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滞納対策で自治体 さまざまな手段を実施

2004/08/26

 8月22日付大分合同新聞によると、大分・津久見市は滞納者の氏名公表や行政サービスの制限などを柱とする「市税等の滞納に対する特別措置に関する条例」の制定に取り組むとのこと。督促状などの発送、担当職員の電話や訪問による徴収など従来の取り組みに加えて、夜間徴収、訪問徴収を強化。さらに、「悪質滞納者」の認定方法を検討した上で、滞納者に対し、国民健康保険や介護保険の給付差し止め、上水道の給水停止などが実施できるよう条例を制定する方針。

 青森県は8月30日、県税滞納者から差し押さえた電話加入権計103本(8月2日現在)を一斉に売却し、売却代金を県税に充当する方針。これまで各県税事務所単位で売却を行ってきたが、さまざまな加入権を選べるようにするため、今回は初めて会場を県庁舎に一本化する。

 宮崎県は8月24日、新任課長を対象に、県税収入の安定確保のため自動車税未納者への督促業務研修を開始した。県税の滞納額は2003年度決算見込み額で31億3000万円、このうち自動車税が7億9700万円と全体の25%を占めている。

 東京都は8月10日、全国初のインターネット公売の入札を実施。ロールス・ロイス(388万9000円で落札)やスタンウェイ社製グランドピアノ(560万2000円で落札)、山下清「ハイデルベルグの古城」(210万1000円で落札)など20点が公売にかけられ、合計落札額は1657万2832円に達した。(※なお、スタンウェイ社製グランドピアノや山下清「ハイデルベルグの古城」など3点について、支払期日までに代金納付がなかったため、売却が成立しなかったとして、再公売する予定とのこと。これにより、全売却代金は631万6832円となった。くわしくはこちらへ。)
 また、東京都は4月、個人住民税の徴税率アップを目的にした「個人都民税対策室」を主税局に開設した。個人住民税を専門に担当する組織で、職員35人を配置。職員を区市町村に派遣するなどして徴税の指導を行う「徴税指導係」と、区市町村から高額滞納案件を引き継いで早期処理を目指す「整理係」から成る。対策室では3年間で徴収率を3ポイントアップし、120億円の税収増を目指す。

 自治体は滞納対策として、さまざまな手段を実施している。以下、最近の取り組みの一部を紹介する。

 愛知・豊橋市は2004年度、「自動電話催促システム」を導入した。「うっかり未納者」が対象で、新規未納者を自動的に検索して電話し、電話に出たら職員が口頭で催促するというシステム。一定のコール後、相手が出ないと次の電話番号にかける。システム導入費は1500万円。リース代や保守費用として年間630万円がかかる。6月の3日間に、3923件にこのシステムで催促したところ、595件がその後、納付を済ませた。催促できなかった場合に比べ、納付比率は2.7倍だったとのこと。

 茨城・つくば市は2004年度から、外国人に対する本格的な滞納整理に乗り出した。外国語通訳ができる臨時職員を採用し、滞納者に英語などの外国語の催促状を送付したり、納税の仕組みや税自体についての理解が少ない外国人に対しては説明を行う。分納などの相談にも応じる考え。同市の4月末現在での滞納者は1000万人、滞納額は1億1000万円とのこと。

 徳島・鳴門市は2004年度、総務部内に市税滞納整理本部(14人)を新設した。大口・悪質滞納者対策として、「不動産のほか預貯金などの債権を積極的に把握した上で、差し押さえや公売を実施する」「公売にあたっては、金融機関との競合が少ない自動車などの動産も対象にする」などの構えをみせている。それ以外の全滞納者に対しても、夜間の戸別訪問を増やした。

 横浜市は4月、特別滞納整理班を発足させた2003年6月から2004年3月末までの10ヵ月間に、目標額6億円を上回る8億8000万円の滞納市税を徴収したと発表した。市税の高額滞納上位30件や徴収困難な案件のうち、43件22億円を同班の「指定案件」として捜索権や質問検査権を駆使、各区と協力して「隠し財産」などの洗い出しを進めてきた。これまで強制捜索を3件実施、計5260万円を徴収した。また、区単独または区と同班が協力して不動産の共同公売を計15件実施し、1億600万円の滞納市税に充てた。

 山梨・甲府市は5月、市税の滞納整理に当たる職員の勤務時間を2時間遅らせる変則勤務を導入。税務部収納課の課長4人と係長15人の計19人が4班に分かれ、1日に各班2人が午前10時半〜午後7時15分の時間帯に勤務し、夜間の戸別訪問を実施。また土曜日、日曜日は各班1人が出勤して業務に当たる。

 山梨・清武町は5月、全職員を動員して滞納者からの徴収を実施した。全職員159人を町内36地区に割り当てた「地区担当職員」制度を活用。平日昼間、通常業務の合間を縫って滞納者宅を訪問、支払いを催促した。

 仙台市など全国13の政令市は6月、市税徴収率の引き上げを目指し、「徴収対策課長会議」を設置した。租税債権が金融機関などの債権より優先的に扱われるよう、制度改正を検討。年度末をめどに、民法や地方自治法の改正の可能性を探り、国に改善を求める。

 兵庫県は7月、県税の滞納で差し押さえた高級外車「フェラーリ(F360モデナF1)」を公売。入札の結果、1261万円で落札された。1000万円以上の高級車の公売は全国でも珍しいとのこと。
 また、兵庫県は同月、住基ネットを徴税事務などに独自利用する「本人確認情報の提供、利用等に関する条例」を施行したが、安全対策などの準備が間に合わない市町などが多く、同ネットを利用するのは篠山市と稲美町の2市町にとどまった。また、神戸市は「メリットがあるのか分からない」として当面は利用しない方針。

 埼玉・草加市は7月から8月にかけて、2004年度2度目の管理職員による個別訪問徴収を実施。市長ら4役を含む主査級以上の管理職400人で、2人1組で実施する。

 熊本県は11月、2004年度の自動車税滞納者の預金、給与の差し押さえを前倒しして一斉に開始する。これまでは、年度末の2〜3月に預金、給与を差し押さえることが多かったが、冬のボーナス期に合わせた。

 香川県は2006年度に、全県的な滞納整理機構を設立する方針。県内の全市町で一部事務組合を構成し、県は人的・金銭的な支援をする。国民健康保険税を除く市町村税と個人県民税のうち、高額なケースや徴収が難しい案件について市町から受託する。(田中潤)


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