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自殺防止事業 北東北が全国ワーストの自殺率

2004/07/20

 北海道、青森県、岩手県、秋田県は、リーフレット「こころの健康だいじょうぶ?」を4道県で協力して作成。青森県では55万9000部印刷しており、7月下旬から県内全世帯に配布する。リーフレットには、青森県の1998年〜2002年の年間自殺者数が400〜500人超となり、交通事故死者の2〜5倍に上っていることなどを紹介、うつ病などの自殺予防対策を掲載した。保健所などの相談窓口も紹介している。

 秋田県は3月から、県内69市町村と自殺予防の県民運動「心はればれ運動」をスタート。運動は「市町村と連携した地域対策」「うつ病対策」「相談態勢の強化、育成」などで、2004年度一般会計当初予算案に、運動事業費を含めた自殺予防対策関連事業費810万円を計上した。

 自殺者は年間3万人を超え、深刻な社会問題となっているが、「平成15年 秋田県人口動態の概況(速報)」によると、北東北3県の自殺率が全国でも最も大きいとのこと。人口10万人に対する自殺率は、秋田県が44.6で全国ワースト、青森県が39.4、岩手県が37.8と続く。これにより、秋田県は1995年から県別自殺率が9年連続して全国1位となった。なお、自殺率の全国平均は25.4で、最も低いのは徳島県で20.3、続いて岡山県が20.5、奈良県が20.7となっている。

 また、厚労省は2003年11月〜12月にかけて、長野・佐久市民を対象に「自殺に関する住民意識調査」を実施。家族、友人、知人ら親しい人の自殺を体験した人は24.7%、過去1ヵ月間に「自殺念慮(願望)」を1回以上抱いたと考えられる人は回答者全体の7%、実際に自殺する可能性があるハイリスクグループは3%であることが明らかになった。

 以下、最近の自治体による自殺防止対策を紹介する。

 静岡・浜松市は6月、「職場におけるメンタルヘルス相談窓口」を開設。毎月2回受け付け、勤労者が働く上での心の悩みに対応する。臨床心理士が相談員を務める。一方で、家族や雇用主に対しては、「悩んでいる当人へのアプローチの仕方」や「職場復帰に関する事業所としてのプランづくり」などを指導する。市労政課によると、全国で不況やリストラが原因のうつ病発症は5年前の2.81倍になっているとのこと。また、市が2003年度に開いた事業主対象のメンタルヘルス研修会には定員の3倍強もの応募があった。

 京都市は2004年度から、保健、医療や消費者、中小企業、教育などの分野の担当部局と関係団体の実務者で構成する「自殺防止対策連携推進会議(仮称)」を設置する。自殺の件数の推移や男女、年齢の別による発生状況などの現状を分析した上で開設する。「こころの健康」問題の普及啓発や、相談対策の充実など効果的な支援策について論議し、支援充実に乗り出す。

 山形県は2004年度、「心の健康づくり推進協議会」を新設して、本格的に自殺者対策に乗り出す。地域精神保健指導者の養成やうつ病に関する研修会の開催、パンフレットの作製と配布、心の健康相談ダイヤルによる電話相談に対応するため専任職員の配置、かかりつけ医となる内科医などへの研修会の開催などの事業を予定している。

 富山県は2004年度、うつ病対策で専門家による対策検討委員会を設置し、具体策を話し合う。精神科医や保健師ら医療関係者を中心に組織する。精神科医以外の開業医も含めた対応マニュアルやチェックシート作りなど、早期の発見と適切な治療体制づくりを進める。

 また、大分県は2004年度から、「自死遺児援護事業」に取り組む計画を進めている。保護者のいずれかが自殺した小中学生が対象で、学校を通じた申告により、祝い金のほか、県の交通事故遺児援護基金から映画鑑賞やスポーツ観戦、旅行への助成、クリスマスプレゼントなどを行うというもの。基金は9600万円あり、企業や団体などから、年平均で600万円の寄付が寄せられ、交通遺児(2003年現在で97人)への援護に充てている。(田中潤)