政府は7月6日、6月中に募集した「特区、地域再生、規制改革・民間開放集中受付月間」に係る提案の受付状況についてを発表した。提案主体数は地方公共団体が250、民間企業等が135で、合計385主体が提案した。構想(プロジェクト)の提案数は地方公共団体が490、民間企業等が162で、合計652件の提案があった。
以下、地方紙などで紹介されたものを中心に紹介する。
【産業活性化関連】
■栃木県「経済新生計画」
企業や個人事業者の事業転換や多角化を促すため、保証料の安い「特別保証制度」を新設したり、中小企業が大学などと共同で研究開発する場合に補助金を出したり、中小企業が産業再生法の適用を受けられるよう再生計画期間を3年から5年に延ばし、債務圧縮基準も緩和するというもの。また、緊急地域雇用創出特別基金事業を、2005年度以降も継続して、地域雇用の確保を目指す。
■名護市「金融テクノロジー開発特区」
企業のリスクファイナンス手法として近年益々ニーズが高まっているキャプティブ保険会社(親会社専属の保険子会社)の国内での設立を可能にするというもの。
【IT関連】
■大阪府「高度電子自治体構築特区」
地方自治法の特例により、クレジットカードで手数料・使用料を支払うことや、インターネットを使った電子申請の際に紙の証紙を必要としない電子証紙を導入するというもの。電子自治体サービスの早期提供と利便性向上を目指す。
■石川・羽咋市「地域ケーブルテレビ加入促進プロジェクト」
民間による独自の資本でケーブルテレビを整備するが、その事業費として電気通信格差是正事業費補助金を交付金として受けて、市が加入世帯へ引込工事や宅内工事の助成を行い、加入世帯率40%を目指すというもの。
【農業関連】
■群馬・館林市「農村定住に伴う農地の権利取得後の下限面積要件の緩和(サラリーマン農住特区)」
サラリーマンなどの非農業者が定住と耕作を条件に、住宅などに囲まれ集積困難な農地(5a以上〜10a以下)を取得できるようにするというもの。さらに、5年間の耕作後、残地の営農を条件に、取得した当該農地面積の2分の1以内を限度に、自己居住用住宅建設用地として農地転用し、農村集落内の定住を可能とする。
■金沢市「金沢伝統的加賀野菜生産特区」
農地法と森林組合法の特例適用により、森林組合の農業参入を可能とし、山間部の作業に慣れている森林組合に加賀野菜の生産を委託できるようにするというもの。加賀野菜の生産拡大、遊休農地・放置森林の解消や地域活性化、若者の雇用拡大、減農薬栽培や加工品の開発などが期待できる。
■石川県「河北潟干拓地土地有効活用構想」
干拓地整備後8年間は畑作に限定されている河北潟干拓地で、補助金の返還なしに加工用米の作付を認めるというもの。大区画ほ場を活かした大規模経営・低コスト化を図る。
■石川県「能登半島漁業サポーター特区」
水産業協同組合法を緩和し、准組合員資格がなくても、漁業に取り組み、港湾施設などを利用できるようにするというもの。都市部の市民も港湾施設を利用でき、カキ養殖や定置網漁などの一口オーナーとして漁業に取り組めるようになる。
【都市農村交流関連】
■北東北3県(青森県、秋田県、岩手県)「北のふるさと再生構想」
これまで農林漁家が農林漁業体験民宿を開業する際に、小規模(客室床面積33u未満)な農林漁業体験民宿を建築基準法上の旅館から除外するというもの。基準法では、旅館にかやぶき屋根が認められていないほか、間仕切り壁の設置も義務付けられており、一般の農家が民宿を始める際、大規模な改修工事が必要となっている。また、制約の多い都市と農山漁村の交流促進に関する補助事業の廃止を求め、新たな支援制度をつくって、その使途を自由化する措置を講じることを提案した。
【生活福祉関連】
■埼玉県「特別養護老人ホーム設置法人の規制緩和の推進」
自治体と社会福祉法人だけが特養ホームを設置、運営できるが、資産要件等一定の要件を満たすことを条件に、株式会社が特別養護老人ホームを設置・運営することを認めるというもの。また、設置会社の財務状況を公開したり、県が施設運営について指導、監査を行う。さらに、経営悪化等施設経営に支障が生じた場合には入所者保護のためのセーフティネットを構築する。
【まちづくり関連】
■京丹後市「市民参加による幹線道路整備促進構想〜みんなの道路。「つくってほしい」から「みんなでつくろう」へ〜」
地方財政法では、国・府が整備する広域道路建設について市町村にその整備費用を負担させてはならないが、市町村が望む場合は市町村の財源を広域道路建設に投下できる仕組みをつくるというもの。また、財源には合併特例債を充当できるようにする。特区のエリアは、いずれも未開通の京都縦貫自動車道の綾部東〜丹波間(26.6km)と、鳥取・豊岡・宮津自動車道の鳥取市〜宮津市間(120 km)。京都縦貫道の場合、開通は10年後、工事費は1500億円以上とされているが、関係市町で負担し合い、600〜700億円を投入すると、工期が4〜5年ほど短縮できるとのこと。
■山口県、美祢市「美祢社会復帰促進センターPFI特区」
監獄法を規制緩和して、刑務所内の巡回や警備のほか、所内の診療所を公的医療機関に委託できるようにするというもの。官製市場の開放を図り、雇用機会の増大につなげる。必要な250人の職員のうち半数を民間から雇用できると見込む。
■金沢市「金沢まちなか居住支援構想」
特定優良賃貸住宅での入居者家賃補助基準を地域の実態に合わせて引き下げることや、コミュニティバスの認可権限を市町村へ移譲するというもの。中心市街地の更なる活性化を推進し、魅力ある住環境づくりによる定住人口の増加を図る。
■岐阜市「回転灯を付けて心に安心の灯りを点けよう特区」
道路運送車両法の保安基準で一般車への使用が認められていない回転灯について、市民が主体となって行う防犯パトロールや、河川堤防等のパトロールにおいては、パトロールに使用する車両に着脱式の回転灯を装備使用できるようにするというもの。
【地方行革関連】
■東京・稲城市「非常勤職員意欲増進特区」
非常勤職員に対して人事考課制度を導入し、常勤一般職員と同様に、勤務成績をその処遇に反映させるというもの。地方公務員の非常勤職員は、地方自治法が勤務日数に応じた支払いを定めているため、それ以外は支給できないようになっているが、特例として勤務成績を反映させ、やる気や能力に応じて勤勉手当を支給できるようにする。
■鳥取県「県知事・県議会議員選挙特区」
立候補の届出期日を告示日から数日間に拡大し、決まった期間内の選挙運動を禁止、県選管が投票用紙の印刷や掲示板を作製した後、選挙運動を解禁するというもの。現行では、告示日は立候補届け出日と同時に選挙運動開始日であるため、県選管は候補者数が確定しない中で選挙準備をする必要がある。2003年の知事選は無投票だったが、ポスター掲示板設置費4500万円などを含めた5000万円が無駄になったとのこと。
■鳥取県「市町村財政自立特区」
市町村が起債するにあたり、起債の一部(ミニ公募債や銀行など交付税措置のない民間資金債の場合)について、知事の関与(許可、協議)を廃止するというもの。市町村の財政運営の自主性を高めて、市町村財政の健全化を図る。
■鳥取県「監査委員定数自由化特区」
地方自治法で都道府県は一律4人となっている監査委員定数について、必要な自治体は独自に増員できるようにするというもの。県は6人程度を考えている。広範化した行政分野について、これまで以上にチェック機能の充実・強化を図る。
■静岡県「静岡政令県構想」
政令指定都市が都道府県から多くの事務を移譲されるのと同様に、一定の規模や能力がある道府県を政令県とし、基本的に国の地方支分部局の事務の全てを移譲するというもの。主な権限移譲事務として徴税事務の一元化、都道府県労働局の事務や保健医療機関の指導・監査を盛り込んでいる。
【環境・新エネルギー関連】
■栃木・日光市「環境美化推進プロジェクト」
電気自動車など自然環境に優しい車の駐車料金無料化を実施するため、一般車と区別できるナンバープレートを新設するというもの。クリーンエネルギー自動車の普及・啓発を目指す。
【国際交流・観光関連】
■長野・根羽村「根羽村林業振興のための中国からの人的支援特区」
現行の「出入国管理及び難民認定法」の在留資格における技能の項目に「林業」が存在していないためこれを追加して、中国からの林業技術技能者が「林業」の職種で森林組合に就労できるようにする。村は、中国から林業従事者10人を最長3年間、不法就労とならず在留できるように求めた。
■丹生川村「秘境乗鞍山麓五色ケ原 環境観光共生特区」
国立公園内の普通区域において、利用調整区域を設け、入山者数の制限や完全禁煙、罰則規定など独自の規制を行うというもの。期待される効果として、観光者の増加(新規3550名)や雇用の創出(ガイドなど新規50名)などが見込まれる。
■静岡県、沼津市、熱海市、三島市、伊東市、下田市、伊豆市、東伊豆町、河津町、南伊豆町、松崎町、西伊豆町、賀茂村、伊豆長岡町、戸田村、函南町、韮山町、大仁町、清水町、長泉町「伊豆地域交流拡大構想」
新規顧客や外国人観光客開拓などによる国際観光交流の促進、魅力の創造の推進などを図るというもの。
■佐賀県、嬉野町「佐賀・嬉野温泉ふぐ肝特区」
食品衛生法などで禁止されている「フグ肝(肝臓)」の可食化を認めるというもの。養殖水の酸化を防ぐ重曹を多く含む嬉野温泉水を養殖に活用し、陸上養殖で毒から隔離して「無毒フグ」を育てる。一般のフグと厳密に区別するため、タグを付けて養殖履歴を添付したり、養殖業者と飲食業者に認定制を設けて直接取引する。認定業者は一般のフグを扱わず、土産用などの販売は禁止する。(田中潤)
※なお、全提案内容については「構造改革特区(第5次)及び地域再生(第2次)提案募集における構想・プロジェクト概要」(pdfファイル、excelファイル)を参照。 |