川がいっぱいありますから、水に棲む生物の情報を学校が流したりしています。また、一度、東京の小学校と合同授業をやったことがあるのですが、生徒はものすごく刺激を受ける。こういう風にやっていくと、校長先生もそうですが、生徒自身に改革に取り組みとか挑戦するとか、前向きの機運が出てくる。いい意味での競争です。

 

● 我々のところには国宝彦根城があって、年間50万人くらいの観光客が来ていた。ところが今年度は50万人を切るのではないかと心配されている。一方、「夢京橋キャッスルロード」ということで道路を10年がかりで6メートルから18メートルに拡幅し、この3月に完成した。単に道路の拡幅ではなく、その町並みも左右の建物も江戸期の風情を漂わせているようなたたずまいにした。相当な金額がかかりました。これが平成10年度で45万人を呼んでいる。彦根城に行くよりは町並みを見て歩いた方がいいという。これからの観光を考えた場合、拠点観光だけでいいのか大いに疑問に思っている。

 

小倉:拠点は絶対に大事だと思います。広域的にとらえないといけない。彦根城を見たあと長浜に回るとか大垣の城を見ようとか。あるいは、最近顕著になっているのですが、西国33番の札の納めどころである谷汲山華厳寺というお寺がある。昔はここはお年寄りばかりだった。ところが最近は若者のハイキングコースとなっている。こういうことを考えてみると、お寺はお参りに行くところだけではなくて。そのプロセスを大事にしようという考えです。岐阜市でもあれほど有名な鵜飼いもどんどん客が落ちている。したがって、岐阜市長もどういう風にセットしていくか頭を痛めているようです。われわれも何とか広域化して、ばらばらではなく、コースを幾種類か考えてPRする必要があるのではないかと思っています。

 若者がお寺に行くというのは考えられなかったのですが、健康増進ということも含めて、観光オンリーではなくそうしたことを加味して行かなくてはいけないと思っています。

 

● 中心市街地活性化も、われわれもいち早く基本計画を立てただが、なかなか難しい。そこで興味を引かれましたのは、岐阜経済大学と大垣女子大学を相手の学割制度です。彦根も、4年制大学が2つ、短期大学がひとつ、もう一つはアメリカのミシガン州立大学の日本校と4つ大学があるが、学生に聞いてみると、彦根では買い物をする必要がないという。神戸や京都からの通学生も多いわけです。昔は休講になると町に出てきたのが、いまは帰ってしまう、あるいはどこか遊びに行ってしまう。そこで、大垣の場合、どのくらいの効果があるのか伺いたい。

 

小倉:私どもの基本計画では、中心市街地は商店街だけでなく、もう少し広範に168ヘクタール設定しているのです。ですから、中心市街地も単に商店街だけのことでなく、そこを軸として広がりを持つ、吸引性を持つようにならないといけない。大垣で168ヘクタールは広すぎるのではないかという意見もあったのですが、これでも全部の商店街を含んでいない。はみ出たところははみ出たところでやっております。

 ただ、網シャッターとかアートとか、そういうものを連携していくことが若者を呼ぶことになるのではないか。巣鴨のとげ抜き地蔵の商店街にも、店の開く前に見に行くのです。あそこは東海道53次の絵が描かれていて、汚れると書き直す。そういうことも大事だと思っています。ですから、中心市街地の問題は、そこを核として周辺を引っ張り込むことが肝要だと思っています。それだけ力をつけないといけないわけです。       ■