埼玉・川口市は7月21日、市議会の全員協議会で、蕨市、鳩ケ谷市との法定協から離脱する方針を決めた。これを受けて、市長は8月2日に臨時議会を開いて、離脱を議決する意向を明らかにした。新市名が「武南市」に決定したことや、議員報酬、合併方式などに反発の声があがっていた。特に新市名については、市民から公募。1位の「川口市」(1万4778票)と5位の「武南市」(579票)に絞り、12日の法定協で投票した結果、「武南市」が21人、「川口市」が19人となり、「武南市」に決まった。その後、川口市民から不満の電話やメールなどが市に多数寄せられ、市長も「市民の意見が反映されていない」「地域エゴがむき出しになった」「怒りすら感じている」などと反発していた。
そのほか、新市名をめぐって合併問題がこじれた最近のケースを紹介する。
大分・日出町議会は7月12日、杵築市、山香町、大田村との合併関連5議案をすべて否決した。新市名と本庁舎の位置が大きな原因。法定協は5月、新市名を速見杵築市(はやみきつきし)、新庁舎を杵築市役場とすることで一応の合意ができたが、6月に杵築市と日出町が本庁舎位置をめぐり対立。新市名を杵築市、新庁舎を日出町役場にするよう提案したが、多くの日出町議が「『杵築市』ではまるで吸収合併だ」と反発していた。6月の同町議会の全員協議会では、「杵築市、日出町役場」案について採決した結果、22人中4人が欠席し、議長を除き、賛成9人、反対8人という結果となった。7月1日の合併調印式にも、同町は、調印よりも議会議決が先であるとしたが、日程の変更が受け入れられなかったため、抗議の意味で欠席していた。
山梨・塩山市、山梨市、牧丘町、三富村、勝沼町、大和村で構成する東山梨地域法定協は7月22日、新市名を全国公募する際の規定について協議し、名称案に旧市町村名を除外することを決めた。山梨市や牧丘町は「歴史があり、美しい名前を残すべきだ」「最初の段階から制約を設けるべきではない」と主張する一方で、残りの4市町村は「合併で新しい歴史がつくられる」「新市の字名に旧町村名を入れることを既に決めている」などと除外を求めていた。「協議で決着すべき」との意見もあったが、方針がまとまらず、無記名による投票で決定した。これにより予定より1ヵ月遅れの8月に新市名を全国公募することになった。
大分・挾間町、庄内町、湯布院町による法定協は6月、合併後の新市名を「由布市」と決めた。これについて、3町合併に反対する方針を表明している由布院温泉観光協会と由布院温泉旅館組合は「由布市」に反対する署名を提出している。「名称は湯布院町という特定地域の固有の財産であり、新市名には地理的、歴史的にも不適切」「町固有のイメージが拡散され、地域の特性が損なわれる」「経済効果を意識した安易な地域づくりにつながる」などが理由。
秋田・象潟町は6月、町長選を実施。仁賀保町、金浦町との合併の是非が最大の争点となり、条件付きで合併推進を訴えた新人が初当選した。同町は2003年5月に新市名が「にかほ市」、2003年8月に新庁舎が金浦町に決まると、当時の前町長が「互譲の精神がない。町の魅力が反映されておらず、町民の不満が噴出している」と反発して法定協から離脱、同法定協は休止していた。その後、前町長は4月に、多選の弊害を理由に引退を表明し、今回の町長選となった。当選した新町長は、法定協復帰の前提として、合併後の3町の地域づくりを反映させた「まちづくり計画」の策定、法定協で合意した新市名「にかほ市」と新市の庁舎位置「金浦町役場」の白紙撤回などを主張している。
静岡・森町は6月、袋井市、浅羽町との合併関連議案を継続審議とした。同町では、電算システム、議員の在任特例の扱いのほかに、新市名について公募で最多だった「遠州市」ではなく「袋井市」に決まったことなどに町民の強い反発がある。
佐賀・武雄市、山内町、塩田町、嬉野町による佐賀県西部法定協は4月に、合併後の新市の名称を湯陶里(ゆとり)市に決めたが、「恥ずかしい」「歴史ある地名を選ぶべきだ」として住民が反発している。新市名は、温泉で有名な武雄市と嬉野町、陶芸が盛んな山内町と塩田町の4市町が合併することから、「湯」と「陶」の「里」で「ゆとり」にかけた造語。法定協での投票の結果、公募では10通の「湯陶里」が、903通の「武雄」を19対14と上回り決定した。法定協事務局は反対している住民をあおらないよう、看板や横断幕などでのPRを避けて、5月予定の新市名の名付け親大賞(10万円相当)の表彰式も延期している。(田中潤) |