8月30日付山陰中央新報によれば、島根県は職員の提案制度をリニューアルするとのこと。1997年度に年間2000万円の予算で「島根づくりしなやか推進事業」を始めたが、縦割り行政の弊害で十分に機能せず、提案数は年々減少。スタートした年度には47件あった提案が2000年度には8件にとどまり、2003年度には事業自体を廃止していた。今回は、職員やグループから有用な提案があった場合、庁内LANに掲示して他の職員からの助言を受け付けるほか、データなどの必要な情報提供も行い、全庁を挙げて事業化を目指す。最終的には、県幹部で構成する政策企画会議で審査し、採用された提案者には表彰も行い、職員のやる気を引き出す。
大分市は2003年8月から2004年8月23日までの間に実施した、職員がメールで直接市長に政策提案を行う「職員提案制度」の状況をまとめた。同制度は、職員が庁内LANを使ってネットワーク上の「市長提案ボックス」にメールで提案内容を送り、それらの提案を各課で実施できるかどうかを調べ、その結果を基に月に一度開く検討委員会で導入するかどうか決めるというもの。全部で125件の提案があり、そのうち41件は既に実施し、10件は導入に向けて検討しているとのこと。「フロアマネジャーの配置」「ご意見ポストの設置」などの提案が具体化した。現在は「繁忙期に他の課から応援の職員を派遣するなどグループ制の弾力的な運用」などの実施準備を進めている。
また、同市は2004年度から、職員が新規事業の企画・立案から事業化まで一貫して行う「アントレプレナーシップ(企業家精神)事業制度」を導入。全職員が対象で、2004年度の早い時期に環境、経済、教育、文化など市政にかかわるあらゆる分野についてテーマを募集し、その中から事業の緊急性や必要性などの視点でテーマを選択。そのテーマに取り組みたい職員が職場を超えたチームをつくり、事業化を目指し研究する。最終的に幹部職員らの審査を経て、新規事業として採用される仕組み。作業はすべて職務時間外に行う。
横浜市は7月、予算と人事(希望職場へ異動)がセットになった職員提案制度「アントレプレナーシップ(起業家)事業」の第3期生を発表した。応募総数はテーマが19、職員が83人で、そのうち採択されたテーマが9、任命されたメンバーが51人。羽田空港の再拡張と国際化を横浜のまちづくりに生かす「世界と近いヨコハマづくりプロジェクト」(6人)や、結婚式プロデュースを軸に市のイメージアップを目指す「Wedding in YOKOHAMA」(7人)などのテーマがある。
また、同市市交通局は1996年度から、経営改善につながるアイデアを募集し、提案した職員を表彰する職員提案制度を開始。賞金1万円の優秀賞と3000円の奨励賞を用意し、年に1回、1ヵ月程度の期間を設けて募集した。2003年度からは通年募集に切り替えて、表彰回数を2回に増やし、賞金3万円の最優秀賞を新たに設けた。また、市長の諮問機関による交通事業改革に向けた答申を受けて、増収だけにテーマを絞った別枠募集も急きょ実施。その結果、2003年度の提案総数は335件と前年度の160件を大きく上回った。
そのほか、近年、実施された、または実施予定の職員提案制度を紹介する。
宇都宮市は2003年10月から、職員提案制度を創設した。提案の種類は、コスト縮減などの効果をもたらす「事務改善」と、市政全般についての「自由提案」の2つ。「事務改善」が主事から総括主査まで、「自由提案」は全職員が対象。「自由提案」は、施策や事務事業など自由な内容の「提案A」と、各職場が取り組む重要課題の中で、時宜を得たテーマを設定する「提案B」に分けた。
埼玉・志木市は2004年度、優れた提案をした場合、提案者本人が担当部署へ異動できる「ジョブ・チャレンジ制度」を導入した。政策提案できるのは主査級以下の中堅・若手職員。異動を希望する職場に関係する政策提案書を市長に提出し、市長が優れた政策提案と認めると、担当部署に異動させる。
京都府は2004年度から、職員が所属部局の枠から超えて、企画の提案から事業化を手掛ける「きょうと未来づくり提案事業」を始めた。従来型のルールや慣行にとらわれず、自由な発想に根ざして斬新な企画や政策提案を職員から受け付ける。対象は府警本部や教育庁を除く全職員で、本庁幹部が書面や面接で秋までに選考する。この間、職員らは業務に支障の出ない範囲で、提案に関する研究活動に携わる。最優秀と評価された提案には予算を組み、2005年度から事業化する。提案した個人やグループは担当の部局に異動し、事業推進にあたる。この事業への参加を希望する職員も募る。
神奈川県は2004年度、職員提案事業の募集を実施。知事部局に属する本庁の副主幹級以下の職員か出先機関の職員が対象で、グループでも可。企画部と知事が審査し、全事業で単年度1億円以内とする。採用された事業は最大で年間2000万円の予算が3年間配分される。採択された事業を提案した職員は、原則として2005年度からその事業を担当する。
宮城県は2002年度から3年間の限定で、職員が発案した優秀な企画を人事、財政当局が後押しし、発案者に事業化の機会を与える県の庁内版ベンチャー事業「プロジェクトM」を実施した。知事部局の職員による自主グループ(3〜10人)が、推進が必要となるテーマについて、新しい視点を盛り込みながら事業計画を練り上げ応募。知事に対するプレゼンテーションなどを経て最優秀企画に選ばれたグループは、翌年度からそのまま担当スタッフとなって事業展開に当たるというもの。事業期間は3年以内で、事業費は3年間で最大2億円。2002年度は33件(173人)、2003年度は18件(78人)の応募があった。全国初の試みである「共生型グループホーム」の整備などが実施された。(田中潤) |