岩手県は8月26日、「県広報媒体制作業務等一括委託(仮称)に関する説明・意見交換会」を開催した。県は2005年度から、テレビやラジオ、広報誌など媒体ごとに個別に制作している県の広報に関する業務について、媒体をどう組み合わせて広報を進めるかなど、総合的な広報プランや制作管理を一括して1社に委託する予定。委託業者の選定は、企画コンペ方式を採用する。今回の対応で、2005年度から県の広報担当職員を2人減らす計画。広報業務を1企業に一括委託するのは全国の都道府県で初めてとのこと。
山梨・甲府市は8月23日までに、11月にも家庭から出される不燃ごみの収集を民間委託する方針を決めた。年度内は試行期間として、2005年度から本実施する。市内で事業系ごみの収集、運搬の許可を得ている59社を委託先と想定し、入札を行って事業者を選定する。委託費として9月補正予算に2480万円を計上する予定。民間委託後、不燃ごみの収集に当たっていた職員は、可燃ごみ部門のほか、高齢者のごみ出し援助、ごみ減量化の指導などの事業に充てる方向。本実施に向け可燃ごみを含めた新たな収集体制を構築し、併せて職員削減も検討する。
そのほか、最近各自治体で実施された、ユニークな民間委託のケースを紹介する。
三重・四日市市は3月、霞ケ浦北ふ頭国際海上コンテナターミナルの運営を全面的に民間業者に委託する方針を表明した。10月に港の長期貸し付けを可能とする特区申請を行う予定。運営期間は20年以上を予定。港の民間委託は全国で初めてとなる。
群馬・笠懸町、大間々町、藪塚本町でつくる桐生競艇施行者の阿左美水園競艇組合は4月、桐生競艇を全国初の民間委託方式による新体制で再出発した。これまで自治体しか行えなかった発券業務、払い戻しなどを社団法人「県モーターボート競走会」に委託し、競艇場管理や、広報活動などを民間会社が行う。同組合は3月、施設管理会社の関東開発と2004年度の本契約締結の調印をした。自治体の黒字化を前提とした、包括的な民間委託で、組合が同社に支払う施設使用料を年間売上金額の6.5%から4.5%に引き下げるなどが主な内容。阿左美沼の地代、駐車場使用料、周辺整備事業助成金を見直し、売上額に定率をかける方式から、定額制に改める。また、組合側が会社側から受ける最低利益目標額は3億円とした。
高知県は4月から、長浜と種崎を結ぶ県営渡船を民間委託による新しい運航態勢に切り替えた。民間委託により、2003年度に1億円だった運営経費が2004年度は7000万円程度に減る見込み。
仙台市は4月、開発事業に伴う埋蔵文化財の発掘調査4件を民間委託することを決めた。文化財保護法で開発事業の際、着工前の発掘調査を義務付けられているが、発掘調査による開発事業の待機期間を現行の3年から、民間委託で1年以内に短縮化する。民間委託するのは、「記録保存」の発掘調査。「遺跡の状態がある程度予測できる」ケースに限定する。委託先は、市教委の選定委員会が指名した民間業者の入札で決め、大学の専攻科目や調査実績などの要件を満たす調査員を一定年数以上、正社員として勤務させている業者に参加資格を与える。発掘調査の予備調査数件も委託する見込み。学術的な調査は従来通り市教委が直接実施する。発掘調査の民間委託は、川崎市や名古屋市でも実施されているが、要綱を定めて制度化したのは仙台市が初めてとなる。
熊本市は2004年度から、市道などと私有地の境界線を定める道路境界立会について一部を民間委託した。担当職員が少ないため、民間委託して手続き期間を短縮するのが狙い。「事前打ち合わせ」「関係地権者の整理など含む現地事前調査」「現地境界立会」「図面、同意書などの報告書作成」の4項目を委託。現行で申請から現地立会までが30〜40日、確定決済まで50日程度かかるが、委託により現地立会までを20日程度、確定決済までを25日程度に短縮したいとのこと。
山形・南陽市は2004年度から、市長公用車の運行や管理業務を民間委託する。市長車はこれまで市が所有し、市職員が専属運転手として運行していたが、車両を委託先の民間会社が所有、運転業務だけでなく維持管理や修繕も委託する。これまでは市長車関連で年間1000万円かかっていたが、委託料は最大でも650万円で済むとのこと。
東京都は2004年度から、給与・旅費計算や福利厚生など総務部門の集約化や窓口業務の委託に本格着手する。4月からは、宅地建物取引免許の窓口業務を人材派遣大手に委託。実際の審査は職員が担当するが、行政の許認可事務で窓口業務を民間委託するのは全国初。委託後は受付時間が午後5時まで従来比1時間延長できるほか、接客マナーの向上や待ち時間の短縮につながる。人件費は年間4500万円程度削減できるとのこと。総務事務は2004年度に一部で実験を導入し、2005年度にも全庁に広げる。コスト削減効果は数十億円に上るとみられる。
神奈川・横須賀市は6月、職員の出張旅費についての事務を民間の旅行代理店に委託した。ノウハウを活用した合理的な経路の決定や、安い旅費の算出などを行ってもらう。出張が正式に決まれば、乗車券などの予約・発券手続きや配達をする。2004年度は委託料として230万円を当初予算に計上。宿泊出張300件を委託する予定。出張旅費の事務にかかわる職員の人件費(144万円)を含めると、年間996万円の削減効果があるとのこと。
高知県は8月、職員が出張する際の事務処理を民間会社に委託する計画の修正案を公表した。計画は2月議会に提出されたが、事務処理や旅券の発券業務を大手旅行会社・近畿日本ツーリストに一括委託するという内容が、地元経済に悪影響を及ぼすとして削除された。修正案では、出張する職員がホテルや航空券の手配などを近畿日本ツーリストに依頼。県に登録した地元旅行会社が航空券などを発券、職員に手渡し、手数料を受け取るとした。これにより、事務費用が年間2億5000万円削減できるとのこと。
大阪府は5月、民間に委託した中小企業向けの債権の回収業務について、2005年度以降、委託料のほかに成功報酬を上乗せし、回収のスピードアップを図る方針を示した。対象は、中小企業向けに行っている高度化資金貸付と近代化資金貸付の2制度。2004年度は、計327億円の債権回収を、UFJ銀行の子会社に1890万円で委託している。
山口県と美祢市は6月、刑務所(仮称・美祢社会復帰促進センター)の運営業務を民間に委託できるよう「刑務所の運営業務の民間委託」と「刑務所内の診療所等の管理委託」を特区提案した。法務省は特区として対応する方針を示している。刑務所は、民間の資金やノウハウを活用して設計、建設、維持管理はできるが、受刑者の職業訓練の指導や監督、警備、健康診断など運営業務の一部は、監獄法や医療法で刑務官にしか認められていない。特区により、刑務所内の巡回や警備のほか、所内の診療所を公的医療機関に委託することなどが可能になる。また、民間委託により、必要な250人の職員のうち半数を民間から雇用できると見込み。
大阪府は7月、2004年秋に開設する予定のITステーションで障害者の就職支援業務を委託する民間事業者を募集した。ITステーションは障害者のIT利用のサポート拠点とし、パソコンによるビジネス文書やグラフの作成、インターネットでの情報検索などを指導する。また、訓練生や修了生の相談に乗り、IT技能や個々の適性を把握。企業を開拓し、雇用に結び付けるほか、就職後も障害者が職場に定着できるように支援を継続する。委託料は485万円を基本とし、障害者の就職が成功した場合、1人につき10万円を加算する。総額で1000万円の予算を見込む。
神戸市は7月の参院選から、これまで有権者1人ひとりにはがきで送っていた「投票案内」を世帯ごとにまとめて封書化し、印刷や封かん作業を一括して民間委託した。数百万円規模の経費削減と準備期間の短縮が見込まれる。市では、秘密保持のための特例事項を契約に盛り込み、プライバシーの国際規約の認証を受けた業者を選んだ。作業の一括委託は東京・新宿区などが既に導入している。
三重・四日市市と鈴鹿市は7月の参院選で、投票や開票作業を民間委託した。人材派遣会社と契約して、開票作業の一部を補助的に派遣社員に応援してもらう方式。開票作業は、最初に投票箱からテーブルの上に開けられた投票用紙を仕分けするが、派遣社員には2〜3時間の契約で、仕分け作業に従事してもらう。四日市市では一部点検、計算の補助作業も行うとのこと。(田中潤) |